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GAFA戦記(全2記事)

2019.09.04

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ゲーム内でゲームの広告が表示されるのはアリなのか? ハイパーカジュアルゲームの知られざる裏側

提供:株式会社テクロス

2019年8月7日、『神姫PROJECT』などソーシャルゲームの企画・開発を手がける株式会社テクロスが主催するイベント「TECH x GAME COLLEGE」が開催されました。第24回となる今回のテーマは「GAFA戦記 」。アメリカAppStoreで1位を獲得したハイパーカジュアルゲーム『Snowball.io』を世に送り出した、芸者東京株式会社、代表取締役CEOの田中泰生氏が、ハイパーカジュアルゲームの潮流と自社の取り組みの軌跡を語ります。後半パートとなる今回は、参加者からの質問に回答しつつ、ハイパーカジュアルゲームの知られざる裏側について明かします。

ゲームの名前は重要か?

田中泰生氏(以下、田中):では、ここからはQ&Aに入らせていただきます。何か質問はありますか?

質問者1:『Snowball.io』の「.io」ってハイパーカジュアルゲーム系によく使うドメインですが、それを使って良かったということはありますか?

田中:名前は関係ありません。僕らは名前はまったく気にしていなくて。例えばTaichiさんという有名な方の「TENKYU」というゲームがあります。「TENKYU」ってたぶん外国人は意味がわからないと思うんですよね。でも、TENKYUでも一番になっているので関係ないのかなと思います。

というのは、名前では入ってこないじゃないですか。だいたい入り口というのは、動画クリエイティブか、人がやっているのを見てとか。社内でも『Snowball.io』なんて名前で僕ら呼ばないので。「なんか、なんやっけ?」みたいな。

(会場笑)

「スノボ……スノーボール?」みたいな。名前はA/Bテストをめちゃくちゃやりまくったら何か結果出るかもしれませんが、僕らは名前にはあまり重きを置いていません。アイコンにはめっちゃ重き置いていますけどね。アイコンは毎日A/Bテストしまくってます。

質問者1:ありがとうございます。

他社のコピーでは成功できない

質問者2:『Snowball.io』が1位取ってすぐ触ったんですよ。良い言葉で言うと「うまいな」というのと、悪い言葉で言うと「狡い(こすい)な」と思うところと。

田中:それはエンタメとしては褒め言葉ですよね。

質問者2:そうそう。それで、触ってみて、ちょっと勘違いさせるというか。例えば、ランキングっぽいけど、実はランキングじゃないみたいな。

田中:ああ、そうですよね。

質問者2:そうそう。例えば国旗を立てて射幸心を煽るじゃないですけど、そういうのって、至近のやつをそうやって見せて、国の対抗に見せるとか。

田中:その2つに関して言うとすごくシンプルで、ioといわれるゲームの文法ですね。文法なので別に僕ら発明したものでもなんでもなくて、あれはioというジャンルにおいてよく使われている文法というだけです。

質問者2:なるほど。それは過去にやられてきた中で見たものを、マネしているところはマネして。

田中:はい、いい部分や参考になる部分はどんどん取り入れていってます。こういうことをいうと、じゃあ、「過去に流行っているゲームをコピーすれば勝てるんだよね」という考え方もあると思います。実際それに近い形でやっているなあという会社さんもあるんですよ。でも、僕ら自身が今までやってきた経験から言うと、単なるコピーでは勝てないビジネスだと感じています。

ゲームってなんでもそうなんですが、例えばおじいちゃんが見たら、乃木坂46にいる子って全部顔が一緒に見えると思うんですよね。でも、実際違うじゃないですか。人気がある子と人気のない子がいるじゃないですか。

例えば『ラブライブ!』でもなんでもいいんですが、美少女キャラがバーっていっぱい出てくるゲームって、うちのお母さんが見たら全部同じ顔に見えると思うんですよね。「みんな萌え系の顔やね」みたいな。でも、実際人気が出る・出ないというのはめちゃくちゃあります。

そういうことって、いわゆるソシャゲのキャラクタービジネスをやっている会社さんは、めちゃくちゃ研究してわかっていると思うんですよね。

それって大きな意味で文法とかコンテクストというものだと思います。そこがわかってなくていきなりわけわからないことをやると、「ぜんぜんわかってないな」みたいになって通りません。

かつ、完全に研究した結果、コンテキストだけの「みんなこれが好きでしょ」とか適当にやってると、人気が出るものは作れないんですよね。この感覚はわかりますか?

質問者2:わかります。

田中:それにすごく近いものがあります。ハイパーカジュアルゲームというジャンルにもやっぱりコンテキストがものすごくあると同時に、コンテキストだけでは勝てなくて、そこにものすごい発明が何個も必要です。そこが僕らが気に入ってるところというか、おもしろいなと思ってやっています。

質問者2:ありがとうございます。今のお話って、スマホの話で言うと、去年のCEDECで岡本吉起さんが話していた、「モンストのパラメータはバズドラの丸パクリだ」と。

田中:岡本さん、その話をよく仰ってますよね。

質問者2:はい。たぶん大事なところは、ゲームのおもしろさの核のところは自分たちで作っているから、そこは絶対に大切にしないといけませんが、どうでもいいところに関しては文法をパクるというのは、ソーシャルでもハイパーカジュアルでも同じことがやられているのかなと感じました。

田中:まあ、パクると言うより文法通りに作ったほうがユーザーが理解しやすいよね、と言うことだと思います。僕も岡本さんとは仲が良いんですが、岡本さんは当たり前にそういうことを理解されていますし、やっぱりよくわかっていますよね。僕がわかってると言い方をすると上からみたいですが、僕は岡本さんをものすごく尊敬しています。

ゲームに限らずヒットメーカーといわれている人って、そこがわかっている方ですよね。乗るべきコンテクストに乗せて、かつ、どこで勝負するか、違いをうまく出すのがいいクリエイターさんだと思います。

質問者2:ありがとうございます。

田中:とんでもないです。

伸びそうなゲームは見分けられるか?

質問者3:今までいっぱい作ってこられて、こういうものだったらスケーラビリティが通りやすいとか、なにか言語化されていることはありますか?

田中:言語化されていることで言うと、実は社内で、ゲームを出すときに、CPI予想をして一番近いやつが500円もらうというゲームをやっていますが、なんか当てるやつはいますね。

質問者3:感覚ですか?

田中:これは感覚値があって、僕もだいぶわかるというか、見た瞬間に「これはないな」とか「これはこれくらい出るな」ということが分かる部分があります。

言語化すると、「いいな。おもしろそう」みたいなことに尽きますが、最近で言うと、アメリカで上のほうにいる『Jelly Shift』とか、見た瞬間にやっぱり「いいよね」とか思ったりしました。

あとはなにかな。例えば最近アメリカで『Idle Human』といういわゆる人体パズルのようなゲームが流行っていますが、あれがうまくいくかどうかは僕はわかりません。僕はけっこうすぐに落ちるんじゃないかと思ってたんですが。あとはいま上のほうにいて違和感があるのはあんまりないですね。

質問者3:ありがとうございます。

ゲームにゲームの広告が出ること

質問者4:ハイパーカジュアルゲームの広告のマネタイズの部分で、大部分がほかのカジュアルゲームに投資してぐるぐる回っていますよね。

田中:回ってますね。

質問者4:そうなると、ビジネスモデルとしてどこからほかの広告主を取ってくるのかが肝になるかと思いますが、コンテンツを作る上でカジュアルゲーム以外の広告主を見つけてくるような戦略ってあったりしますか?

田中:それはいい質問ですね。去年にironSourceのディレクターが「カジュアルゲームの広告の6〜7割はカジュアルゲームだ」みたいなことを書いている記事があって、そのとおりだと思いました。

大きな方向感で言うと、僕はあまり問題だとは思っていません。なんぜかというと、意地悪な人って「カジュアルゲームって、一時期DeNAさんがやっていた、キュレーションビジネスみたいなものでしょ」みたいな、「要は、検索ワードをハックして、ハックしたものに関していっぱいアドセンスや広告で収益をあげてるものでしょ」って言うんですよね。

僕はそれに関しては、自分がやっているからということに関係なく、力強くノーだと言えることがあります。なんかああいう記事って、人間が読んだ場合、往往にしてつまらないじゃないですか。でも、ハイパーカジュアルって、上のほうにあるおもしろそうな人気のゲームだったら、少なくとも僕はおもしろいんですよね。けっこう僕もやるんですよ。僕、ゲーム業界の人間にしては比較的ゲームしないほうだと思うんですけど、そんな僕でもハイパーカジュアルゲームは面白くて、ついつい遊んじゃうんですよね。

結局、僕らがやっているのは本質的にメディアビジネスなので、メディアビジネスってお客さんから取っている時間に比例して収益が上がるのが正しいかたちですよね。

例えばテレビを見ている時間が長ければテレビの地上波のビジネスが成り立つし、地上波の視聴率が落ちていて、Twitterを見たりLINEを見たりSNSを見ている時間が長くなっているので、そのビジネスが伸びています。あるいはYouTubeも、見る人が増えているので伸びています。

メディアって結局はユーザーの接触時間が伸びれば伸びるほど伸びるビジネスです。ハイパーカジュアルゲームの接触時間をデータを見ると、明らかに伸びてるんですよね。だから、その部分でゲームがゲームに入れているのはそのとおりであっても、メディアとしての意味があります。

キュレーションビジネスって機械が読んで検索の上の方に出ればいいみたいな。ユーザビリティ最悪じゃないですか。同じ記事読むのに10回ページめくらなきゃいけなかったり。ハイパーカジュアルゲームはそうではないので、そこに関しては僕はいいメディアなんじゃないかと思っています。

今、ハイパーカジュアルがハイパーカジュアルに広告を打っているのは、おそらく過渡期でまだゲームに効くということはわかっているんだけれど、ブランド広告を見ることはあんまりないと思います。

ですが、僕がさっき言ったことが正しいとすれば、人が遊んでいて広告を見ている時間があるわけだから、本質的にはレクサスのCMが入ってもコカ・コーラが入ってもおかしくないはずです。

でも、今はまだこのビジネスが始まったばかりで、CPIターゲットということで見ているから、CPIターゲットで向いてるのってゲームとかアプリじゃないですか。レクサスはそこでダウンロードできないですし、コカコーラもそこでダウンロードできないじゃないですか。だから、CPIターゲットってなかなかなりにくいので入ってきていませんが、本質的に効くはずだと僕は思っています。

だとすると、この問題はたぶん徐々に解決されていって、「昔はゲームばかりだったけど、ナショナルクライアントと呼ばれる人たちも増えてきてるよね」みたいな。

少なくとも僕がゲームをやってるからというわけではありませんが、YouTube広告よりはユーザビリティがいいと思います。ゲームをやって、ポイントポイントで30秒とか15秒見るほうがまだましなメディアかな。まだましというか、「これは広告メディアとしてありなんじゃないの?」と僕は思っているので、そこはあんまり心配してないですね。

質問者4:ありがとうございます。

2Dや3Dのトレンドについて

質問者5:でも、ハイパーカジュアルの最近の傾向として、2Dだったものをどんどん3D化したゲームがどんどん増えてきているので、今後勝負していく場合は、2Dよりも3Dのほうが完成度が高いと考えていますか?

田中:そんなことはないと思います。なんていうんですかね、たぶんトレンドの揺り戻しがあって、2017年のKetchappのゲームは2Dでシンプルなものが多くて、Voodooも丸とか四角とかが流行っていて。今はわりと3Dで具体的ななものが流行っていますよね。でも、あれで競争していると「なんかうざいよね」「丸でいいよね」という感じで戻る可能性はぜんぜんあります。

その揺り戻しはまさにトレンドで、僕はファッションに近いと思っていて。女の子の眉毛が太くなったり細くなったり、髪の毛も長くなったり短くなったりで、「今は女子の眉毛が太くなってきたので、これからはもっと太くなりますよね」って、ならないじゃないですか。眉、絶対このままじゃないですか。

それはなぜかというと、時間内でおもしろさを伝えないといけないという制約条件の中でゲームを作ると、限界のパターンがあります。その中で違うトレンドをつくらなければ行けないので。

服に近いと思いますよね。服って、別に100年ぐらい同じ服を着ても誰も困らないと思うんですよ。でも、あのユニクロですら毎年柄を変えるじゃないですか。テクノロジードリブンなゲームや映画って、テクノロジーによって解像度が上がっていくのでまだ上げようという動きがありますが、ハイパーカジュアルの箱の中では。あの時間でできることって、ファッションとよく似ていて、技術的なトレンドで変わることはそんなにありません。なので、どちらかというとファッション的です。

具体ブームが成長を見せると、抽象が懐かしくなってくるとか、そういうことが起きるんじゃないかと僕は思っていますが、わからないですね。スーパー具体的なものばかりになる可能性はなくはないと思いますが、そこはトレンドを見ましょう。

質問者5:ありがとうございます。

動画広告は「とにかくたくさん作る」

質問者6:すごくざっくりしたお願いなんですが、スケーラビリティテストを突破するために『Snowball.io』でどういうことをされたのか、お話いただくことは可能ですか?

田中:スケーラビリティテストを突破するためにどういうことをしたかですか?

質問者6:おそらく『Snowball.io』を成功させるまでに、スケーラビリティのモックをたくさん作られたと思うんですが、一つひとつのテストに意味を持たせたとか、どういうことをしたとか。CPIは一気に上がったのか、それとも徐々に上がっていったのかですね。

田中:『Snowball.io』の頃は、正直僕らはクリエイティブをわかっていなくて、ほぼプレイ動画で、本当にシンプルにプレイ動画を作って出していただけでした。

(会場笑)

『Traffic Run!』とかって実は世界的に見ても長持ちしてるんですが、あれはなんでそうなっているかというと、クリエイティブをがんばってるからです。めっちゃ作っていて、よく「Tipsを教えてくれ」と言われるんですけど。

僕らも、いま質問を受けたみたいに、その質問をVoodooにしたことがあります。Voodooが、僕が『Snowball.io』が当たって連絡してきたので「ちなみにどうやってやるの?」と聞いたらなんか「いっぱい作ってる」って。

(会場笑)

めちゃくちゃ作ってると言っていて、ぜんぜん答えになってないなと思ったんですが、今は僕らはおそらく同じことを答えるしかありません。実際やっていることは本当にそうなんですよ。ありとあらゆる考えられることをやっています。

本当にいっぱい出していて、それで何が効いているかはわかりませんが、たまに効くのが出てきます。もちろん1個1個は一生懸命仮説を考えてやるんですよ。「文言を変えたらどうだろう?」とか「色を変えたらどうだろう?」とかやっているんですが、とにかくいっぱい出していっぱいテストするということをひたすら回しています。

これは世界的に見ても、僕らの業界だけではないと思います。いま世界ではインスタが一番広告媒体として伸びているんですが、インスタですごい収益をあげてマーケティングをうまくやっているいろんな会社さんや非ゲームの会社さん、それこそアメリカの会社とかヨーロッパの会社と話すと、やっぱりやってることは一緒です。

ここだけの話ですが、僕らはそれなりにメディアとお付き合いがあるので、ある超大手メディアにワークショプをしてもらったことがあるんですよね。めちゃめちゃ勉強になったんですけど、その時に先生が作ってきてくれた僕らのアドが、テスト結果の数値としてはあんまり良くなかったんですよね。

(会場笑)

僕らはさすがだなと思って見ていたんですが、あんまり良くなくて。だから、それもよくわからないですよね。その会社の一番わかっているであろう人が作ってもいい結果が出るとは限らないので、逆に言うと、本当によくわからないんだなって。

ただ、ひょっとしたら、100個作って残る確率が、普通の人は2個しかないのが、その人が作ると10個ぐらい残るかもしれないというのはありそうだな、と思う良さはありました。そんな世界です。

プロトタイプでの予算について

質問者7:プロトタイプではFacebookでCPIテストするってうかがったんですけど、対象の国はどこですか?

田中:USですね。アメリカが多いですね。

質問者7:1プロトタイプでどのぐらい予算をつけますか?

田中:そこは、ものによるんですけど、5,000〜3万円ぐらい。そんなもんです。

質問者7:どのぐらいのラインで「これはもうやめよう」「いや、それとも改善して、もうちょっとCPI下げられるんじゃない?」という判断をしていますか?

田中:それもよく言っていますが、だいたい50円以下になったらがんばろうと思うし、超えるとやっぱり無理かな。ただ、微妙なゾーンはあって。まあ3桁とかは「もうないな」みたいになりますが、「なんとかなりそうな60円」ってあるんですけど(笑)。

(会場笑)

なんとかなりそうな60円とかは、最近あったんですよ。これはもうルール的にはダメだけど、僕がやりながら「いや、これなんとかなるから」みたいな。そう言ったら案の定なんとかなって、なんか「ほら見てみろ」みたいな。

(会場笑)

でも、逆もあります。なんとかなりそうでダメだったこともあります。なんとなりそうな60円は残しますが、基本は50円ぐらいですかね。

やはり0.5ドルは下回っておかないと、大規模にやると上がるので。当たり前ですが、それを1日5,000円でやったときに50円で取れたからといって、1日500万円使ったら当然跳ね上がるので、それを見越すとやっぱり低ければ低いほどいいですね。

「なんとかなりそうな60円」をどうするか

質問者8:そこのところで、60円でなんとかなるだろうと思った時はクリエイティブ自体を変えるのか、それともゲーム自体の見せ方を変えるのか。例えば『Traffic Run!』だったら、車をバイクに変えるとか人に変えるとか。それはどっちの方向に振って行きますか?

田中:基本的にスケーラビリティテストは動画だけなので、別にゲームの中身は関係ないじゃないですか。

質問者8:ああ、そうなんですか。

田中:関係ないというか、テストの時点ではダウンロードされたらCPIが上がるので。極論を言うと、中国の会社がいま何をしているかというと、ぜんぜん関係ないクリエイティブでぜんぜん関係ないゲームをダウンロードさせるってこともやっているんですよ。それって意外にリテンションレートも良かったりします。極論を言えばそういうやり方もありというか。僕らはやらないですけどね。

でも、理想を言うと、『Snowball.io』はまさにそうだったんですが、どのプレイ動画をどう流してもそれなりにCPIが低い状態のゲームはあります。やっぱりそのほうがいいですよね。

よく言ってるんですけど、「すっぴんでかわいい子がいいよね」みたいな。デカ目とか盛りまくって通しても「どうなの?」みたいなことはあります。例えば、中国の会社さんの中には盛りまくってぜんぜん違うゲームやらさせたりとかするやり方のマーケティングをしているところもあるので、僕らも話を聞いてて「すごいな」と思っています。実際結果が出ているらしいので。

質問者8:ありがとうございます。

ROASはあまり考えない

質問者9:ROASは100パーセントになるまで何日回収で見ていらっしゃいますか?

田中:それはものによるという感じです。

質問者9:仮に1位を取ったアプリだと30日とか見ていらっしゃるとか、14日で見ていらっしゃるとか。

田中:ものによりますが、基本は30日ですかね。でも、基本的には30日もやらないじゃないですか。

質問者9:まあ、1週間とかですかね。

田中:2週間ぐらいで回収できるといいんですが、そこを何日回収で見るのか、どこまでCPIを上げるか。上げれば上げるほどスケールするので。

それは、こういうモデルがあります。縦軸が利益だとして、CPIが横軸だとします。CPIが高くても利益が0だとすると、利益が0だと出ないから0じゃないですか。ですが、CPIを上げていくとスケールするので、利益が徐々に上がっていきます。そして限界点まで上がると、その後は徐々に下がっていきます。なので、限界点を見つける作業なんですよね。だから、実はROAS何日回収ということはどうでもよくて、限界点を見つけるのが大切です。

例えばCPIがめちゃめちゃ高くて、例えば18ドルとかで出したとします。そうするとめちゃめちゃスケールしますが、赤字です。でも、このCPIとLTV、オーガニックも足したらトントンになるポイントがあるので、そこからこういうグラフを描きます。

このグラフは別に正規分布になるわけではなくて、ゲームによってけっこうズレるんです。限界点を見つけるためのCPI設定なので、ROASは僕らはあまり考えていません。限界点を見つけるためにモデルを描いています。

このモデルをやっているのっておそらく世界でもあまりいません。最近はヨーロッパの会社が一部で同じようなことをやっていたので「へぇ」とおもいましたが、「まあ、それはそう考えるわな」と思いました。ここをモデル化するのが、いまのトレンドとして熱いところです。それはそうですよね。ギャップが大きいほうが絶対にいいので。

ランキングを上にするといいかどうかという議論ってありますよね。あれって、ランキングが上がってもあんまりいいことないんですよ。オーガニックは別にランキングで増えるわけではないので、あまりムキになって上げてもしょうがない。でも、やっぱり1番を取れるとうれしいじゃないですか。

(会場笑)

というのもありますし、1日で回収しちゃうゲームとかもありますからね。僕らじゃないですけどね。

やっぱりゲームの種類によるって感じです。パズルものだったら、LTVは積分の話なので、パズルゲームってだらーって感じの積分になります。でも、アクションは違う積分になるじゃですか。たぶんモデルがぜんぜん違っていて、これが変わると必然的にこれもちょっと変わってくると思うんですよね。というようなモデル化をやれるといいなみたいな。

ソシャゲなんかはLTVが大きいので、ここが雑でも誤差で済まされるじゃないですか。300円でも1,500円でも、このくらいのLTVがあればもうなんでもいいじゃんみたいな。僕らは利ざやが薄いので、骨の周りのねぎとろみたいなところをどれだけこすげ取るかみたいなことをがんばりがちです。

作り手のモチベーションを重視する

質問者9:ちょっと無茶振りかもしれませんが、また田中社長が『Snowball.io』を作る前の状況に戻ったとして、年末までにヒットを出さなきゃいけないとなったら、どこを重視して作りますか?

田中:どこっていうのは?

質問者9:例えば先ほどROASはどうでもいいっていうのがあったじゃないですか。世界観の部分を重視するとかトレンドのコンテキストをちゃんと研究して作るとか。

田中:それもゲームによると思うんですけど、パズルゲームとアクションゲームとアイドルゲームとioゲームで全部違うなと思います。それぞれ勘所ってきっとあるはずで、どこをどうするとどこが何パーセントぐらい伸びるか、みたいなことがあるはずです。

質問者9:最初のジャンル選びは、一番自分が精通しているものにしますか?

田中:ジャンル選びは、正直僕がやるというよりは、結局は作る人間の気持ちが乗らないといいものができないので、「何作りたい?」みたいな話ですね。「僕はパズルしか作りたくないです」と言ったら「じゃあパズルやろうか」「パズルだったらこういうのでやろうか」みたいな感じです。

やっぱりクリエイター本人の気持ちが乗らないといいものはできません。やっぱりioを作ってるやつはioが好きだし、なんか『スプラトゥーン』とか好きそうでしょ、あのゲーム作ってる人は。例えば任天堂のゲームがめっちゃ好きそうな雰囲気あるじゃないですか。

(会場笑)

僕も任天堂のゲーム大好きで、「何作りたい?」「やっぱりこういうのが」「おお、ええやん、ええやん」みたいな。やっぱりその人が好きなジャンルに寄ってるほうがいいから、それに沿う感じですね。

今はもう当然いろんな人がやっているので、その人が一番情熱を持って取り組めるジャンルで、「そのジャンルだったらたぶんこれ効くから、これを優先してやろうか」ということはたぶん言うとは思います。

質問者9:わかりました。ありがとうございます。

田中:そういう意味で言うとビジネスっぽいんですけど、芸者東京は、会社としてはビジネス色は弱いんですよね。Voodooのほうがビジネス色が強くて、僕らははもうちょっとゲームを作るのが素朴に好きな人の集まり的なところがある感じです。

質問者9:ありがとうございます。

司会者:そろそろお時間になりますので、最後に田中様から一言お願いします。

田中:みなさんここで会ったのも何かのご縁なので、なにかみなさまと一緒に取り組めることや、当然僕らもビジネスなので、Win-Winになれるようなかたちで取り組めることがありましたら、ぜひ仲良くしてください。いいゲームあればぜひパブリッシュのお手伝いさせてください(笑)。

ぜひ世界におもしろいゲームを日本人がいっぱい届けられればと思いますので、これをご縁にぜひよろしくお願いします。今日はありがとうございました。

司会者:ありがとうございました。

(会場拍手)

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