2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
オープニングトーク(全1記事)
提供:MyData Japan
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サラ・ミジェック氏:本当にありがとうございます。みなさんおはようございます。MyData Global Boardの議長のサラ・ミジェックです。プロジェクト・コーディネーターも兼任しております。
MyDataについてより知っていただくために、お時間をいただいております。まず、MyData Japan Hubにこの機会を設けてくださったことに感謝申し上げます。それから、ここに呼んでくださったこと、お集まりくださったみなさまにお礼申し上げます。
本日は「パーソナルデータ」「MyData」についてお話しようと思っていますが、その前にまずは、SNSを使用しているみなさまに1つ質問させていただきたいと思います。みなさまのなかで、ソーシャルメディアを利用されている方はどれくらいいらっしゃいますでしょうか。例えばFacebookですね。
なぜこの質問をするかというと、どうして私がパーソナルデータについて考えるようになったのかを、最初から最後まで共有させていただくためです。
大学で学んでいたある日、親友が送ってくれたのはウェブサイトの招待メールでした。最初はよくわからなかったんですが、Facebookだったんです。
まずはっきり言わないといけないのは、そのときは登録しましたが、いつもFacebookに対する恐怖が浮かんでは消えていたということです。私自身はフェイスブックに3人のみ友達がいて、一年に一度投稿するかしないか、という使い方をしています。一方で、私の友人は自分の全情報をFacebookでよろこんでシェアするんです。例えば、何を食べたとか、どこへ行ったとか、家族の写真までアップしています。
私は、「どうして人々はこんなに自分の情報をFacebookにアップすることに魅了されているんだろう?」と思ったんです。誰かが記事をアップするたびに「誰かに私的なことを伝える」という観点で、この疑問を思い出していました。
2012年にこの問いに対する答えを深く探ってみることにしました。「どうして人々は自分の情報を開示することに同意しているのか?」。この問いに対して、1つの答えを見つけると、2つくらい質問がまた出てくるので、いつもマトリョーシカみたいだなと思っていました。
今わかっていることは2つあって、1つはFacebookは氷山の一角にすぎないということです。現にエネルギー供給者から小売り業者まで、私たちに関わりのある企業は私たちの情報を持っているんです。さらに、今まで私が見ていた視点は間違っていたことがわかりました。つまり、これは「データの公開」ではなく「データの収集」だったんです。
企業はものすごくアクティブに、かつ重きをおいてデータを収集しています。効果的なツールや手段を用いて、私たちのあらゆる情報を集めています。ですから、私たちは個々でパーソナルデータを守り、コントロールする必要が出てきたんだなと思ったんです。
それでは想像してみましょう。個人がご自分のパーソナルデータを使用できるなら、同じように企業もあなたのデータを使えます。つまり、あなたのパーソナルデータから価値を引き出せるという意味で「使える」ということですね。
もう1つ想像してみてほしいのは、もしご自分のパーソナルデータについて判断する選択肢があったらということです。どんなデータが誰に収集されていて、責任をもって倫理的に使用され扱われているのかが判断できたら?
データというのは、本当にどこにでも存在します。私たちは何かしらの人間活動をしていて、例えば健康、教育、モビリティなどデータを生み出しています。これを使って生活をよりよくするバリューを出すこともできます。
これからお伝えすることがMyDataです。個々をパーソナルデータの中心に据え、「使用される側」ではなく、手段と権利を持ってパーソナルデータを管理できる「権限を持った個人」にすることです。
使用可能なデータについては、MyDataのモデルでは、人々が使用できるようにパーソナルデータをマシンリーダブル(注:コンピュータなどのマシンが、Webページ内に記述された情報を認識できる状態)なフォーマットが必要です。
MyDataのモデルは非中央集権化されたパーソナルデータマネジメントを選択可能にしてくれるオープンビジネス環境に基づいています。この3つが、個々にパーソナルデータにおいて権利とツールを持たせるMyDataの原則です。個人をパーソナルデータを通じてエンパワメントし、そうするためのツールを与えるのです。
いまここでお話したことは主流ではありません。実際、一般的ではありません。しかし、もし平等性や透明性に基づいた社会を築きたいのであれば、現代に必要とされる変化でしょう。
このモデルは必要であり、築く必要があります。実際、あらゆる人がMyDataの一員となって行動を起こせるのです。
なぜなら、人々が自分のデータを管理していると感じるとき、そのデータを共有することに対してよりオープンでいられます。MyDataモデルではデータの有用性は問いません。データに価値があることは知っていますからね。MyDataのアイデアは、パーソナルデータに対し、現在、あまり行動できない個人と自由自在に扱える企業とのパワーバランスを均等に戻すことです。これがMyDataの原則の背後にあるアイデアです。
では、ベネフィットは何か。個人に対しては、先ほど個人と企業のパワーバランスの均衡化と述べましたが、加えてデータの再利用の可能性があります。これはMyDataのアプローチのうち、本当に重要なものの1つで、第三者機関やサービスを使用し、価値を引き出すといったパーソナルデータを再利用する機会を個人に与えるというものです。
個人におけるパーソナルデータの別の使い方をスライドに記しました。例えば、より自分自身のことがわかるようになるのでより的確な判断ができるようになりますよね。それから、私たちのパーソナルデータを使用したリサーチプロジェクトに参加する可能性もでてきます。
現在、多くの人がトラッカーを持っています。いつ食事したか、何歩歩いたか、アクティビティをトラッキングしてくれるものですが、これらのデータでヘルスリサーチプロジェクトに参加することができますね。
実際、個人としては、人生をよりよくするために、パーソナルデータを使えるドメインをたくさん持っています。
組織向けには、透明性のある新しい信頼関係をカスタマーと築く機会ができます。信頼というのは企業にとって本当に大切なものだと思いますが、さらに新しいマーケット、新しいビジネスの機会にとっても大切です。
なぜなら、MyDataのモデルのルールでは、独占ではないからです。 例えば、企業がデータ保持者だったとして、個人とそのデータを共有するのであれば、第三者機関のサービスやアプリケーションを提供することも可能となります。通信会社が私のパーソナルデータの保持していたとすると、銀行、店舗からくる私のデータを再利用して、私に第三者機関のアプリケーションを提供できます。
ですから、企業には本当に新しいビジネスチャンスなんです。これらはすべてさらに透明性と信頼と意味のあるイノベーションに基づき、築かれ、形作られた社会に続いています。
それから、私たちがしようとしていることは個人や社会全体にとって意味があり、有用性が高いということを念頭に置いておくことが大切です。
では、どうやってやるかという話です。とても野心的なプログラムに見えるかもしれませんが、みんな一緒にやりましょうということです。なぜなら、先ほど述べましたように私たち全員がデータを生み出しているので、全員がMyDataのモデル実現に貢献できるからです。
もっと具体的にMyDataがなんなのかを見ていきましょう。MyDataのコンセプトはネットワーク、ムーブメント、非営利、そしてコミュニティです。これらを今からご説明させていただきます。
MyDataというのは総称です。パーソナルデータを用いて個人を盛り上げていくという目的を同じにしたさまざまなプロジェクトや第一人者たちのことです。「ネットワーク」というのはMyDataがビジネス、リーガル、テクノロジー、社会、それぞれに属する人によって構成されているからです。
MyDataを現実のものとするには全員で一緒にやることが必要ですから、違うセクター同士で助けあうことが必要です。 適切な法的フレームワークに頼る必要があります。
例えば、GDPRが存在しますが、改善を続けていくことや、他の国、世界中に展開することも可能でしょう。 それから、私たちは個人がパーソナルデータの管理を学べるテクニカルツールを作る必要があります。
PDS(Personal Data Store)・PIMS(Personal Information Management Service)・ブロックチェーンなどMyDataのモデルの実現を可能にするツールが登場してきています。パーソナルデータに関する問題意識やMyDataへの意識を高める必要があるため、これらのツールはもちろん社会のためでもあります。
これは私たちがBLTS(ビジネス、リーガル、テクノロジー、ソサエティ)と呼んでいるものです。アイデアとしては、異なる背景を持つ人たちがMyDataを実現するのに必要だということですね。
MyDataはムーブメントでもあります。アメリカ的アプローチと中国的アプローチの中間的なやり方として存在する欧州的アプローチもに絶好の環境です。
フィンランドがもうすぐEUの議長国になりますが、そうなったらMyDataのメッセージをさらに高いレベルで伝えることができるでしょう。
それから、MyDataは非営利団体です。MyData Globalは2018年10月に設立され、600人以上のメンバーが40か国以上におります。長年、組織化されていないグループとして過ごしていましたが、私たちのメッセージをさらに効率的に拡散するためには組織化が必要だと判断しました。
そして、MyDataはコミュニティでもあります。20以上のハブがあり、つい先日21個目としてハンガリーを歓迎したところです。知っていただきたいのは、こういった局所的な連帯が地域レベルで本当に必要なのです。
ハブというのは、現地でMyDataのメッセージを広める活動をしている最低2人のMyDataメンバーで構成されています。日本におけるハブは、もっとも活動的なハブの一つです。刺激的な人々と活動できて非常にうれしく思っております。
MyData Japanが、来年にはMyData Southeast Asiaとして、このイベントをアジアの他の国にも拡大し、現地の人を巻き込みながらメッセージを広めていってほしいと思っています。
そして、このコミュニティやムーブメントに携わる人々は、すでに国際的なカンファレンスをオーガナイズすることで驚くべきことを達成しています。 MyDataカンファレンスは、実際にすばらしいプロジェクトに参加しているパーソナルデータの専門家と会って話せるところです。
もちろん、私たちは今年もカンファレンスをオーガナイズします。9月25日、フィンランドのヘルシンキで行いますので、そこでお会いできることを楽しみにしています。どうぞ参加してください。
パーソナルデータやMyDataモデルに関して活動しており、大きなプロジェクトに関わっている人々がいます。これらパーソナルデータやMyDataをより知るための場所があります。
では、フランスのハブで私たちが何を行っているかをお話したいと思います。冒頭でMyData Global Boardの議長だとお話したんですが、フランスのパリにあるハブのイニシエーターでもあります。
フランスのハブの運営団体はFingというパリにあるシンクタンクで、デジタルトランスフォーメーション分野で活動しており、フランスのハブも運営しています。私たちは1年ほど、推論であるMyDataモデルが本当かどうかの実験をしてきました。
フランスでは、Self-Dataと呼んでいるのですが、MyDataとコンセプトは変わりません。このコンセプトというのは、「企業が個人とデータをシェアしたら何が起きるのか?」「異なる技術的・法的コンディションは何か?」「個人が自分のパーソナルデータやデータホルダーを知ったとき、どんな行動をするのか?」、 答えにたどり着くにはもしかしたら実験が一番いいのかもしれないと思い、1年ほど実験してきました。
もう1つ私たちがやっていることは、MyDataのビジネスモデルを識別することです。できるだけ明快にお話ししたいと思っていますが、これが6つのMydataのビジネスモデルです。
1つはプラットフォームです。個人がパーソナルデータを格納・管理・再利用でき、パーソナルデータの第三者機関における利用も可能にするプラットフォームです。個人による利用料金は有料で、得た利益はこのプラットフォームとこのプラットフォーム上で使用できる第三者機関の間で分配されることになります。
これが1つ目のビジネスモデルですが、フランスにおいては私が知っている中でもっとも一般的なビジネスモデルかと思います。例えば日本ではデータバンク(情報銀行)がとても有名ですが、フランスではプラットフォームモデルが有名です。
2つ目が手数料です。まず、集めたデータを分析し、個人のニーズにより合う、エネルギー供給者などのサプライヤーをリコメンドするサービスを提供します。新しい顧客を求めているサプライヤーがこのサービスに対して手数料をデータ分析側に支払ってくれることにより成り立ちます。データ分析側、サプライヤー、個人の3つのプレイヤーが存在し、サプライヤーが支払うので、個人は無料で使用できるということになります。
ではもう2つのサービスについてお話しします。集計したデータをもとに個人のデータを収集・分析・研究するサービスがあります。このモデルではデータ自体ではなく、研究結果や調査結果が販売されることになるので、この収集・分析・研究は収益の基礎となるので非常に重要です。さもなければ、ただ情報を集めるだけになって研究や調査を充分に行うことができなくなるでしょう。
フリーミアムというのはプラットフォームに近いものです。違うサービスを持たせているプラットフォームを私たちは持っています。これはデータを無料で格納しておけるものですが、もしデータを管理するためなどに第三者機関によるサービスを使用したくなったりしたとき料金が発生する、というものです。
プラットフォームはすべて有料ですが、フリーミアムなら格納のみ無料で他の機能を使用する際には課金する、といったかたちになります。
もう1つは「トゥー・サイデッド」(両面)です。これは少しSNSに似ています。というのは、例えば2つの異なったユーザーがいるプラットフォームにいて、第三者機関は、提供しているサービスがプラットフォームのユーザーに使用されたときのみ支払いが発生するといったものです。
このモデルではプラットフォームのユーザー数が収益化には非常に大切です。なぜなら、ユーザーが多ければ多いほど第三者機関には使用されるチャンスがありますから。
最後に、ハイブリッドというのはオープンソースソフトウェアのアイデアに似ています。データ管理は無料で、その周辺のコミュニティは(第三者機関への)アプリケーションなどにつながるなどの可能性があります。ここでの収益は例えば、サービスのインストールや研修、特定の開発などによるもので、BtoBに近いものです。
以上がMyData Globalのフランス・ハブで識別されたMyDataにおける6つのビジネスモデルです。フランスを例にMyDataで何をやっているかを共有させていただきました。
ではコミュニティ、ムーブメントとしてのMyDataのコンセプトに戻って総括したいと思います。
私たちはデータ・プロテクションからエンパワー(注:権限を与えること)へのシフトに向けて活動しています。パーソナルデータ周辺にある恐怖を自信へと変え、パーソナルデータを管理できるようにする権利や個人向けの実用的なツールを実現しようとしています。
それから、クローズドからオープンなエコシステムへシフトも目指しています。パーソナルデータの独占から、それをオープンに管理する選択肢を提案し、個人のデータとプライバシーを守るための実用的なアクションを起こせる権利のために活動しています。
本日は、私のMyDataの同僚で、Finance leadおよびSteering group chairのJogiも来日しています。彼は日本でデータバンク(情報銀行)モデルに関する調査をしています。彼とディスカッションをしたい方は、オープンスペースに丸1日いるので、ぜひいらしてください。
プレゼンテーションを終えるにあたって申し上げたいのは、実際、私たち全員がMyDataの一部ですから、MyDataの冒険にジョインしたいと思ったら、ぜひメンバーになってください。
ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
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