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「未来を変える買い物」EARTH MALL with Rakuten シンポジウム:基調講演(全1記事)

2019.02.12

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「1割の行動を変えることで世界が変わる」 慶應大・蟹江憲史氏が語るSDGsのキーポイント

提供:楽天株式会社

楽天株式会社は2018年11月29日、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献を目指して、サステナブル(持続可能)な消費を提案する「EARTH MALL with Rakuten」をグランドオープンしました。オープン日の記者発表後には「『未来を変える買い物』EARTH MALL with Rakutenシンポジウム」が行われ、「サステナブルな消費」をテーマとするセッションが実施されました。本パートでは、楽天CPO小林正忠氏の「EARTH MALL with Rakuten」の概要説明、アドバイザーを務める慶應義塾大学・蟹江憲史氏の基調講演をお送りします。

「人々と社会をエンパワーメントする」創業理念から始まった楽天

司会者:「創業以来の価値と『EARTH MALL with Rakuten』が目指す価値」と題しまして、楽天の共同創業者で常務執行役員、CPO(チーフ・ピープル・オフィサー)小林正忠よりご挨拶をさせていただきます。それでは小林さん、よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

小林正忠氏(以下、小林):みなさま、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。本日、我々は「EARTH MALL with Rakuten」という新しいサービスをスタートさせたのですが、その前に少し楽天についてお話ししたいと思っております。

楽天と聞くと、「安いものがたくさん売っている」「ポイントがたくさん貯まる」といったイメージが浮かぶかもしれませんが、実は楽天市場はご出店いただいている多くの事業者さん方によって成り立っています。その数は約4万6,000店舗となっており、出店店舗さんが扱っている商品の数は、なんと2.5億点を超えています。今や楽天の年間の国内EC流通総額は、3.4兆円にまで成長しました。

楽天が創業した1997年当時、残念ながらその頃の日本は、あまり元気ではなかったんです。地域で事業さんたちが営むビジネスは商圏が小さい上に、なかなか成長・成功できない。でも私たちは、この日本という国はもっともっと元気になるだろうと思っていました。そして日本が元気になるには、地域の方々ないしは、小さな事業者さんが成長し、笑顔になることが必要だと考えていました。

インターネットを通じて我々のプラットフォームを提供すれば、人々が元気になるおではないかと考え、「人々と社会をエンパワーメントする」ということを、楽天の創業時のミッションとして掲げました。

当時はインターネットでモノを買う人なんていないのはもとより、ほとんどの方がインターネットでモノを売って商売ができるなんて思っていない頃だったんです。でも創業当時のメンバーの僕ら6人は、夢を持っていました。

結果、楽天は、先ほどお話しした通り、4万6,000店舗のみなさまにお集まりいただいて、3兆円を超えるお取り扱いするグループに成長しました。

「サステナビリティ」が楽天の新たなキーワードに

小林:楽天では「エンパワーメント」という言葉をよく使います。人々を元気にしていく、ないしは人々が自らの意思によって自分の生活を築いていく。そんな意味をエンパワーメントに込めて事業を行ってまいりましたが、これからはエンパワーメントだけではなくて、「サステナビリティ」というキーワードも楽天が事業を行っていく上で加えたいと思っています。

今の生活をしていて、本当に明るい未来は来るのだろうか。これだけ大量消費をして、本当にこの星は大丈夫なのだろうか。もっともっと持続可能な明るい未来を作る活動をしていかなきゃいけない。我々の子どもや孫の世代が笑って過ごせる未来を作っていきたい。

そこで、持続可能な消費を促進していこう、未来を変える買い物を作り上げていこう、そんなという思いを込め、「EARTH MALL with Rakuten」を立ち上げる運びとなりました。

オープン時点の今日、「EARTH MALL with Rakuten」に並んでいる商品は約7,000点だけです。みなさまに継続して「EARTH MALL with Rakuten」でお買い物を楽しんでいただくために、これからどんどん取扱商品を増やしていきたいと考えております。

「EARTH MALL with Rakuten」のビジョン

小林: 2015年に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)というものがあります。国際社会が持続可能な社会を実現するための重要な指針として、17の目標が設定されました。そのSDGsの目標12に、「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」というものがあるのですが、「EARTH MALL with Rakuten」はこの目標への貢献を目指します。

「EARTH MALL with Rakuten」ではまず、国際認証を受けた商品を紹介し、それらの商品を「楽天市場」でご購入いただけるようにします。ただ、国際認証を受けるのはなかなかハードルが高いので、認証がなくても、地球に優しい、ないしは未来を明るくする商品をキュレーターのみなさまとともにお客様にご紹介していきたいと思っております。

さらには、ただ売場として機能するだけではなく、ライフスタイルにまで及んだ情報を発信していくメディアとしての役割も持たせたいと考えております。みなさまに新しいサステナブルなライフスタイルを提案することで、一人ひとりの消費が変わります。そこから始まって、この国の未来が変わっていく、この星の未来が変わっていくと私は考えております。

楽天が掲げる「EARTH MALL with Rakuten」のビジョンは、「サステナブルな消費が当たり前の社会を実現する」こと。声高に誰かが強調するでも、お偉いさんや政治家が強要するのでもなく、消費者一人ひとりが、そういう新しいライフスタイルを当たり前として生活していく、そんな社会を作り上げたいと思っています。

10回に1回でいいから、買い物の仕方を変えていく

小林:この取り組みは、我々楽天だけで出来るものではありません。より多くの方々を巻き込み、ご一緒したいと考えております。そこでまずは、慶應義塾大学で教授を務められており、慶應義塾大学SFC研究所×SDG・ラボの代表も務めていらっしゃる、蟹江先生にアドバイザーになっていただきました。

そして、本日もお越しいただいておりますが、エシカル協会の代表理事を務めている末吉里花さんにも、より多くのお客様に「こんな商品もありますよ」とご案内をしていくキュレーターの仲間入りをしていただいています。

さらには、「EARTH MALL with Rakuten」をともに作り上げてくださった博報堂さんとも協力しながら、消費スタイル・ライフスタイルの転換を図る、社会への新しい提案をしていきたいなと考えています。

そして、多くの事業者さんたちに、新しいこのエシカルな消費、サステナブルな消費という考え方をご理解いただいて、その商品をお取り扱いいただくことで、もっともっと商品を増やしていく所存です。

今、この時点では、サステナブルな消費をしようというお客様はそれほど多くないかもしれません。今日お集まりいただいているのは、みなさま意識が高いので、そう思っていらっしゃる方も多いとは思うのですが、そう思っていない方々の方が圧倒的に多いのではないかと思います。

サステナブルな消費の意識が高くないと駄目だと言いたいのではなく、そういった考えがあるということをまだご存じなお方や、意識されていない方もいらっしゃるのではないかと思いますので、一人でも多くの方々に、我々の取り組みをまずは知っていただいて、こんな新しい、未来をちょっと考える買い物の仕方を提案していきたいと思っています。

1997年に「楽天市場」を始めたころは、誰もインターネットでモノを買わない状況だったのが、20年経って、今や何千万人という方々がインターネットでお買い物をすることが当たり前になりました。

今度は、「Earth Mall with Rakuten」で、10回に1回でいいから、買い物の仕方を変えていく提案をしていきます。この取り組みを知ってもらって、持続可能な消費を意識してもらえれば、この国は変わっていきますし、この星も変われるんじゃないかなと考え、楽天は今日から新しい取り組みに調整してまいりたいと思います。

ぜひみなさまにもご協力いただいて、一人でも多くの方々に、お買い物、ないしはライフスタイルを変えていく意識をしていただき、「EARTH MALL with Rakuten」があることをお友達にご紹介いただけたら嬉しく思います。

ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございました。では、引き続きまして基調講演へと移らせていただきます。ただ今、小林よりご紹介がございましたが、本日お二方にお越しいただいています。

持続可能な消費と生産が、社会を変えていく

司会者:まずは、「EARTH MALL with Rakuten」のアドバイザーを務めていただいております、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科、蟹江憲史教授をお招きしまして、「SDGs目標12達成へ向けて サステナブルな消費へ向けた企業への期待」と題しご講演を賜ります。それではみなさま、どうぞ盛大な拍手でお迎えください。蟹江先生、よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

蟹江憲史(以下、蟹江):みなさま、こんにちは。慶応大学の蟹江と申します。今日は楽天の「EARTH MALL with Rakuten」スタートに関連して、持続可能な消費と生産が非常に重要になっているということ、そして、先ほど小林様の話にもありましたが、それが企業のメリットになるだけではなく、社会全体を変えていくことにつながるという観点から、少しお話をさせていただきたいと思っております。

この表には17のアイコンが詰まっています。これは2030年に向けて、国連が作ったSDGsというグローバルな目標です。最初におうかがいしますが、このSDGsを知っている方は、ちょっと手を挙げていただけますか?

(会場挙手)

ありがとうございます。かなり多くの方がご存知ということで、ちょっと構成を変えながら話を進めていきたいと思います。

一番大事な点は、国連加盟国の193ヶ国すべてがこの目標に合意していることだと私は思っていませす。なぜ大事かというと、それが未来のかたちを表していることにつながっていくからです。

この目標ができた2015年の時点で、すべての国が「2030年の世界のかたちはこれだ」と言ったのが、SDGsです。先ほど小林さんは少し遠慮して言っていましたが、この目標と今の取り組みとのギャップが、かなり大事なビジネスチャンスにつながるんじゃないかなと思っています。

誰一人取り残されない世界を作る

蟹江:SDGsが果たしてどこまで広がるのかという問題もあると思いますが、恐らく2030年にはこれが当たり前になっているだろうと思っています。そして、今日この発表をされたことが、その始まりの地点としてすごく重要な意味を持つのではないかと思っています。

恐らく、早く動いた方がメリットも多いのではないかと思っています。重要なコンセプトが1つありまして、「誰一人取り残されない世界を作る」ということが、非常に大事なSDGsの理念として書かれています。

包括的に、包摂的に、地方にいても、中央にいても、いろいろな人がいろいろなものにアクセスして、いろいろなことができる。そして、それで世の中を変えていく。その際に、誰一人取り残されないかたちにして、みんなで成長していくことを忘れないようにすることが大事だと思っています。

本日は、「EARTH MALL with Rakuten」の発表会なので、まずは地球の話から先にしていきたいと思います。この図は、我々の業界では非常に有名な「プラネタリーバウンダリーズ」という絵です。まさにバウンダリー、つまり境界線が書かれています。

(スライドを指して)どこが境界線かというと、青い丸と赤い丸、境界線が2つ書かれているんです。簡単に言ってしまうと、中の青い丸の周りに気候変動などの現象が書かれています。その中にいろいろな現象が収まっていれば地球は大丈夫であるということです。実は、周りに書かれていることは、すべて相互に関連してるんですね。

だから、我々の言葉で言うと、システムの話になってきます。それぞれ課題はあるのですが、すべてが地球の仕組みやシステム全体に関わってくることであると。

例えば、遺伝的多様性の減少は、レッドゾーンに入ってしまっていて、バウンダリーを超えています。そのことがいろいろな悪さをして、温暖化にも影響を与えるし、土地利用変化にも関わってきたり、地球が正常じゃない状態に近づいていくことに貢献してしまっています。

そんなことを表しているのが、このプラネタリーバウンダリーという一つの研究の成果です。これを見ると、ブルーゾーンからイエローゾーン、そして、レッドゾーンに入りつつある課題が非常に多くなってきています。大事なのは、その原因を作っているのが我々人間だということです。

生きるための対策が温暖化を進めてしまう

蟹江:先ほど、楽天は非常にいろいろなものを売っていろいろな成果を上げていて、その動きが変われば世の中が変わっていく、とおっしゃっていましたが、まさにそのとおりで、我々一人ひとりの行動が重なって作られていったのがこの世界です。

この世界で何が行われて、何が起こってきたか。今年の夏もすごく暑かったです。その原因として、直接どういう関係があるかは科学的にはなかなか解明しきれないですが、多くの科学者は、地球温暖化や気候変動の影響があると言っています。

我々は、温暖化が起きてしまって、夏が非常に暑くなったのでテレビでも「命を守るために水を飲んでください」と言います。それから「冷房をつけて暑さを我慢しないでください」と言うわけです。なので、ピッと電気を点けたりするわけですが、実はその電気が石炭火力発電所で作られていたりすると、自分たちが生きるための暑さ対策が、逆に温暖化を進めてしまうことにつながるわけです。

あるいは、「暑いから水を飲みなさい」と言って水を飲んで、外に出るとなかなか水が手に入らないので、ペットボトルの水を飲みます。そのペットボトルが石油から作られていたりすると、自分は個人的に温暖化対策をしているのですが、社会全体としてはさらに温暖化を助長してしまいます。

我々は、そういう非常に矛盾に満ちたことをやってしまっているわけです。いろいろなところでそれが起こってきています。我々の生活を支えるために、いろいろな重要なことをやってきていて、地球がこんなことになるということ、その結果までは、なかなか分からないじゃないですか。

そういう(環境に負荷を与える)行動を取って、いろいろな国で同じようなことが行われていくと、結果としてすごく右肩上がりにいろいろなものが悪化してしまう。ただ、我々の生活の上での関係としては、GDP(国内総生産)が上がっているので、そういう恩恵も被っているわけです。

ところが、それが地球にどういう影響を及ぼしているかが右側のいろいろなグラフに表れています。沿岸域の窒素、海洋漁業、農用地、海洋の酸性化、メタン、二酸化炭素、亜酸化窒素などいろいろなことを見ても、かなり相関がありそうなかたちで地球システムに影響が及ぼされているんです。

環境だけではなく、経済・社会もカバーするSDGs

蟹江:いま、世界の人口がだいたい75億人です。これから2050年に向けて、人口が90億人を超えると予想されています。これから20億人増えます。

いま取り残されている人がたくさんいますが、「誰一人取り残されないような世界」を作ろうとすると、今のままでいくと、もっと(資源が)必要になっていくわけです。温暖化の影響が強くなってくるでしょうから、もっとたくさんの人が、夏は暑かったら水をたくさん飲まなければいけないし、冷房も必要になってくる。

でも、それを続けていってしまうと、その帰結はレッドゾーンがどんどん伸びてしまう恐れがあります。それをやめましょうと言っているのが、このSDGsです。ただ、もちろん、世の中が環境のことだけを考えて動いているわけではないのは当然のことです。

経済が回らないといけないですし、経済が回っていないとたぶんこちらの会社(楽天)も大変なことになってしまう。働き方一つを取っても、みんなが生き生きとした働き方をしないと当然だめですし、女性の問題も日本ではとくに問題になっています。

ここに書かれているいろいろな課題を解決することがすごく大事だと思うのですが、今すぐに「すべてをやる」と言ってもなかなか難しいので、1個ずつやっていって、2030年にはこういった目標が実現されているようにするのがSDGsの非常に大きな目標です。

実は、このSDGsの目標の下には169項目のターゲットがあり、そこにより具体的なターゲットが書かれています。例えば今日のテーマになっている持続可能な消費・生産も、実は細かいことがたくさん書かれています。

地球全体でもっと労働力を増やすこと、もっと生産性を高めること、もっと廃棄物を少なくすることなど、我々の生活や企業の活動に関係していることが、たくさん書かれています。

SDGsに貢献できる分かりやすい形である「EARTH MALL with Rakuten」

蟹江:例えばこの12.3の、2030年までに小売り・消費レベルにおける一人当たりの食料廃棄物を半減させるというターゲットは、まさに今日のテーマとなる話です。

地球のこと、あるいは世界全体の話でデータを見ていくと、果たしてそのために何をやればいいのかわからない疑問も湧いてくると思うのですが、ここまで見ていくと、我々が日常生活でできることがたくさんあると思います。

そのことをよりわかりやすく、我々がアクセス可能なかたちで見せてくれるのが、「EARTH MALL with Rakuten」でやろうとしていることだと思いますし、そういった消費行動・生産行動を通じて、レッドゾーンに行ってしまう現象をいろいろ変えられると思います。

ですので、「EARTH MALL with Rakuten」が出てきたのは、非常に重要な第一歩目だと思います。これは最初のステップなので、これからやることがたくさんあると思います。

我々が買い物をすると、さっき言ったようにペットボトルの水を飲んでしまうと、身体にはいいんですが、地球には少し負担をかけてしまう。でも、もし買えば買うほど地球が良くなるようなものだったら、すごく楽しい世界になると思いますし、心の負担も少なくなるんじゃないかなと思います。

ぜひ今後、そういった形にこのモールを発展させていきたいと思いますが、そういったことができるうる種を蒔いてくれているのが、このSDGsではないかなと思います。

「SDGsは環境に対するゴールだ」と思う人が多いと思います。ですが、実は経済や社会の課題にも非常に強く関係しています。よくよく見ると、本当にいろいろな課題が詰まっています。観光の課題もありますし、科学技術や技術的能力の課題もあったり、情報の課題もあります。

何かをやろうとすると、一つの目標や一つのことを考えていた方がやりやすいのですが、SDGsを推進することは、いろいろなことが詰まっていて、何かをやる時に、少し違う観点から物事を見ることの重要性を教えてくれると思っています。

個々人がやれることから繋がっていくSDGsの17のゴール

蟹江:「SDGsとは何か」ということは、また別の機会に譲りたいと思いますが、SDGsにはいろいろな目標と17のゴールがあります。一つひとつ積み重ねていくことが大事と言いましたが、例えば買い物であれば、入り口は目標12の「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」ということだと思うんです。

そこから次のアクションに進めていくことが大事だと思うのですが、どうすればいいのか分からないという話をよく聞きます。たぶん個人レベルでは、まずできることからやることだと思います。

例えば、水を買うのではなく、できるだけ水筒に入れて持っていくことが。あるいは食糧の問題を考えると、できるだけ地元の食べ物を食べる。そうすると地元の農家や漁師、漁業関係者など、そういう人たちの収入にもつながっていきますし、何をどこで作っているかが何よりも見えるわけです。そうすることで安心して食べたり飲んだりできると思います。できることから始めるのが大事です。

売る方がそういったことを少し意識して、(製造や流通などの)いろいろなことが見えるようにしていくことが非常に大事です。グローバルな時代なので、地元と言っても自分の住んでいる地域で買うのではなくて、インターネットで取り寄せるところもあるかもしれないですが、(モノが)どうやって運ばれているのか、どうやって作られているのかが見えることが非常に重要なんじゃないかなと思います。

消費行動を少し変えるだけで、例えば水の問題につながっていったり、プラスチックごみの削減につながっていったり、エネルギーの削減につながっていったりします。それが第一歩だと思います。

1割の行動を変えることで世界が変わる

蟹江:そこで終わりではなくて、次に何をするのかを考えると、今度はできる行動を少しずつ広げていくことが大事かと思います。例えば、今日(の会場では)、ペットボトルではなくて、コップに水が入っています。全部コップにすることでペットボトルの削減になっている。全部ペットボトルと全部コップの水で、状況はかなり違うんじゃないかなと思います。

先ほど「10回に1回は『EARTH MALL with Rakuten』に行ってみましょう」と(小林さんが)言っていましたが、10回に1回でも、1割が変わってくるんです。

90億人が1割の行動を変えるとすると、9億人の行動が変わるという意味で、かなりの規模になります。それがどんどん増えていくことによって、右肩上がり(の悪化)が少しずつ緩やかになって、そして逆に下向きになるかもしれない。

従って、まず自分の行動を広げていくことです。そうすると廃棄物の削減にもつながるし、たぶん経費の削減にもつながりうるのではないかと思っています。

あるいは食事です。レセプションがあると、たくさん食事が余ります。もちろんフードロスがあまりよくないことだとわかっていても、自分の健康を考えて食べるのを控えることも非常に大事だと思います。

それであれば、余った食材をどうにかすることを考えたり、フードバンクを利用する、あるいは料理を作る段階で余っている食材を利用するなど、いろいろやれることがあるのではないかと思います。

そうすると、先ほどのターゲット12.3「一人当たりが食料廃棄物の半減」にもつながっていくんです。あるいはマイバッグを利用することなど、いろいろやっていけると思うんです。それを広げていけるんじゃないかなと思います。

そういうなかで、経済的に得をしながら、うまく商売をしながら行動を変えていくことが、すごく大事になってくると思います。それから、「計測する」ことが今後、人の行動を変えていく上では、非常に大事になってくるのではないかなと思います。

イノベーションを呼び込むSGDsのゴール

蟹江:今、日本政府や世界でもSDGsを推進しようと、いろいろな人が行動し始めているのですが、いい事例を探しています。成功した例があると、それを見習えるようになるんです。日本政府も、去年から「SDGsアワード」を開催していまして、いいところを見習える仕組みを作ろうとしています。

それから、来年は国連総会のもとで、このSDGsがレビューされることになっています。それに向けて、日本政府も優良事例を世界に向けて発信したいと言っています。

再来年は東京オリンピックがあります。この前、大阪でも万博が2025年に決まりまして、それもSDGsを軸として推進することになっています。

もし、それが本当に実現するとしたら、ちょうどSDGsが達成されるはずの2030年の5年前となります。「こんなことをやればSDGs達成につながる」ということが、大阪に集まってきたとしたら、すごく世界のためにもなると思います。そのためには、「計測する」ことが非常に重要なのではないかなと思います。

消費者ではなくて企業側からすると、17のゴールを実現していくためにどうすればいいのか。まず、SDGsは2030年の世界のかたちであることを考えるのがすごく大事ではないかと思います。

楽天も「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」と言っていましたが、イノベーションというのは、理想と現実とのギャップがあるから生まれるのではないかと思います。

目標が17個あるとしたら、たくさんのイノベーションを呼び込めるネタがあるのがSGDsではないかなと思います。そういう視点で見ていただくといいんじゃないかなと思います。

リスク対応、投資の呼び込みでも重要となる

蟹江:それから、企業ガバナンスがちゃんとしていない企業とはあまり取引しないというところも出始めています。リスクへの対応という意味でも、SDGsを推進しているところの物を買う、あるいは取引することがだんだん重要になってくるのではないかなと思います。そういう意味でもSDGsは非常に大事だと思います。

それから投資を呼び込む。実は、サステナブルな投資は、最近非常に大きくなってきています。規模で言うとまだまだ日本は小さいのですが、伸び率を見ると、実は2014年から6,690パーセント伸びています。最初は0だからということもありますが、サステナブルな投資は非常に伸びてきているんです。

日本の年金機構もそうですが、世界の20基金のうち12基金が、ESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)投資をするようにシフトしてきています。

ですので、今後、投資を呼び込んでいく上でも、SDGsは非常に重要になってくるのではないかなと思います。

いろいろ大事な点があると思いますが、このSDGsに取り組むことが、負担になるんじゃなくて、本当の意味でチャンスになっていくと思いますし、15年後くらいには本当にやっておいてよかったなという時代がくると思います。

ぜひ、こういったいい面やメリットを得られる世界を作っていきたいと思います。そういう時に、今日が出発点だったと考えられてくるのではないかと思います。

そんな思いを込めて、私も「EARTH MALL with Rakuten」のアドバイザーを務めていますが、SDGsの観点から見ると、非常に望ましいモール、望ましい売り方になっていくんじゃないかなと期待しています。ぜひ今日をきっかけに、いろいろな動きを加速していっていただければなと思っているところです。

私からのお話はこのくらいにさせていただきたいと思います。ご清聴いただきまして、ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:どうぞ今一度、盛大な拍手でお見送りください。ありがとうございました。

(会場拍手)

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