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基調講演「本当の働き方改革に必要な考え方」(全2記事)

2019.12.05

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機能不全のシグナルは「運用でカバー」「とりあえず〇〇」 マイクロソフト澤氏が明かす、ヤバい組織の共通点

提供:ランサーズ株式会社

2019年9月25日、ランサーズ株式会社が主催するイベント「オープンタレントサミット〜令和元年、これから求められる本当の働き方改革とは?〜」が開催されました。働き方改革が施行され、大企業が副業を解禁するなど、これまでの「働き方」が大きく変化するこの時代、企業はどう向き合っていくべきか。このイベントでは、本質的な働き方の変化を進める企業の担当者が登壇し、取り組みや事例をもとに様々なディスカッションが行われました。この記事では、マイクロソフトの澤円氏による基調講演「本当の働き方改革に必要な考え方」の内容をお届け。日本人が持つべきコスト意識の話題を中心に、世界で生き残るためのこれからの働き方について語りました。

外資系出身者が感じる、日本企業へのある違和感

澤円氏:さて、ある人の物語でちょっとお話をしましょう。これは日本企業に転職した元外資系のマネージャーです。すごく優秀なやつだったんですけど、最近このパターンが多いんですよね。外資系出身で日本企業に転職。三顧の礼をもって高待遇で転職をするということもあるんですけれども。

いい待遇なので、さぞやちやほやされていい気分だろうなと思って、「どう? ちやほやされていい気分でしょう」と言ったら、「いや、確かにみんなすごくよくしてくれるんですけど、ある悩みがあるんです」。それはなにかというと、考える時間がぜんぜん取れないんだそうですね。「なんで? 嫌がらせされるの?」「いや、そういうわけじゃないんです」。

ある時、電話がかかってきたんですよね。コミュニケーションの手段は、やっぱり電話なんですね。「先月までの売上に関してちょっとご報告したいんですけど」と言うわけですよ。「わかりました。先月までの分ですよね。データを見ますね。メールで送っていただけます?」と言ったんですね。

そしたら、「はい」と言うのかと思ったら、「いやいや、とんでもない」とか言い出すんですね。「あなたにメールで、そんなご報告するなんて失礼なことはできません。全員でおうかがいして、全員で報告をさせていただきます」と。キングダム流に言うと、全軍前進というやつですね。ザッザッザッと(軍が行進するように報告に)来るわけです。

部屋中ぎゅうぎゅうですよ。20人とかで来るんですね。しゃべるのは1人か2人で、5人ぐらいは暑くて寝てて。そんな状態なんですね。それが儀式のように朝から晩まで(報告会が行われる)。これはオーバーに言っているんじゃなくて、本当にそうなんです。

過剰な礼儀はコストでしかない

どうしてもこういう「みんなで情報共有をしましょう」というのが儀式として成立しちゃっているんですね。結果的にはその人間は朝から晩までずっと会議漬けになります。そしてゆっくり考える時間が取れないので、その都度その都度判断して言っていかなきゃいけないので、判断ミスをするようになっちゃったんだそうです。ゆっくり考えることができないのが悩みなんです。

そして、その時点まで情報が自分の手元に来ない。なぜかというと、本人たちもどこにあるかわからないからだそうです。そして、その事実をとっとと知らせてくれればいいんだけれども、残念ながらそうはならなくて。なぜかというと、礼儀というのがトッププライオリティ(になっているからです)。

これを僕は「礼儀正しく時間を奪う」と言っているんです。礼儀は正しいんですよ。あなたのためにきちんと準備しましたという儀式が行われる。だけど、使われるのは時間です。いろんな人の時間が同時にどんどん減っていくわけですね。この礼儀正しく時間を奪うというのがすごく効率が悪い。

過剰な礼儀は残念ながら、ただのコストなんですよね。ですので、もっともっとコストカットはできるはずなんです。

エストニアでは「日本企業の視察お断り」

コストをおさえる。どうしてもコストと言うと、なんとなくハードウェアのコストとかソフトウェアのコストとか、目に見える計算をしやすいコストのほうに目が行くんですけれども。実際に一番高いのはなにかというと、時間なんですよね。時間というのがすごく高いものだと意識しなきゃいけない。これを念頭に置いていただきたいなと思います。

それがあんまり浸透していないがゆえに、こういったことが起きるんですね。エストニアで日本人お断りのスタートアップが増えている。これは、何年か前まではシリコンバレーでした。ちょっと前までは深圳でした。そして、今はエストニアです。

とにかく視察旅行が多すぎってやつですね。そして、行くのはかまわないとして、何にもギブしないんですよ。テイクだけしてくるんですね。なぜかというと、これも礼儀なんです。「あなたにそんな教えることなんて我々にはありません。あなたから教わるだけです」ということでテイクだけしていく。

そうすると向こうは、時間を取られたおまけに情報まで抜かれたということで「冗談じゃない」となるわけですよ。せっかく来たんだったら投資の話とか協業の話ぐらいその場で判断しろと思っているんですけど、「私にその権限がありません」(の一点張り)なんです。

ですので、もしこれから行く機会がある方であれば、必ず手土産を持っていってください。とらやの羊羹の話じゃないですよ。ビジネスを1歩でも2歩でも先に進めるための手土産です。その場でDecisionするんです。その場で判断をして、結論をつけて、アクションをするんです。これがすごく大事です。

それができないから、日本は今、働きたくない国No.1に輝いているんですよ。これはアジアの中の11ヶ国の中で、トップタレントと呼ばれる層に嫌われているのは、残念ながら日本だそうです。

印鑑を押すために会社に出社?

なぜこんなことになるのか。やっぱり年功序列(が原因です)。トップタレントの連中はアーリーリタイヤが前提ですからね。そして自分の好きなことをやりたい。例えばスタートアップのエンジェル投資家になるとかアドバイザーになる。あるいは大学の先生になる。そういったことをやりたいわけ。

なので、年功序列なんかで時間を取られたくない。とっとと自分のパフォーマンスをガーッと出して、結果もドーンと出してとやりたい。だけど、年功序列で時間かかると。おまけにその間はやたら給料が安いと。

真ん中が厚いというのが我々の感覚ですけれども、トップタレントです。あくまでもトップタレントです。本当にジョブホップをするような連中からすると、「とにかく給料が安すぎるだろう」というわけです。

そして、「IT化が進んでなさすぎる」と彼らは思うんですね。僕の上司は去年まではスウェーデン人だったんです。3年前まではオランダ人でした。(彼らが)日本の法人のほうに鞍替えするんですけれども、そのときには必ずあるものを渡されます。印鑑です。

「ピーター」と書いてあるんです。おもしろがってあちこち押す。パコパコって。「でもさ、これを持っているってことはさ、(会社に)来なきゃいけなくない?」と気づいちゃうんですね。「よくわかったね。それがジャパニーズスタイルだよ」と言うと、すごく嫌な顔するんですけど。電子サインで済むところを印鑑にしちゃっているところ、これが嫌なんですね。場所の制約を受けます。

レポート作成は過去の焼き直し

そして、もう1つ。レポート作成をやたらします。これは麻薬なんですよね。でも一歩も進んでいません。なぜかというと、過去の焼き直しだからです。

さて、あるデータをちょっとご紹介しましょうか。うちの会社の資料を持ってきたんですけど、この真ん中、これは何かというと、社長を含む営業会議なんですね。社長を含む営業報告会議を開くために役員が事前の会議をします。11会議体、2万時間が使われています。

「なんか役員がミーティングするらしいよ」「じゃあうちもちょっと打ち合わせするか」といって部課長会議を開く。21会議体、6万3,000時間が使われます。「なんか部課長がミーティングするんだって」「じゃあうちらもすり合わせしとく?」ということで担当者レベルで130会議体・21万時間を使います。

結果30万時間・34億円が飛んでいくという、そういったデータがアメリカにありました。これ、日本じゃないんですね。米国の製造業でもこんなもんなんです。アメリカの生産性は日本の倍ぐらいあります。ちょっと怖くて数字も出したくないですよね。日本はこれの倍だとしたら……ということなんです。

だいたい主役は紙だと言いました。紙の問題点は、印刷にかかる時間。これはプリンターの性能の話をしているんじゃないんです。例えば事前のすり合わせであったり、データ集め、そういったところも含めてです。

あるいは、データが古いんです。印刷した状態というのは、ある時点のスナップショットです。ですので、オンライン上でアップデートされたものは紙の上には反映されません。そして当然、場所の制約を受けますよね。配るのは同じ空間じゃないとできませんから。

スピードを意識するためには、電子ツールを使いこなすこと

とにかくスピードを考えましょうよ、ということですね。スピードを考えた場合に一番重要なのは、電子ツールを使いこなすことになってくるわけですが、最悪のツールはさっき言った電話なんです。

ちょっと聞きたいんですけれども、自分のところにかかってきた電話以外のベルの音は一切聞こえない環境で仕事をしている方は、どれぐらいいらっしゃいますか? 他人の電話のベルの音は一切聞こえない。

(会場挙手)

1人、2人、3人……4人だけ? 寂しい。ありがとうございます。

ということはほかの方たちは何らか聞こえているわけですね。代表電話とかほかの人の電話とか。残念でしたね。そういった人たちは集中力が切れちゃってるんですよ。当たり前です。電話のベルは集中力を切れさせるために鳴っていますからね。そして「俺の話を聞け」と言っているわけです。そして作業を中断して聞かせる。

かかってきた人はまぁいいでしょう。それ以外の人はベルだけ聞かされているんです。これが最悪だと言っているんです。ですので、電話をいかに減らすかというのも実は改革においては、見えないかもしれないし地味かもしれないけど、非常に大事なポイントです。

そして、じゃあやっぱりメールかな? 僕はメールが本当に嫌い。僕にメールを送ってもムダです。これは未読件数です。見るのをやめてみました。なぜかというと、メールってどれが重要かパッと見わからないじゃないですか。なので、これ重要かなって開くとハズレだったりするんですね。なんかアタリだったりハズレだったりするから、だんだんイライラしてきてもう見るのをやめてみました。

ほかの手段でやる。もうチャットツールでいいだろうということで、もう全部チャットツールに切り替えちゃいました。

MTCのダッシュボードのデータからわかること

じゃあ、ここでデモをご覧いただこうかなと思うんですけれども。画面を切り替えまして。

先ほどからしつこく言っていたマイクロソフトテクノロジーセンターのデータをご覧いただこうと思います。これがマイクロソフトテクノロジーセンターのダッシュボードです。

全世界でやっているパフォーマンスをここで調べられる。マイクロソフトテクノロジーセンターは全世界でセッションをデリバリーしています。こういうプレゼンをしたり、あるいはお客様をお呼びして、アーキテクチャデザインセッションということで、一緒にホワイトボードを使ってデザインを考えたりですね。

あるいはちょっとした機材を使ってProof of Concept(概念実証)ということで、テストをしてみたりとかをしています。そのセッションを何回やって、それがどれぐらいの規模の商談に寄与したかが数字になって見えてくるんですけど、全世界分が全部一覧になってるんですね。

これを見ていただくと、MTC(Microsoft Technology Center) Franceが一番多いですね。次はここが多いかな。MTC Canadaが206回かな。よしよし。206回やってますね。222回はどこでしょう? Japanですね。世界第2位。僕がやることは1個だけですね。今からパリに乗り込んでいって、コンピュータに水をぶっかけたり電源を抜いたりとかすると、相対的に僕のほうが上に来ますね。やったら一発でクビですけどね。

こんな感じで全世界でパフォーマンスが一発で見えるんですよ。MTCは全世界でまったく同じジョブディスクリプションです。ですので、「あなたがなにをもって仕事をなしたとみなす」ということはまったく同じなんですよ。

ターゲットとなるマーケットサイズが違いますので、数字だけは違います。そこはフェアにするためにパーセントで見ます。割合で見ます。成功率で見ます。それで比較をします。これは絶対数値ですけれども。

メンバー一人ひとりのパフォーマンスが可視化

さらに、一人ひとりのパフォーマンスも見ることができるんですね。例えばこれをピッと見てみると、僕のチームのメンバーがどれぐらい活躍しているのかも一発で見られる状態になっています。

ちょっと今、データのアップデート中なので、NSATって満足度の部分だけはまだ0になっていますけど、47回やって70.36のメガのドルになりますけど、こういった商談に寄与しているというのが全部出てくるんですね。

これは本人が入れているわけではありません。僕らにセッションを依頼する人たちが、入力をしてくれているんですね。

ただ、このデータを入力しているわけじゃなくて、その人たちは単に予約をしているだけです。「悪いけれども、今度そのお客さんに対してセッションやってくれない?」と予約をすると、自動的にさっきのデータが上がってくるんですよ。顧客名を入れて、そのお客さんに何を提案しているかと入れていって。まぁ、商談履歴を入れるだけなんですけれども、セールスはCRM(Customer Relationship Management)なら使えますよね。

そのCRMのデータも、フラグだけを立てておいたら、さっきのやつは自動的に出てきます。ここがポイントなんです。誰もデータの入力をしていないということです。引っ張ってきるだけです。そしてあとは(セッションを)やるだけ。やったら、部屋の予約システムなどと連動していて、「やりましたよ」とチェックすると、さっきのデータがポンと出てくる。僕は一切のデータ入力をやらせていないし、やる必要がない。

MTC Engagementを見ると、Engagementというのがセッションの数なんですけど、これを見ると、Requester(依頼者)とありますよね。Madoka Sawa、僕の名前ですけれども、グレイアウトしています。変更できないんですよ。つまり、自分の名前がここに出ちゃいますから、捏造するとバレるんですね。自分で底上げしようと思ってダーッとデータを入れようとしても、自分の名前がここに入っちゃいますから、自動的に削除されます。

データの正当性が保証されることになります。そのためには、「誰」を特定できることはすごく重要なポイントです。認証基盤がしっかりしていることが絶対条件になります。

マネージャーの仕事は自動化をさせること

そして、「僕はメールを見ない」と言いました。本当に見ないんです。ヤバいの来てないだろうな。たまーにしか見ないから、こうやって気になっちゃうんですよね。

ここを見ていただくとわかる。もうInboxはこんなふうになっています。あとでこっちにも送るんですけど、「僕への連絡事項はここにしてくれ」と言って、Teamsというツールなんですけれども、こちらにチャンネルをつくっておいて、「ここに(連絡事項が)入ってたら僕がアクションしますよ」というふうにしてます。

さっき僕宛てにメールが来ていて、すごく重要そうだったんですけど、その1通だけ返信します。「こっちに入れて」。あのメールには答えないんです。メールに答えると次もまた送ってきちゃいますので。さっきの人は、僕が初めてメールを受け取った人だったので送ります。これにはもう二度と答えません。こっちに送ってくださいということで、澤への確認事項、このチャンネルにすべて入れていく。

そうすると、ほかの人のものを全部含めてスレッドで見れるんですね。澤にこんな確認をしたと。そうすると過去を遡って澤にはこうコンタクトすればいいんだなというのがわかる。

内緒話をしたい人はチャットをしなさい。ヤバいものはないな。大丈夫かな。こんな感じですね。僕とチャットをしましたということなっていますね。チャットだったら聞きます。そして、全部チャットだったらその人とのやりとりがわかりますので、結果的には読み落としがないということになるんですね。こんな感じでデータは保全をしていくことになります。

じゃあスライドのほうに戻りましょうか。ちょっと待ってくださいね。

とにかく、すでに発生した事実は前もって共有できる状態にしておく。ダッシュボードになっていますから、いちいち報告を待つ必要はないんです。僕は常にそれをキャッチアップできるので、会ったときには「最近ちょっと数あんまりいってないけど、大丈夫?」という話ができるわけですね。報告を待つ必要がありません。

そして「調子がちょっと悪そうだな」と早めに気づけます。マネージャーの仕事はそれを助けてあげることです。自動化が重要です。いちいち手作業でやっていると時間ばっかりかかってしまうし、人はミスをしますので、結果的にそのデータの正確性は担保できなくなります。

恐怖の言葉その1「運用でカバー」

みなさんに恐怖の言葉を1個覚えて帰っていただきたいと思います。この言葉が出てきたらヤバい。この言葉が出てきたら改善しなきゃいけないポイントがあるぞということです。

「運用でカバー」。なんか覚えがありませんか? 「運用でカバー」。会話のときに「これは運用でカバーしよう」。出てきたらヤバいと思ってください。ツールを使ってください。仕組みを変えてください。

とにかく人依存になっていくと、『ごんぎつね』みたいに「お前だったのか」ということが起きかねませんからね。

そして、過去の事実でサプライズは厳禁です。それが起きてしまうと大変なことになるわけです。経営判断のミスになることもあります。

そしてなにか問題が起きたとき……その前にこの話をしようかな。日本って実は、社員を子ども扱いする国と言われているんですね。これはバカにしているわけではなくて、新卒一括採用をやって新卒のトレーニングをやっていて、会社に特化した型の人材として40年面倒を見るというビジネススタイルをずっと続けていましたよね。子育てのように丁寧に扱うというのが特徴的なんですよ。

欧米では適材適所で考えて、合っていなければほかを探せというのがカルチャーとして定着していますので、ずいぶん違います。結果的にすごく丁寧に扱うので、日本は労働をする上で非常にいいはずなんだけれども、子どものように振る舞っちゃうところもあるんですね。いわゆる指示待ちになってしまったり、言うべきことを言わなくなったりということが起きてきます。

なぜか? どうしても丁寧に育てられるというところもあって、一番恐れるのが怒られることになっちゃうんです。減点主義と言われていますけれども、とにかく怒られないようにしよう。それは自分が怖いというのもあるし、相手の機嫌を損ねるようなことをさせてはならない。恥をかかせてはならないという気持ちが、どうしても強く出てきちゃうんですね。

サボっている人はサボり方が変わるだけ

そして、例えばリモートワーク。僕は週に1〜2回しか会社に行かないのですが、リモートで働く、あるいは在宅勤務を許してしまうと、「社員がサボるんじゃないか?」と言う人がいるんですね。心配する人が大いにいます。

だけど、僕は必ずこう言います。「心配しないでください。そういう人たちはもうサボってますから」。サボり方が変わるだけです。今まで隠れてYouTubeを見ていたのが、堂々とYouTubeを見るようになるだけです。別に中身は変わらないんですね。そこの部分は気にするところではないということです。

必ずこういった質問が来るんですね。「何をすればいいですか?」と。違うんです。やめることを探してください。「これいらなくね?」ということを片っ端からやめてみてください。僕はメールをやめました。そしてチームミーティングをやめました。会社に行くのもやめました。ぜんぜん困っていません。

さっきのパフォーマンスを見ていただければわかると思いますけれども、今のところ世界で2番目の成績をちゃんと出しています。ですので、やめたところで別に困らないんですよ。やめて困ったらまた始めればいいんです。

だから、まず最初に「何をすればいいんですか?」(と聞かれたら)、なにもしないでください(と言います)。やめられるものを徹底的にやめてみてください。やめられるかどうかわからないものは試しにやめてみてください。惰性でやっているもの。会議とか資料づくり。惰性でやってたら全部やめてください。

恐怖の言葉その2「とりあえず」

恐怖の言葉をもう1個プレゼントです。「とりあえず」。

「とりあえず集まろう」「とりあえずミーティングしよう」「とりあえず資料を作っておいて」。「とりあえず」を全部やめてください。これをやめれば、本当に必要なものが浮かび上がってきますから。はっきり言っちゃうと、なんとなく必要なものはとくに必要ないんですよ、ですので、「とりあえず」というキーワードが出てきたらやめてみてください。

とりあえずいろいろやめてみたら、いいことづくめでした。これはマイクロソフトの事例です。10年前と比べてみたんですけれども、ペーパーレスが80パーセントですよ。そして業務時間はマイナス13パーセント。これは数字に計算すると、まるまる約2ヶ月分の業務時間を減らしたのと同然です。つまり、2ヶ月休んでも10年前と同じパフォーマンスが出せるという計算なんです。

そして、従業員数はなんと7パーセント少なくなっているんですね。その代わり事業規模はプラス180パーセントですよ。むちゃくちゃですよね。

じゃあ値上げしたのかというと、実はそういうわけじゃないんです。むしろ商材は安くなっています。クラウド化が進んでいますので、1ライセンス売っておしまいというビジネスから、使った分だけちまちまと一生懸命積み上げていくというビジネスに変えていますから、むしろ苦労しているんです。ですけれども、これだけ生産性も上がっているということなんですね。

そして、褒められまくりです。いろんな賞を総なめしました。おかげで、ちょっとやってみました。週勤4日週休3日。週休3日のほうばっかりクローズアップされたんですけれども、これ逆なんですよ。3日休まなきゃいけないから、週4日で同じパフォーマンス出せなきゃいけないので、けっこう罰ゲームみたいな状態だったんですね。ひーこら言ってやったら、意外とできました。

会議設定は基本30分・人数は多くて5人

でも、まだダメなんです。グローバルと比べると、「お前らなんでそんな生産性低いの?」と言われるんです。日本ではあれだけ褒められているんですよ。あれだけ褒められているのに、4時間、そして25日、両方とも平均してメールや会議に費やされる時間がグローバルに比べると多いということなんです。「お前らって生産性悪いな」と言われるんですよ。

ですので、マイクロソフトの社内では合言葉を作りました。会議設定は基本30分。人数は多くて5人。実はすっごく多かったのが3レイヤー以上の役割の人たちが出てくるミーティングの数がすごく多かったんですね。どういうことかというと、部長、課長、担当者という3レイヤーです。

基本的にグローバルで見ると、部長だったら部長同士、課長だったら課長同士で、もう権限移譲されていますから、そこの場で決まれば決まりなんですね。いちいち確認を取る必要はありません。ですので、基本的にはその合意だけを取ればいい。その前にデータもあるわけだから、それを見ておけばいい。

「当たり前」を片っ端から疑ってみる

あとは基本的にTeams。さっきのオンラインで(メッセージのやり取りを)やると。ほかにはSlackなんかも世の中にはツールとしてありますけれども、そういったオンラインツールをどんどん使おうという話なんですね。会って話をするときは人間関係構築のときだけです。それこそ飲みに行きゃいいんですよ、場合によっては。

ちなみに本社からやってきたときには、みんな飲みに行きます。人間関係を構築しておいたら、オンラインでやったときのディシジョンメイク、なにかを決めるところがスムーズにできるからです。だから、今まで当たり前だとか普通だと思ってたものを片っ端から疑ってみてください。

時間と距離は変わりませんからね、これだけは平安時代、江戸時代からずっと変わっていないんですよ。ですけど、テクノロジーが違うんです。テクノロジーを使いこなして、これを飛び越えてください。そうすることによって移動時間に費やされていたものとかを業務事案に割り当てたりとか、場合によっては帰っちゃえばいいんですよ。そしたら働き方改革でよく言われる残業時間削減なんて本当に簡単にできますから。

ぜひ片っ端からやめてみてください。勢いあまって会社とか辞めないでいいですよ。そこまでは言いません。でも、いらない業務だなと思ったら、片っ端からやめてみていただくことをおすすめします。

テクノロジーを使いこなせれば未来を創れる

さて、そろそろクロージングの時間になります。

やっぱりこの商売をやっているとこんなことを非常によく聞かれるんですね。「AIが進化したら人類はどうなるんですか?」。やはりちょっと怖いというのがあるんでしょうね。気持ちはわかります。でも、この責任の70パーセントぐらいはこいつにあると思っています。

アーノルド・シュワルツェネッガーさんのせいでみんなAIを恐れるようになっちゃったと思うんですけど、突然こうはならないですからね。ものには順番があります。

なぜかというと、AIは自然発生したものでもなんでもないんです。人間が作るものなんです。テクノロジーだから我々は関係ないとお思いにならないでください。全員でこれを作らないといけないんです。

先ほど言ったとおりです。すべての企業がテクノロジーカンパニーになるんです。だから、AIも含めて、使いこなしていくのは我々人間です。ですので、「どんな世界にしたいですか?」というのが僕がいつも聞いていることです。「こんなふうにしたいな」というのがあれば、ぜひそれをテクノロジーカンパニー、我々のような会社と情報共有していただきたいんですね。

そして、「こんなふうに使いたい、こんな世の中にしたい。こういうふうに世界を作り変えていきたいな」と。壮大に聞こえるかもしれないけど、会社は社会貢献のためだけに存在しているわけですから、オーバーに言ってるんじゃないんです。本気で言ってます。ぜひ一緒に未来を創るためにテクノロジーを使いこなしていきましょう。

テクノロジーは非常にパワーがありますからね。みなさんとそれを使いこなして、ぜひおもしろい未来を一緒に創れればいいな、なんていうふうに思っております。

ということで、ちょうど時間になったようです。私のプレゼンテーションはここまでです。ありがとうございました。

(会場拍手)

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