2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:freee株式会社
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鷲見大地氏(以下、鷲見):では後半の部分にいきまして、ICTコンサルの取り組みをして、銀行様とお客様にどういうメリットがあったのか。ここはまず、長年取り組まれてきている北國銀行の多田様からお聞きできたらと思います。
多田隆保氏(以下、多田):まずお客様のメリットという点では、もともとの導入には作業をシステム化して生産性を上げるという目的があるので、freeeを導入することによってバックヤードの効率化を図り、その人材をほかに回せると、そういう面での効果は明らかに出ております。
あとこれは銀行側のメリットにもなるんですけれども、お互いリアルタイムで今の状況が把握できる。とくに与信先においては、与信管理は非常に大きな問題だと思っていまして。たぶんみなさま方のお取引先もそうでしょうけれども、しっかりと試算表が出されてくるところもあれば、なかなか出てこないところも(あります)。
実は、業況変化が途中で起こっているシグナルを早くキャッチできなかったがために思わぬ自体を招くことは、銀行業をやっていると珍しくない話で。やっぱりそれをいかに早くキャッチするかという意味においては、freeeを導入することによって、我々も財務データを見に行くことができる。それで、そういうシグナルを早くキャッチできる。
企業側からすると、対銀行に対する信頼……たぶんみなさま方も企業格付けをやられていると思うんですけれども。定量部分の格付けと定性部分の格付けにおいて、定量部分は財務データで出るんですけれども、定性部分の見方はたぶん金融機関によって違う部分はあるかと思います。定量部分で言えば、やはり大切なのは会社の透明性が非常に高いことであると思うんですね。
そういう面において、freeeを導入していただいた企業様においては、その透明性の高さという部分で、銀行との信頼関係は非常に強くなると思っております。お答えになっていますか?
鷲見:はい、ありがとうございます。freeeの導入のところをかなりフォーカスしていただいたんですけど。北國銀行さんだと、例えばホームページではサイボウズさんのkintoneについても掲載されたり、いろいろなITツールも使われているので。かなり幅広いコンサルティングでお客様に価値提供をされているのかなと思っています。
鷲見:では、ここから取り組むというところで、将来的にどういうメリットが予想されるかという話になると思うんですけれども。豊田さん、このあたりのご意見をいただいてもよろしいですか。
豊田則義氏(以下、豊田):はい。「北國銀行さんと同じ」というひと言で終わってしまうかもしれませんけれども。やはり実際にお客様の労働生産性を上げていくことは、非常にメリットがある話だと思います。我々もfreeeさんの会計にとどまらず、今いろいろなところの展開を視野に入れて動こうとしています。
CRMですとか在庫の管理ですとか、人事系のものですとか。各お客様に合ったものをご提案していこうと思っています。やはりなかなか中小企業の方たち……先ほど事例としては「タクシーの席の後ろに出てる画面、これ何?」というような話もしましたけれども、まだまだ認知されてない部分がありますし。ベンチャーというか、企業様からするとSaaSビジネスというかたちになるのかもしれませんけれども。
そういうものを認知していただいて取り組んでいただくことで、よりお客様に喜んでいただくというか、より成長に向かっての装備を備えていっていただくと。こういうことが我々としての期待でございます。
また一方で我々のほうも、具体例で言いますと、会計の試算表は3ヶ月ごとにいっぺんといったお客様はまだまだいらっしゃいます。そういう方たちの透明性というか、リアルタイムで把握できるようなこと。
きらぼしとしては、ABL(注:Asset Based Lending=資産担保融資)という手法の融資に取り組んでいる部分がございまして。このモニタリングにも役に立つのではないかなと捉えています。会計、イコール在庫とか売掛の自動入金。そういうところの中で、ABLのモニタリングもそこでやれるんじゃないのかな。そんな期待を持っているところでございます。
鷲見:ありがとうございます。まさに我々もITから入って、そのあと金融機関さんの本業にどうつなげるかというところを作っていく過渡期かなと感じていますので。そのあたりをみなさまとご一緒したいなと思っています。
鷲見:このあたりのメリットのところは、小村には少し質問とかをお願いできれば……。
小村充広氏(以下、小村):具体的なお話を一つしますと、前職のときに実はfreeeの会計ソフトとお客様と銀行をつないでデータを共有して、実は「ビジネスローン」というローンをやったんですね。まったく紙は使いません、freeeの会計データを使います。もちろん決算書はいりません。それで、無対面でやります。もちろんいろいろな手段で、電話であったりGoogleマップで所在確認というものはしたんですけれども。
やったんですけど、正直言ってあんまりうまくいかなかったです。やっぱり今のところ、法人向けのローンは、ネットバンクもいっぱいありますけど、ほぼどこもまだ成功していません。どこか背中を押す部分が(ないと)、やっぱり今のところネットバンクではちょっと無理かな、と思っています。
ただデータを連携して、もう翌日には審査していましたしね。審査結果が出てましたし。そういうことは可能でした。だから、地域金融機関さんなどはうまくそのへんを利用されて、しかも背中を押すところまでできると、けっこう効率的でかつ確実に、お客様にもスピーディに選ばれる融資もできるんじゃないかと思います。
来ていただいてるみなさんも、たぶんちょっとお聞きしたいんじゃないかと思いますので。またちょっと不躾ですけど(笑)、僕が代弁してお聞きします。ICTコンサルをやって、収益的にはいかがですか?
豊田:収益的には大きく期待しておりますが、まだこれからというところでございますので(笑)。ただ、やはりシミュレーションをしていく中では、まぁ銀行全体の収益から比べれば、そんなにすごいものにはなりませんけれども。当社というか、きらぼしコンサルティングとしては十分な収益を上げられると。
小村:あっ、そうですか。
豊田:そういうことでの試算はしております。
小村:素晴らしいですね。多田さんのほうはそのへんはいかがでしょうか。
多田:コンサルティング業務が柱になっていくようにがんばっていますが、銀行という枠組みの中で言うと、圧倒的収益は貸出金利息というか、有価証券も含めた資金利益ですよね。それ以上の収益が上がるかというと、それは現状ではなかなか難しい話で。
ただ、ICTコンサルを含めたコンサルティングフィーを得ることももちろん大事なんですけれども、それに不随したお取引額を拡充していくところが、私は目に見えない収益だと思っていまして。それがひいてはファイナンスにつながっていくので。これは私見ですけれども、あまりフィーばかりにフォーカスをしすぎると、ちょっと違った方向に行っちゃうのかなと。
我々はあくまで、お客様の総合取引という中で、それをどうやって銀行は広げて、全体の収益を上げるかということなので。ICTを含めたコンサルだけの収益は、もちろんそれも年々着実に上がっております。相談件数も毎月かなりの件数をいただいておりまして。コンサルティング部の人員も、人事異動のたびにどんどん増えていってですね。この先どこまで増えるのかな、管理しきれるかな、というところまでいっていますけれども(笑)。
ただ、繰り返しになりますけれども、部の行員にはフィーを稼ぐのももちろん大事ですけれども。やっぱりその先に見える企業の成長とともに、地域をどのように発展させるかというところに、もっともっとフォーカスしていきたいなと思っています。
小村:どうもありがとうございました。お答えしにくいところをお聞きしまして、申し訳ないです(笑)。
鷲見:では最後のご質問にまいりたいと思います。これからのコンサルティングを踏まえた展望をお聞きできたらなと思います。ここは豊田さんからまずお願いしてもよろしいですか。
豊田:ありがとうございます。ちょっと振り返りますと、悲しいかな、我々銀行員は実は、非常にITリテラシーが低いのかなと思っておりまして。世の中では、いわゆるベンチャーと言われている企業の方たちがどんどん社会課題を解決するということで立ち上げて、いろいろなITを駆使して進んでいっていらっしゃる。テックもそうです。
それに対して、我々銀行員や現場の営業マンは、実は「エクセル・パワーポイントをどこまで使えるんですか?」というところもあったりして。そういうなかで、今回の提携をきっかけにして、やはりお客様にご提案するためには自分もわからなくてはいけないし、自分が理解することでまた次のステージに進むことになっていくと思います。そんなことも大きく期待しております。
また、こういう提携というか、freeeさんと組みましてクラウドというところでのデータ連携が進んでいく中で、実はきらぼしの中では従前から知的資産経営支援というものをやっておりまして。
これは普通、銀行でいうと「定性」という言い方で一括りにしてしまうんですけれども。もっと深くというか、「社長、なんでこの事業をここでやったんですか?」というところまで深く聞き込んでいく。単に定性ということで「どうですか」「Yes・No」というアンケートではなくて、お客様をよく知ろうということで深くつっこんでいます。
どうしてもデータというところでは今は文章になっていますけれども、いずれそういった文章の蓄積が、テキストデータといろいろな数字のデータが結びつけられるんじゃないのかなと実は期待しておりまして。
先ほど小村さんから、なかなか法人の融資が難しいというお話がありました。確かに今はそうですけれども、そういうところに活かせるのではないかと期待もしておりまして。これは当行だけでできるものではないと思いますけれども、実はそんな期待もしているところでございます。
鷲見:どうもありがとうございます。では多田様、今後のご展望、ICTコンサルのその次について少しお聞きできたらと思います。
多田:私も偉そうにここにおりますけど、恥ずかしながら、ICTリテラシーが非常に低い部長と言われておりまして。銀行員は意外とそういう分野は明るくなくて、やはり弊行でも今はいろいろな課題を与えながらICTに強い人材の育成を行っております。
今後のコンサル業務の展望というなかにおいて、おそらくどこの銀行さんも大なり小なりコンサル業務にいろいろ取り組んでいらっしゃるなかで、ほぼほぼ一つひとつが単発のコンサルで終わっていらっしゃるんじゃないかなと思っていまして。
よく「大手コンサルタント会社と銀行のコンサルって何が違うの?」とお客様から質問されるケースがあって。答えはいくつかあると思うんです。「長いおつきあいで一番よくお客様のことをわかっています」というところも1つの売りだと思うんですけれども、本来はそのお客様の課題は1つではなくて、いくつか課題があって。
ただ、大手のコンサルタント会社の方はおそらく請け負った課題をやって終わりというのがほとんどだと思うんですね。それが成果物として現れれば、それで役目を終えるわけなので。ただ、銀行のコンサルはそうではなくて、お取引先がどう成長するかを一緒に考えるので、課題が1つではない。
多田:その中で、いろいろな課題が見えるなかの中心にあるのがICTなんじゃないかなと私は思っています。例えば今のコンサル事例でいうと、先ほど小村さんがおっしゃいましたけれども、弊行でも今ご相談のほぼ半分ぐらいはICTと人事なんですけれども、先行して人事制度の構築・再構築、それから人材育成のご支援をしていて、これがもう数年前から先行して非常に件数が多かったりする。
ただ、考えてみれば箱を作るってそんな難しい話ではないんですね。自分のところでもやっていますので。ただ、難しいのは作った箱をどう運用するかというところで、実は運用と管理が非常に難しくて。どうするのかと言ったら、そこはけっこう人海戦術なんですね。どの企業さんもいかに生産性を上げるかというところには、やはりICTの導入って必要不可欠なんですね。
もう1つ事例を言うと、例えばみなさんM&Aをやられていると思うんですけれども、M&Aで企業さんを買いましたと。たぶん意外とそれを仲介して終わっていると思うんです。でも、本当はそれってスタートラインですね。買った効果を最大限に出すためにどうしたらいいのかというと、そこには人事戦略とICT戦略というものが絶対あって。俗に言うPMI(Post Merger Integration:M&A成立後の統合プロセス)なんですけれども、そこをどうやっていくかは課題として持っています。
そう思ってみると、やはりいろいろな課題の中心にあるのはICTなんだなと思っていまして。我々銀行全体として、これをもう少し行員全体にICTリテラシーをもっと広げて、スペシャリストはそんなにたくさんすぐには養成できませんけれども、意識の改革はやりよう次第だと思っています。
冒頭にも申しましたけれども、やはり地方は個々の企業様だけではなかなか産業を活性化するのは難しい。とくに伝統産業は1社1社だと体力的に弱くて、非常に難しい部分があります。でも、それを取りまとめて産業を活性化するためには、やはりICTを使ってその産業自体の構造を変えていかないとたぶん変われないと思っています。
現に弊行でも、ある伝統産業のほうで川上から川下まで、これまで競合していた先が手を組んでICTの導入による活性化に取り組んでいる事例もございます。そういうものを点ではなく、これからもっともっと面で広げていくのが我々の役目ではないかなと思っております。よろしいでしょうか。
鷲見:どうもありがとうございます。まさにお客様の経営改善についてICTから入っていってそこにつなげていくことは、我々も筋がよいと感じている次第です。
鷲見:では、最後に小村に、そのあたりのICT活用の観点をお聞きできたらと思います。
小村:私は、ICTコンサルを1つの契機としてお客様とのパイプをつなげて、最終的にはデジタルでデータをつなぐようなことがたぶん1つの方向として流れなんだろうなと思っていますけれども、その中にステージが4つぐらいあるような気がします。
1つ目は、やはり銀行自体がデジタル化すること。RPAあるいはインターネットバンキングサービス等を含めて、銀行自体がやっぱりデジタル化していないと、なかなかお客様にもデジタル化をお願いできません。豊田さんも多田さんもITリテラシーがなかなかないんだとおっしゃってますけど、それはご謙遜だということを前提にお話をさせていただきたいと思いますけれども。
例えば今のネット専業銀行全体で、ちょっと数字は明確じゃないんですけれども、おそらく口座数で2,000万口座を超えていると思います。それからいわゆる決済ですね。振り込みなどは、決済の多いネット専業銀行ではだいたい年間で2億件ぐらいあります。
それから個人向け無担保ローンは、ネット専業銀行全体でおそらく数千億円。5,000億は超えていると思います。住宅ローンはネット専業銀行、無対面だけでもう数兆円になっています。先ほど申し上げましたように、法人向けのローンは試行錯誤しながら苦しんでいますけど、おそらくなにかまた解が出てくると思います。
つまり申し上げたいのは、従来と言ったら失礼かもしれないですけど、決済とか一部融資とかそういうものにつきましては、もうネットあるいは非対面、デジタルで多くのユーザーがもう満足していただいているということだと思います。ですので、インターネットバンキングサービスですとか、あるいはいろいろなRPAというようなものを含めて、まずは銀行自体がデジタル化して合理化していくと。その余ったリソース、それ以外のリソースをやはりコンサルのほうに使っていくのが第1ステージだろうと思います。
それから第2ステージは、お二方のお話にもありましたけど、ICTコンサルを使って取引先の企業様にも、バックオフィス等の効率化をご提案してほかのコンサルにもつなげていくことで、お取引先様に関してICTコンサルをやりつつ、お取引様にもデジタル化を図ってもらう。お取引先様のいろいろな経営情報あるいは人事情報等々でデジタル化を図ってもらって、お客様もデジタル化とバックオフィスの効率化をやってもらう。これが第2ステージかなと思います。
小村:第3ステージは、デジタル化された銀行とデジタル化されたお取引先を結ぶことだと思います。お互いをデータで結んでニーズを見ていくと。うちも一部やっておりますけれども、いまやもういろいろなFinTechの会社などで、例えば資金ニーズを捉えるソフトですとか、あるいは審査をするモデルですとか、AIというものがこれからどんどん出てくると思いますし、銀行は活用すればいいと思います。
でも、データがないとできません。やはり銀行・お客様ともデジタル化しないと、そういう便利なFinTechのツールも使えないし、クラウドも使えなくなってしまいますので。やっぱり第3ステージとしては、お客様と銀行がお互いのデジタルデータをつないで、お互いのニーズを見つけていくことなんだろうなと思います。そういうなかでいろいろな資金ニーズとか、あるいはいろいろなほかの事業承継やM&Aのニーズ、あるいはマッチングですとか、お取引先同士のマッチングというようなことをデジタルの中で図っていくんだろうなと思います。
4つ目のステージとしまして、銀行業界ではよくある言葉ですけど、そういう流れの中のPDCAを回して、日々改善して拡充していくというステージではないかなと思います。そういうことをイメージしながら、ぜひデジタル化(を進めていただく)。
お客様とデジタルで結ぶ。それでいろいろなツールを活用して本業の銀行業ですとか、きらぼしさんのようにグループ会社のいろいろな業務につなげていくと、なにか1つの銀行のやり方が見えてくるような気はしております。
鷲見:まとめをいただきまして、どうもありがとうございました。これにてディスカッションが終わりです。まさにICTを活用して大きく変わろうとしている時代ということで、弊社としてはそこをしっかり支援していきたいと思っております。
では最後に、登壇いただいた豊田様と多田様、小村に拍手をいただければと思います。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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