2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
成果報告(全1記事)
提供:一般社団法人 環境共創イニシアチブ
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駒村和彦氏(以下、駒村):今日はよろしくお願いいたします。すごく熱量を感じています。当初は120人ぐらいとうかがっていたんですけど、今日はどうやらそれを超える参加者がいらっしゃっています。
冒頭、河野(孝史)補佐からも説明があったとおり、経済産業省としても、スタートアップ支援の取り組みを来年度からもっと推し進めていかれるということでした。
それから、私もいろいろなところでスタートアップとモノづくりの支援、大企業のイノベーション経営の支援、地域における事業構想の立案の支援をやっていますが、さまざまなところでそういう熱量が高まっている頃合いなんだろうなと感じています。
今日お話をいろいろうかがわせていただいて、すごく参考になったなと思ったことを、少しだけコメントさせていただきたくてですね。Braveridgeの吉田様がおっしゃったような、スタートアップ側とモノづくり側が、それぞれお互い介入して欲しくない、最後に守りたい線のようなものは必ずあります。
だからこそ、お互いのコミュニケーションを通じて、相手の得意領域は安心して任せられるような信頼関係をいかに作っていけるかが、この取り組みにおいて、すごく大事だと改めて思わされました。
コミュニケーションについては、ジェネシスの藤岡様がおっしゃったように、スタートアップから製品の要件や要求定義を伝えるだけじゃなくて、どういう思いでやっているのかをしっかり伝えていくことが必要なんだと。
大げさではなく、こういう取り組みを通して、産業の新しいかたちが作られていくみたいな、そんな時代の流れになってきていると感じました。
そういうことで、私の中ではすごく今日のこの場の価値を感じているんですが、これから少し時間をいただいて、報告させていただきたいと思っております。
冒頭、私から簡単に、なにをやってきたか、みなさまにどういうご協力をお願いしたいか、そんなことをお伝えしたいと思っています。
お手元に緑の冊子「契約ガイドライン」があると思います。これと併せて、契約書のフォーマットの日本語版・英語版、それからその契約書を見るにあたって「各条文は、このポイントを注意して見てくださいね」といった「活用にあたってのポイント」というものを別冊子でまとめております。後ほどまた紹介します。
今回プロジェクトにご協力いただいたのは、まずはスタートアップファクトリーのみなさま、今日登壇いただきましたピクシーダストさん、MAMORIOさん、Braveridgeさんはじめ、複数の支援事業者様、それからスタートアップの企業のみなさまにご協力いただきました。私も伊藤先生と一緒に全国を駆け巡りまして、具体的に生の声を聞いて回りました。
それから、検討会は、小林先生を座長としまして、各法律事務所の先生方を一堂に会しまして、本当に条文1個1個を詰めていく、それから「ガイドラインの中身はこうしたらいいんじゃないか?」ということを詰めていくような会議をしました。
駒村:お手元の緑の「契約ガイドライン」。これは「モノづくりの全体のステップってどういうことなんだっけ?」と悩まれるときに、まずは全体像を把握していただくものです。それから、どういうところにどんな落とし穴がありえるかをご紹介した「あるある問題事例」も書いてあります。そして、それをどう対策していけばいいのか、予防していけばいいのか、そんな対応策の紹介もしています。
(ものづくりプロセスの全体像)
それだけだと「契約は結局どうしたらいいんだ?」という声がきっとあるだろうということで、契約書のフォーマットを日本語版・英語版でご用意しています。
こちらもファイルをダウンロードできるように、すでにサイト上に公開させていただいております。この契約書フォーマットは要件定義から量産試作あたりまでの業務を想定した契約フォーマットとなっています。
しかも今回はこれだけじゃなくて、だんだんテレビショッピングみたいになってきましたが(笑)、3つ目のアイテムとして、契約書の「活用にあたってのポイント」もぜひご覧ください。
契約書のフォーマットをもらっても、結局この契約はどういうところに特徴があるのかわからないとか、法務の専門的な知見が不足するスタートアップさんも多いと思います。ということで、「こういうポイントを検討しながら契約書フォーマットを活用ください」という、利用にあたっての最低限のポイントを整理しております。
(契約書フォーマット)
この3点セット、すべて無料でお配りしておりますので、ぜひ活用していただきたいし、今日来ていただいているみなさまに、これを普及する同じチームの一員として、ぜひご協力をお願いしたいと思っている次第です。
ガイドラインには想定する活用シーンも掲載しておりますので、こういうときにはガイドライン、こういうときには契約フォーマットおよび利用ポイントという感じで、「どっちを参照しようかな?」と選びながら使っていただければいいかなと思います。
内容は細かく触れませんが、例えば「全体ステップってどんな感じでモノづくりを進めていくんだっけ?」「どんなところに落とし穴があるんだっけ?」「なにかやり忘れていることないかな?」といった疑問が、やはり全国を回る中で出てくることが多いという生の声をたくさん聞きました。
聞いてみると、共通する悩みとか共通する落とし穴がけっこう多いので、そういった共通点や、誰もがひっかかりやすいポイントについて、整理をしています。
(チェックリスト)
それから、各ステップを具体的に書き下ろしたページも後段に用意しておりますので、全体ステップを見ながら、後段で各ステップの詳細を見るかたちでご活用いただく構成となっています。
ということで、私からのすごく簡単な事業の紹介というか、報告は以上とさせていただきます。
駒村:ここからは、パネリストのお二人に私からインタビューさせていただくかたちで進めたいと思います。本事業の力点や、成果物をどういった使い方をしていただきたいか、お二人のコメントをうかがうことで、みなさまにもぜひ同じチームとして、利用・普及いただくときの理解の促進につながっていけばと思っています。
まず小林先生、さっそくですが、おうかがいしたいと思います。今回、座長として就任いただきまして、ありがとうございました。
検討会は豪華なメンバーが勢揃いといった感じでしたが、どんな様子だったのかを簡単にシェアいただきながら、事業に取り組むにあたって、とくに気をつけた点や、とくに意識したポイントなどがあれば、コメントをお願いいたします。
小林茂氏(以下、小林):ありがとうございます。今回、伊藤先生はじめ6名の弁護士の方々と、駒村さんたちの事務局と一緒に取り組みました。私は座長という役割だったんですが、実はほとんどの弁護士の方と対面するのは初めてでした。一方、弁護士の方々は別の取組である「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」に関わられた方々が多く、最初はアウェイな感じで参加しました笑。
でも、初回の一番最初の頃から、わりとみんなの目的というか「最後、ここに辿り着こう」みたいなところはすぐ一致したかなと思います。
スタートアップに関わることによって、ファクトリーなどをアップデートする。この機会を最大限に活かして日本の製造業をアップデートするところであったり、両方の間で文化の違いがあることを前提として、共通の言葉になるガイドラインにしよう、という目指すところは、初期に定まっていたかと思います。
そのあとは、いろいろなスタートアップに関わっている方が多いので、リアルな事例を頭に浮かべながら、「いや、これはやはりこうなっているべきじゃない?」「いや、これはこうだ」「でも、こんな場合はどうするんだろう?」みたいなことを徹底して話し合うことをずっと繰り返していた検討会でした。
駒村:ありがとうございます。私も毎回参加しましたが、みんなでチョコをかじりながら、一つひとつ本当に細かい議論というか、オープンな議論をしました。かなり生産的というか、スタートアップ的なディスカッションの場みたいな感じで、すごく熱を持ってやらせていただいた印象がありました。
駒村:今回の成果物で、とくに「こういうところって今まででなかったよね」みたいなポイントが、もしございましたらコメントいただければと思います。
小林:そうですね、今回の成果物は3点セットで、「ガイドライン」と「フォーマット」と、それからフォーマットの「利用にあたってのポイント」なんですが、そのガイドラインの中ではかなりわかりやすくいろいろ整理しているのと同時に、今までになかったところとして、新しい商慣習を提案しようとしています。
通常ですと、モノづくりは量産して、そこから利益を得るモデルがベースになっていると思います。そこを前提に、わりと最初の頃は相談などを無料でやっていたりするケースが多いと思うんです。
でも、スピードを求めるスタートアップの場合には、「一緒にやって合わなかった。じゃあ別のところに変えよう」みたいなことも起きてくると思います。そういったことを前提として、「最初の段階から、コンサルティングフィーみたいなかたちをとろう」と提案したのは、かなり大きなところかなと思っています。
あとは契約書のフォーマットだけじゃなくて、その利用にあたってのポイントもかなり重要だと思っています。こういう契約書に興味のあるスタートアップの人は、あまりいないと思うんですよ。それで「契約は面倒くさいから後回しにしよう」みたいなことになりがちです。
でも、スタートアップの方々は、当然のことながらソフトウェアもハードウェアもエンジニアリングの部分は力をすごく入れると思います。そして、プロダクトデザインなどのデザインも力を入れてやられると思うんですね。
そうしたところとまったく同じで、契約をちゃんと設計しておかないと、あとでいろいろなことが起きたときに、すごく時間をロスすることになるんですね。
なので、伊藤先生にそれぞれの項目に対するコメントをすごくコンパクトに凝縮して入れていただいていることが、今までとかなり違うのかなと思っています。
駒村:ありがとうございます。
駒村:今、キーワードが出たと思います。なぜ、この新しい商慣習、つまり、最初の相談や要件定義といった段階で、フィーが発生するような契約・取引が提案されるべきなのか。お考えを少しうかがえればと思うのですが、いかがでしょう?
小林:一番最初に基調講演をいただいた藤岡さんの話にもあると思うんですが、量産を国外でやるケースがどんどん増えてきています。もちろん、国内で全てやることもありますが、初期の量産は国内でやって、そのあとは国外へ、みたいなことが現実としてあります。
でも、「これからは、どこが競争力を一番とれるんだ?」「どこの力をもっと上げていかなきゃいけないのか?」と考えていったときに、製造プロセスの最初の部分の要件・要求定義のところから、製造できるかたちに作り上げていく部分が一番重要だと考えました。
これが既存の製品群と同じことをずっと繰り返しているだけだと、その幅が広がっていかないんですけど、スタートアップと関わることにより、今までやったことがない、無茶なもの、とんでもないものなど、未知の領域と関わり、それをなんとか実現するところを一緒にやることで、その部分が徹底的に強化されていくと思うんです。
それをやるためには、要求・要件定義の時点からフィーを発生させることが重要だと思いました。今、吉田さんも「モノづくりの復興」と掲げていますけど、「今やらなきゃいけないだろうな」と思って、今回のガイドラインに反映しました。
駒村:ありがとうございました。日本のモノづくりの強さを改めて再興していく意味でも、最初の相談、仕様検討段階で、そういうプロフェッショナル同士の協業がしっかりした取引をベースに進んでいくことを後押しすることに、すごく意味があるんだというコメントだったかなと思います。小林先生、ありがとうございました。
駒村:それでは、伊藤先生に話を振らせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
伊藤先生とは一緒に多くのファクトリーやスタートアップのお話しを聞き回りました。その中で、例えばギリギリ言える範囲で大丈夫ですので(笑)、印象的だった事例と、このガイドライン的にどう対策を打つのかを掲載しているのか。そんな点をご紹介いただければと思います。よろしくお願いします。
伊藤毅氏(以下、伊藤):印象的だったというか、おもしろかったのは、スタートアップの方々は、Slackなどで連絡を取りたがるんですが、製造業者や町工場の方々は普通にFAXとか言われるので、相互にコミュニケーションが取れないレベル感から始めていることがけっこう多かったことですね。
大きな話で言うと、製造業者の方々もスタートアップの方々も支援業者の方々も、みなさんに共通しているのは、モノづくりに対する強い思いです。同時に、文化や立場が違うということで、コミュニケーションもSlackとFAXというレベルで異なっているということで、その両者が話し合うと、それぞれの熱い想いもありますますコミュニケーションがうまくいかない。これで何が起こるかというと、喧嘩になったという事例もあった。
ヒアリングした製造業者の方々は、比較的協業に慣れている方が多かったので、そこは乗り越えている方が多かったのですが、一般の製造業者の方々は入り口で喧嘩になるみたいなことが多い。このような双方の文化や立場の違いがまとまっているのが、このガイドラインだと思っています。
ここに書いてあることで共通しているのは、基本的には、コミュニケーション不足やコミュニケーションの掛け違いで起こる問題です。「最初にこれを言っておけば済んだのに……」みたいなものですね。
ですので、今回のガイドラインにしても契約書にしても、まず、この協業の入り口のプラットフォームのような、下地となるようなものとして作っていったことがポイントになってきます。
ちなみに、SlackとFAX問題については検討会でも協議しまして、電子的な方法での通知もお互いが合意すれば認めることにしました。FAXだけじゃなく、Slackでもコミュニケーションできるという規定を入れていますので、後で確認してみてください。
駒村:ありがとうございます。まず、ガイドラインを協業を始めるためのツールとして使っていただきたいという思いがあったのだということですね。
それから、いま伊藤先生のお話をうかがってわかっていただけたと思いますが、現場のみなさんの生の声を聞きながら、ガイドラインに含めるところ、それから契約上にも入れ込んじゃおう、といったかたちで、できる限り生の声をガイドラインや契約書に落とし込むことをトライし続けた事業だったと思います。
駒村:伊藤先生に、最後に1点だけおうかがいしたいのですが、今回、契約書のフォーマット日・英版と、「利用にあたってのポイント」ということで、契約書関係ではこの3点を作っていただきました。
実際に事業者さんに使っていただくときに、使い方でポイントとなるところがあれば、みなさんにご説明いただければいいかなと思いますが、いかがでしょうか?
伊藤:今回、いろいろヒアリングさせていただいたなかで、大きく言うと、試作の製造の発注というところと、そもそも開発という大きな2つの括りがあります。そのほかにもいろいろな協議事項があると思います。
それを個別の契約にすると、やはり非常に発注関係が重くなってきますので、その入り口のコミュニケーションのプラットフォームとしての契約書というかたちで、新たな契約形式を作りました。そのために検討会のメンバーも「こういう契約形式で本当にうまくいくのか?」をけっこう議論しました。それが今回の契約書になっています。
ですので、ぜひ本当の入り口の話し合いのところから、この契約書を使ってみてほしいです。具体的にどう発注するかを決めるにあたって、まず入り口でこれを基本契約として締結しておく。具体的なところは「この中を見ながら協議していきましょう」みたいなかたちにするのがいいのかなと思っています。
中には秘密保持条項が入っていますので、もちろん別途、CA・秘密保持の契約を結んだ上で今回のフォーマットを結んでいただいてもいいと思います。こういうことで、なるべく早い段階がいいのかなと考えております。
駒村:ありがとうございました。契約書も含めて、コミュニケーションツールとして活用いただきたいというコメントだったのかなと思います。ありがとうございます。
早いもので、時間がもう押しております。最後に、小林先生に会場のみなさまにひと言、コメントをいただければと思います。よろしくお願いします。
小林:この数ヶ月間取り組んできたものを、今日成果としてお披露目することができました。
最初に話をするときに、どうしてもこういうものは出すのが面倒くさくなって、あとのほうになってしまいがちなんですけど、最初に「こんな感じで進めたいんですけど、どうでしょう?」というふうに出していただけるものとして作ってきました。
ここにいるスタートアップ側やファクトリー側の方も、ぜひ活用していただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします。
駒村:それではお時間を過ぎましたので、我々の調査報告は以上とさせていただきます。パネリストのお二人、ありがとうございました。会場のみなさんも、ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
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