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GAFA戦記(全2記事)

2019.09.03

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米国AppStore1位を獲得した『Snowball.io』の製作者が明かす、ハイパーカジュアルゲームの仕組み

提供:株式会社テクロス

2019年8月7日、『神姫PROJECT』などソーシャルゲームの企画・開発を手がける株式会社テクロスが主催するイベント「TECH x GAME COLLEGE」が開催されました。第24回となる今回のテーマは「GAFA戦記 」。アメリカAppStoreで1位を獲得したハイパーカジュアルゲーム『Snowball.io』を世に送り出した、芸者東京株式会社、代表取締役CEOの田中泰生氏が、ハイパーカジュアルゲームの潮流と自社の取り組みの軌跡を語ります。前半パートとなる今回は、ハイパーカジュアルゲームの概要と、芸者東京でのゲーム開発の歴史を紐解きます。

ハイパーカジュアルゲームとは何か?

田中泰生氏(以下、田中):私は芸者東京の田中と申します。今日は1時間半ぐらいお付き合いいただければと思います。

今日は、ハイパーカジュアルゲームのデータドリブン開発についてお話をしようと思いますが、せっかく対面で話しているので、ひととおり前説をしたらQ&Aに入りたいと思います。

どこから始めようかな。では、ハイパーカジュアルゲームとは何かということについてひととおり理解されている方はどれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

では、ハイパーカジュアルゲームのデータドリブン開発ということで、よく言われている「CPI」「LTV」という単語がわからないって方はいますか?

(会場挙手)

2人。じゃあ、そのぐらいから始めましょうか。

僕らがやっているのはハイパーカジュアルというビジネスです。これは改めて申し上げるまでもなく、2017年ぐらいから世界中のランキングを席巻しています。日本でも最近増えてきましたが、とくに顕著なのは、USのランキングを見ていただければわかります。だいたい1位からずっと100位ぐらいまで見ていったときに、およそ8割ぐらいがハイパーカジュアルゲームです。

なんでこうなっているかというと、理由は簡単です。インタースティシャル広告はご存知でしょうか? インタースティシャル広告というのは、ハイパーカジュアルをやっているときに、ゲーム中に全画面のビデオ広告が出てきますよね。あの広告がきっかけになりました。インタースティシャル広告は、だいたい2016年ぐらいに登場しました。

それまでは、カジュアルゲームで収益化しようとするとバナー広告などでした。バナー広告は、みなさんもお使いになっている方はわかると思いますが、メディアとしての単価が高くないので、収益化は難しいという状況がありました。

収益化が可能になった理由

ですが、インタースティシャル広告ということで全画面のビデオ広告が登場したことで、「これはうまくきそうだぞ」ということになったのが始まりだと思います。

最近では、リワードビデオも登場しています。ゲームをやっていると、例えば「アイテムをゲットするにビデオを見ろ」みたいな。それで30秒ぐらいビデオを見るとアイテムがもらえたり、まさにリワードが与えられるかたちのビデオ広告があります。この2つが、今のハイパーカジュアルゲームと言われるものを牽引したと思っています。

これによって、広告表示の単価がすごく上がりました。インタースティシャル広告を1回表示すると、だいたい2円ぐらい。リワードビデオの場合は、3円とか4円とかぐらいになります。

こうした広告のフォーマットができたおかげで、Life Time ValueがUSではだいたい0.5ドルとか、日本でいうとだいたい50円ぐらいになり得るようになってきました。

こういう環境が生まれたので各社何をしているかというと、僕らがやっているようなカジュアルゲームは昔から、それこそ2007年ごろにiPhoneが出た頃から、ずっとアプリのスマホゲームはありました。古くは『Angry Birds』とかですね。

日本でもいろいろありましたが、『なめこ栽培キット』とか、最近は『どうぶつタワーバトル』ですかね。どちらかと言うとオーガニックと呼ばれる、口コミでがんばってバズらせてダウンロード数を伸ばすモデルが多かったと思います。あれはなぜかというと、なかなか収益モデルとしてこういうものがなかったからです。

こういったインタースティシャル広告などができたことによって何が起きているかというと、LTVが50円ぐらいカウントできるということがわかったので、自分たちでアドを回していける用になりました。

具体的に言うと、僕らの場合はFacebookやGoogleなど、ほかでいうとAppLovinやironSource、Unity Ads、Vungleとか。そういうもので広告を出したときに、50円ぐらいのCPI単価で取れるようになりました。

CPIとは、Cost Per Installといわれる、「1つのインストールを取るあたりにどれぐらいかけられるか」というものです。具体的に言うと、さすがに1個5円や10円で取ろうと思うと難しいのですが、50円ぐらいだと勝負になるという環境があります。

単価を上げられることによって、LTV > CPIという不等式が成り立っていれば、原理的にはここを回せば収益があがるようになります。これが世界的に始まったのが2016年ぐらいからでした。

ハイパーカジュアルゲームの始まり

カジュアルゲームの会社さんでもたくさんうまくいっているところがあります。あの『Angry Birds』のRovioは、あれは300円ぐらいで有料ですかね。有料のゲームでうまくいっているカジュアルゲームの会社さんがあります。

ですが、ハイパーカジュアルのモデルで儲けたのは、フランスのKetchapp(ケチャップ)という会社がおそらく世界で最初だと思います。Ketchappという会社さんがこのモデルですごくカジュアルなものを作って、アドスペンドでお客さんを取って、こういったインタースティシャル広告とかで収益をあげるということをやりだしました。

それで、それをもっともっといけるのではないかということで、Ketchappは2017年の時点で有名なUbisoftというフランスのパブリッシャーさんに売却されました。そして、おそらくこの成功をすごく見ていた会社があって、それがみなさんご存じのVoodooという会社です。

Voodooは、Ketchappがやったモデルを極限まで洗練されたかたちで大規模にやりました。その結果として何が起きたかというと、とくに2018年のチャートなんかでは、Top 10のうち4つぐらいがVoodooのゲームでした。象徴的なゲームでいうと『Helix Jump』とか『Dune!』とか。『Helix Jump』は2017年で、2018年は『Hole.io』がすごくヒットしましたが、いわゆるioゲームが登場し始めました。

この中で、アプリマーケティング研究所の坂本達夫さんの記事を読んだことがある方はいらっしゃいます? 彼はもともと、AppLovinという会社でアプリ内インタースティシャル広告というビジネスを普及させた人たちなんですけれども、ここがすごくビジネス的に伸びました。

一方、GoogleやFacebookはある意味後発なんですが、彼らは本質的には広告の会社なので、2013年とか2014年頃からは、GoogleではYouTube広告がすごく伸びた時期でした。

今YouTube広告って広告すごく増えてますよね。。TrueViewといわれていますが、だいたい動画1視聴あたり2回くらい広告を見せられたりしませんか? 広告1/2って出てきて、1回出てスキップしたら、またあとから出てくるみたいな。

あのビジネスで動画ビジネスがすごく伸びたのですが、今は一段落しました。やはり彼らはアメリカの資本主義なので成長を宿命づけられていて、次のビジネスを伸ばさなければいけないということで目をつけたのが、アプリ内の動画広告でした。

その結果ハイパーカジュアルゲームを展開する会社が増えて、最近インスタなんかを見たらゲームの広告が増えた印象があると思います。

僕はいつも言っているんですが、スマホをメディアビジネスだと考えた場合に、人がスマホ上でやることって限られていますよね。知り合いとLINEでメッセージのやり取りをして、それがひととおり終わるとニュースなんかを見ますよね。それが終わるとSNSを見て、そのあとやることは、だいたい動画かゲームで、もうこの5つしかないわけです。

人間が暇をつぶすためのソリューションとして何があるかを考えたとき、LINEなどのいわゆるメッセンジャーかSNSか、ニュースか動画かゲームなんですよね。もちろんこれ以外にもマンガなど細かく見ていけばいろいろありますが、基本的にはこの5つ大きくて、今までこれからも、人間が人間であるかぎり、これはあまり変わらないなと思います。

その中のゲーム×ビデオがフォーカスされているという文脈において、人間の根源的なものと相性がいいし、こういうビジネス的な背景からもこのような盛り上がりが起きているというのが、2019年8月現在における現象です。

芸者東京の歴史

では、僕たち芸者東京という会社はここで何をしているか。僕らはもともとゲーム会社をしていて、ソーシャルゲームといわれるものを作っていました。

ただ、アプリマーケティング研究所の記事を読まれた方はいますか? あの記事はちょっとおもしろおかしく誇張されているような気がしないでもないですが、ほぼ事実です。

あの記事にある通り、2017年の暮れくらいに会社がつぶれそうになって、いよいよやる気を出してやり始めて。その時に僕は『Dune!』というゲームを見て「これだったらすぐ作れるじゃん。これで世界一かよ」と思ってやりだしました。

ただ、そう思って作ってみた時に、僕はその頃はまだハイパーカジュアルゲームの仕組みをまったく知らなかったんです。僕は基本的にゲームを作ってきただけの人間なので、アドやビジネスの仕組みを知りませんでした。

しかも、みなさんもゲームを作っていたら共感を持っていただけることもあると思いますが、本質的に広告のビジネスってなんか胡散臭いし、あんまり信用できない。どっちかというと嫌いというか。

ネット広告代理店の人ってソシャゲの頃から来ていましたが、とりあえず「金使ってますよ」とか「〇〇はリワードのブーストこれだけやってますよ」とか煽ってくるだけで、「この人たちは何なんだろう」と思って好きじゃなかったんですよね。広告ビジネスに対して喰わず嫌いというのもあったし、あんまり仕組みがよくわかっていなかったし、当時は代理店任せだったので。

ですが、ハイパーカジュアルゲームをやり始めた時「どうやって儲けるんだろう?」とか、当然会社が潰れかけているので真剣に考えますよね。考えた結果、広告の仕組みを理解しなければいけないということで「これは嫌いだとか言ってる場合じゃないな」と思って勉強し始めました。

僕らもまだまだ、アドのビジネスなんて1年ちょっとかじったぐらいの付け焼き刃なので、間違っている理解もぜんぜんあるかと思います。むしろそういうところがあったら教えていただきたいなと思います。

ハイパーカジュアルゲームを作りはじめて

こうして2018年からハイパーカジュアルゲームを始めたのですが、やってみたら予想外に大変でした。

具体的には、順番的に言うと、まずゲームのプロトタイプを作りました。1〜2週間かけてゲームのプロトタイプを作って、ビデオ広告作って、プロトタイプにそのまま広告を流します。

だいたいCPIが0.5ドル以下出ればいいのですが、やってみると、本当に出ないんですよ、0.5ドルって。50円以下でお客さんを取るって、相当大変で。

最近いろいろな会社さんが、我々の記事を見て「僕らもハイパーカジュアルやります!」といってチャレンジされていて、オフィスに相談にいらしたりいろいろ聞いています。

そうすると、だいたいのところが昔の僕らと一緒で、『Dune!』とか僕らの作った『Snowball.io』を見て「こんなの誰でも作れるじゃん」と思ってやりだすのですが、1回やって「あれ?」となって、2回やって「あれ?」となって、3〜4回作って「あれ?」となると、そこで心が折れてしまいます。ですが、これってそれくらい難しいんですよね。

僕らも今はできていますが、どうしてできているのかいまだによくわかりません。「100メートル、10秒0台で走れ」ぐらいの大変さというか、「それで走れたらすごいよね」みたいな数値で、普通にやっていると出ないと思います。僕らもやっぱり時間がかかって。最初に結果が出るまでに3〜4ヶ月かかりました。

ちなみに、今の僕たちはこれは出せるようになっています。なぜかというとクリエイティブをむちゃくちゃがんばっていて、社内のクリエイティブのチームも増やしています。これも僕らだけがやっているわけではなく世界的な傾向で、アドビデオのクリエイティブをインハウスでがんばることが大事とされているので、僕らもそれに倣っています。

これができたら、LTVを0.5ドル以上を目指します。これはどこでも書かれていることですが、ハイパーカジュアルゲームの1 Day継続率は50パーセント、3 Dayが30パーセント、7 Dayが15パーセントと言われています。

ですが、これも作って見ればわかりますが、本当はこんなにいかないんですよ。そもそも1 Day 50パーセントというのも驚異的に高いです。しかも1 Day継続率が高くないと、7 Dayで15パーセントもいきません。

これもけっこう難しいのですが、ここはあまり秘伝のタレはなくて、おもしろいゲームを作るしかありません(笑)。

『Snowball.io』のヒット

僕らは今、めちゃくちゃデータドリブンカルチャーなんです。現場のデザイナーであれ、エンジニアであれ、クリエイティブを作っている人であれ、全員こういうことを理解した上で、感覚と数値をすり合わせて話し合うカルチャーができています。

結局、「じゃあ数値足りないよね。どうする?」となったときの「どうする?」という数値を上げるための仮説は、クリエイティビティというか、結局は既存のゲームをおもしろくするというプロセス、おもしろいゲームを考えるというプロセス、そのゲームを遊んでいるユーザーのペインポイント、「ここがあるからやめるよね」という要素を取り除くということは、そんなに魔法はなくて、もうすごくオーソドックスに1個1個やっていくしかありません。

なので、おもしろいゲームを作るということに関しては、データドリブンでやったとしても除去されるものではないので、そこは基本的に一緒です。ただ、その「おもしろいかどうか」みたいなことはディレクターさんが決めたり、議論してなんとなく空気で決めるのではなく、実際試してみます。

具体的にはA/Bテストやったり、そういうことはデータでやるし、明らかにおもしろくなると思ってやったことは数字がちゃんと証明してくれるので、いいですよね。これができるようになってきたのは本当最近です。

2018年の12月17日に『Snowball.io』というゲームで、僕らは初めて成功しました。今思えばあの頃はぜんぜんわかっていなくて、たまたまうまくいったというのが正直なところです。

そこから7ヶ月ぐらいを経て、やっとハイパーカジュアルの「ハ」の字くらいがわかり始めてきたのかなあ、ここまでトータルで1年半ぐらいかかって、まだわからないことだらけだという認識です。

というのが総論です。やり始める前に思っていたこととの違いで言うと、僕はもともと完全なるゲームクリエイターなので、時間の使い方としては今もゲームを作る部分にものすごく時間を使っています。

アプリマーケティング研究所のインタビューでは「データが神だ」みたいなことを言っていますが、あれ半分本当で半分うそです。今でもゲームディレクション的なことはやっていますし「このゲームはやっぱり良くないよね」とか「このゲームはここを良くすると良くなるよね」みたいなこともやっています。ただ、やった結果、僕の言ってることが間違っているときもありますし、すごく合っているときもあります。

『Snowball.io』では、ステージがどんどん落ちていく仕様や、最初は遅かったスピードを速くするとか、そういった調整はお願いしました。『Traffic Run!』でも、デザインの方向性とかゲームのテンポとか、そういうのは割と細かく口出ししてやっています。

ヒットを経験してわかったこと

はじめてから気づいたこととしては、FacebookやGoogleのいわゆるアドビジネスですよね。最近ではアドではなくてUser Acquisitionと言うらしいんですけど。UAってよく略してます。そして、Monetization、MOと略しますが、UA・MOに割いている時間が実は長くて。

FacebookやGoogleの使い方も、実はとても難しくて。基本的にはダッシュボード経由でいろんなことができるんですが、例えば「じゃあCPI0.5ドルね」ということで設定して、Googleに0.5ドルって入力しても、まったくそんな数値は出ません。平気でCPI4ドルとか5ドルとか。「想定CPI0.5ドルって入れたけど、6ドルになってるんですけど」ということが平気で起きるので、使い方のオプティマイゼーションにもノウハウが必要です。

これが難しいことに、定式化されたノウハウがありません。つまり何かというと、彼らもFacebookやGoogleの社員ですら、自分たちのプロダクトの仕様について完璧にわかっているわけではありません。

しかもプロダクトを作っている人たちも、基本的にはAIのアルゴリズムを回しているので、自分たちでもどういう挙動が起きるのか、すべて把握していない部分があります。ですので、その癖を見抜いていく必要があります。

しかも、本社のプロダクトチームがこまめに毎日チューニングしているらしいので、けっこう数字が暴れるんですよね。

最近は僕らもようやく存在感が出てきたおかげで、ベイエリアでのプロダクトチームと直接話す機会が多くなり、今はふた月に1回ぐらい直接プロダクトの人たちと話して、「こういう挙動が起きてるんだけど、何かしてる?」みたいなことで「ああ、なるほどね」みたいなコミュニケーションが最近できるようになってたのですが、彼らもその挙動がなぜ起きているのかわからないことがあります。

今、Googleでマーケティングをされている方っていらっしゃいます?

(会場挙手)

GoogleってUACを使ってますよね。UACの挙動ってめっちゃ不思議じゃないですか? 「なんでYouTubeにこんな出るんだろう?」とか。

Googleの世界観って、「僕たちはあなたのプロダクトのことをよくわかっているので、だいたい想定しているCPI単価を設定してくれると、Googleが持っているいろんな検索ワード、YouTube、アプリとか、いろんなところに最適なかたちで学習して出してあげますよ」という建前になっていて、どこになにを出したいかって自分でぜんぜん操作できないんですよね。

なので、出したらわけわからないところにめっちゃ出るとか、そういうことが起きるんですよね。UACをハックするというか、どうするとこっちに出やすくなるかみたいな、SEOみたいなことをしなければいけなくて、最近はそういうことに時間を割いています。

とはいえ、クリエイティブを変えることしか僕らが持っているレバーはありません。例えばrectangle。広告を長方形にするか正方形にするかとか、広告の中のクリエイティブをどう変えるかということをやると、こっちに寄りだしたとか。

そういうことでSEOより難しいというか、「動画をどういうふうにするとこっちにいくか」みたいなことなのでよりわからないという側面があります。

しかも、プロダクト側がチューニングを毎日していて変わっているので、ここは僕が直接的クリエイティブのチームを増やして一緒にやっているところです。

ブラックボックスというリスク

田中:ちなみにマネタイズの最適化に興味のある方はどれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

いまやられている方はどれぐらいいらっしゃいますか? アプリを使ってマネタイズをしている方。

(会場挙手)

何を使っていますか?

参加者1:メディエーションを使っています。

田中:MoPub?

参加者1:MoPubも使っていますし、MAX も使っています。

田中:ありがとうございます。ちなみに、広告関係の人ってどれぐらいいます?

(会場挙手)

どんなことをやられていますか?

参加者2:SSPです。

田中:ありがとうございます。このへんもわりと魑魅魍魎で、本質的に言うと、広告って今はReal Time Biddingといわれる、自分たちのメディアに対してちゃんとベットが入って、正当な価格でオークションが働いて上がるんですが、メディエーションツールやビディングのシステムの中って、正直ブラックボックスなんですよね。僕らがいくらの値段で出したときに彼らがどれぐらいマージンを取って出しているのか、ぜんぜん公表されていないと思います。

例えば、最近だとバナーだったかな。バナーが彼らのレギュレーションに違反していたということで、AdMobの収益化プログラムがバナー以外も全部1日止まりました。1日止まると僕らのサイズだとけっこうでかいんですよね。

当然Google Japanの人は僕らの味方なのでいろいろやってくれるんですけど、結局なんだかよくわからないということがあったりするので、大きな意味でGoogle・Facebookは巨大なブラックボックスだなあと感じることはあります。現場の人たちは皆、凄くいい人たちなんですけどね。

その上で働いているというリスクがあり、リワードが払われるとしても、本当に正当なReal Time Biddingということで働いているかどうかも、どれぐらいの指値でやっていて彼らがどれぐらいのマージンを乗せているかもブラックボックスです。

そういう「魑魅魍魎」と言ったら怒られますが、そんな部分はやっぱりあります。僕も最近ようやくそれがよくわかってきて、「なるほどな、広告ビジネスすげえな」みたいに思っているので、最近はこの分野で時間をとるようになってきています。

当然、僕らとしてはなるべく一生懸命作ったゲームで一生懸命マーケティングした結果なので、なるべく多くマネタイズしたいという思いがあります。ここをなんとか効率化するということにも時間を割いています。

ハイパーカジュアルゲームの現実

まとめますと、やはりゲームを作るという部分でも大変だし、アドの部分も大変だし、マネタイズも大変だし、けっこう大変だなと思っています。

(会場笑)

大変で、かつ、みんながやらない理由もよくわかります。大変な上に、収益という意味でいうと、パズドラのように一発当てると、月5億円とか10億円いくようなゲームが出せるかもという希望ってまだありますよね。そっちのほうがビジネス的にいいかなという気持ちになる人の気持ちもすごくよくわかります。

僕らはそこで、幸か不幸か壊滅的に失敗したので、もうそこはやらないでおこう思って諦めがついているのでできていますが、そうでなかったらけっこう難易度が高いビジネスで、しかも全部サスティナブルではないというか。

僕らが入った2018年の時点でめちゃめちゃコンペティティブでしたが、今後さらにコンペティティブになっていくので、今後CPIもどんどん上がってくると思います。

マネタイズ側についてもGoogleやFacebookがどんどんここがビジネスだと思って一生懸命やって来ているので、さらに寡占が進む可能性があります。そうすると、今の日本の携帯電話会社のように値段が高止まりしているようにマージン比率が上がっていく可能性もあります。

グッドニュースとしては、リワードビデオやインタースティシャルというビジネスが年比率で170パーセントとかで伸びています。ですがそれを超えるぐらいコンペティティブなので、正直2019年時点でのこのビジネス環境がどれぐらい続くかは僕もよくわからないし、毎日毎日これがドカーンと変わるかもしれないなと思いながら注意深く見ています。

今日は「ハイパーカジュアル、超おすすめですよ。めっちゃ儲かりますよ!」という話ではなくて、「やっぱりそれなりに大変だよ」ということがメッセージとしては正しくて。僕たちもその中で必死に足掻いている、と。

あと、リスク管理も難しいです。とくにLTVっていわゆるEstimated LTVなんですよね。要するに、見た時点で予測して、「たぶんこれぐらいだったらこれぐらいLTVはいくだろうな」というのでやっているので。

ちなみに、僕らが最初に大規模にやったのは『Sling and Jump』というゲームでした。イギリスで1番になって「いけるかも」と思ったんですが、あの時は僕らはEstimated Valueが失敗していました。

どんなゲームでもそうだと思いますが、最初のほうで入ったお客さんってすごくロイヤリティが高いので継続率がいいんですね。ですが規模が大きくなってくると、ちょっと触ってやめるお客さんが多くなってくるので、最初の頃の浮かれた感じのLTVでCPIを立てたら、スーパー逆ざやみたいな。なんか2,000万円ぐらいすぐ消えるみたいな状況でした。当時本当にお金がなかったので、もうなんか出家しようかと思ったぐらい、悲しかったですね。

CPI設定を間違えた話

直近で言うと、これもみなさんご経験あるかもしれない、CPIの値段を間違えるとかね。

ちょうど2週間ぐらい前かな、韓国にてこういう感じのセミナーに呼んでいただいてお話する機会がありました

飛行機は夜中に出る便だったので、20時ぐらいにそろそろオフィスを出ようかなと思って準備をしていたら、「ちょっと話があります」とスタッフに言われました。ふだんめちゃめちゃ陽気な感じのやつが神妙な顔をしていて、「ひょっとして辞めるのかな?」と思ったんですが。

(会場笑)

どうしたのか尋ねたら、「今、設定を見たらCPIの単価が間違ってました」。「0.6ドルと入れたつもりが18ドルってなってて」って。

(会場笑)

「えっ、どうなった?」って聞いたら、「2時間で2,500万円ぐらい出てます」と。要するに2時間で2,500万円分ぐらいが出ていて。彼も、0.6ドルのつもりが18ドルになっていたから、ぜんぜん脈絡もないので、何が起きたかは彼もわからないと。誤操作とも思えないけれど、現実はそうなっていると。

要するにLTVが1ドルだったとしても、CPIが18ドルだったら、1個ダウンロードするごとに1,700円負けじゃないですか。要するに2,000万円ぐらい負けですよ。3時間ぐらいで。「ワオ!」みたいになりました。

(会場笑)

そこから慌ててアドネットワークを止めて、アドネットワークさんと「いや、これはちょっとおかしくね?」「ストッパーとかあるでしょ?」みたいな。それがなぜか働かなかったとか、アラートが働かなかったとか。

結局、結論としては僕らもアドネットワークさんも、信頼関係でやらせていただいているので、アドネットワークさんと話をして痛み分けみたいな感じで。痛み分けというか、痛み……みたいな(笑)。

(会場笑)

僕らにとってもアドネットワークさんは大事なパートナーなので。まあ、わりとそういうことが起きたり、ゲームを作りながらも金融業みたいな、そうした事業リスクもあったりします。

それらの管理も僕らはやっていますが、やらない人が多い理由もわかるビジネスというか、僕らもそれをきっかけにリスクマネジメントの仕組みをさらに一段階上げてやったので、結果オーライで。高い授業料だったけど、その結果、セキュアなビジネスになったねということで。

その時は「えー!」みたいな。なんかね、悲しかったというか、笑いましたけどね。「2,000万円か(笑)」みたいな。

ビジネスとして難易度が高い

まあ、そんなビジネスなので、比較的ゲームビジネスの中でもわりと複雑なのかなと思います。そのわりには、利ざやは既存のソーシャルゲームほど高くありません。ソーシャルゲームのようにバイラルでガンガン伸びるビジネスでもないので。

ただ、いい点としては、面白いゲームを作って、きちんとマーケティングして、マネタイズする、その基本動作を磨いていけば、チームにノウハウがたまり、プラットフォーム的なものができていく、というところです。最近の僕は、ハイパーカジュアルゲームという事業に対して、面白すぎて全般的にのめり込んでいています。ゲームを作るのも好きですし、広告ビジネスも好きになりましたし、スーパーエンジョイはしていますが、ただ、ビジネスとしてけっこう難易度高いと思います。

というのがひととおりの概要です。

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