2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
提供:サイボウズ株式会社
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青野慶久氏(以下、青野):これ(幸せの4つの因子)は、会社以外でも、もちろんどこにでも適用されるわけですよね?
前野隆司氏(以下、前野):そうですね。ですから私は、ものづくり・コトづくり・まちづくり・組織づくり、いろいろなところでやっています。
青野:ものづくりも?
前野:ものづくりも。「住めば住むほど幸せになる家」の研究がそうです。家ってやっぱり「安全で安心で」というふうに作っている。そうではなくて、もっと「やってみよう」「なんとかなる」と思える家にしておくと、人々は幸せになれるんですよ。そういう発想は、いままでにないですよね。
青野:ないです、ないです。「やってみよう」と思える家って、どんな家なんですか?
前野:結局はコミュニケーションだと思うんですよ。よくあるのは、やっぱり子ども部屋。入り口に入ったら、すぐに子ども部屋へ行ける家ではなくて、リビングの中に階段があって、みんなが見守って、つながりがある。「ああ、彼はいま勉強している」という空気がわかると応援し合えるんですよね。
あとは昔で言うと縁側ですよね。昔の縁側は中と外がつながっていたから、外の人が気楽に立ち寄って、そこでつながりができる。つながりができると、結局やりたいこともできるし、協力し合えるからなんとかなるんですよね。いまは高気密住宅のように縁側がなくなって、外と中のつながりがちょっと減っていますね。
外と中のつながり、あるいは中の家族間のつながりがもっと増えるような仕組みを、いろいろと入れているところですね。
青野:なるほど。まずは2(ありがとう)のつながりができる家にして、1(やってみよう)、3(なんとかなる)、4(ありのままに)あたりが触発されていくようなイメージですね。
前野:あとは、例えば、積水ハウスさんではリビングにくぼみがある家を作っています。
青野:リビングにくぼみ?
前野:はい。ちょっと低くなっているんですよ。昔はバリアフリーで平らにするのがいいと言われていたんですけれど、ちょっとくぼんでいる。そこに座ると、自然に上を見るんですよね。実は、「人は上を見ると幸せになる」という研究もあるんですよ。
前野:下を向いている時って不幸じゃないですか。リビングがくぼんでいると、みんなで上を見上げるというのがいいですね。
青野:なるほど。視点が変わって、考えが切り替わって、前向きになれたりするものですよね。
前野:凸凹とか家具とか。サイボウズさんの会社と一緒ですよ。キリンとか変なものを置いていますよね。家もそうです。やっぱり、おもしろいものが置いてあると楽しくなる。自分らしく、自分の好きなものが置いてあると、会社も家も楽しいじゃないですか。まさにサイボウズさんのやりかたと同じです。
青野:そうですね。私たちも「わくわくするオフィスをつくろう」ということで、盛り上がれるオフィスというのをやってみたんですよ。これは意外と効果があるんですよね。
前野:まさに自分らしさが出ていますよね。
青野:そうですね。もちろん会社なので、調子が良い時も悪い時もあるんですけど、悪い時もあまり悲観的にならないというか。キリンがいっぱいあると、あまり悲観的になれないですよね。
前野:なりにくいですよね。
青野:そういうのはありますよね。それこそ、わくわくするオフィスをつくっておくと、いろいろな人が出入りしてくださって、お客さまも「サイボウズに来たい」と言ってくださって。それは、つながりが広がるという縁側効果なんですかね。なるほど。
前野:このイベントもそうじゃないですか。すごく楽しそうになっている。もっと暗い展示会もありますよね。
(会場笑)
だいぶ気分が違うじゃないですか。そうしたら、「買おうか」という気持ちにもなりますよね。
青野:どうでしょうね。福岡はけっこうおもしろい地域で、全国でもこんなに盛り上がっている都市はそんなになくて。それは、1つには外国に近いからじゃないかというのがあるんですよね。ほかの都市だと、日本国内を見ちゃうんですけど、(福岡は)中国や韓国といったアジアあたりに一番近い大都市(を見ている)。
前野:それでですかね。私も博報堂さんと一緒に、全国の幸せの調査をやったんですよ。沖縄も含む九州が、ダントツで強かったです。ベスト5が全部九州だったので、なんだかバランスが悪すぎて、あまり公表しにくかったんですけど。(幸福度では)めちゃめちゃ九州が強いですね。
青野:みなさま、幸せなところにお住まいになって、羨ましいですね。
前野:私も祖母が博多で、妻は長崎なんですよ。なんだか九州の人って楽観的じゃないですか。だから、東京の人たちより(幸福度が)高いんだと思います。
青野:都市でもちょっと空気が違いますよね。東京はちょっと悲壮感が漂っていますよね。
前野:そうなんですよ。東京はそれこそ本当に、田舎の人間関係が濃いのが嫌で都会に行って、マンションの隣に誰が住んでいるかもわからない。でも不安だから、老後資金をため込んで、それでもまだ不安だという感じです。
本来は、もっとつながって助け合って、「野菜が採れたよ」とか言って集まっていたのに、それが不幸だと勘違いして遮断して、つながりをなくして不幸になっていく。東京は、全国から集まっているそういう人たちの集団のような感じになっていますよね。
青野:納得感ありますね。結局、利他的なところが薄れてしまったので、幸福度が下がったと。
前野:はい。村社会は濃すぎて、祭りを絶対に手伝わなきゃいけないというようなことがあったり、ちょっと面倒くさいから、都会へ出て1人で自由になっている気がしているんですけど、やっぱりちょっと面倒くさいぐらいのほうが、いざという時に助け合えるんです。本当に村社会でギスギスしていて、いつもおばあさんに見られているというのは嫌かもしれないですけど、ちょっと過干渉なくらいのほうが人は幸せなんですよね。
人間はついつい、目の前のそうしたものを「ああ、面倒くさい」と言って、1人のほうが楽だと思いがちですが、統計結果はそうでないことを示しています。やっぱり1人よりも、人とつながっていたほうが幸せになるのです。九州の話に戻りますが、九州は(人が)温かいですね。お店に行くと、お店の方の雰囲気だけでも東京とは違いますよね。
青野:違いますね。おもしろいですね。みなさまも、このへんをなんとなく認識されているのかもしれませんね。
前野:外国に近いとか、温かいとか、いろいろな理由があるのかもしれませんね。
青野:そうですね。
前野:やっぱり東京から遠くて、島だから。島と言っても(山口と)近いけど、精神的に自由な感じがあるんじゃないですかね。
青野:これは地域にも物にも当てはまる。例えば子育てをする時も、子どもにいろいろと教えていかなきゃいけないじゃないですか。私みたいに、すぐによその子と比較したりするんですけど、子どもに幸せになってもらおうと思ったら、親はどう伝えていけばよろしいですか?
前野:子どもはのびのび育てるといいですよね。やっぱり親が比較してしまうと、それが子どもにも伝わりますので。
青野:比較するものだ、というような。4(ありのままに)を失っていく。
前野:はい。よく子どもを紹介する時に、「うちの子は小さいんですけどね」「うちの子はあまり挨拶ができないんですけどね」と言う親がいるじゃないですか。それは子どもに伝わっていますからね。
アメリカ人などはみんな、「うちの子はスマートなんだ」「かわいいんだ」と、すごく褒めながら紹介するんですよ。日本人の謙虚さはいいんですが、謙虚すぎて子どもを傷つけてしまったりするのを見ていると、謙虚すぎる感じがしますね。
青野:比較し合ったりね。
前野:あれはもったいないですね。
青野:アメリカ人みたいにオーバーに言う必要はないかもしれないですけどね。
前野:そうですね。アメリカ人はやり過ぎ感があるんですけど、日本と(アメリカの)ちょうど間ぐらいがいいですね。
青野:日本人は中間ぐらいがいいかもしれませんね。なるほど。子どもに幸せになってもらおうと思ったら、なにが効いてくるんですかね。親は「ありがとうと言いなさい」って、頭をバンとやったりしますけど、思いっきりやらされていますよね。でも、感謝の気持ちは持ってほしいし。どうすればいいんでしょう。
前野:親はついつい、子どもの教育のためだと思って「なんとかしなさい」と命令的になりがちですが、それは良くないですよね。やっぱり子どもは、一人の個人として認めてあげるべきです。それから、幸せはうつるので、親が幸せであることが大事なんですよ。
親が、自分が英語ができなかったんだから、とにかく子どもにだけは英語を勉強させようとしても、それは絶対にうまくいかないですよ。親が一生懸命TEDを見たりして英語を勉強していたら、子どもは「へー、英語っておもしろそうだな、私もやろう」と思うじゃないですか。
青野:なるほど。
前野:「挨拶しなさい」と言わなくても、親がちゃんと挨拶していれば、子どももするでしょ。
青野:なるほど。「あんた感謝しなさい」じゃなくて、親がちゃんとほかの人に感謝して、幸せな姿を見せていくと、「じゃあ私も真似してみようかな」というような。
前野:それが大事じゃないですかね。
青野:なんだかブーメランみたいに返ってきちゃうんですね。子どもにというよりは、やっぱり自分がこれを身につけないといけないということですね。
前野:そうですね。他人は変わらないですからね。自分しか変わらない。
青野:おもしろい。確かにそうですね。今日はいろいろと学びがありましたけれども、なにか聞いてみたいことがある方は、ちょっとしたことでもいいので、よろしければ手を挙げていただければ。
質問者1:大変楽しいお話をありがとうございます。ちょっと気になったことがありました。先生は「ありがとう」と「人とのつながり」が、日本人の入り口としていいんじゃないかと言われましたけれども、いまはバーチャルなつながりがあるじゃないですか。いわゆる、一対一のつながりや、肌と肌のつながりではないものですね。そういったことでも、幸福につながるのかどうかをお聞きしたいです。
青野:なるほど。いま、SNSで友達がバーッと(たくさん)います。あれを幸せに感じる人もいらっしゃるかもしれませんけど、ちょっと広がりすぎて気持ち悪いというところもあるでしょうし。どうですか?
前野:もうちょっとテクノロジーが進歩するといいなとは思いますね。というのは、やっぱり、人と人が「ありがとう」と言う時は、その5文字の言葉だけじゃなくて、目つきや、自信がありそうな仕草とか、本当に感謝している表情とか、ものすごい情報量なんですよね。現代人はネットでたくさんの情報に接していると言っていますけれど、そんなことないんですよ。
原始人のほうがすごかったと思うんですよ。だって、「ありがとう」と言っている時に、ヒョウとかが襲ってくるかもしれない。だから、ものすごく感覚を鋭敏にして、ものすごい情報を得ながら生きていた。しかし、いまはぼーっとスマホを見ていても生きていけるから、感性がにぶってしまっている。
つまり、リアルの情報はすごく人間関係を豊かにする。そういう意味では、スマホやグループウェアや文字だけのつながりは、もうちょっと工夫して、会話の豊かさを出していく必要はあると思うんですよね。
人間は想像力が豊かですから、例えばSkypeなどで電話会議をしていても、初めての人だと誰かよくわからないけど、よく知っている人だと、頭の中で補完できるじゃないですか。やっぱり、これからもっと、リアルとバーチャルをうまく利用する社会になっていくと思うんですね。
そう考えると、我々年寄りはついつい「バーチャルは駄目だ」とか言いたくなるんですけど、そんなことはなくて。世界中の人と一緒にゲームをしたり、我々が子どもの頃はできなかったこともやっているので、メリット・デメリットはあると思います。いまは新しいタイプのコミュニティができていると考えて、温かく見守っていくときなんじゃないかなと思いますね。
もちろん、弊害も出てくる可能性はあると思いますよ。例えば、なにかはすごく体に悪かったというような。タバコと一緒ですよ。タバコが出た時は「体にいいんじゃないか」と言われていましたが、やっぱり100年ぐらい経つと、肺がんになりやすいとわかってきたり。もしかしたら、ゲーム依存症のようなものも体に悪いと出るかもしれないし。でも、世界の人とのすごいつながりになるというメリットもわかってくると思う。
馬車から自動車になった時も最初は事故ばかりでしたが、技術が進歩する時には必ず、みんなで新たな社会インフラを作ったり、ハードとソフトの会社ががんばって、より良い社会を作ろうとしてきました。
青野:そうなんですよ。それで、いま思い出したんですけど、グループウェアを上手に使う会社と、あまり上手に使えない会社があって。例えば上手に使う会社は、顔文字などをよく使うんですよ。昔はメールに顔文字を使うのは、すごくマナーに反すると言っていてね。「そんなの、だらしない」とか言っていましたけど、やっぱり顔文字を使う人のほうが、うまく気持ちを伝えられます。
ちょっと儀礼的な「ありがとう」という感じなのか、本当に「めっちゃ良かった、ありがとう!」ということをテキストで表現する人たちのほうが、うまく人間関係をつくれますよね。「顔文字禁止」「マナーに反する」というのは、あまりやらないほうがいいような気がしますね。
前野:そうですね。顔文字があるほうが、コミュニケーションが円滑になって、幸福度が上がるという研究がすでにあります。
青野:そうなんですか。学術的な裏づけが。
前野:ぜひ使ったほうがいいですね。顔文字じゃなくても、「(笑)」があるのとないのでも。短いメールだと「怒っているんじゃないのかな」とか。日本人の中にはけっこう神経質な人もいるから、私が忙しい時に短いメールを書くと「前野先生、怒ってる」って(受け取られてしまう)。(コメントが)短いと勘違いしちゃうんですよね。繊細な日本人はとくに、顔文字などのコミュニケーションの技を身につけていくといいんじゃないですかね。
青野:なるほど。ツールの使い方も学習していかなきゃいけないんですよね。ご質問ありがとうございます。ほかにいらっしゃいますか?
質問者2:素晴らしい話をありがとうございます。先ほどの「住めば住むほど幸せになる家」の話もわかりやすかったんですけど、この4つの幸せの因子が、仕事などで具体的に応用されているところをもっと教えていただければありがたいなと思います。よろしくお願いします。
前野:私は、幸せな会社を表彰する「ホワイト企業大賞」の企画委員をやっているので、ぜひ応募してください。また、坂本(光司)先生の『日本でいちばん大切にしたい会社』という本があります。あの本には「いい会社」がいっぱい出ているんですよ。私は、坂本先生に頼んで分析させてもらったんです。やっぱり坂本先生が選ばれている「いい会社」は、4つ(の因子を)満たしているんですよね。
有名な会社ですが、例えば未来工業さんは、「報連相禁止」と言っているんですよね。「報連相」と言うと、上から下へ「やれ」ということになりがちだから、報連相をやめて若い人に権限を移譲するんだと。社長や重役は、一番幸せである傾向が高いんですよ。トップはリスクを取って、「なんとかなる」とか思っているから。
青野:自己実現も権限がありますから。
前野:そうなんですよ。ということは、下に行くほどやらされ感になりやすいので、なるべく権限を移譲して、みんなが「やってみよう」と思うようにする。そして、「信じてるぞ、任せるぞ」という人間関係を作る。本当に任せようと思ったら、上も「なんとかなる」「ありのまま」と本気で思わないといけないですよね。本当に権限を移譲した結果、未来工業さんはこの4つの因子が高いんですよね。
それから、西精工さんは朝礼を1時間やるんですよ。そこで、「みんなを幸せにする」といった西精工の理念を、社員みんなが毎日思い出すんですよね。西精工さんの仕事は、ネジを作るというものです。
言ってみれば地味な仕事かもしれませんが、「このネジが自動車に入って、それが世界中の人のレジャーや仕事を助けているんだよ」「俺たちのネジはすごいじゃないか」。そういうふうに毎日1時間考えてから仕事をすると、つながりもあるし、やる気も出るでしょ。「今日もネジだよ、嫌だよ~」と思うのと、「世界の人たちをすごく幸せにしている」と思うのとでは違う。
(会場笑)
1時間も朝礼をすると、それこそ働き方改革に反するようですが、見学に行くとわかります。もう本当にみんなで話し合ってやる気を出していて。しかも1時間も朝礼をしていると、今日はなにが問題なのかも全部話し合えます。
「さあ、じゃあ仕事だ」という7時間の仕事が、「やる気」「感謝」「前向きさ」「ありのままに」というもので満ちているから、グワーッと仕事が進むんですよね。働き方改革をしたければ、ムダな会議をしろ、ということです。
青野:なるほど。4つ(の幸せの因子)を押さえてから仕事に取り掛かったほうが早いと。
前野:そうですね。だって、これがあったら仕事も早そうじゃないですか。幸せじゃない時は、「ああ、これを上司に言いに行かなきゃいけないけど、どうしようかな。もうちょっとちゃんと考えてからやろう」とか。ちまちまやっていると、時間がかかるじゃないですか。幸せだったら、「ようし、上司に聞こう」と思える。「どうですか? 自信はあります」「ようし、やってみな」と。
不幸せな会社って、ハンコも多いですよね。要するに、みんなが信じていないから、社長と部長と課長のハンコがいるわけです。伊那食品さんはすごいですよ。領収書を持ってきたら、そのまま処理します。「これ買いました」と言ったら、「本当か?」と聞かずに、バサーッと「はい、領収書全部OK」。
青野:すごい権限委譲と信頼感。
前野:完全に信じているんですよね。みんなで庭掃除などをするんですけれど、庭掃除の器具があるので、いつでも持って帰って家の掃除や庭仕事に使えるんです。私、社員の方に質問したんですよね。「こんなことをやっていたら、器具がなくなったりしないんですか?」と聞いたら、「ん~、そういう人はいませんねえ」と。……なんだか、質問するほうの心が汚い。
(会場笑)
伊那食品さんは、給料もみんな一緒なんですよ。これは共産主義みたいなところもあるかもしれません。しかし、伊那食品さんの社員はみんな納得しているんですね。「仕事のできる人が文句を言ったり、仕事のできない人がサボったりしないんですか?」と聞いたら、(社員から)「ん~?」と考えて、「そんな人はいませんねえ」と言われて。これも自分の心の汚さを感じるんです。
要するに、優秀な人はたくさん金が欲しいと思ったり、出来の悪い人はサボったりするんじゃないかという疑いがあるから、管理が必要になってハンコだらけになる。幸せな会社はやっぱり、本当に家族のように信頼関係があって、信じ合っているから、ムダな仕事がないんですよ。ムダな仕事がなくて権限委譲をしたら、仕事は早いじゃないですか。
青野:なるほど。仕入れも任せるところなど、メンバーにも(信頼感が)伝わって、いい結果になっているんでしょうね。ご質問ありがとうございました。残り8分ぐらいなので、できればあとお二人、手を挙げていただいた後ろの方から。みなさま、すごいですね。こういう場でもパパッと手が挙がるというのは素晴らしい。
質問者3:素晴らしいお話、ありがとうございます。幸福度と組織のパフォーマンスの件で質問させていただければと思います。幸福度が組織のパフォーマンスにつながるというお話がございましたけれども、いまは組織も多様化しており、なかには障害者を雇用している組織も出てきているわけなんですよね。
その場合で言うと、例えば幸福度に関して、障害者が雇用されている組織についても有効かどうか。また、幸福度を軸にした経営は、健常者と障害者に関しては、適応する際になにか違いはあるのかどうかについて、考えをうかがえればと思います。
前野:ありがとうございます。医療の必要性から、「ここまでは健常者、ここからは障害者」と分けていますけれども、本当は人間は多様に分布していて、障害は個性の1つなんですよね。私の知り合いで農業をやっている会社では、「ある種の障害のある方はものすごく集中力があって、すごく仕事ができる」と言うんですよ。障害者だから雇用するのではなく、仕事ができるから障害者の方を雇用しているんですよね。
坂本先生の本でも、本当に障害者雇用がうまくいっている会社は、義務だから障害者を雇用するのではなく、彼らの個性や自分らしさをちゃんと見抜いています。そして、彼らを本当に尊敬し、ちゃんとその人たちの良さを活かしている。
障害者だけじゃなく、すべての人が個性を持っているから、すべての個性をちゃんと活かして、生き生きと働いてもらえば、みんなが幸せじゃないですか。そういう意味では、私は基本的には、障害者と健常者はなにも違わないと思っています。
前野:もちろん、足が不自由だったら、その場(の床)を平らにしなきゃいけないとか、いろいろとやるべきことはあるので、そこは配慮すべきですけれど。障害者がいるとコスト増になると思われる方もいるかもしれませんが、イノベーション論から考えると、多様性が高いほど幸せでイノベーションが起きるんですよ。
障害者と健常者と言われるいろいろな人、あるいは、パーソナリティ障害や自閉症など、いろいろありますけれども、そういう方々もそれぞれにすごい個性を持っているわけですよね。その良さを活かせば、均一な会社よりもむしろイノベーションが起きるし、多様な人の気持ちがわかるから、豊かで幸せになれる。多様な工夫もできるし、いいことばかりじゃないですかね。
青野:そうですよね。よく障害者雇用と言うと、特例子会社など隔離する会社もあるということなんですけど、あれはそういう意味で言えば、幸福度的にはもう1つかもしれませんね。あえてつながりと交わりを持って、「この会社は自分らしくあっていいんだよ」というところも、会社と共感しながらやったほうが、みんなもハッピーで生産性が上がるという。
前野:基本的にはそうです。そちらが正解だと思いますね。やむを得ず特例子会社にしなきゃいけない事情がある時もあるんでしょうけれど、本質的には分けないで、みんなが共にいるほうがいい。北欧などもそうですね。障害者の方が生き生きと生きている社会のほうが素晴らしい。
青野:なるほど。どうもありがとうございました。最後の質問(へ進めて)よろしいですか? (みなさまの)質問もすごくいいですよね。
質問者4:わくわくするようなお話をありがとうございました。前野先生から、雑談することも必要だという話があったと思うんですけれども、逆にオン・オフを切り替えられない人は、雑談をしていいとなると、「雑談をしたほうが生産性が上がる」と勘違いしてしまうんじゃないか。
(会場笑)
そのへんに関して、どれぐらいの雑談であれば、雑談をしていいのかという……。
(会場笑)
青野:これ、ちょっといいですか? サイボウズの社員は、本当に就業時間も雑談をしているんですよ。グループウェア屋だから、雑談が好きなのはわかるんですけどね。おもしろいのが、1の因子「やってみよう」については、「みんなで世界一のグループウェアの会社にしよう」ということで、けっこうがんばって浸透させているんですよ。
そうすると、雑談の中からも、グループウェア事業のアイデアが湧いてきたりするので、僕らも無下に、「お前、就業中だから雑談をやめろ」と言えないんです。「農業の話をしているな」と思ったら、そこから農業のIoTの話になって盛り上がっていったり、「子どもの話をしているな」と思ったら、そこから教育の情報共有の話になったりする。
やっぱり、「(雑談は)ここまでにしなさいよ」というよりは、「ほかの因子とのバランスを見ていけばいいのかな」ということは、今日のお話を聞いていて思いましたね。
前野:そうですね。
青野:いかがですか?
前野:私もそう思いますね。やっぱり、定型的な仕事とすごくイノベーティブな仕事があって、おっしゃるようにイノベーティブな仕事は、雑談が多いほどいいような気がしますね。役所の窓口などで雑談をしていたら、やっぱり良くないケースもあると思うので、仕事によるんだろうなと思います。
ただ、定型的な仕事のほうが幸福度が下がるというデータがあるんですよ。ということは、やっぱり窓口の人も非定型なものや、わくわくする工夫ができる余地というんですかね……例えばトヨタの「カイゼン」もそうですよね。ベルトコンベアーの単純作業をしている人も、改善提案をして、自分は会社にものすごく貢献していると感じられる。あれは効率化のためにも良いですけれど、たぶん働き方や幸せのためにも良いんですよね。
ですから、基本はなるべく定型ではない仕事をすること。定型ではない仕事は、やっぱりイノベーティブな仕事なので、多様でありのままです。本当は、雑談が自由な中で、各自が(自分を)律する力でやっているのが理想だと思うんですよね。伊那食品さんに聞いたら、「うーん、雑談しすぎる人はいませんねえ」と言うんだろうなと思います。
前野:ただ、あえて比率を言うと、GoogleさんやYahoo!さんの「20パーセントルール」というものがありますよね。80パーセント正規の仕事をしていたら、20パーセントは好きな仕事をしていい(というものです)。私がいた頃のキヤノンの研究所もそうだったんですよ。「8割仕事をすれば2割は好きなことをしていい」と言われて、当時は超能力の研究をしていたんですよね。それが許されていたんです。
青野:その2割は超能力? すごい研究ですね(笑)。
前野:そうですね。結局、私には超能力がないことがわかって……。
(会場笑)
いま思えば、完全にムダですよね。でも、私がキヤノンで超能力の研究をしている時に、ソニーはエスパー研究所を作って、もっと本気で「もしかしたら」ということをやっていたんです。
だから、まさに雑談と同じで、ムダかもしれないことをやることが、ものすごく利益になるかもしれないし、駄目かもしれない。それが2割なのか、サイボウズさんは8割までOKだとか、会社によっても違うんでしょうけど、いかに信じ合いながら大きくするかということを考えていけばいいんじゃないかなと思いますね。
青野:たぶんバランスですかね。
前野:バランスですね。
青野:2(ありがとう)ばかりを追いかけていても、もしかしたらあまり幸福になれないかもしれないですね。
前野:バランスですね。2だけがある古い日本企業などで、「私たちは感謝はあるんですけど、イノベーションはないんですよ」というのは良くないですよね。逆にコンサルなどでありがちなのですが、「1(やってみよう)はあるぜ!」「全部俺たちのおかげだ!」というのもちょっと独善的なので、全部を高めるにはやっぱりバランスですね。
しかも、「幸せな人」がそれぞれであるように、「幸せな会社」もそれぞれなんですよ。みんなが伊那食品さんのように、給料を一緒にはできないし。逆に全員の給料を話し合いで決めるようなところもあるんですけれども、個性は全部会社によって違うんですよ。ですから、みなさまの会社においては、どういうやり方が個性的でわくわくして楽しいのか。それをぜひ考えてもらいたいなと思います。
青野:それは一社一社違うと。
前野:一社一社違います。
青野:みなさま、ぜひ宿題で持って帰っていただいて、みなさまのお仕事に反映させていただければと(思います)。ありがとうございます。時間が過ぎてしまいましたので、このあたりで終了ということで。
前野:あっという間でしたね。
青野:質問もたくさんいただいて、僕も勉強になりました。では最後に、盛大な拍手をお願いします。前野先生、今日はありがとうございました。
前野:ありがとうございました。
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