2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
提供:株式会社ネットプロテクションズ
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酒居潤平氏(以下、酒居):たぶん、みなさんも突っ込みたいところが満載だと思います。「本当にそれできるのか?」みたいなところがあると思うんですけど(笑)。
では次に、鈴木さんにもお話をうかがえればと。よろしくお願いします。
鈴木大貴氏(以下、鈴木):はい、よろしくお願いします。我々のようなスタートアップだと、やっぱり細かいマイルストーンを区切っていきながら会社の成長を目指していくのが非常に重要だと思っていて。
例えば我々で言うと、昨年の6月にシードファイナンスが終わりました。じゃあ「次のシリーズAはどうするんだっけ」とか「シリーズBはどうするんだっけ」とか、そういったバリュエーションや調達金額をイメージし、このタイミングではMRRがどれくらいになっていないといけないとか、導入社数がどうなっていないといけないとかを逆算して、そのためには「月のリード件数がこのくらいの状態になっていたほうがいいよね」といったように、その時々に達成しておくべき状態が、SaaSスタートアップなので非常にイメージしやすいんです。
なので、じゃあそこに向けて、会社のリソースをどこにフォーカスして使っていくのかを考えるために、OKRを導入しましたということが背景としては大きいですね。
やらないといけないことはすごくたくさんあるんですけど、その中で自分たちが何を追いかけていくのか。スモールチームではあるんですけど、自分たちの会社が今どこに向かって走っているのか。みんな同じ方向を向いていないといけない。リソースや意識が分散することによって、やるべきことが散らばっていくし、それが積み重なっていくことで、あるべき状態を達成することが難しくなるところがあると思っています。
鈴木:そういう意味で言うと、OKRが我々にとっては非常に強い武器になり得るだろうなと思っています。まだまだ運用しはじめたばかりではあるんですけど、OKR導入前についてはやっぱり……みんながんばっているんですけど、それぞれのやりようみたいなところがあります。それぞれが追いかけるものを追いかけるというところから、やっぱり明確に「こういうことを定めてやっていこうぜ」とリソースが集中できる状態になると、パフォーマンスも変わってくるのかなと思っています。
そのあたりはやってよかったというか、効果的に運用を始めることができているかなとは思います。
酒居:なるほど、ありがとうございます。そこでお聞きしたいんですけど、OKRを導入して目的に向かって、みんなで一丸となって、スピードを持って進まないといけないフェーズだというのは、けっこう僕らも同じだなと思っていて。そういった中でOKRを入れてみて、何がどう変わったんですかね。
鈴木:まず、明確にKey Resultsを定めることによって、「Objectiveの部分はわかるんだけど、それを達成するために自分たちが日ごろの業務の中で、何の数値に対して責任を持つのか」がはっきりします。
さらにそれぞれの数値にオーナーを持たせるので、自分たちの日ごろの業務が会社のこういう部分に貢献しているということを、メンバー各々が意識しながら仕事をすることができます。OKRの運用を始めてやっぱりアウトプットの質は明確に変わってきたかなと思っています。
鈴木:やっぱりスタートアップに入るようなメンバーは、事業のポテンシャルとかマーケットを作っていくことに対して「いいな」と感じてくれた人だと思うんです。そもそも自分たちがどういうミッションを達成したいんだっけ、という想いに共感してくれているメンバーが多いからこそ、その数字の積み上げによって、定めているOKRのObjectiveの部分にどこまで近づけられるのかが大きなポイントだと思っています。
酒居:なるほど。Key Resultsのために定量的な数字を達成したかを追うことはもちろん大切なんですけど、「そもそもそれって、何のためにやっているんだっけ」みたいな。「俺たちは結局、何がやりたいんだっけ」ということに対しての納得感であったりワクワク感は大事ですよね。
OKRによるエモいObjectiveがあることによって、モチベーションであったり自分の主体性みたいなところが変わってくるということですかね。
鈴木:そうですね。やっぱり数値だけが独り歩きしてしまうというか。「これをやって」と言われるよりも、その数値を達成することによって、自分のプロダクトを通じてお客さんにこんな価値が提供できるとか、大事にしているこの部分がこうなるとか。やっぱりそのほうが、人の気持ちの入り方は絶対に違うので、Objectiveのエモさはめちゃくちゃ重要だと思います。
酒居:ありがとうございます。じゃあそれを聞いていただいて、橘さん、どうですか。ちょっと、心変わりはあったりしますか。
橘大地氏(以下、橘):世界観ですよね。それはそれですごく立派で、そうやって成り立っている会社なんだと思います。うちもたぶん、導入したら導入したで、そういう成長の仕方ができるところもあるとは思うんですけど。やっぱり運用は、心から信じ切れていないと、50人くらいの組織だとなかなか……。例えば自分がいきなり「OKRを導入します」と言ったとしても、やっぱりメンバーそれぞれで各オペレーションが発生するわけで、心から信じていないと運用が回るわけないんですよ。
酒居:それはそうですよね。
橘:クラウドサインでいくと、やっぱり顧客のために動いていくということで、それで目標をハイ達成しようが、よりハイ達成を目指していく。それをやらないヤツはカッコ悪いみたいな、そういう文化があるので。どのフレームワークでやっても、それはそれで成長すると思うんですけど、別にそれがOKRという手法かどうかは、あんまりこだわりがないですね、今のところ。
酒居:ありがとうございます。ユーザーのことをみんなが見るというのは、僕は本当にすごく素敵だなと思います。クラウドサインのみなさんがそう思って、目標を個別に設定せずとも動けるのはなぜなんでしょうか。
橘:「マジョリティがどっちか」みたいな、そういうカルチャーは気にしていて。例えば自分自身も仕事をしているときは働くんですけど、家ではだいたい寝っ転がっていたりします。結局、人は環境に依存しますし、めちゃくちゃすごい人は世の中には数少ないし、めちゃくちゃ変な人もあんまりいない。マジョリティがどっちなのかというのも、本当に環境に依存して決まるので。
橘:コアメンバーや初期のメンバーがユーザーに関すること以外のセリフを発すると、やっぱり組織は売上とか受注件数の話ばっかりになっていくので。そうすると、本当に「数字の会社」になっていきます。そういう会社はめちゃくちゃある。放っておくと、どうしてもそうなります。「マジョリティがユーザーの話をしている」というのが重要で、すごく意識しています。
酒居:それ、めちゃくちゃおもしろいですね。トップが伝えるメッセージは、たとえ言葉にしなくても、その姿勢をやっぱりメンバーは見ていて。それが世界観というか、環境を作っているということですよね。
橘:そうですね。売上や件数を追って、達成したら「わーい」となるんですけど、それはやっぱり付属情報というか。目の前のユーザーが喜んでいるのか、悲しんでいるのか、クレームが来ているのかといった情報のほうが、はるかに重要ですね。
酒居:本当にそれがすごいなと思っていて。やっぱりビジネスとして、どうしても数字を気にしないといけない会社は多いと思いますし、気になってしまったりすると思うんですよね。
その一方で、クラウドサインは急成長されている中で、トップも「数字や売上じゃなくて、ユーザーさんを見るべきだよ」と言うと。だからこそ伸びているんだと。そう言い切れて、結果的にちゃんと組織としても急成長できるのは、どうしてなんでしょうか。
橘:そう言っているほうが、結局売上は上がると思っています。売上を上げるためにユーザーを喜ばそうというのは、やっぱり逆ですよね。そうやって毎日生きていると、売上は達成できるんです。でも、達成できていないと、こういった綺麗ごとは言えなくて。そうなると売上の話ばっかりになって「値上げしよう」とか言い出すことになります。売上がついてきているから、綺麗ごとも言えるんだと思いますね。
酒居:ありがとうございます。めっちゃ驚きじゃないですか? トップの方が「売上じゃなくて、ユーザーさんを見ていればそれでいいんだ」と言い切れるのは、めっちゃカッコいいなと思います。
酒居:ネットプロテクションズさんもすごく急成長されている中で、自由というか、各々が主体的に動ける組織のあり方を選択されているのはどうしてなのでしょうか?
中原雄一氏(以下、中原):橘さんと同じで、「(数字ばかり追っていると数字の会社に)なるんですよね」というところが結論かなと思っています。最終的には感覚の話になっちゃうんですけど。
人はどんなときに一番パフォーマンスを出せるかを考えると、トップから「やれ」と言われたときと、内発的動機で「これが本当にやりたいんだ!」と自分で設定したものをしがみついてでもやろうとするのでは、やっぱり後者のほうがレバレッジが効くと思っています。
事業部のメンバーは全部で30人ちょっとくらいで、いろんなパートナーさんを含めると80人から90人くらいいるんですが、内発的動機であればレバレッジが効いてくるんです。それが大きいですね。
あと、やっぱり組織は最終的にはチームじゃないですか? それが「売上のため」とか、個人の目的になったときに、戦い合うようなところがあったりします。そうではなく、同じ共通の目標になれば「じゃあ、どうしようか」とシナジーがどんどん生まれてきます。
このことからも、理論的には目標や売上のためじゃなくて、「自分たちのために」とか「ミッションのために」と言ったほうが、結果的にパフォーマンスは高くなりますよね。そうすると売上もついてきますよね、みたいな概念として捉えています。
酒居:なるほど。本質的なことはなんだっけ、というところから逆算した結果、今のカタチになったということなんですね。
酒居:ありがとうございます。なんか……鈴木さんはいかがですか?
(会場笑)
めっちゃ無茶振りしちゃうんですけど(笑)。
鈴木:けっこう大きなボールが飛んできました(笑)。そうですね……中原さんや橘さんのお話を聞く限りでは、OKRを使っていないとは言いつつも、たぶんOKRっぽいのはきっとあるんだろうなと感じました。
実際に追いかけている数値目標が「何を達成するための数値なんだっけ?」というところについて、とくに言語化して広めているわけではないんですけど、みんなの共通価値観の中で刷り込まれていくからこそ、OKRというフレームワークを用いなくてもできていると。そういうことなのかなと思いました。
酒居:たしかに、ありがとうございます。鈴木さんの話でもそうですけど、けっこう共通するところで言うと……結局「一人ひとりの熱量をどうやって上げるか」という話なのかなと思っています。
トップダウンで降りてきたものは、みんなが納得していたとしても「そういうもんなんだね」と言いながら、やることはやると。そこに本当の熱量ってあるんだっけ、みたいな。でも結局は、なにかを動かすのにそういう熱量がすごく重要で、それをすごく重視されているのかなと、ずっとうかがっていて思いました。
中原:たしかに1つはそうなんですけど、もう1つはやっぱり、最終的に「自律性をどこまで高められるか」がすごく大事だと思っています。SaaSもそうなんですけど、かなりバリュー期間が長いですよね。1個1個で判断はしてほしいんですけど、連動性もかなりある。
これを普通にやろうとするなら、上司や責任者が「こっちだから」と進めていくのも、小さいときはいいんです。だけど、大きくなっていくとだんだん見えなくなってくるんですよね。でもそれは連動しているので、変な方向にブレていくと、いろんなコンフリクトが起きて成長が止まります。これはあるあるなのかなと思います。
それに対して「目標設定のレベルを落としました。それを達成すれば評価するよ、がんばったねって言うよ」とやっていくと、やっぱり人はそれに頼っちゃうと思うんですよね。
そうではなくて、全体の流れから「じゃあどうしたらいいのか」を考えるというか、これに対して自分はどうコミットするのかということでやっていくと、最終的には自律性が生まれて、どんどん自分で考えていけるようになる。であれば、となりの人とも自分でコミュニケーションしていくようになっていくので。
そのためにも、目標を上から落とさないのは、すごく大事なことかなと思っています。
鈴木:個人的な考えなんですけど、人の能力はそんなに大差がないと思っています。我々3人は新しい価値観・サービスを世に問うような立場だと思うんですけど、そういうことをやっていくためには、やっぱり自分たちがやっていること、メンバーにやってもらうことに対して、想いが乗っかるような環境をどう作るかが非常に重要かなと思っています。
そのための1つとして、我々はOKRを使いながらやっています。空気としてどう作っていくかも大事だと思っているんですけど、今後どんどんメンバーが増えていくほど、新しい仕組みを導入するときに大きな摩擦になると思っています。
メンバーがわりと少ないタイミングからOKRを導入しているのも、恐らくある一定規模になるまでは、このフォーマットに倣ってやったほうが、組織の成長スピードが結果的に高くなりそうな感覚がありました。他の施策と比べても、OKRのほうがきっといいだろうなと思って運用を始めて、今のところはわりとスッといっているのが現状ですね。
酒居:ありがとうございます。
中原:ちゃんと繋がりを持ってとか、自律性を持ってとか、あとはハイチャレンジをしていくというカルチャーを作っていくのに、すごく有用なツールだなとは思いますね。
鈴木:そうですね。なのでこのタイミングで始められてよかったなと思っています。10人とか100人とかの単位でいきなりできるかというと、相当しんどそうな気はしています。
酒居:そこまで歴史に詳しいわけじゃないんですけど、OKRは最初にIntelで始まって、次にGoogleが、まだ20人とか30人くらいのときに導入したんですよね。そこから飛躍的にPDCAが回るようになったということは、小さいうちに導入してちゃんと土台を作っていけば、組織を加速させられるというか。もちろんOKRだけの話ではないですけど、そういうところはあるんですかね。
鈴木:そうですね。早めにやっておいたほうがいいかなとは思っています。やっぱりスタートアップの、とくに初期フェーズのモーメントを作っていくことにおいて、もちろんミッション・ビジョンに共感するところもすごく大事だと思います。それを日々の業務に落としていくためのルール・ツールとして、OKRは強くワークするだろうなと思っています。
繰り返しになりますけど、メンバーが増えると摩擦が増えるので、やるんだったら早いほうがいいと思っていますね。
酒居:ありがとうございます。先ほど中原さんがおっしゃった「メンバーの自律性」についてちょっとうかがいたいんですが、目標設定は「管理したい」「トップダウンでやりたい」わけではない、というのは我々に共通しているかなと。一人ひとりが納得感を持って、ユーザーさんのためであったり、自分のビジョンを叶えていくために目標はあるべきだというところは、けっこう共通しているのかなと思います。
そうは言うものの、一方で自律性を持つのはすごく難しいと思っています。そもそも、「みんなが自律性を持つ」のは、組織として難しいと思うんです。そこで、どうやって人材育成や環境づくりをされてるのかお聞きしたいと思います。
橘:前の講演で「うちの組織はOKRをやるときに『やれ』と言われてやらない組織だ」みたいな話をされていましたが、それはうちもそうだなと思っていて。「やれ」と言われてやる組織って、すごくイヤな会社だなと。「やれ」と言われてやらない組織って、すごくカッコいいなと思うんです。
それは自律性そのものだし、OKR的。そういうのがすごくいいなと思っています。自分たちもやっぱり、「やれ」と言われてもやらない組織です。ガンガン意見を言ってきますし、「いや、でもそれ違くね?」みたいな。自分も下に対して躊躇しないですからね。考えていなかったら「考えてなくね?」みたいに言いますし、そういうトライアンドエラーでしか人は育たないと思います。
逆に、「人に任せる組織がカッコいい」みたいな。それだとやっぱり自己育成するしかないです。任せる組織がいいとか、そういう感じじゃなくて、ガチ議論を毎日しまくるみたいなのが、人の自律性や成長を促すんだと僕は思っています。
酒居:なるほど、ありがとうございます。
酒居:中原さんはいかがですか?
中原:いくつか大事なポイントがあるのかなと思っています。まずインフラのハードな面として大事なのは、情報を徹底的に開示するところかと思っていて。ちゃんと判断するためには情報が必要なので、必要な情報を徹底的に出していく感じですね。
さっき「数値目標がない」とは言ったんですけど、会社としては大きいので、3ヶ年の中計みたいなものはもちろんやっています。ただ、そのうえでなぜその数字を置いているのかという裏側のロジックを全部開示して、それを作るプロセスも一緒にやるんですけど、最終的には全員に共有して「なんでそれなんだっけ?」「それってこっちじゃダメなんだっけ?」というのもガチガチに議論して、みんなが数字をわかっている状態にします。そうやって徹底的に情報を開示していくのが、ハードとして必要なんだと思います。
あと、目標は、「こういうものを達成します」という、これから向かう先についての数字を置くんですけど、「ここはやらないでね」「ここはやらなくていいよ」という、やらなくていいゾーンや、やっちゃだめゾーンもちゃんと規定してあげるのが大事だと思います。
そこまでいけば、方向性は正しいんで、なにをしても怒られなくなるじゃないですか。ちょっと未達とかはあるかもしれないですけど。そうしておけば、安心感を持って自分で判断できるようになります。そこまで整備してあげるのは、マネジメントをする上ですごく重要なことかと思います。
株式会社ネットプロテクションズ
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