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Talk Session #1 AR Cloud(全1記事)

2019.07.11

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AR・VRは世界をどのように変えているのか? 世界最大のxRカンファレンス「AWE」を視察してわかったこと

提供:AWE Nite Tokyo

2019年6月11日、Yahoo! JAPANのオープンコラボレーションスペース「LODGE」にて、「世界最大のxRカンファレンス AWE報告会!」が開催されました。カリフォルニア州サンタクララにて行われた世界最大のxRカンファレンス「AWE(Augmented World Expo)」を視察してきたメンバーより、最先端のARクラウドテクノロジーやVR技術を使った最新のユースケースなど、現地の生の情報を共有。AR・VRが世界をどう変えているのか、最新の知見をもとに各社の見解が述べられました。本記事では、冒頭に行われた自己紹介から、最初のセッション「Talk Session #1 AR Cloud」の模様をお送りします。

斉藤氏が「AWE Nite Tokyo」を立ち上げるまで

小林佑樹氏(以下、小林):ここからはファシリテーターの小林が進行を務めさせていただきます。本日ご紹介にありましたとおり、3人の登壇者と、僕がファシリテーターというかたちで進行させていただければと思います。

さっそく各自自己紹介をしていただければと思います。まずは斉藤翔太くんお願いします。

斉藤翔太氏(以下、斉藤):Graffityの斉藤翔太といいます。

今はゲームディレクターという肩書きでいろいろやってるんですが。ここ1年間くらいで5、6回くらい役割が変わっています。Graffityの人間だと覚えていただければなと思います。

もともと日本アイ・ビー・エムで戦略コンサルタントをしていたんですが、ARの世界に飛び込びました。今弊社では『ペチャバト』というマルチプレーヤーで戦うシューティングゲームを作っているんですが、絶賛リニューアル中です。ぜひご期待いただければと思います。

今回は6D.AIのCEOであるMattのつながりで、AWE Nite Tokyoの立ち上げに至りました。弊社の代表の森本俊亨と僕とでMattと話す機会があって、そこからの経緯で今回立ち上げることができました。

小林:今回のイベント施策とかも、翔太とかが中心になって企画などをしていただきました。よろしくお願いします。

斉藤:お願いします。

ARクリエイティブスタジオ・MESON

小林:続きましてMESON CEOのカジ、よろしくお願いします。

梶谷健人氏(以下、梶谷):梶谷です。よろしくお願いします。自分はMESONというARクリエイティブスタジオの会社をやっています。

今回のAWEでAwardというものがあったんですけど、そこに2つファイナリストとして残っているようなサービスを作っていたりだとか。いろいろなパートナーのクライアントさん、企業と組んでARサービスを考えて作って伸ばすみたいなことをやってます。

もともと自分のキャリアとしてはグロースハックと呼ばれるデザインとマーケティングを組み合わせたようなことをずっとやっていて、グロースハックをテーマにした本を出版していたりもします。日本、インド、アメリカでサービスデザインとグロースハックの領域でスタートアップに関わっています。2年前くらいに帰国してMESONを小林と一緒に創業してというようなキャリアを経て、今に至ります。今日はよろしくお願いします。

小林:よろしくお願いします。

(会場拍手)

そのままちょっと僕の紹介に移りますけれども。僕は今紹介がございましたMESONという会社でCOOをやってます。小林改め「ARおじさん」と言います。僕は先ほど梶谷から紹介がありましたとおり、うちのほうでARクリエイティブスタジオでいろいろなプロジェクトをやっています。

そこのプロダクトの事業開拓もそうですし、開発の部分まで手掛ける何でも屋さんみたいなことをやってます。Twitterで「ARおじさん」で検索していただくと、いろいろなARの情報を発信していたりとか。また、こことは別でMESONの主催のARミートアップみたいなものも主催・企画してたりとかします。

あとMESONが運営していた3Dモデルの検索エンジンのほうで過去にバックエンドのアーキテクチャを開発したこともありまして、それをAWSさんに評価されまして受賞歴もあったりします。今日は司会兼ときどき話すという感じでお話ししたいと思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

場をゲームに書き換えるエンドロールのチャレンジ

小林:そうしましたら最後、エンドロールの大島くんよろしくお願いします。

大島佑斗氏(以下、大島):エンドロールの大島と申します。ちょっとコバさんの情報のあとにやりづらいところがあるんですけれども……やっていきたいと思います。(笑)。

私は学生時代から新卒、あと中途で入ったfreeeという会社までずっとマーケティングをやっている人間でして。マーケティングという便利なものからもっとおもしろいものを展開できるんじゃないかと思って、エンドロールというARとエンターテインメントのスタートアップを立ち上げております。

エンドロールではCOOとして今やってます。採用とかも見てるので、もし今回の話とかで興味を持った方がいましたら懇親会などでお声がけください。

エンドロール自体は施設や街などをゲームに書き換えていくところにフォーカスしていまして。第1弾で今渋谷パラレルパラドックスという謎解きゲームをやってるんですけど、ご存知の方はいらっしゃいますかね?

(会場挙手)

あ、けっこういた! 嬉しい! 嬉しいです。ありがとうございます。ちょっと心配しました(笑)。6月15日、今週の土曜日までやっているのでもしよろしければお越しください! 今日はよろしくお願いします。

小林:お願いします。

(会場拍手)

独占や競争の先に、どうやって差別化していくのか?

小林:それではさっそくこの4名でコンテンツに入っていきたいと思います。

まずはAR Cloudというテーマで、各社がどういう構築のアプローチをしているのか。AR Cloudのアプローチをしているのか、あとは業界全体のトレンドみたいなものを斉藤翔太くん中心でお話していただければと思います。よろしくお願いします。

斉藤:さっそくAR Cloudの内容なんですが、まずこのトピックでお伝えしたいことは大きく3つかなと。

まず今回、大きく3種類の異なるAR Cloudの構築アプローチをしているスタートアップがいました。ですので、それぞれの違いや、それらの会社がどういうふうに自社のアプローチにメリットがあると考えているのかなどをお伝えしたいなと思います。

次がOpenARCloud.orgという団体が最近できて……最近というか去年ですね。それらに代表されるような、「協力してみんなで普及させていこう、作っていこうぜ」というトレンドがあったので、その内容についてお話できればなと思います。

最後、そうやってARクラウドが普及した先にある、「独占なのか競争なのか、差別化ってどうするんだっけ?」みたいなところに対する各社の見解を共有して、この3つについてお話ししようかなと思います。

事前スキャン・Edge SLAM・衛星情報、3つのアプローチ

斉藤:ちょっと内容の前に、さらっとAR Cloudの定義のおさらいをしたいなと思います。こちらはPatched Realityという、6D.AIのSDKを使ったウサギのdemoを作っている会社の定義なんですけども。

構成要素は大きく4つあります。

まず1つ目が自己位置推定、自分の構えているデバイスが一体どこにあるのかを正確に推測する技術。こちらはスライドのうちの1要素ですね。

もう1つがデジタルツインの作成・更新。この下のところなんですけど、物理法則までしっかり再現されたオクルージョンやフィジックスですね。6D.AIのデモである椅子にボールが跳ね返って落ちるみたいな。そういったところまでちゃんと再現したデジタル上のもう1つのデジタルツインを作っていくのが2つ目の構成要素です。

残りの2つが、永続的なコンテンツ保管。最近Minecraft Earthで出てきたような、作ったものを場所に残せるという要素ですね。最後がSemantic Understanding。要はカメラが今人を見てるんだっけ、これ車なんだっけ? ということをちゃんと理解させるという。4つの技術によって成り立っているものです。

最後のSemanticのところだけ、パッと見はAR Cloudっぽくないかなと思うんですけど。これはけっこう6D.AIの戦略、考え方の重要な部分になっています。

ということで詳細に入ります。ARクラウドの構築には事前スキャンとEdge SLAMと衛星情報という、大きく3つのアプローチがあります。まず一番わかりやすい事前スキャンからいきます。Resonaiという会社であったり、あとはSCAPEというスタートアップが取り組んでいるアプローチです。

言ってしまえば、事前にその場所の3Dモデルを作っておくようなアプローチになります。あとはそれを画像認識して、今どこにいるのかという自己位置推定をやるアプローチです。

これは本当に精度は高くできるものの、事前にそれこそLiDAR(ライダー)という技術を使ったりして、精緻な3Dモデルを作っておかなければいけないところが今の課題ですね。

なので、Resonaiという会社とかはまず建物に絞ってやっています。屋外だとやっぱり更新のところに大きく手間とリソースが割かれてしまうので。エンタープライズ向けのオフィスとかをまずはターゲットにやっています。

今一番、技術的なトレンドは「Edge SLAM」

斉藤:次が6D.AIやyouARに代表されるEdge SLAMですね。こちらはスマートフォンの端末上、デバイス上でリアルタイムにSLAM処理をして、Edgeで3Dメッシュを作成していくというようなアプローチになります。

最後がSturfeeという会社、これはちょっと独特っちゃ独特なんですけど。SLAMと衛星情報、要はGoogleマップのような情報ですね。これを組み合わせて自己位置推定をしていくと言っていました。

基本的にEdge SLAMが今一番技術的なトレンドとしては熱い領域だと思うんですが。6D.aiのMattが話していたのが、自分たちはEdge SLAMの優位性の1つとしてSemantic Segmentationをかませたうえで、Edge上でメッシュ作成の処理を解決させることでプライバシーの配慮ができるということを挙げていました。

つまりいちいちカメラから取った生の画像データを1回クラウドに上げて、そこでSemanticな処理をして3Dメッシュ化するってなると、クラウド上に不特定多数の人の顔だったりというのが残ってしまうんですね。

それをEdgeでやってクラウドに上げるのは、3Dメッシュ化された、3Dモデル化された完全にスクレイピングされたものだけ上げるという形式にすることで、プライバシーが担保できると言っていました。

一方でSturfeeとかの方が言っていた強みとしては、衛星画像をベースに自己位置推定をするので、事前スキャンが不要で、その場でいつでもできると。シティスケールのAR Cloudを簡単に作れると言っていました。こういったところが大きく3つのアプローチで違いとしてあったことですね。

競争ではなく、AR Cloud自体の普及が業界の最優先課題に

斉藤:次はOpenARCloudのことですね。彼らは一般に普及させていこうという民間の団体です。

今11のワーキンググループを設置して、それぞれにテーマを設定しています。例えば先ほど出たようなSLAMによる自己位置推定というようなワーキンググループだったり、あとはプライバシー、リーガルなどもトピックとして作っていたりします。

それぞれ共通規格の策定であったり、どうやったら普及させることができるのかをみんなでディスカッションしながら進めています。そういった団体です。

これは全体の所感になるんですが、AWE全体をとおして、AR Cloud自体をみんなでがんばって普及させていくことを業界の最優先課題としているのがすごく印象的でした。

今の段階から相手を出し抜いていくとか、過去に電気自動車であったような規格競争みたいな、ああいったことはしないで、みんなで足並み揃えていこうねと考えています。

AWEにて、Resonai、6D.AI、youAR、Sturfeeの4社がパネルをやってるセッションがあったんですね。そのセッションでこのOpenARCloudの話題になったときに、全員これは絶対にやるべきだということを声を揃えて言っていたのがけっこう印象的でした。

技術の優位性よりも、サービスそのものが洗練されているか

斉藤:最後ですね。その先にある独占か競争かというところです。

まず6d.aiの特徴的なこととして、彼らは「我々はAR Cloud版のAWSを目指している」と言っています。完全にバックエンドのSDK周りを全部取ることを戦略として掲げている一方で、同じくAR Cloudでけっこう話題にあがることが多いUbiquity6ですね。

彼らはよりクリエイターとかデベロッパーに寄り添ったSDKにしていこうとしています。一般の人がコンテンツだったり、AR Cloudを通じたクリエーションを作りやすいようなものにしていくと言っていたのが、けっこう印象的でした。彼ら自身は6Dとは競合しないよというようなことをわりと意識して押し出しているような感じでしたね。

同じくSDKのラウンドアップ……まあ、パネルですね。そこであった議論として、とはいえ最終的に普及した先、そうしたときにはどうしても競争は避けられない中で、そのときにはレスポンスだったりインタラクションがどれだけ洗練されているかが重要になります。

技術の優位性というよりは、そういったサービスそのものの……レスポンス自体は技術のところも入ってますけど。そういったインタラクションのところとかをちゃんと洗練していくというのが重要だという議論になっていました。そこがAR Cloudで議論されていたところですね。

デジタルレイヤーの権利は誰に帰属するのか問題

斉藤:最後にちょっとプライバシー周りの話でけっこうトピックとしておもしろかったところをカジさんにお願いします。

梶谷:AR Cloud周りの議論で権利関係の話がよくディスカッションされています。要はAR Cloudを構築したときにデジタルのレイヤーを作っていくと思うんですけど、そのデジタルレイヤーの権利が誰に帰属するのかという問題が、いろいろなセッションでかなり議論されていました。

具体的に例を挙げて説明すると、例えば渋谷のヒカリエのAR Cloudのレイヤーを作ったときに、そこにコンテンツを表示する権利だったりそこから得られる広告の収益がフィジカルなヒカリエのオーナーに帰属するのか。デジタルレイヤーを作ったデジタル側のクリエイターに帰属するのかというような問題です。

結論から言うと、世界的にはまだこの議論って結論が出てないんですけど。その中でおもしろいトピックとしてあがっていたのが、ソニーとニューヨークのタイムズスクエアの裁判の判決がすごくおもしろいケースだと紹介されていました。

ソニーがスパイダーマンの映画でタイムズスクエアをCGで空間を作ったんですけど、タイムズスクエアのビルボードにいくつか広告とか載ってるじゃないですか。そこの広告もソニー側が現実とは違う特定企業の広告を表示して、それを映画で放映したと。

それに対して、タイムズスクエア側がそこは自分たちのフィジカルの土地だから権利の侵害だというかたちで訴えて、そこの両者で裁判が行われました。論点は最初に話したのとまったく同じで、デジタルコピーの権利がフィジカルなオーナーに帰属するのか、デジタルコピーの作成者に帰属するのか。

これすごくおもしろいのが、ソニーが最終的に勝訴したんですよね。なので、まだ最終的な結論は出てないんですけど、デジタルなスペースとそれの元となるフィジカルな建物の権利が分離している一例としてすごくおもしろくて。今後この議論が深まるときにも1つのケースとして必ず挙げられる事例になるんじゃないかなというところで、けっこうおもしろい話でした。

スタートアップに限らない、業界全体の盛り上がりを感じる

小林:ありがとうございます。ここまでがAR Cloudのセッションになります。OpenARCloudのセッションでもあったんですけど、そのときにセッションに登壇している人が実はMicrosoftで働いている人だったりとかして、必ずしもスタートアップだけではなくて大企業で働いている人もOpenARCloudに対して、けっこう熱心に働きかけているみたいなことも見受けられました。

斉藤:それこそAWEのOriもOpenARCloudのボードメンバーに入ってたりとかで。本当に業界全体でやっていこうという気概がありますね。

小林:そうですね。僕らが思っている以上にでっかい組織なんだって言うのはありましたね(笑)。

斉藤:間違いない(笑)。

小林:質問をいただけましたら、セッションの合間とかでもぜんぜん拾っていくので。ぜひみなさん質問、気になることなどあればいただければと思います。

1個だけ質問が来てるんですけど、「AR Cloudのデバイスの位置推定とはデバイスの表示情報を指していますか?」と来たんですけど。これはまあ、そうですよね?

斉藤:そうですね。デバイスポーズといったときに3つ要素をさらに細かく言っているんですけど。まずは自分がどこにいるのかポーズを取るというのが大前提で、そこからコンテンツディスカバリーが重要になります。

要はどこに行って何を見ているのかによって何を出すのか決めるところだったり、ナビゲーションだったり、あとはそれによってマルチプレーヤーもできるようになって、要素機能、要素体験を実現していく感じですね。そのとおりです。

小林:ありがとうございます。

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