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基調講演「本当の働き方改革に必要な考え方」(全2記事)

2019.12.04

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「ほう・れん・そう」には“あるパラメータ”が足りない マイクロソフト澤氏が語る、労働生産性を上げるためのヒント

提供:ランサーズ株式会社

2019年9月25日、ランサーズ株式会社が主催するイベント「オープンタレントサミット〜令和元年、これから求められる本当の働き方改革とは?〜」が開催されました。働き方改革が施行され、大企業が副業を解禁するなど、これまでの「働き方」が大きく変化するこの時代、企業はどう向き合っていくべきか。このイベントでは、本質的な働き方の変化を進める企業の担当者が登壇し、取り組みや事例をもとに様々なディスカッションが行われました。この記事では、マイクロソフトの澤円氏による基調講演「本当の働き方改革に必要な考え方」の内容をお届けします。我々はデータを信じる生き物に変化をしたーー。そう語る澤氏は、すべての企業はテクノロジーカンパニーにならなければいけないと語ります。

澤氏がひも解く、本当の働き方改革に必要な考え方

澤円氏:みなさんこんにちは。日本マイクロソフト澤でございます。50分ほどお時間をいただきまして、「働き方改革」をテーマにお話をしようと思うんですけれども、「本当の『働き方改革』に必要な考え方」。やはり考え方をアップデートしていかないと、なかなか改革が進まないんじゃないかなということでお話をしようと思っております。

最初にちゃんと言っておかないといけないんですけど、なにしろこの風貌なので、これサラリーマンですからね。しょっちゅうミュージシャンと間違われたり、美容師と間違われたりするんですけど。あとはプロサッカー選手にも間違われることもありますね。

もう27年もちゃんとサラリーマン人生を送っておりまして、マイクロソフトに入ってから22年になっております。なので、ちゃんと社畜をやっているんですね。そして、マイクロソフトテクノロジーセンターというところのセンター長をやっています。

ここ(の施設)なんですけれども、全世界にたしか56箇所、そして44人のマネージャーでマネジメントしているという状態になっているので、ちょっとそれを覚えておいてください。全世界にそれだけの数のテクノロジーセンターがあって、そして40数人のマネージャーでマネジメントしていて、日本では僕がそれを見ているという状態になります。これはあとで働き方改革を進めていく上での1つのキーワードになりますので、ちょっと覚えておいてください。

もう1つ、サイバークライムセンターの日本サテライトというのをやっています。サイバー犯罪に関する情報をわかりやすく伝えて、いわゆるサイバー犯罪のプロという側面もあります。ただ、サイバー犯罪のプロというと、(犯罪を)やるほうだと思っちゃう人がいるんですけど、違いますね。守るほうですからね。

だいたいそうやって人は判断するんですけど、ハッキングするほうじゃなくて、ハッカーの流儀や考え方をみなさんにお伝えする。ですので、今回もちょっとセキュリティという観点もフレーバーとして入れながらお話をしようと思っております。

マイクロソフトで働く傍ら、副業で経営している会社も法人化

そして、データセンターツアーのツアーガイドをやっています。これはなにかというと、ツアーガイドってすごくのんきな響きに聞こえるかもしれないんですが、クラウドの中をごくごく限定されたお客様に紹介するということをやっています。クラウドの中ってなかなか見ないですよね。そこにものすごくセキュリティレベルの高いツアーを企画しまして、ごく限定されたお客様を連れていくということをやったりします。

これはすべてマネジメントしているのは本社。アメリカのレドモンドにある本社のほうからある意味ガイドラインが出る。そしてそれに従った状態でデリバリーをする。日本法人ですから、それをデリバリーするというのは、デザインは本社のほうでやって、あくまでも1つの営業所的な観点になるんですね。ただ、アプローチというところに関して非常に自由度が付与されている。そういった側面があります。

そして、昨今話題になっていますけれども、僕はいわゆる副業というのもかなりやっていまして。マイクロソフトに勤めながら、来月ようやく法人化するんですけれども、圓窓というところで個人事業主としての活動をしています。

こちらでは、例えばベンチャー企業の顧問や講演をやったり、あるいは大学で教鞭を取ったりしています。そのうちの1つがこちらですね。琉球大学から客員教授の肩書をいただいています。

副業は条件付きでOK

ほかにはベンチャー企業のほうもいくつかやらせてもらっていて、こちらはそれぞれちょっと違う切り口でお手伝いをさせてもらったり、あるいは毎日インターネットラジオで放送を行っていたりしています。

「やっぱりさすがに外資系だから副業は自由なんですね」と言われるんですけど、実はうちの会社、副業はNGなんですね。基本NG、条件付きOKということになっています。

条件付きOKというのは、例えば「公序良俗に反しない」、これは当たり前ですね。あるいは「利益相反にならない」、これも当たり前。プラス、例えば深夜コンビニバイトや道路工事になると身体がおかしくなってしまいますので、そういったものはやめてくださいと。

ですので、会社の仕事以外の時間で空いているところでできる、いわゆる知的労働みたいなものに関しては、会社のリソースを使わなければOKというルールになっているんですね。そのルールの範疇において、僕はいろんなことをやらせてもらっています。

現代日本人が1日で触れる情報量=平安時代の一生分

こういったものを前提にしながらお話をしていくわけなんですけれども、このあとはみなさんにいくつか小ネタをご提供します。ここの中にいる人たちには共有されますので、この部屋にいない人たちに向かって、ちょっとニヤッとしながらドヤ顔で「知ってる、これ?」と飲みの席なんかで使えるようなネタを紹介をしていきます。ちゃんと頭に入れて、あらかじめ練習してから言ってくださいね。噛むとかっこ悪いですからね。

『New York Times』の1週間分のデータ量。新聞1週間分ってこんなもんです。大した量じゃないんです。ここの中のテキストのデータ、あるいは画像のデータ、そういったものを全部データとして扱った場合、そのデータ量と“あるもの”が一緒なんですね。

これなにかというと、18世紀の人たちが一生のうちに出会う情報量と同じです。18世紀の人って、一生かかっても新聞1週間分ぐらいの情報しか触れないんですよね。

あるいは、現代の日本人が1日に触れる情報量は何と一緒かというと、これはグッとさかのぼって平安時代の日本人が一生で触れる情報量になります。けっこう少なめですよね。ちなみにこれ、江戸時代になると1年分になるんです。ちょっとおもしろいですよね。

じゃあ歳とともに人間は賢くなるのかというと、実は脳の細胞って20万年前から変わっていないそうです。これは科学者の人に教えてもらったので、おそらく間違いないと思うんですけれども。ですので、あんまり賢くなっているわけではないんですね。生物学的に言うと、能力が進歩しているわけではない。でも、“あるもの”がみなさんの手に入ったことによって情報量が増えています。

移動手段の高速化により、情報量が加速度的に増加

これが高速な移動手段ですね。速く遠くへ行くことができるようになりました。そうすることによって触れられる情報量が圧倒的に増えたわけですよね。ですから、さっきのランサーズの秋好(陽介)社長の話にもありましたけれども、車が出てきたことによって、情報量が相当数増えているはずなんですね。遠くまで行けるようになりました。

でも、考えてみてください。平安時代と江戸時代で一生分と1年ってずいぶん違いますよね。両方とも速く移動できるのって馬なんですよ。馬の最高時速が上がったとはちょっと思えないですよね。ですので、ちょっとここは不思議なんですね。何かが足されているんです。

平安時代と江戸時代ではあるものに差があります。それはなにかというと、これなんですね。地図のある・なしです。

江戸時代になると地図がある程度整備されますね。だから参勤交代ができるわけです。「この道を通ったらあそこに行ける。そして、あの人に会える」というのがわかるので、安心して旅に出られるわけです。「この道を行ったらどこに行くんだろうね?」という状態だと、行ったり来たりできないわけですよね。でも、地図があるから行ったり来たりできる。

そして地図があり、どこに誰が住んでいるという情報が得られることによって、情報交換ができるようになったんです。交換することによって、倍々ゲームで情報がどんどん増えていくようになりました。

そして、もちろんその情報をやりとりするための文字だったり、メディアだったりが発達した。文字が読み書きできないと情報交換はなかなかできないですから、学力レベルは確かに上がっていることになります。

データと通信、この組み合わせによって、当たり前ですけどデータが増えるわけですから、最終的には情報量が増えていくことになります。

世界中に存在する全データの9割が、直近2年で生まれている

では、この情報量を少し考えていきたいと思いますけれども、資料を立ち上げるので、ちょっとお待ちくださいね。

今回はそのデータがけっこうキーワードになってくるわけなんですけれども、そこらへんをもう少し詳しくお話ししていきます。

(スライドを指して)これもぜひ覚えていただきたい数字なんですけど、90パーセントという数字です。この90パーセントという数字は、世界に存在する全データのうち、直近2年で生まれたデータの割合なんですね。

昔の壁画や石板も全部データとしてとらえた場合に、直近2年で90パーセントのデータが生まれているんです。ということは、一昨年のデータは我々からすると10パーセントのほうに含まれちゃっているんですね。それぐらい急激にデータは増えています。

さらにそれは、ビジネスのあり方も変えています。93パーセントという数字があります。これは、オンライン上に存在するマネーの割合です。つまり、コンピュータで触れられるところにあるお金が、(お金の流通量の)なんと93パーセントを占めているんですね。みなさんのポケットの財布に入っている現金は、7パーセントしかないということなんです。

ちなみにここには仮想通貨は入っていないんですね。仮想通貨が入ってくると、これはさらに増えてきますね。ですので、僕みたいなサイバークライムセンターのセンター長なんていう商売が成り立つんですよ。93パーセントもコンピュータで触れるところにお金があるなら、そりゃそっちを狙いますよね。

銀行強盗なんて効率が悪すぎちゃって割に合わないんですよ。だってオンライン上にあるんだから最高ですよね。コンピュータでお金を盗れるんですよ。在宅ワークですよ。在宅で銀行強盗ができる時代です。

(会場笑)

だいたい働き方改革は悪いことをする連中から始めますからね。この話だけでも半日ぐらいできるんですけど、それはとりあえず置いておいてですね。

コンビニのペイメントの約7割がオンライン決済

さぁ、そのオンラインでお金が使えるようになってきたとなると、ビジネスモデルが変わります。

これは中国のコンビニエンスストアにおけるペイメントの割合なんです。見てください。67パーセントがAlipay・WeChat Payです。

「最近、地方でタクシー乗ったよ」って方はどれぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

あんまりいらっしゃらない。ありがとうございます。その中でAlipay・WeChatを使えるタクシーに乗った人、いますかね?

(会場挙手)

ちょっとだけいますね。ありがとうございます。ここ1ヶ月半ぐらいで島根や福岡、沖縄など6都市に行ったんですけど、Alipay・WeChatが使えるタクシーがすごく増えているんですね。でも、Alipay・WeChatって日本人は使えないんですよ。これは中国に銀行口座を持っていないと使えないですから。なのに使えちゃうんですよ。

ちなみに日本のペイメントで使えたのは、(6都市中)PayPayが半分ぐらいだったかな。あとはほとんど使えなかったですね。

あとはUnionPay・銀聯カードですね。これで9割。キャッシュレスがここまで進んでいるんですね。

なので、こんなことが起きるんですね。中国なんかだと屋台でQRコード決済ですよ。いいことづくめですよ。だって現金を持たないわけですから襲われる心配がないんですよ。結婚式に行くと、ご祝儀もQRコードでピッ。お葬式に行ったらお香典もピッ。

なぜか? これも安全という意味でいうとすごくメリットがあるわけですね。結婚式のときにお祝儀の見張り番をやったことをある方、どのぐらいいらっしゃいます? 受付をやったことがある方ですね。

(会場挙手)

あっ、いる! 今日は多いな。ありがとうございます。このまま持っていったら贅沢なものが食えるという誘惑に駆られたり……いいですよ。手を挙げなくて。あ、挙げた。いや、正直でいいですね(笑)。

ぶっちゃけ、その誘惑に駆られるというのもあるんですけど、それ以上にやっぱり怖いですよね。結婚式場には絶対にお金があるわけですから、それを狙ってくる連中っているわけですよ。お祝儀泥棒というのが。なので、(その場にお金が)なきゃいいわけです。なければ安全なんですよ。そういうことなんですね。

「モノ=データ」の時代に

さらにもう少しビジネスのあり方のお話をしていきましょう。みなさん、オンラインショップやECサイトで買い物をしたことはありますよね。ですけど、買い物なんてしていないんですよ。「買い物した気になっているだけ」です。みなさんが買っているのはコンテンツなんですね。それを買っているだけです。

例えばここにはワインを出しています。ワインがあって、「先週飲んだワイン、銘柄は何だったっけ?」(と思ったら)、まず銘柄で検索をかけますね。そのあとで「一番安い店はどこだ?」と絞り込みますね。そして「明日届く店はどこだ?」と絞り込みますね。最終的に候補が挙がってきます。「よし、じゃあここにしよう。ポチッとな」とやります。カードの決済が終了します。お金が支払われます。

だけど、ものはどこにもないんですよね。みなさんにはコンテンツが来ただけです。例えば確認のメールぐらいは来るでしょう。だけど、モノはどこにもないんですね。でも、買ったつもりになっている。翌日とか2日後にものが届く。ものによっては1週間後に届くかもしれない。

つまりどういうことかというと、みなさんはデータを信じているんですね。このデータがモノだと。データ=モノになっているんです。

「我々はデータを信じる生き物になっている」

例えばレストラン。いつも通っている道のはずなのに、「おっ、こんなところにレストランが!」と気づくわけですね。ちょっと中を覗きます。「こんなところできたんだ。ふーん。なんか席の雰囲気はいいな。ライティングいいな。あれマスターかな。ちょっと人相が悪いけど、あの人大丈夫なのかな?」という感じで外から少し様子を見ます。

何割かの人は「よし、入ってみよう」「こんにちは!」と入るんですね。ですけど、ほとんどまではいかないかもしれないけど、若い世代はほとんどいきなり入らないんですよ。お店の前でスマートフォンを出して「食べログ」を見るんですよ。

「どれどれ?」と、口コミを見るんですね。「おっ、評判いいじゃん。おいしいんだ。けっこうコスパがいいな。あのマスター、人相は悪いけどやさしいんだ」というのを知るわけです。そして、「これだったらいいな」と言って何割かの人は入ります。

何割かの人はそれでもまだ入らないんですね。その状態でいきなり電話をかけるんですよ。「もしもし?」と。「席は空いてるけど、もしかしたら予約が入っているかもしれないからな」ということで、Webフォームで申し込んだりする人もいるかもしれないですね。

目の前に店があるのにデータを見てるわけですね。つまり、我々はデータを信じる生き物になっているんです。これは動かぬ証拠ですよね。みなさんはデータを信じる生き物なんです。もうすでにそういう変化を遂げています。

そして、「データになっていなければ、この世には存在しない」という状態になっているんです。そういった世の中になっているんです。これを前提にビジネスは考えなければなりません。

すべての企業はこれをベースに考えていって、すべての企業はテクノロジーカンパニーにならなきゃいけないということなんです。これは1次産業から4次産業まで全部含めてです。ありとあらゆる産業がすべてテクノロジーカンパニーになるんです。

これは別に、ソフトウェアを作って売ることを商売にするという意味ではありません。ただ、「テクノロジーを使いこなせなければ、すべての産業は衰退する・そして敗北をする」ということは間違いないんです。そのデータを信用できないと、残念ながらビジネスは成立しないということになるわけですよね。

シリコンバレーとは、場所ではなく“マインドセット”

ではちょっとまた(スライドを)切り替えましょう。そういったことを前提にしまして、お話をしていくと……(プロジェクターの調子が悪く)だいたいITというのは本番のときにあんまりちゃんと動かなくなるようにできているんですね。Power Pointって、これはどこのメーカーだよ。

(会場笑)

うち(マイクロソフト)ですね。すみません。こういうものにも慣れちゃいますよね。はい、いきましょう。

シリコンバレーに行ったことがある方、どのぐらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

行ったことがある方はおわかりだと思うんですけれども、シリコンバレーは場所の名前じゃないんですよね。行っても、シリコンバレー大通りとかシリコンバレー1丁目とかシリコンバレー第3中学校とか、そういったものはないんですね。シリコンバレーというのはスタンフォードを中心としたあのエリアの名前(を呼んでいる)。俗称になります。

でも、そこでビジネスをやっている連中に話を聞くと、「場所という認識はあんまりないんだよね」と言うんですね。シリコンバレーは、どっちかというとマインドセットと考えています。「考え方」「気の持ちよう」がシリコンバレー。

そのマインドセットがあるからこそ、「先進的であること」がもてはやされる、と言うと軽く聞こえるかもしれないんですけれども、それがもはや当たり前になって空気のように流れている。これがシリコンバレーなんですよね。我々はマインドセットをアップデートしていかなきゃいけないんです。

これがまず大前提です。今のところは前提の話をしています。ここから本題にシフトしていくんですけれども、その前にちょっと痛いところを見ておかなきゃいけません。

成熟産業領域では無類の強さを誇った日本

これは散々出ているチャートなのでご存知の方も多いと思います。平成元年の株式の世界時価総額ランキングトップ10と、平成30年、去年のランキングを比べたものです。見てみましょう。

バブルの時代は、なんだか日本がすっごく強かったんですね。NTTがトップです。それからズラッと銀行が並んでいて、そして東京電力も入ってくる。

見ていただきたいのが、「日本企業はすごいですね」「この会社すごいですね」という話じゃなくて、産業を見てほしいんですよ。

NTTさん、通信事業者ですね。通信事業はいつぐらいからできたか? これは僕が調べた資料ですと、1870年ぐらいにはできていたそうです。つまり、この時点でもう100年以上の歴史がある産業なんですよ。

そして銀行。金融業です。金融業は紀元前からあるジャンルですよね。そして、ずっと下がっていってエネルギー。これは産業革命以降はビジネスとして成り立っています。

何が言いたいか? これは全部成熟産業です。この時点で成熟している産業領域は、日本がすっごく強かったんですよ。だから改善に関しては、ものすごい真価を発揮する。たぶんこれは今でも変わりません。

日本企業がGAFAに割って入るには、マインドセットを変えるべき

ただ、「今この瞬間、世界ですごい力を持っているのは何?」というと、ハイテクばっかりなんですよね。これは今年になってまたアップデートがあって、1位から5位まではしょっちゅう入れ替わっています。トップ企業がとくに入れ替わっていて、よく言われる「GAFA」がここに入っているんですね。

GAFAって、いつもマイクロソフトはのけ者なんですね。Mが入ってないんですね。ですけど、最近新聞で「GAFAに米国の当局が圧力を強める」「欧州当局が監視の目を強める」というのを目にすると、「おお、セーフ……」とか思うんですよね。そういうところはちょっと放っておいてほしいなと思うんですけど。まぁ、どうでもいいです。

パーっと見ると、とにかくハイテク企業が圧倒的に多い。バークシャー・ハサウェイさんは投資会社なんですけれども、こちらのほうはハイテク株にむちゃくちゃ強いんですよね。とにかく0を1にするイノベーティブな会社が、今はもてはやされている。

じゃあ日本はダメなのか? そういうわけじゃないんですよ。ただし、やっぱりマインドセットを変えていかないと、世界が変わっているのを受け入れざるを得ないですからね。ですので、いかにして考えながら変えていくかというところなんですけど、現状はあんまりよろしくないですね。

労働生産性の低さを読み解くひとつのヒント

これは労働生産性。残念ながらずっとビリです。これまたデータアップデートするのを忘れちゃった。46年連続最下位と書いてあったんですけれど、この間新しいデータが出てきて、52年連続最下位でした。ずーっとビリです。

なんでこんなに労働生産性が低いのかを考えたんですけれども、ヒントがありました。僕のところにビジネスインターンが来ていたんですね。バリバリのドメスティックな会社からインターンに来ている人がいました。その人からお話を聞いたら、いろいろとカルチャーが違う。

そもそもこんな長髪の役員はいないと。まぁ、そりゃそうだと思ったんですけど。まず会議です。「みんなしゃべるんですね」と(言われた)。「そこで驚くんだ? そうだよ、会議だからね」。「すごいスピードでやりますね」「うち30分で会議が終わったりするので」「そういう会議はなかなか出たことないですね」。そして僕が一番びっくりしたのが、「会議で何かが決まるのを初めて見ました」と言ったんですよ。

これにはショックを受けましたね。「うわ、そうなの? 何してるの?」(と聞いてみると)「いや、その会議の一番偉い人がしゃべり終わるのを待っているんです」と言った。「それ会議じゃなくて授業じゃねえか」と思うんですけど、ひたすらメモっているんです。もう「先生の話は黙って聞きましょう」が完全に染みついているんですね。

これは悪いことではないんですよ。人の話を聞くのは悪いことではないんですけれども、それが会議となると問題なわけですよ。せっかく集まっているんだから、それぞれ意見を出し合って、何か結論に至るというのが必要なんじゃないかと思うんですけれども、残念ながらそうはなっていない。

紙に縛られることで、時間も縛られてしまう

あるいは別の人は、「マイクロソフトって、19時以降会議しないんですね」と言うんですね。ビジネスインターンですから、マイクロソフトに完全に入って我々と一緒に行動している状態なので、そういったことを言うわけなんですけれども。

(ビジネスインターンが働いている)会社は紙でミーティングをしますので、紙の準備のために、夕方以降に営業マンが帰ってきて、銀行を経営していますから、店舗が閉まってから紙を用意して会議、ということなる。そうなると、19時以降の会議がやたら多かったんですね。

我々の場合には、そういう時間に会議をすることはなくはないんですけれども、少なくとも社内に関しては昼間にやります。外出しているんだったら、オンラインで入ります。夜も時々あります。なぜかというと、時差があるから。さっき言ったように全世界に散らばっている状態のグループになりますので、どうしても夜か早朝に寄ることはあります。そのときにはぶっちゃけ家から入ります。オンラインで会議します。

ですので、紙に縛られると、結局のところ時間も引っ張られるということなんです。

「ほう・れん・そう」を時間軸で捉えよう

さて、サラリーマンといえば、これです。みなさんもたぶん、一番最初の新入社員研修で習ったんじゃないかなと思うんですよね。

これは間違いないですね。ほうれん草。間違えてこの間、小松菜の写真を使っちゃったら話がややこしいことになっちゃったんですけど、この写真は大丈夫ですよね。ほうれん草ですよね。

(会場笑)

「ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)」。これはもちろん全部大事なんです。どれが大事か、どれがいらないとかいう話をするつもりはありません。全部大事です。ただし、ここにはあるパラメータを加えないといけないです。

まず「報告」。これは過去の話がメインになりますよね。「先月までの売上はいくらか」「今日の入場者数は何人か」とすでに起きた事実です。それが「報告」というかたちで目の前に現れているというのが考え方です。

そして、「連絡」は現在です。今この瞬間。「これからお客さん先に行きます」「もうじき到着します」、あるいは「今日は風邪なので休みます」。こんなことが現在ですね。

そして「相談」は未来の話になります。「これからどうしましょうか」「来月どうしましょうか」「来年以降のプランを立てましょうか」。

ですので、ここ(相談)に時間を使いんたいんです。「『報告』『連絡』に時間を使いすぎていませんか?」というのが、働き方改革の中でフィルタリングするための1つのキーワードになります。

みなさんも会社に帰ったら、あるいはお客さんと話をしているときに、報告・連絡の要素がどれだけあるかを徹底的に見てみてください。めちゃくちゃ多いはずです。めちゃくちゃ多いんです。なぜかというと、報告は重要だって叩き込まれちゃっているからです。数字は正確に。大いにけっこうです。だけど、時間を圧縮できるはずなんです。

「不変性」「即時性」「人間性」というパラメータ

そして、報告・連絡・相談はもう1つパラメータが必要です。それはなにかというと、報告は不変性が大事です。変わっちゃいけないんです。「先月までの売上をこのまま出したら、絶対に営業部長は怒るな。どうしようかな。よし、ゼロ1個足しちゃえ」とやっちゃうわけですね。売上10倍ですよ。営業部長も大喜びですよ。

でも、決算のときはどうなりますかね。「あれ?」となる。「数字が合わねえぞ。なんでだ」「あっ、すみません、ちょっと盛っちゃったんです……」「どのぐらい?」「ここにゼロ1個」。いきなり決算が90パーセントオフですよ。会社が潰れますよね。

これが粉飾決算とかの不正会計のからくりなんですよ。本来は絶対に変わっちゃいけないデータを変えたり隠したりできる仕組みになっているから問題なんです。

そして連絡に関して言うと、即時性です。すぐに連絡が取れること。あとで電話というのがキーワードで出てくるかもしれないですけど、電話はダメです。電話は相手の指と口を奪ってしまいますし、相手の集中力を途切れさせてしまいます。

そして「相談」。これだけは人間性なんですね。当たり前ですよね。なにか相談するときに、見ず知らずの人にいきなり声かけて「すみません。相談に乗ってください」とは言わないですよね。人間関係を構築されていて初めて、相談が成り立つんですよ。

「じゃあやっぱり飲み会か?」となるかもしれないですけれども、否定しません。飲み会は大いにけっこうです。どんどん飲みに行ってください。ただし、全員行けるわけでもないし、全員行きたいわけでもないんです。ましてや仕事が終わったあとの時間を奪って、そこに時間を投資させるのは、はっきり言って時間のカツアゲです。

ですので、これを強要するのは問題ですね。もちろん好きだったらいいんですよ。ただし、「人間関係の構築には絶対不可欠だ」と強制するのは、まったく話が違います。

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