2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
提供:株式会社リバネス
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西山哲史氏(以下、西山):セッションA3「1,000万人の健康づくりをどう実現するか」を始めていきたいと思います。
ちなみにこのセッションなんですけれど、こちらにもご登壇いただいていますが、ロート製薬株式会社様にパートナーとしてご参画いただいています。ありがとうございます。
(会場拍手)
まず、簡単に自己紹介させてください。私、今回のセッションのオーガナイザーを務めます西山哲史と申します。株式会社リバネスで研究開発事業部の部長をやっています。
もともと、私の専門はミトコンドリアですね。先ほど、みなさまはお昼ご飯を食べたと思います。こういったご飯から糖分や脂質などを使って、体内でエネルギーを作っている。そういうものがミトコンドリアなんですが、これがうまく働かなくなった時に病気になったりします。
あるいは、一般の人の中でも実は±30パーセントぐらい、このミトコンドリアの働きに差があったりします。アスリートのパフォーマンスなども含めて、いろいろな人の体力にも関係していることも知られていまして、そういったものの研究をやっている大学に所属して研究をしておりました。ですので、わりと健康系の話などは非常に興味が強い人間です。
また、今リバネスの中で何をやっているか。いろいろなことをやっているんですが、まさにこの超異分野学会のようなかたちで、とくにいろいろなアカデミアの方やベンチャーの方や大企業の方たちを集めて、立場や業種などに関わりなく、何かの課題に対して新しいプロジェクトを生み出していって、おもしろい研究をやろうと。そういったもののプロジェクトの仕掛けを行っている人間です。
今のうちに宣言しておきますけれども、今日の僕の目標としては、みなさまの中で仲間を作って、何か1個プロジェクトを立ち上げられたらいいなと考えています。
そんなことを考えていますので、今回、会場からの質問も受付させていただきます。手を挙げる方式にはしていないので、スマートフォンやパソコンでスライドのURLを叩いてください。「Sli.do」というシステムを使っています。
ここに質問を入力してもらえると、僕の手元に見えてきます。ほかの人が質問したこともみなさま自身も見えますので、そこで「いいね!」というボタンを押すこともできます。例えば、その中でおもしろかった質問や人気の高い質問などをあとのディスカッションで取り上げることもしていければいいと思っています。URLはしばらくの間、一番上に出していますので、見ておいてください。
西山:今回のこのセッション、「1,000万人の健康づくり」という話なんですが、なぜこのセッションを開催しようと思ったのかと言いますと、みなさまご存じのとおり、「健康寿命」はもう当たり前のキーワードになっていますよね。
「人生100年」と言われたりするなかで、65歳でヨボヨボになって動けなくなって、そこから30年生きても意味がないという話で、いかに健康になるか。一応、その「健康寿命」とは何かというと、「生活に支障なく生きられる期間」という定義があるみたいです。
いかに元気に長生きして、元気じゃない期間はコロっと逝くのがピンピンコロリ(注:亡くなる直前まで元気に活動すること)という言葉なのかもしれないですが、そういったかたちを作っていけるかは社会的に大きなフォーカスになっています。
ただ、厚労省の調査なんですが、健康のために何かをしているかというと、年代によって異なるのですが、若手の半分以上はとくに何もしていません。
聞いてみたいんですけど、今日会場にいらっしゃる方で、例えばジムに通っていること、野菜を多く食べるように心がけていること、絶対に夜更かししないことを含めて「健康をすごく意識して日々生きているぞ!」という人はどれぐらいいます?
(会場挙手)
いるんですね。むしろビックリしています(笑)。
(会場笑)
でも、もちろん人による程度というか大小はあると思うんですが、健康を意識し続けて生きることは、その実感が伴わない限りは難しいです。結局、自分が危機に陥っていないときは努力を続けることは、やはり難しいことだと思っています。
私もとくに何もしていない派です。今のところ、とくに病気になっているわけではないんですが、「いずれ何か起きるかもね」というのがわからない。だから、今何かしているかというと、していないわけですね。
西山:ただ、こういった方々に、朝の議論でもありましたが、いかに今病気になっていない人たちの健康を維持・増進していくかが非常に重要になってくるわけです。
この1,000万人の健康づくりをどう実現するかで、1,000万人という人口のことを考えます。例えば、近畿圏の人口が2,300万人弱です。全国の大企業の就労人口が1,400万人ぐらいです。ざっくり言って、これらの半分ぐらい(700万人~1,150万人)が1,000万人前後になる数字ですね。
例えば、「近畿に住んでいる人の中で何もしていない人たちとか、大企業に勤めている人たちの中で今なにもしていない人たちを、健康づくりに駆り立てることができるだろうか?」ということが問いになるわけです。
1億人で実現する話ではないこともあって、大企業の中の半分というと、なんとかできなくはないんじゃないか。その大企業という枠組みがあれば、なんとかできなくはないという気持ちでもいます。
朝にあった最初のセッションのスライドから内容を参照させていただいたんですが、中村亨先生から、「19世紀は衛生の時代であった」「20世紀は医療の時代で、21世紀は行動変容の時代だった」。このような論文をご紹介いただいたと思います。
やはりこれからの時代、薬に頼ることや治療するようなかたちだけではなくて、例えば、いかに食事や日々の生活・運動などを行動変容するか。つまり、人々の行動を自然と変化させることで健康行動を作っていく、何かの仕掛けを考えていく必要があるだろうと考えています。
「じゃあどうやったらできるんだろうね?」「どんなことをやればいいんだろうね?」ということを議論できれば、というのが今日の趣旨になっています。
今回は私以外に、こちらの4名のパネリストの方にご登壇いただいています。これから少しの間、それぞれの方に、どういった取り組みをしてきたのか、どういう結果が出ているのかをご紹介いただいて、その上でディスカッションに入っていきたいと思います。
なので、個別の方に対する質問などを先ほどのSli.doにどんどんあげていってください。
西山:それでは、まず最初に吉田さんから、よろしくお願いします。
吉田司氏(以下、吉田):はい。国立健康・栄養研究所の吉田と申します。緊張しています。がんばります。
私に与えられた内容は「自治体での健康づくりの取り組みについて」ということなので、京都府亀岡市という自治体での取り組みについてお話しさせていただこうと思います。
まずは本日の概要です。ほとんどの内容が(京都府)亀岡市です。スライドを15〜16枚作ったんですが、亀岡のスライドじゃないのはたぶん2枚ぐらいしかなくて、ほかは全部亀岡のスライドです。ですので、今日はみなさま、ぜひ亀岡はどういうところかを覚えて帰っていただければと思います。
これは亀岡じゃないスライドの1枚目です。まず私がどういうところで働いているのかを軽く紹介させていただきたいと思います。
国立健康・栄養研究所は、1914年に佐伯矩先生が世界で最初の栄養学の研究所を作りました。それが前身になっています。その後、1920年に内務省が国立の栄養研究所を作りました。2020年に我々は創立100周年を迎えます。
途中でいろいろ名前が変遷しています。2017年、大阪府移転に関する方針が決定されました。私の研究所は、東京都新宿区にございます。ですが、政府の方針で大阪府のJR岸辺駅のすぐそばに移転することが決定しています。
研究所の仕事は、スライドの下に画像が3つ入っていますが、例えば、一番左の「+10(プラス・テン)から始めよう!」という、これは厚労省の標語ですね。こういった標語のためのエビデンスを作ったり。
真ん中は健康食品の安全・有効性情報ということで、毎年毎年新しくいろいろな健康食品が出て、それが時々問題となっていたりするんですが、そういった食品の情報のデータベースを作っていたり。
右下はWHOCC、国連の協力機関です。栄養と身体活動に関する国連の協力機関になっています。以上が研究所の紹介です。
吉田:私は国立健康・栄養研究所で、「フレイル」や「介護予防」などをテーマに研究しています。「フレイル」という用語は聞いたことない方もたくさんおられるかなと思うので、少しご説明させてください。
まず、左上の三角形の図ですね。横軸に年齢、縦軸に予備能力。予備能力には体力などが含まれますが、加齢に伴ってこういった予備能力がどんどんと低下していきます。そうすると、自立状態だった人がいずれ介護が必要な状態に陥るわけですね。
この自立している人と介護が必要な状態の人に陥る人との中間的な状態を「フレイル」と呼んでいて、フレイルの人に適切なアプローチをすると自立状態に戻すことができるという可逆性があると言われています。
「フレイル」というのは、もともと「frailty」という英単語で、「虚弱」と訳されますが、それをもう少し日本語っぽく言いやすくしたものが「フレイル」です。日本老年医学会がフレイルのステートメントを出していまして、その中では「身体的問題のみならず」と書かれています。
具体的にどういうことかというと、右の図の黄色い色がついているところは、どちらかというと身体状況・身体的な問題になりますが、それだけじゃなくて、社会的な問題、独居や閉じこもりなど。あとは認知症や鬱などの精神的な問題。こういったものを含めて、身体的・社会的・精神的に虚弱な状態を「フレイル」と定義されています。
私が今回お話しさせていただく、京都府亀岡市で行っている研究は、まさにこのフレイルや介護予防に対するアプローチを実際に取り組んだ内容となっています。英語で言うと「Kyoto-Kameoka Study」。日本語では「亀岡スタディ」と我々は呼んでいます。
亀岡スタディの研究課題名は、「外傷予防と介護予防を推進して検証するための前向きコホート研究」(注:現時点または過去のある時点で、研究対象とする病気にかかっていない人を大勢集め、長期間観察し追跡を続けることで、ある要因の有無が、病気の発生または予防に関係しているかを調査するもの)。
最後の前向きコホート研究は置いておいて、とにかく外傷予防と介護予防をやっていこうというのが亀岡市のまちづくりの方策としてあります。京都学園大学の教授の木村みさか先生が、研究グループの代表をされています。
亀岡スタディで行うのは、1つは地域展開できる介護予防プログラムの開発とその検証。そして、介護予防の医療経済学的評価。3つ目が、介護予防プログラムを展開するための地域システムの構築。この3つの課題を遂行するために、亀岡スタディは進行しています。
研究組織なんですが、大学であったり、私が所属する国立健康・栄養研究所を含めた研究所。あとはフィールドとなっている亀岡市や京都府。そして京都府栄養士会、京都府医師会、京都府歯科医師会のような職能団体にも協力していただいています。プラス、民間団体でNPOも入っています。こういった組織でこの「亀岡スタディ」をずっと行っておりました。
吉田:ところで、この亀岡市は京都府にあります。みなさまたぶん知らないですよね。京都からずっと離れたところ……にはありません。実は京都市にくっついています。京都市の西隣りにあります。ですが、あまり知られてはおりません。
国勢調査では、人口は8.9万人、高齢化率は26.5パーセントと、大きな自治体ではありませんが、それでも京都府下で第3位の人口規模の自治体です。
「あまり有名ではない」と言いつつ、実はメディアにはけっこう出てきています。スライドにある「亀岡光秀まつり」。明智光秀ですね。亀岡は明智光秀の居城、拠点があったところです。見にくいかもしれませんが、右上に「大河ドラマ決定」と書いてあります。2020年、明智光秀が大河ドラマの主役です。大河ドラマが決まった時、亀岡はすごく盛り上がりました。今年の4月に決まり、ニュースになっています。
次に、スライドの右下が「こちら亀岡」となっています。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、いわゆる『こち亀』の作者の漫画家の秋本治先生が、『こち亀』の連載が終了した翌年に、この亀岡を舞台にした漫画の連載を始めました。そのへんもありまして、今年、秋本先生は亀岡市のPR大使になっています。これも少しニュースになっています。
なので、関西在住の方で、例えば夕方ぐらいのニュースを見ている方は、頻繁にこういうかたちで亀岡が出てきたりしています。
亀岡の特徴として一番大きいものが、「WHOセーフコミュニティ」を日本で最初に認証されていることです。セーフコミュニティは、怪我や事故、もしくは自殺といったものが予防できるという考え方で、安心安全なまちづくりを進めていっています。
セーフコミュニティの認証は5年に1回行われておりまして、2008年に認証、2013年に再認証。そして2018年も、現地調査等も終わりまして、再々認証を受けることが内定しています。なので、11月の17日に認証式がありますので、その日の夕方のニュースをぜひ見てください。また亀岡が出てきます。こういったかたちで意外とニュースソースがある町になっています。
吉田:そして、我々が取り組んでいた亀岡スタディは、WHOセーフコミュニティの2013年の再認証、ここにまつわるところからスタートをします。2010~2011年頃にかけて、セーフコミュニティの再認証の時期が近づいてきます。
再認証を受けるにあたり、安心・安全なまちづくりのシステムを作ったといえども、それがどう町を変えていったのかをしっかり評価しなきゃならない。そのためにはサーベイランス、つまり追跡して調査を続けなきゃいけないという話がまず出てきました。
一方で、京都府が「京都地域包括ケア推進機構」という組織を作りました。厚労省の進めている「地域包括ケア」という、地域のまちづくりのシステムで健康づくりや介護などに取り組むというものがあるんですが、その中の1つに「介護予防」という柱があります。
亀岡市のセーフコミュニティの話と京都府からの介護予防の話が、亀岡スタディの代表である木村みさか先生に来まして、「一緒にやればいいんじゃないか」というのがこの亀岡スタディがスタートする経緯としてありました。
さらに厚生労働省は自治体に対して、「日常生活圏域ニーズ調査」を行うことを義務付けました。その調査によって地域を診断した上で、地域が足りていないもの、もしくは強みを介護予防事業などにどんどん費やしていけるようにするための調査です。偶然、2011年に調査することになっていたので、サーベイランスをするにあたっても、しっかり調査できる体制が整ったことがあって、亀岡スタディがスタートしました。
これはあまり今回の内容に関係ないので割愛していますが、亀岡スタディの特徴としてしまして、要介護3以上の認定を受けている高齢者を除く、すべての高齢者に全数調査を行ったということと、健康づくりの介入を大規模に500人に対して行ったことが挙げられます。
あとは、「クラスターランダム化比較試験」といって、介入をする地域としない地域を完全に分けて地域で比較できるようにした、というのが亀岡スタディの特徴になっています。
介入についてですが、これも今回のメインのテーマではないのであまり深く話しませんが、4つのことを行いました。
1つは行動変容です。とくに日記。日誌を配布して個人に記録してもらうこと。あとは活動量計や歩数計を配って行動変容を促すと。
運動介入は、「筋発揮張力維持スロー法」と難しく書いていますが、いわゆるスロートレーニングですね。太極拳のようにゆっくり身体を動かすことによって、少ない負荷でも効果があるような方法があります。
口腔ケアと栄養改善。ここに関しては歯科衛生士さんと栄養士さんに入ってもらうというかたちでございました。
日誌はこういうかたちで、「1日何歩歩きましたよ」「運動しましたよ」、あとは「口腔体操をやりましたよ」「朝食・昼食・夕食で主食・主菜・副菜しっかり食べましたよ」みたいなことを記録してもらうために使いました。
吉田:介入内容を早足でお伝えしましたが、内容はマニュアルで確認できます。このマニュアルは京都府下の全自治体の介護予防の担当者に配布しています。また、京都地域包括ケア推進機構のWebサイトにもPDFで載っています。「京都 介護予防マニュアル」で検索していただいたら、先ほどの内容はすべて載っていますので、興味がある方はご覧ください。
介入の結果。これもあまり本日のメインの話ではないのでさらりといきますが、まず1つは歩数が変わりました。
およそ1,000歩ぐらい増えました。そしていろいろな指標、例えば膝を伸ばす力や歩く速さ、垂直跳びなどの身体機能も高くなりました。
ただ、こういう健康教室などをやって体力が高くなったことは、どこの自治体でもやっています。あとはいろいろな研究報告もされています。ただ、今私たちがやっているのは介護予防なんです。
介護予防で一番大事なのは「本当に介護を予防することができたのか?」ですので、体力がどうという話ではなくて、介護認定をそのあと受けるようになったのか実際受けなかったのかを何年間も追跡して見ていかないと、本当の介護予防の効果は見ていくことができません。現在、追跡調査を続けているところです。
吉田:そして、このセッションは「1,000万人の健康づくりをどう実現するか」がテーマになっています。
それでいきますと、亀岡では自立の高齢者がおよそ1万6,000人いて、今回の介入では、人口でいくと3.1パーセントにしか手をつけられていません。全国の高齢者が約3,000万人いたとしても、同じ方法で実施していれば93万人です。1,000万人にはまだまだ遠い。
スライドの真ん中は、厚生労働省によって「二次予防事業対象者と呼ばれる介護リスクがある人を抽出しなさい。その人に対して介入しなさい」という事業が実施されていましたが、実績としては0.7パーセントしか実施されませんでした。
スライド一番下、これはわかりやすいですね。メタボ検診というものです。メタボ検診に引っかかった人にメタボ保健指導をするんですが、そういうものが現状で18.8パーセント。これも割合でいくと100万人にも届かないぐらいになります。
こういうことを考えるとなかなか1,000万人は難しいです。この解答になるかわからないですが、解決方法の1つとして亀岡市では、「介護予防サポーター養成講座」を行っています。
介護予防サポーター養成講座では、介護予防を手伝ってくれる市民を育成するという事業を実施しています。例えば、介護予防サポーターが1人で3~5人を診ることで、マスを増やしていくことを考えています。現在は介護予防サポーターの中で、有志でNPOまで作って、精力的に活動しています。
亀岡でこういった活動をしてきました。今年6月には私が所属する国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所と亀岡市と、亀岡スタディ代表者の木村みさか先生がおられる京都学園大学の3者で包括協定を結びましたので、さらにこれまでの事業が加速することを私は信じています。
以上で私からは終わりです。ありがとうございます。
(会場拍手)
西山:ありがとうございました。質問が出ていますが、ディスカッションは最後のお時間に取っておきたいと思っています。
株式会社リバネス
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