2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:さくらインターネット株式会社
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高松聡氏(以下、高松):この間の『ボヘミアン・ラプソディ』ブームで、僕5回見たんですけど(笑)。
松島倫明氏(以下、松島):ハードコアですね。
高松:シアターを変えて音響違いで、立川に行ったんです。ものすごく満席なんですけど、どう考えても立川市民じゃない人がほとんどなんですよね。「いったい都心のどのあたりから、どうやって立川まで行っているのかな?」とか。
松島:おもしろいですね。それを飛行機などに紐付けちゃって、この飛行機に乗ってきた人は自動的にそういうデータがここ(Tellus)に載ってきて、「どこの国から来た人々はどういう動きをしてるのか」とかわかったらおもしろいですね。
高松:だから、ニューヨークの街並みには外国人がすごくたくさんいるけど、「実際、日本人はどこを歩いているんだろうか?」とか、そういうグルーピングが見えたらおもしろいなと。
松島:いや、本当にそうですよ。僕は妻がイギリス人なんですけれども、やっぱり東京に住んでいる海外の人って、彼らの地図を持ってるんですよね。僕らは僕らのパーセプションで都市を見ていて、「このお店がこうだ」「レストランがこうだ」と思っているんですけれど、彼らは彼らの中でよく行くお店があったり、彼らの文脈の中で「このお店は日本の中でクールだ」というものがあって。
話していると、やっぱり見ている地図がぜんぜん違うなということは、常日頃思っています。それが都市の俯瞰で見られたらものすごくおもしろいし、もしかしてオリンピックのときに、その文化圏の方に向けた地図のようなものを提示できるかもしれないですね。
高松:そうですね。
松島:おもしろい。ありがとうございます。すみません、サクサク進みましょう。
松島:もう1人、建築家の豊田さんも答えていただいていて。彼がおもしろいのは、例えば、このデータってそもそも、こうやって今僕らが見て「地図だ」と思うようになっているけれど、送られてくるものは画像じゃなくて、コードというんですかね。
牟田梓氏(以下、牟田):そうですね。「0101」みたいな信号が全部送られてきているんですね。
松島:なので、それをそのままマシンごとにデータでやり取りさせて。人間を介在させるときは、こうやっていちいち見やすくしないと理解できないんだけれども、そんなことをさせないでマシン同士でガンガンやらせたら、ぜんぜん違う世界が出てくるんじゃないかという。
ちょうど『WIRED』でも、今月「『マシンインターネット』の時代」という記事を1つあげたんですけれども、これからもうどんどん人間を介在させずにすべて……IoTと5Gがつながったその先ですよね。
インターネットって、今は人間が出てきて人間が情報をやり取りしているとすると、これからそうじゃない世界に移っていて。そこにTellusを噛ませると、人間が知らないうちになにかすごい世界がやってくるということですかね。そこらへんは、ドミニクさんがお詳しそうなので。
ドミニク・チェン氏(以下、ドミニク):でも、おそらく豊田さんもそういうものを想像しておっしゃってるのかなと、僕は想像したんですけれども。例えば、普通にディープラーニングの解析器などにデータを渡していくと、いちいち人間がラベリングしないと見つからないようなものじゃなく、人間でも気がつかないような特徴を、勝手に世界中の地表面から抽出していく。
それを人間が教えてもらうようなことは、たぶんどんどん出てくるんじゃないのかなという想像ができる。でも、そこから何が見えてくるのかは、本質的に想像できないからこそ価値がある。
松島:そうです。僕らの理解できない言語でやりあっちゃうわけですね。
ドミニク:そうそう。
松島:おもしろいですね。そういうものがいくつか出てきたんですが、その中でやっぱり飛び抜けているのがドミニクさんの未来像なので、こちらをドミニクさんにご解説いただいてよろしいでしょうか?
ドミニク:いや、なんかそんなふうに紹介していただけると恥ずかしいんですけれども(笑)。
松島:(笑)。一番おもしろい。
ドミニク:ちょっと長いんですけど、これは僕がカタログに寄せた文章です。僕はいろいろなことをやっていて、ウェルビーイングとは直結しないんですけれども、今、ぬか床の研究をやっていまして。
ぬか床って、けっこう謎が多いんですよ。例えば農業関係の研究者の方たちがすごくたくさんのおもしろい研究をされてきているんですけれども。僕も趣味がぬか床で、自分の会社を立ち上げる時に、インターネットのコミュニティを作るようなサービスを作っていたんですけれども、それと同時にぬか床を作り始めて。そうすると、インターネットとぬか床で同じことが起こっているんじゃないかと思えてきたんですね。
そういう妄想をあちこちで放言していたら、なんだか『WIRED』の前編集長の若林さんから「いや、ちょっとチェン君、発酵食とインターネットの関係について取材しなさい」と言われて。ちょっと調子に乗っていろいろ始めたら、すごくおもしろくなっちゃって(笑)。
今この背景に映っているのが、僕のぬか床の表面なんですね。今これをずっと自分で研究していてですね。来週イタリアで「ミラノ・トリエンナーレ」という歴史のあるデザインフェスティバルがあって、そこで僕が今作っている……ぬか床のロボットを作っていて、それを半年間展示しに行くということで。
松島:ぬか床デビューしますか。
ドミニク:ぬか床デビューしちゃいます。そのためにこういう英語の資料を作っていたんですけど、みなさんにはたぶん説明の必要はないと思います。
ただひと言だけ言うと、この米ぬかは、精米するときに普通は無駄なものとして捨てられるんですね。それをたくさん集めてお水と塩と麹を入れてあげると、そこに乳酸菌や酵母菌など非常に複雑な生態系が生まれるんですね。そこに野菜を入れるとおいしい漬物が作られるということで。
こっちは普通のぬか床というか漬物なんですけど。これが僕の今家にあるぬか床で(笑)。
牟田:だいぶハイテクですね。
ドミニク:だいぶぐちゃぐちゃなんですけども(笑)。
松島:奥がぬか床なんですか?
ドミニク:あの奥の白い容器がぬか床です。あそこにいろいろなセンサーが刺さっているんですけれども、Nukabot sensing……あっ、ぬか床ロボットなので「Nukabot(ヌカボット)」という名前です。
松島:Nukabot。
ドミニク:Nukabot sensing system。これは発酵デザイナーの小倉ヒラクさんとエンジニアリングの工学博士の Seong Young Ahさんというチームで今一生懸命作ってるんですけれども。
これはちょっとTellusと似ているところがあって。僕はずっとこのぬか床のAPIを開発していまして。今日もここに来るまで、ずっとコーディングしていたんです。これはスクショなんですけど、僕のスマホでも、パッとリアルタイムで僕の家のぬか床の状態のデータが全部出ます。
松島:すごい。
ドミニク:これをもとに判定のアルゴリズムを書いていて。今、発酵が上向きなのか下向きなのか、腐りそうなのか腐りそうじゃないのかといったことを……。
松島:これは温度とかpHとか。
ドミニク:そうですね。pHはみなさんご存じの。
松島:あと、ORPって何ですか?
ドミニク:ORPは酸化還元電位といって、電子が離れたりくっついたりすることを酸化と還元というんですけれども。
松島:繰り返してるんですか?
ドミニク:そうです。これで、微生物の挙動をけっこう細かく取れているということが、だんだんわかってきたりですね。本当に手を動かしながら、ちゃんと仮説と合っているかどうかを検証しているんですけども。
ちょうどぬか床の表面に本当に安い30ドルぐらいのカメラをつけて、3ヶ月間ずっと定点で撮っているんです。そうすると、これは僕が動かしてるのではなくて、ぬか床の表面がまるで呼吸しているかのように盛り上がったり盛り下がったりする。左がいい感じに発酵しているぬか床の表面で、右が腐っている途中のぬか床の表面(笑)。
松島:AgingとRottingで違う。
ドミニク:そうそう。
高松:これは、何倍かに早回ししてるんですか?
ドミニク:いや、これは1時間ごとに1コマなのでけっこう飛んじゃっていますけれども。途中でちょっと、カメラが天井を向いたりコンセントを見ちゃったりしてるんですけど(笑)。
まだ、これをもとにデータを研究するところまでいっていないんですけれども。もうちょっと高解像度なものが必要だと思っているんですね。ただ、それでもかなりおもしろいことが言えそうだなとわかってきた矢先に、『WIRED』さんのTellusの話がきて、思わず勢いで。地球表面の……。
松島:いやいや(笑)。これ(Nukabot)、Tellusですよね?
ドミニク:これTellusっぽいですよね。
牟田:Tellusでしかない。
松島:ですよね。
牟田:ぜひ、Tellusに乗せていただいてもよろしいでしょうか?
ドミニク:あっ、ぬか床を宇宙に?
牟田:はい。ぜひぜひ。APIを連携させていただいて。
ドミニク:ありがとうございます。宇宙のぬか床と。それ、うれしいです。
牟田・ドミニク:ぜひやりましょう。
松島:すごい、1つまとまりましたね。
ドミニク:ありがとうございます。
高松:真上からセンシングしてるんですよね?
ドミニク:はい。これは真上から撮っているわけです。
高松:じゃあ、まったくTellusと同じですよ(笑)。
ドミニク:Tellusと同じです(笑)。ぜひそれ高松さんに持っていっていただいて、宇宙に。
高松:(笑)。
ドミニク:あっ、よかった。うれしいな。
松島:いや、でもなんか、ちょっとぬか床を土壌に……。
ドミニク:そうそう、土壌っぽいですよ。だから、人間の目ではたぶんあまり見えないんですけれども、これが白黒になっているのは、実は赤外カメラモードで撮っているもので。そうすると、機械に解析させるとおそらく人間には気づかないような何かがデータとして出てくるんじゃないかなということを、普通に考えているんですね。
松島:おもしろい。
ドミニク:こういうことを妄想して書いちゃったわけなんですけど、そのあと、ここに来る前に少しだけ調べたら、Tellusの事例で米生産者の方が出ていて。
牟田:はい。事例を挙げさせていただいています。
ドミニク:『宙畑』でそういう記事があったので、非常におもしろく読んだんですけれども、緑地と土壌を画像解析させて、米がどういう色かを全部米農家の方がセンシングして、その収穫の効率性がすごく上がったというお話があって。
さらに解像度がまさに30センチくらいに高まっていった先には、本当に「ここの土壌にどういう微生物がいるのか?」ということがわかってくる時代も、遠くないと思っていて。こういうことができたらいいなという。
松島:おもしろい。これもいきますか。今ちょうど「DIGITAL WELL-BEING」という特集をやっていて、ウェルビーイングって何かと考えるときに……。
昔は、例えばDNAを全部解析すると人間の設計図が全部わかって、僕らの謎が解けるんだと思って解いてみたら、99パーセントぐらいはほかの動物と一緒だった。それでは、まったくわからなくて。
結局、今は何をやっているかというと、人間のマイクロバイオームというか、人の常在菌みたいなものを全部解析しよう、デジタル化しようとやってるんですが、たぶんそれはまだぜんぜんできていなくて。
でも、それが全部終わっても、結局、今度は「自然とどうやって菌をやり取りしているのか?」ということを全部解析しないかぎりは、自分たちの感情や健康に与えている影響がわからないとすると、先ほどの伊藤さんの群れの話(データ活用により、個のモビリティのみならず集団のモビリティも捕捉できるという仮説)じゃないですけれども、「この林はすごく良い菌がいっぱいいるから、ここに行けばいいんじゃないか」というのができそうじゃないですか?
牟田:いけそうですね。目で見えるRGBのような赤と緑と青だけじゃなくて、赤外(線)などの波長でも、衛星はかなりたくさん撮っているので。おそらく人間が見てわかること以上に、何かわかることがあるんじゃないのかなという気がしますね。
ドミニク:さっき休憩時間の映像の中で、「土壌の水分のデータが取れる」ということが書いてあって。
牟田:はい、ありました。
ドミニク:僕はそれをパッと見て、じっと見て、「使える!」と思ったんですけど(笑)。
松島:おっ、ぬか床の水分と同じですね、それ。
ドミニク:ぬか床は、水分がむちゃくちゃ大事なので。
松島:これはぬか床のアナロジーだと確かに、想像力というか妄想力というか、相当Tellusでいけますね。
ドミニク:いけますね(笑)。
松島:ありがとうございます。
ドミニク:こんな感じ。
松島:ありがとうございます。いや、そういう提案をいろいろと本当に書いていただけて、ありがとうございます。もう1つ、宇宙でCMを撮られてきた高松さんに、「俺だったらTellusをこう使う」というのをぜひお願いいたします。
高松:はい。ぬか床ほどおもしろくないんですけど(笑)。
これはアポロ時代に撮った地球の写真なんですけれども、今ISSが地上400キロにあって、ISSから地球を撮るとこれぐらいの写真なんですよね。
こういう丸い写真は、少なくとも今は1枚物の写真としてカメラで撮ることはできていなくて。この大きさなのでけっこうきれいですけれど、これは4メーターぐらいのプリントにしようとすると、ぜんぜんボケボケだったりして。
松島:そうか、解像度が足りないんですね。
高松:そうなんですね。
牟田:カメラの限界が、そこらへんにありますね。
松島:そうなんですか。ふーん。
高松:普通、今ISSから撮れる写真というと、(スライドを指して)典型的なものはこういう写真とか、夜だとこういう写真だったりするわけですけれども。依然としてぜんぜん画質が足りないんですね。2世代ぐらい前の2,400万画素ぐらいのデジタルカメラで撮っているのが現状なんです。
ただ、宇宙に行って地球を見て帰ってくると、多くの宇宙飛行士の意識が変容したとよく言いますね。もちろん「戦争なんて、何でしてるんだろう?」から、環境のことをすごく真剣に考えて環境活動家になったり、人によっては宗教活動になったり、なんらかの意識変容をすると思うんですけれども。
松島:例えば、服を作ってリッチになった人などがこれからどんどん宇宙に行くのは、人類全体としてはやっぱりいいことなんですかね。みなさんの意識が変わって帰ってくるという。
高松:総論としてはいいことだと思うんですけれども、服を売ってお金持ちになって、自分で(宇宙に)行ける方はごく限られているので。僕が今日お話ししたいことは、宇宙に行けない方が地上で、宇宙に行ったのと寸分違わないというわけにはいかないけれど、90パーセントぐらい同じものが見えたらいいなと思っているんですね。
ここにも書きましたけれども、僕は50パーセントどころか、20パーセントも再現した写真も動画も存在しないと思います。理由はいくつかあって、1つはカメラがいまいちであると。これは別にカメラメーカーに文句を言っているわけじゃなくて、「できるだけいいカメラを持っていこう」というモチベーションが今、宇宙機関にない。
松島:いろいろな制約の中で。
高松:ないしはレンズとかね、一部IMAXとかの動きもありますけど、まだまだ不十分で。いまや1億5,000万画素のカメラなどが出てくる時代ですから、それを4台組み合わせたら6億画素の写真が撮れるわけじゃないですか。でも、6億画素の写真を撮ろうという人がいないんですよね。でも、それぐらいないとやっぱりドットが見えてしまうし、写真でも動画でも宇宙に行ったなという感じがしないと思うんです。
「4Kや8Kなんて意味ない」という人がいますけれど、僕は8Kはぜんぜん足りないと思っていて、32Kぐらいいると思っているんですね。だから、32Kぐらいの映像を撮って、ここでもし32Kで流れたら、みんな「えーっ!」って思うと思うんですよ。
松島:そうか、その没入感というか、プレゼンスみたいなものがまったく違うわけですね。
高松:そうですね。それを実現するには大きく3つあるかなと思っていて。1つは、ISSや月にフォトグラファーやアーティストがすばらしいカメラ機材を持って撮影に行って、それを地上で見せると。これは僕がやりたいことなんですけど(笑)。
2番目には、地球の撮影が主たる目的ではないにしても、重要な副目的としたカメラを搭載した探査機を地球軌道外に出して、アポロ以来初めて、丸い地球をものすごく高精細に撮ることができると思うんですね。
高松:もう1つは今日のテーマですけれど、Tellusにあるような非常に高分解能な光学センサーを持った衛星が、可視光プラス遠赤外線などで(撮影して)、晴れの日を全部足し合わせていくと、技術的には、ものすごく細かい解像度の丸い地球の写真ができると思うん……できますよね?
牟田:できると思います。何メートルぐらいの解像度だったらご満足いただけますでしょうか?
松島:おっ。
高松:いやー、1メートルぐらいにしたいんですけど。
牟田:1メートルならいけると思いますね。
高松:できますか?
牟田:はい。
松島:でも、1メートルでは、何枚重ねると地球ができるんですかね?
牟田:今の技術ですと、1メートルの解像度の衛星だと10キロ×10キロぐらいで1枚になるんですね。なので、日本全国とかだともう数千〜数万枚になるイメージ。
高松:でも、ずっと回っているわけですから。少しずつ軌道を変えて、日本だけじゃなくて、地球1周分を撮っても。
牟田:そうですね。全世界分撮れます。
高松:合成するには人間とコンピューターの大変な労力が必要だけれど、晴れのデータを足していけば、技術的には可能なはずなんです。それと、実際に一枚絵で撮ったものや航空写真を合成していくと、今まで誰も見たことのないようなものすごくきれいな地球の写真が作れるなと思っていて。
松島:クリックしてズームしていっても、ずっときれいなままで。すごいですね。
高松:そうそう。これぐらいの大きさでももうまったく破綻がなくて、32Kプロジェクターなどで映して……「そんなの、どこにあるんだ?」とよく言われるんですけど、8Kプロジェクターを4台並べればいいだけですから、実現できると思うんですね。
松島:これはできます?
牟田:できますね。
松島:来年あたりには、僕らがやっていますね。
牟田:来年ですかね(笑)。
高松:(笑)。
牟田:来年のフェスにはぜひ、その画像を先にPRに。
松島:そうですね。今録音されました。
高松:将来的には、できればセンサーを2つつけていただいて。自然や災害というと、可視光以外の部分のセンサーのほうが重要だと思うんですけれど、やっぱり人間は目で見て「すごい」という効果が大きいと思うんですよ。それで予算がつくというところもあると思うので。
アポロ11号が月面着陸した時に、それを伝えるものがラジオだけだったら、NASAはこんなに予算を使えないと思うんですけれど、やっぱり「そこに行った」「見た」ということが重要なので。税金を払っている僕らには、自分たちの母なる星である地球を、宇宙飛行士と同じように見る権利があるんじゃないかなと思って。
そういうことにTellusを使えたり、ないしはその先、カメラにセンサー2つつけて3Dもできるようになっていったらいいなと思っていて。個人的には、そういうデータを足していって、地球の超高解像度の写真をアート作品として作っていきたいなと思っています。
松島:最後は、アート作品になるわけですね。
高松:そうですね。
松島:3Dだったら、僕らはもうそこに入っていけるような世界になるわけですね。
高松:そうですね。他人の例ですけれど、衛星や探査機が撮影した画像を加工した現代美術は、すでにけっこう存在していて。例えば、ドイツのトーマス・ルフという、写真系のアーティストならベスト3に入るような方が、例えばこういう展示会(ma.r.s.シリーズ)をやっていますけど。
これは火星です。火星の探査機のNASAのデータを借用して、さらにPhotoshopで一生懸命きれいにしてやってるんですけれども、これも火星ですね。さらに、NASAは火星の3Dのデータを取っているので、眼鏡をかけると3Dに見えるんですけれども。
松島:3Dはできるんですか?
牟田:3Dも「違う角度から見ると立体に見える」という技術を使って作ることができますね。
高松:だから、カメラが2つなくても、違う軸で2つの合成をすればできますよね。
牟田:はい。
高松:これは、ある天文台が撮った写真を、またそのアーティストが一生懸命加工してアートに堪えうるレベルに仕上げた作品なんですけど。こういう写真の作品が、ザクっといくらぐらいすると思います?
松島:ぜんぜん想像つかないですね。30万円?
高松:いやいや、3,000万円ぐらいするんです。
松島:うわー、すごい。
高松:ええ。なので、これが30枚売れれば、1億……。
松島:ロケット飛びますか?
高松:10億円ですか。
松島:はい。
高松:実は小さなマーケットじゃないんですね。
松島:本当ですね。
高松:例えばこれは土星で、カッシーニが撮った衛星をもとに写真を再構成して販売しているんですけど、すごくきれいじゃないですか。
松島:本当ですね。
高松:あるいは、これは土星の輪なんですけれど、これも作品として展示されているはずです。なので、現代美術の世界に、衛星が撮った可視光ないしは近可視光が応用できるということはすごくあるなと思っていて。
日本に、せっかくこういうTellusやそうしたデータを開放していこうという動きがあるのであれば、ぜひ活用してすてきなものができたらいいなと。これは子どもが見ても大人が見ても「わぁ」って思えるじゃないですか?
松島:そうですよね。
高松:センシング(センサーなどを使用してさまざまな情報を計測・数値化する技術)って、どうしても可視光以外のところにいっちゃうんですけど、可視光の部分でできることが……。
松島:まだまだこうやって。
高松:すごくあるなぁと、僕は思っています。結論ですけど、センシングデータを分析・解析・応用して実利を生み出すことももちろん第一義的に重要で、そのためにやっていると思うんですけど。
もちろん写真やビデオを介してでもいいんですけれど、やっぱり人が人の目で地球を見ることが重要かなと。それでやっぱり「奇跡の星なんだ」とか、環境や平和や教育ということになっていたらいいなぁ、というのが僕の思いでした。
松島:すばらしい。ありがとうございます。本当に今回のTellusの発表は、やっぱり1つは技術という部分もすごく大きいんですけれど、もう1つはプラットフォームとして、まさにおっしゃったように、誰もがそこにアクセスできるように、あるいは利用の仕方をオープンに議論できるような場を作ることがすごく重要で。
例えば、ドミニクさんは、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの理事もやられていて。
ドミニク:そうですね。
松島:例えば、インターネットなりそういったものが、みなさんがある種の権利を持ちながら、でも、シェアしていくことで生まれていくダイナミズムのようなものをご覧になってきたと思うんですけれど。このTellusの可能性について、そういうプラットフォームの点からはどう思われますか?
ドミニク:今の高松さんのお話の中で、現代美術の活用事例が出てきたんですけれども。例えば、Googleのストリートマップを、あの画像だけを切り出してミュージックビデオを作っている映像作家の方の作品がけっこう話題になったり。だから、それをどう料理するかということはわからないけれども、とりあえずそのチャネルを開いておくと。それを料理する人たちの想像力に任せるという。
だから、そういうものが結局は実利というふうにおっしゃいましたけれども、僕は、地球の文化が進化していくことも、ものすごく重要な実利だと思うんですよね。
効率性とか「経済効果がどれくらいあるんだ?」といったことに即答はできないかもしれないけれども、やっぱりそういうものから新しい表現が生まれてくる。まさにインターネットの権利が共有されている状態で、APIが開放されていて。そこにエンジニアもアーティストも一般人もアクセスしてイノベーションが生まれてくる、という。
だから、そういう雑多な環境に雑多な人たちがちゃんと集まれるようにすることは、ものすごく大事なんじゃないかなと思います。
松島:ありがとうございます。高松さん、そういう意味では、こうやって開かれた場でみんなが使うと、宇宙に行っていなくても意識変容は生まれると思われますか?
高松:そうですね。今ドミニクさんも言いましたけれど、やっぱり、だんだんグローバリズムの先に「地球人意識」というものができていくんじゃないのかなと思うんですよね。火星移住なども始まるし。個人的には、宇宙人がやってきたりはしていないと思っていて。
松島:宇宙人はいない?
高松:宇宙人は来ていないと思ってるんですけど。
松島:それは確かめられますか? それは無理ですよね。すみません。
高松:いやいや(笑)。1秒で済みます。宇宙人になるのは僕らじゃないかな、と思っていて。僕らが、いつか技術が発達してどこかの星に行って、「宇宙人が来た!」と言われるようなね。そういう時代に向けて、だんだん地球人の文化が進化していっていると思うんです。
松島:なるほど。
高松:だから、そういう意味で、こういうTellusのようなデータがどんどん……。今までは一部の人しか触れなかったから。
松島:そうですよね。
高松:これで「森林災害がわかる」「これで農作物がわかる」というのはわかったけれど、どう応用していいのかは、意外と開放してみないとわからないことが多いじゃないですか。だから、開放してみると「こんなことに使える」「あんなことに使える」というのは、いろいろな人がいろいろなアイデアを出しておもしろくなっていったらいいなと、すごく思います。
松島:ありがとうございます。本当にインターネットというのは、地球上にいる僕ら一人ひとりをつなげたプラットフォームだったんですけれども。おそらく、このTellusというプラットフォームは、次にそれを宇宙というところまで引き上げながら、もう一度つなげ直すプラットフォームになるのかなと、今回のお話をうかがっていて思いました。
まだまだお話をうかがっていたかったんですけれども、時間ということなので。いろいろと話が飛んで、ぬか床とか、ワクワクするちょっと未来の話がいろいろと出たのかなと。少し実現できそうなものもあるということで、よかったです。
本当に、今日はお集まりいただきましてありがとうございました。
牟田・高松・ドミニク:ありがとうございました。
松島:みなさん、拍手でよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
(会場拍手)
さくらインターネット株式会社
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