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株式会社チヨダセキュリティサービス 吉本大介氏(全1記事)

2019.04.05

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システム導入前に確立すべきは、コミュニケーションの回路 M&A先の企業にkintoneを導入するために取り組んだこと

提供:サイボウズ株式会社

2019年2月25日、Zepp名古屋にてkintone公式ユーザーズイベント「kintone hive 2019 nagoya vol.3」が開催されました。kintone hiveは、日々の業務でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、業務改善プロジェクトの成功の秘訣を共有するリアルイベントです。本記事では、父親から継いだ建設会社の立て直しにおけるkintoneの活用事例について、株式会社チヨダセキュリティサービスの吉本大介氏が語ったパートをお送りします。

売却予定の会社を父から譲り受ける

吉本大介氏:みなさん、こんにちは。株式会社チヨダセキュリティーサービスの吉本といいます。

よろしくお願いします。「自社におけるkintone活用事例」ということで、簡単ではありますがお話しさせていただきます。

自己紹介なんですが、吉本大介と申します。1974年生まれで、大学卒業後にいろんな仕事をしてきて、2000年にチヨダセキュリティーサービスに入社しました。

私は2代目にあたります。もともとデジカメ関係のソフトウェア開発の仕事をしていたんですけれども、父から「うちの会社に来たら経営者になれる可能性が高いぞ」と。「来ないか?」ってずっと2年くらい勧誘されてまして。あんまり仲良くなかったんですけれども、そういうのに魅力を感じて入社しました。

2008年に代表取締役に就任しまして、昨年森田鉄工所という会社とMTKエンジニアリングという会社を企業買収しまして、今に至っています。

自分が社長になったきっかけなんですけれども、2007〜2008年あたりのリーマンショックで受注量が激減しました。「うちの会社に来ないか」って言ってた父も、事業継続じゃなくて会社を売ろうとしたんですね。せっかく会社に入ったのに「売るんかい!」と思いまして、大喧嘩になりました。

売るったって、俺はどうすりゃいいんだ、しかも社員もいるのにと。大喧嘩したときに「じゃあもう俺やるわ!」と。社員から代表をやると。うちの父親が「お前できるのか?」「まあ、じゃあやってみろ」みたいな感じでスタートしました。

利益よりも保安を第一に考える

代表に就任した翌年、過去最低の売上ということで、赤字もすごくたくさん出しました。協力会社との関係の見直しとか、自社の施工技術を上げるとか。あと、うちは工事業と保守をやっているんですけれども、そのバランスの見直しをやったりもしました。

それでなんとか回復しまして、今では社員も増えて、九州営業所を設立するといったところで改めて建設工事の部署も作り、今に至っております。

事業概要なんですが、「高圧ガス設備」ってあまり聞かれたことがないかと思うんですけれども。そういった設備の建設から保守を一貫してやりますよという会社です。

企業理念は「保安第一主義」で、社会インフラを支えていくためには保安が絶対重要ですよいうことで、利益よりもなによりも保安をまず第一にしようということを考えながらやらせていただいております。

どんな業務かと言いますと、例えば都市ガスを使っていないエリアで、台所の裏に充瓶やプロパンガスがあると思うんです。(スライドを指して)そういったものを、この右側の写真のような工場で詰めてるんですよ。その工場のメンテナンスをしたりしています。

(スライドを指して)あとはこの真ん中の上のほうなんですけれども、天然ガススタンドと言います。例えば佐川急便さんとか福山通運さんとかの車が来ると、たぶんCNGとかNGVって書いてあると思うんです。それは天然ガスで走ってる車でして、そのスタンドをメンテナンスなどを行っています。

高圧ガス保安法という法律があるんですけど、いわゆる車の車検みたいに法律で決まった検査をさせていただいてます。その他の工事としましては、今説明した天然ガススタンドを作ったりもしています。

(スライドを指して)右のほうに大垣ガスさんの都市ガス工場の名前が入っています。みなさんの家はパイプラインがつながっていて、各ご家庭でコンロの火を付けますよね。その大元の工場のところで建設をさせていただいています。といった、ちょっとマニアックな設備工事業・保守業になります。

最近の流行りなんですけれども、水素ステーションの建設工事ということで、この右側の写真のようにステーションを作らせていただいています。今年は検査もさせていただきました。

もう1個、LNGステーションという建設工事もさせていただきました。これは、日本で初めてです。

LNGという燃料は普通のガスなんですが、もともとはマイナス160度くらいの液体なんですね。その液体をトラックに詰めると走行距離が伸びるよっていうことで、今東京-大阪間の実証試験をやっています。そのスタンドを作らせていただきました。このような仕事をさせていただいています。

事業拡大を機に取り組んだシステムの刷新

私どもの課題なんですけれども、もともと入っていたシステムとして、DOS-Vベースの見積もり作成ソフトを約20年間使用していました。もちろん、バージョンアップはずっとしています。けっこう父もそこはしっかりしてたんだなって、本当に今でも思います。予算管理をしっかりしながら使っていました。

ただ、やっぱりDOS-Vベースなので、バージョンアップをずっとしていくんですよね。みなさんもたぶん、すごく不満だと思うんですが、 Microsoftがバージョンアップするたびに「もうこれは使えません」「じゃあ新しいシステム入れようか」「Windows7になりました」「10になりました」ってなって、どんどんお金がかかるわけですよ。

9年前にもバージョンアップを行いました。そのときには承認機能を追加したりしました。サーバーがうちの会社にあるので、システム会社が5年に1回変えなきゃいけないよと。まあ、3年が推奨とか言ってましたけど。さらに社内のLANでつないでいただけなので、当然外に出ると見ることができません。IPを付与して見られるようにできるとは思うんですが、当然とんでもない費用がかかります。

そんな中、社内の変化ということで今申し上げたように、福岡に営業所を作りました。部署も2つになって、社員数も増える。社員の数が増えれば、自分も現場になかなか出られなくなってくる。どうしようかなって言ったところで、システムを変えようということを考えました。

その頃、ちょうど経営者勉強会に行っていた愛知県中小企業家同友会というところがあるんですが、そこで知り合ったウィルビジョンの内川社長から「こんなのがあるよ」という提案をもらいまして、それでkintoneの導入を決断しました。

クラウド化とペーパーレス化で業務効率を改善

ある程度のシステムが、うちはできあがっていました。もちろんExcelを使っていたり、既存のDOS-Vベースのシステムを使ったりといろいろありますけれども、一応なんとかやっていました。ただ、自社でサーバーを持たずに、とにかくクラウド化を絶対やりたいと考えていました。

もう1つはペーパーレス化です。社内のいろんな申請関係はすべて紙でやっていたので、社員がみんな手書きで書いてました。これをなんとかしたい。さらに作業も効率化したいということをお話しさせてもらいました。

導入にあたって、基本設計は自分と内川さんとで話をしたんですけれども。当然詳細設計というのがいるんですよね。大きな会社さんだったら、IT担当とか〇〇担当とかにやっていただいて進められるんですが。

今日も前の席に座ってもらっているんですけれども、ちょうど総務経理を担当していた妻、社内では「まみさん」と呼んでいるんですけれども、完全に丸投げしました。詳細設計はわからないから、あとは全部打ち合わせしてくれと。めちゃくちゃ怒られましたね。まだお礼を言ってないので、この場を借りてお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

いやぁ、やっとお礼が言えたなぁと思ってます(笑)。その詳細設計をやってもらったおかげで、ようやく導入に漕ぎ着けられたということになります。

アプリが可能にした、入金完了までのシステムとスケジュール管理

私どものアプリで行っていることは、見積もり作成から入金完了までのシステムと、あとは社員のスケジュール管理です。社内申請や現場の工程管理、経営分析といった部分を柱に、今はアプリを稼働しています。

(スライドを指して)例えばスケジュール管理ですと、こういったかたちで社員が全員見られるようなかたちにしています。あとは社内申請です。これも完全ペーパーレス化しました。他にも出張申請とか出張外申請など、うんぬんかんぬんとありますけれども。

実は、上にちょっと書いてますけど、予算番号によって案件ごとに、例えば「Aという案件の出張ですよ」「Aという案件の会議費で、お客さんとご飯を食べましたよ」「物品を買うときに、Bという案件で使いましたよ」といったことを紐付けすることで、その案件の予算管理がさらに積み上がって、粗利がしっかり出るのかなということを今やってます。

このように、見積もり作成から入金確認までをアプリで行っています。まず見積もりを作成して、作成後に作成者から上長に承認依頼をかけます。「受注できましたよ」となると、今度は仕入先に注文書を発行するということで、ここで予実管理をしてます。

実際に納入が完了しましたら、請求書を作成し発行します。最後に入金確認まで行います。一つの実行予算の画面をプリントしてきました。左側が見積もりの項目、それに対して仕入れと実際のお客様に出す金額が、ここで一目瞭然ということになります。

一番左のステータスが例えば受注になったら「受注」、見積もり提示だったら「見積もり提示」まで、入金済みだったら「入金完了」まで、これが社員も含めて全員が見られるかたちになっています。

施工月ベースでの売上可視化でわかること

承認機能としては、これは「iPhoneからでも上長承認がここでできるよ」というものがあります。右側の「承認する」をクリックすることで、中を見たあとに承認できるという機能になってます。

あとは、現場工程管理です。これは始まったばかりなんですけれども、1ヶ月の検査というのはだいたい1日から2日、長くて4日ぐらいの工程で動いているので、いろんな案件がバーっと並ぶんですね。

それを社員みんなが見て「明日はここだな」ってわかるようになると。ずっと下へいくと社員の名前があって、入れる場所もあるんですけれども。Excelのような見え方を、kintoneのアプリでも実現しています。

もう一つは経営分析ということで、例えば部門ごとに実際に積み上がった見積受注分がわかるようになります。SLEというのがソリューションエンジニアリング部という建設関係の部署なんですけれども、それの実際の工事はいくらだったのか。下の棒グラフが粗利益で、どうだったのかがリアルタイムで見られるようにしています。

経理の試算表を見れば当然わかるんですけれども、売上を立てるベースではなくて、実際施工した月にどれだけやったのかを見たかったものですから、このようにしています。

kintoneのアプリは、どこまでのステータスで動いているのかがかわかりやすいので、こういった数字を経理とは別に出せるのかなと。要は、完了ベースで出せるというメリットがあるなということです。そうすると「この月ってこんなに仕事があるんだ!」「逆にこの月はぜんぜんないね」というのが、経理だと1ヶ月くらいずれちゃうんですけど、それが見れるなということでやっています。

出先での要望にすぐ応えられるクラウド化の効果

検査の中でもいろんな種別がありまして、例えば分解整備であったり、開放検査であったりと、粗利の項目がバラバラなんです。それを、一目でこれくらいの粗利があるなっていうのがわかるようにしています。

あとこちらは、売上のベストテンです。どのお客さんがどれくらいのシェアを占めてるのかを見えるようにしています。

「導入してみて、実際どうだった?」ということで、社員のみんなにちょっと聞いてみました。やっぱり一番大きいのが、クラウド化に対する評価です。例えば出張先でも見積もりが作れるし、お客さんに言われればすぐ作れるよねと。

申請関係も、正直iPhoneでもできるよと。今までは会社に戻って鉛筆で書いてましたけども、それがすごく大きいよねということで、すごくやってよかったなと思っています。

あと、なによりこれは僕側のことなんですけれども、承認が早くなったと言われました。これまでは、やっぱり会社に戻らないと承認作業ってできなくて。外ではパソコンを開けないことも多いし、iPhoneで見られるというのはすごく大きいのかなと。ピコーンって通知が来るので、早く承認したらないかんなぁと思いますから、これは大きいですね。

バージョンアップも簡単に行える

マイナスポイントとしては、やっぱり入力しにくいと。どうしてもやっぱりDOS-Vベースというか、パソコンのうえに乗っかっていたソフトで今までやっていたので。クラウド化することでタイムラグもあるし、見にくいとか、いろいろありました。

だけど、このシステムでいいなと思っているのは、バージョンアップが簡単にできることです。例えば、既存の買取のソフトだったら自分たちが合わさなきゃいけないんですけれども、そうじゃなくて、「じゃあこう変えましょう」ということをどんどん検討できるというのが、すごく大きいなと思っています。

現に昨年5月にバージョンアップしました。例えば、今までは見積もりの再発行がなぜかできなかった。これはうっかりしてたんですけど。なので今回、再発行も承認なしできるようにしました。あとは角印をつけられるようにしたこともありました。

あと、Excelだと当たり前のように「元に戻す」機能とかがあるじゃないですか。これはなかなか難しかったと思うんですけど、そのボタンを実装してもらったりしました。みんなの意見を聞いてバージョンアップをしています。たぶん来年もなにかバージョンアップすると思うんですけど、今後もしていきたいと思っています。

私自身がすごく感じているのは、クラウド化によるプラスが大きいと。社員がどこに行っているのか、どういうことをしているのかを、承認を通して確認することができるんですよ。出張申請が出てくれば、ここに何人が行くんだなっていうのもわかるし。

コスト削減と安全性の担保を両立できる

なにより、コスト削減というのが一番大きいと思います。今まで社内のサーバー費というのが、一応3年に1度というふうに推奨されていたので300万円。そこでまたバージョンアップなどで、なにか内容を変えれば200万とかで、結局500万円ほどがかかる。さらに、ライセンス。その会社ではちょっと変わったソフトを入れられていたので、追加のライセンスがいるよと。さらにサポート費もいるよということで、まあまあのお金がかかっていたのは事実なんです。

現在は、初回で払ったお金は400万なんですね。毎年のバージョンアップというのは内容によるので、50万だったり100万だったりとわかりません。しかし、実際に月に出ているお金が人数分のkintoneのアカウントと、サポートでだいたい月2.5万円とか考えると。サーバーが3年に1回でお金がかからない。

なにより壊れるかもしれないサーバーがいらないし、停電があったときにも「じゃあ無停電装置がいりますね」とか、「いい加減にしてくれよ!」っていう状態だったんですよね。なので、本当にクラウド化というのはいいなと思ってます。

さらに九州に営業所を作ったことで、最初のうちはExcelで本社のシステムに入力せざるを得なかったんですけれども、クラウド化したことで九州営業所もkintoneで承認をあげてくるということで、どこにいてもなんの違和感もなくできるというのは、本当に大きいと思ってます。

システムを入れるには、まずコミュニケーションできる回路が必要

今後なんですけれども、昨年12月にM&Aしたと申し上げたように、鉄工会社との連携を当然考えていかなきゃいけないと思っているんです。ただ、すごくワンマンな会社でした。社員が20何人いるんですけれども、一直線で役職なし。鉄工所なのでものづくりなんですけれども、隣の人がなにを作っているかもわからない。要は、社長から言われたものを作っているだけ。その製品の受注金額も粗利益も、誰も把握してないっていう状態です。

この前面談をして、いろんな話を聞きました。毎日のように、「今日は何をやったか」「明日は何をやろうか」「どういう案件が今流れているか」という話をしてます。というのは、kintoneを入れようにもシステムがないので。システムというのはつまり、社員とのコミュニケーションをするための流れというものがないので、まだ入れようがないなぁと本当に感じたんです。今入れたところで「ふ〜ん」で終わっちゃうと思うし、「パソコン? 何それ?」っていう世界ですから。

まずは今後1年間で、工場内作業をこういうコミュニケーション点ホワイトボードを使って見える化をしていこうと。そのうえでkintoneを通したら、そこから効率化が進むだろうなと考えています。仕事のやりがいを持てるようなかたちにしたいんです。隣の人がなにを作っているかわからないとか、自分の作った商品がどこに納められているのかわからないとか、どういうものなのかもわからないって、それではさすがにつらいだろうと思います。

うちはもともと建設会社なので、鉄工所というのはいわゆる隣接業種にあたります。当然連携することでうちから発注をすることになりますし、逆も然りだと思うんですね。作ったタンクのメンテナンスをすることもできるでしょう。

そういった部分で、いきなりすぐはちょっと無理だなとは今感じているんですが、うちでkintoneを使って作ったこのシステムをなんとかM&Aした会社にも導入して、連携できるようにしたいと。そして結果的にワンマンではない会社、社員みんなが考えながら動ける中小企業を目指していきたいなと思っております。

以上、私の報告になります。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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