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サイボウズがマーケティングで大切にしていること(全1記事)

2019.03.05

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サービスや商品の伸び悩みには理由がある サイボウズの危機を救った「キャズム理論」

提供:サイボウズ株式会社

2019年2月1日、サイボウズ株式会社が主催する「サイボウズのマーケターが語る! 少人数でも成果を出すオウンドメディア、イベント、セミナー運営の裏側」が開催されました。マーケターの業務は多岐にわたり、作業に追われて企画を考える時間が取れない方も多い中、サイボウズのマーケターがどのように業務効率を高めているのか。クリエイティブな時間や企画を作る工夫や仕事術について語りました。本パートでは、コーポレートブランディング部長の大槻氏が、サイボウズのマーケティングの変遷と戦略を明かしました。

サイボウズのミッションは「チームワークあふれる『社会』を創る」

大槻幸夫氏:それでは、お時間になりましたので、今日のイベントを始めさせてもらいたいと思います。みなさん、こんにちは。今日(のテーマ)は、サイボウズのマーケティングの裏側(「サイボウズのマーケターが語る、少人数でも成果を出すオウンドメディア、イベント、セミナー運営の裏側」)ですね。どのように各チームが業務を回しているかというところを、お話ししていければと思っております。

こちら(のスライド)にも書いてありますが、写真撮影はOKですので、周りの方のご迷惑にならないように撮っていただければと思います。ぜひ(「#サイボウズマーケ」の)ハッシュタグを付けて、Twitterなどで呟いていただければと思います。みなさんにとって、どのあたりが学びになったのかなどを振り返る手掛かりにもなりますので、ぜひ、こちらのハッシュタグを付けて呟いていただければと思います。

それでは最初に、「サイボウズがマーケティングで大切にしていること」をお伝えさせていただきます。

自己紹介です。私は、サイボウズでコーポレートブランディング部の部長をしている大槻と申します。

サイボウズの概要の説明です。サイボウズは、1997年に創業した会社になります。愛媛県松山市にて3名で立ち上げた会社が、今年22年目を迎えまして、世界11拠点・連結で800名ぐらいの会社になっております。

サイボウズの企業理念です。こちらは、私たちにフィットしているかどうかをその都度見直していこうということで、(2018年度版という)年号が入っているんですけども、今の私たちの企業理念です。

みんなが合意しているミッションは、「チームワークあふれる『社会』を創る」ということです。世界中に、チームワークを広げていこう。「チームワーク」とは、「仲良し」とかそういう精神的な意味ではなく、仕事を効率的に行って、成果を上げていくぞと。同時に、メンバー間で満足度(を高め、効率的な)学習を引き起こしていこうと、そのような定義をしております。

そのために私たちは(何をするかと言うと)、優れたグループウェアを開発することと、同時にツールだけでは上手くいきませんので、サイボウズ社内にある(チームワーク強化)メソッド……つまり、使い方や方法論といったものと一緒に、世の中に提供していきましょうと考えています。

サイボウズの急成長を支えた成功体験

この「社会」の中に私たち自身も含まれますので、(企業理念としては)もう1つあります。私たち自身も「チームワークあふれる『会社』を創る」ということで、この4つの価値観を大切に、日々活動をしています。「それぞれの(理想への)共感」「多様な個性を重視」「公明正大」「自立と議論」になります。

現在は国内外を合わせて、850万名のお客様がいらっしゃいます。今一番力が入っているものは、左上の「kintone」というサービスです。

こちらを一番(中心として)ご紹介していくかたちになると思いますが、このような製品ラインナップになっております。

世界(への展開が進んでおり)、例えばUSA・サンフランシスコ、中国ですと上海・深圳、それから東南アジア……というかたちで、どんどん世界へお客様が広がっております。

ここからが本題で、「サイボウズのマーケティングのこだわり」というところです。ちょっと今のこだわりをお話しする前に、もともとのサイボウズから振り返っていきたいと思います。

昔のサイボウズのマーケティングは、どうだったか?

ご存じの方がいらっしゃるかもしれませんが、こんな感じなんですね。BtoBのビジネスではあり得ないと思うのですが、「ボウズマン」という奇抜なアメコミ風のキャラクターを作りました。ベンチャーでしたから、「とにかく、知られないと意味がないよ」ということで、「目立つこと」を最大限に活かすためにこのようなキャラクターを使い、ユニークなコミュニケーションをずっとやってきました。

これが、かなり成功したんですよね。そのため、3年でマザーズ上場という急成長を遂げたのですが……あまりにも成功したために、これが成功体験というか「哲学」になってしまって。「こういうユニークなインパクトのある広告・キャンペーンをやっていくことが、サイボウズのDNAだよ」みたいになったんですよね。なので、そこからずっとそれを引きずっていました。

2005年に始まったサイボウズのマーケティングの変革

例えばこれは、私がサイボウズに入って最初に作った広告ですね。「サイボウズガルーン」という、エンタープライズ向けのグループウェアですが、これ(右側)は社長の青野なんです。ちょっとふざけた感じなので、この広告を見ても「サイボウズガルーン」がどういうソフトなのかは(よく)わからない。「でも、私たちがおもしろいから、それでええやん」みたいなノリで、ずっとやっていました。

例えば、サイボウズのクラウドサービス(の「cybozu.com」)のお客様が1,000社を突破したら、六本木ヒルズに「戦車」を走らせるという……オヤジギャグなんですけども(笑)。

(会場笑)

当時は(お笑い芸人の)スギちゃんが流行っていたので、ネタをやってもらったんです。

一方で(当社は)ネットの会社ですので、その成果の計測をしっかりとがんばっていました。例えば、ホームページのアクセス解析ですね。当時は良いソフトがなかったので、自分たちで「ホームページ視聴率」というソフトを作るとか。あるいは、新聞広告でも紙媒体でもなんでも、誘導先の末尾に必ず識別子を入れて、「このお客様はどこから来たのか?」を必ず計測しています。広告の効果測定に、昔からトライしている会社です。

ちなみに、余談です。これ(右側のキャラクター)は、今は「ボウズマン」と言っているんですけど、最初は「ホームページ視聴率」のキャラクターとして登場したという……サイボウズ社員も、あまり知らないトリビアなんです。最初は(単なる)「ホームページ視聴率マン」とかですね。そこからだんだん市民権を得て、「ボウズマン」というかたちになっております。

こんなサイボウズだったのですが、やっぱり踊り場がやってくるんですね。私が入社したのは2005年なんですけども、このあたりから売上が40億円前後で(成長の)踊り場になってしまいました。もう伸びなくなっちゃったんですね。これはまずい。

あるいは、サイボウズはよく「働き方改革」でメディアに取り上げられます。いつもそこで話しているのは、当時の離職率が28パーセントぐらい……毎週、誰かの送別会をしている状態になってしまったということです。

働き方改革は、そこからスタートするわけですけども。それと同時に、マーケティングにも変革が訪れています。

先端層と一般層が求めるものはまったく違う

その時に大事なのは理論かなと思っていて、私が参考にしたものは、「イノベーター理論」です。

「イノベーター理論」とはどういうものかを図にすると、こんな感じになります。おわかりになる方がいらっしゃるかもしれません。左から右に時間軸が流れていて、新しいものが登場してから、どんどん普及していくよと。縦軸は、人口のボリュームですね。

まず、新しいもの好きのイノベーターが飛び付く。そこからどんどんフェーズを経て、一番ボリュームの多い一般層……マジョリティ層に辿り着く。この時に大事なのは(何かと言うと)、ここに(4つ、縦の)線が入っています。「普及していく過程で、その属性が大きく5つのタイプに分かれるよ」というものが、イノベーター理論です。

このフェーズごとにお客様の属性が変わっていくので、実は企業として商品を伝えていく時に、伝え方を真逆に近いぐらい変えなきゃいけないというのが、ポイントになっています。

前の2つを「先端層」、後ろの3つを「一般層」とまとめたときの真ん中の溝が「キャズム」ですね。「これが一番大きいよ、気を付けなさい」と言ったのが、ジェフリー・ムーアさんの「キャズム理論」です。

何が違うのか? 前の2つの先端層は、何メガバイトや何ギガバイトという「スペック(機能)」がすべてなんですね。情報収集もできるし、イノベーションも大好きだし、不便な点は自分で解消できるし、みんなより先を行きたいと。

これが、キャズムを超えたマジョリティ(一般)層ではどうなるかというと、スペックはどうでもいいんですね。「私にとって、バリューは何ですか?」「私の仕事は、早く片付くんですか?」「それで変わるんですか?」と。そういう「価値」がすべてです。

「ITのことなんてよく知らないし、考えることは面倒。自分の仕事の仕方は変えたくないし、創意工夫もしたくないし……できれば、みんなと同じものを使いたいよ」ということなんです。これぐらい、ぜんぜん違うんですよね。

ムーアさんが言っていることは、とくにIT企業は新しいもの好きに対して、「スペックでスタートしていいですよ」ということです。

でも、マジョリティ層に到達したら伝え方を変えないと、このキャズムに落ちて潰れちゃう。スペックではなくて、お客様とってのバリュー(を重視する必要がある)。自分たちが言いたいことではなく、お客様にとっての関心事で伝えないとだめだよと言っているんです。

スペックよりもバリューを伝えるマーケティングへ転換

ここが、サイボウズにとっても一番大きなポイントでした。サイボウズの「ボウズマン」は、ここ(をとらえたもの)だったんですよね。先端層に対して、アイキャッチとしての役割を果たした。

ただ、「機能が優れていれば、それでいいよ」という人たちだったので、それでも良かったんです。でもサイボウズは時を経て、お客様がマジョリティ層に到達しても、相変わらず言いたいことを言う。おもしろいことを言えば良い……そういうプロモーションでは、やっぱり通用しなかったということなんですね。

この違いをファッションの分野に例えて言えば、ファッションの先端層の方は、ブランドで語れるんです。「今年のプラダは、こんな流行を出してきたよ」ということで、ブランドやスペックで語れるわけです。

一方、一般層の人たちは、例えば「入園式に、こんな格好をしていくといいよ」というかたちで、自分にとってのバリューで伝えてもらわないとわからない。ファッション分野においても、これだけの違いがあるわけです。

それで、サイボウズはどう変わったか? 「ボウズマン」から、どう変わったかということですね。できるだけお客様の現場や悩みに寄り添って、私たちのサービスが何にどう役立つかを伝えていくことに、180°変換をしたんですね。

例えば、これは最近話題になった「kintone」の広告です。働き方改革の文脈でサイボウズの製品が取り上げられますが、それをお客様の現場の視点から伝えているわけですね。働き方改革で、残業削減(が推奨される)。現場はいろいろと押し付けられるけども、結局(予算などの)目標は変わらないので疲弊しています。そんな現場があったので、それを代弁するかたちで、サイボウズが伝えているわけですね。

「ノー残業、楽勝! 予算達成しなくていいならね」とか「さようなら深夜残業。こんにちは早朝出勤。(苦笑)」とか「労働時間削減、結局現場にムチャぶりですか?」みたいなかたちです。製品の広告なんですが、使われるお客様の現実に寄り添ったメッセージング(をしています)。これによって、この広告ではものすごいバズが生まれて、いろいろなメディアでも取り上げていただき、多くの方々に「kintone」を知っていただくきっかけとなりました。

お客様や世の中の「働く」に寄り添う会社へ

あるいは、例えば「サイボウズ Office」チームなどでは、(「サイボウズ Office」を検討中の)お客様を(すでにご導入されている)お客様のところに連れて行って、「実際に、こういうふうに使っているんですよ」ということを見てもらっています。

あるいは、「サイボウズガルーン」の「ざんねんな情報共有ずかん」。いろんな「残念」があるんですね。メールを使っていると、社外秘でもメールアドレスを間違えると飛び出してしまうし。「メールのタイトルで、これが一番【重要】だ」という争いがあったり、「会議は印刷から始まってるんだ!」みたいなことがあったり。このようなものを伝えています。

イベントでも、「お客様に、どうやって(「kintone」を)使っているか」ということを語ってもらったり。挙句の果てには、私たちは何もしないで、お客様がイベントをやる。お客様が「kintone」のイベントをやって(自分たちで)お客様を呼ぶ、「kintone Café」というイベントもやっています。

それで(とどまらず)「サイボウズ式」というオウンドメディアを立ち上げて、もう製品でもないと。世の中の「働く」に寄り添った記事を出していきます。こんなことにチャレンジしています。

チームとしてどれぐらい(の規模)なのかですが、製品ごとに分かれています。だいたい4~5名いるんですけども、中には1名(で運営しているものもあるん)ですね。ここは、ちょっとバイネームで言ってみました。イベントチームは社員としては(鈴木亜希子氏の)1人というかたちで、少人数でやっています。

でも、やることはめちゃくちゃあるわけですよね。みなさんも多忙な中で、日々いろんな仕事をされていると思います。じゃあ、これらをどう回していくのか?

サイボウズの場合はもっと大変で、ワークスタイルが自由なんですね。なので、ある日のうちの部員のワークスタイルは、「在宅で朝7時から」とか「午前中在宅で午後から出社」とか「子どもを病院に連れて行くので午前中はお休み」とか。「新潟で在宅します」とか「午前中在宅で午後から出社して、途中副業で抜けます」とか。もう、これ以上できません(ので、好きにして……)みたいな(笑)。

(会場笑)

このように、人数は少ないし、やることはたくさんある。でも、みんなの働き方はそれぞれで、いろんなリズムで仕事をしています。(みなさんが気になるのは)「サイボウズは、どうやってるの?」というところです。

今日はそれについて、日々どんなかたちで効率を改善しながら業務を行っていくのか、「kintone」を例に出しながら、現場のみなさんに話してもらおうと思っています。

データを手軽に管理・活用できる「kintone」

残り時間はわずかですが、「kintoneとは?」についてお話ししたいと思います。

「kintone」とは、簡単に言うと「データを手軽に管理・活用できるサービス」になります。こんなかたちでグラフにしたり、画像をカレンダー表示にしたりすることができます。

データをリストで管理するだけではなく、フローも付けられます。例えば「物品購入申請」だったら、購入申請を上げます。この申請が上長に伝わって、承認される。こんなワークフローも、「kintone」上で実現できます。

登録した情報についてのやり取りもできます。ここにデータがありますが、コメント欄もあるんですね。なので、ここに登録されている情報について、そのままやり取りができる。「この件について、どう思われますか?」みたいなことを、データに紐づいてコミュニケーションできます。これがメールだととっ散らかっちゃうんですけども、「kintone」であれば一元管理できるというかたちです。

ふだんはExcelでデータをまとめて、メールのCCで共有しているようなものが、(「kintone」なら)一元管理できるようになるというサービスです。

そうすると、「作るのが大変なのかな?」「プログラミングなどが必要なのかな?」と思われるのですが、ドラッグアンドドロップでできちゃうんです。

ちょっと、簡単にデモしてみたいと思います。こちらが実際の「kintone」の画面です。例えば、アプリを1つ開いてみます。

(デモ画面投影)

これは、「働き方宣言アプリ」です。サイボウズの社員が働き方を宣言する時に、「私はこんな働き方をしますよ」と登録して、それをみんなで共有する。そういう、働き方をシェアするデータベースアプリなんですね。これをちょっといじってみたいなと思います。

例えばここに、氏名を登録した人がいます。「上長を追加したいな」という場合、どうしたら良いか?

この編集アイコンの歯車から……「ユーザー選択」がありますので、これをドラッグアンドドロップする。ここの名前を「上長」という感じで作るとどうなるか? 「保存」……はい、これで反映されたようです。ここに「上長」という項目がありますので、ここから「上長」を選択することができる。「佐藤さん宛に送りますよ」ということができる、すごく簡単なデモなんですけれども。「kintone」のシステムは、このようになっています。

このような「kintone」のツールを、いろんなチームで使っていただくことで、業務改善がどんどん進むのではないかなと思っています。実際にこの手軽さを評価していただけて、お客様は1万社以上にどんどん広がっております。

毎日、アプリがどんどん作られております。

それではこの後、実際のところについて、それぞれのチームからお話をいただこうと思います。「Cybozu Days」という、サイボウズの一番大きなイベントがあります。最初のセッションでは、それを担当している仕掛け人・鈴木亜希子よりお話しさせていただきます。それでは鈴木さん、お願いします。

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