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2. ICTを活用して学力向上を実現した事例紹介(全1記事)

2018.12.25

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iPad100台とLTEで快適なICT教育環境を構築 ICT導入で変わる、これからの学校教育のかたち

提供:株式会社すららネット

教育分野におけるICTの導入が進むなか、学校教育も従来の「紙の教科書+黒板」というスタイルからの変化を求められています。ICT教育が盛んな佐賀県にある龍谷高等学校では、学生の基礎学力を伸ばすため、さまざまな取り組みを行っています。本記事では、その龍谷高等学校で教務主任兼ICT教育推進室長を務める中島一明氏が、教員を対象に行ったプレゼン「ICTの運用と組織マネジメント」の模様をお送りします。

人口減少により学校が潰れていく

中島一明氏(以下、中島):先生方、こんにちは。龍谷高等学校で教務主任兼ICT教育推進室長を務めます、中島と申します。どうぞよろしくお願いします。今日は私から「ICTの運用と組織マネジメント」について少しだけ話をしたいと思います。

本校では「5プラス1」という教育方針を掲げてICT教育の取り組みをしております。

いきなり「学校が潰れる」という題名になっていますね。このグラフは、佐賀県内の18歳以下の人口の推移になります。ちょっと減り続けておりまして、今年の高校3年生は9,023名です。中学3年生は8,214名。単純に引き算すると、約800名は減っているということです。うちの学校(の生徒数)は800名ですから、このままでは完全に潰れることになります(笑)。

さらに10年後は、7,196名。1,000名も減っていますから、さらにもう1校なくなるということになります。ちょっと冗談ぽく言ってますが、これはもう現実のものとなってきているのかなと思っております。

新しい時代に合った新しい学校を創る

冒頭で喜多校長から話がありましたように、本校は今年で140周年を迎える古い学校で、良く言えば歴史がある学校です。3年くらい前までの本校のイメージは古豪というか、保守的なイメージが非常に強かったと思います。

私が教務主任になったのは今から4年前になりますが、子どもがどんどん減り続けているなかで同じことをしていても、どんどん生徒数が減っていくとなると、いずれジリ貧になって最後にはなくなってしまう。そう考えておりました。

古さを残し、建学の精神を守りつつも、新しい時代に合った新しい学校を創っていかなければならない。新しいことに挑戦していかないといけないなという気持ちでした。

龍谷高校を紹介した動画がありますので、今から少し流したいと思います。

(動画が流れる)

動画の中にもありましたが、特別進学科があるものの、部活動のイメージが強かったこともあり、これからはやはり学力をつけていかなければならないという危機感がありました。

今後を見据えたICTのソフト環境を創る

ここからは、現在のICT活用状況を説明していきたいと思います。

やりたいことに合わせたツール選択ということで、ハードの面についてはまだまだのところはありますが、ソフトは少しずつ体制が整ってきております。e-Portfolioと保護者との連携については、今年度よりClassi(ICT教育をサポートするクラウドサービス)を活用しております。

これは、中学1年生から3年生、高校1年生から3年生の6学年に、今年度から一気に導入しました。年次進行という考え方もありましたが、やはり共通のプラットフォームがあったほうが改革が進むんじゃないかなと考え、一気に導入することとなりました。

(スライドを指して)まだ研究段階ではありますが、ロイロノート・スクールも一部で活用しております。

それから学習教材についてです。(スライドを指して)これは1番最初の先進的な取り組みになるんですが、総合・保育コースのすららをはじめとして、文理進学コースのClassiや特別進学科のスタディサプリをコースに合わせたeラーニング教材として導入しております。

サービスの利用と使い分け

まず特別進学科については、リクルートのスタディサプリというサービスを使っております。

これは動画が中心で、比較的長い時間視聴する必要があります。ある程度学力がないと退屈してしまうような点もあるので、そういった意味では難関大学に広く対応したスタディサプリを活用しているということです。

文理進学コースについてはClassiを使っています。先ほど「今年度よりClassiを導入した」と言ったんですが、それとサービスは同じで、使っているコンテンツがちょっと違います。文理進学コースで使っているのは学習機能です。

例えば、Webテストや学習動画の配信など、コンテンツを分けて使っています。ちなみに特別進学科もClassiのIDを持っていますが、学習機能ではスタディサプリを使っている状況です。

学力に関係なく万人に使える「すらら」

そしてすららについては、本校の学力層では中間層から下位層のコースになりますが、総合コースと保育コースで使っている状況です。

すららとの出会いは、ちょうど3年前の11月ごろだったと思いますが、広島県にある広陵高校さんでセミナーがありまして。たまたま当時の校長に「行ってこい」と言われまして、渋々行くことになりました(笑)。

実はそのとき、特別進学科ではスタディサプリの導入は決まっていたんですよ。(総合コース・保育コースでは)スタディサプリを使うのは少し無理がありますから、どうしようかと思っていたんですが、すでに基礎学力を伸ばすためマナトレをやっていました。ただ、紙の媒体であるということに難しさを感じていました。

総合コースと保育コースの生徒たちは、中学校全般の学力がしっかりついていない状況で高校へ入学してきます。早く解ける人と時間のかかる人が同じ教室のなかにいると、どうしてもうまくいかないんですね。まだ解けていないうちからあちこちでしゃべり始めるということが起きてしまうので、これではまずいことになりますね。

そこで「なにかいいのないかなぁ?」と思い、たまたますららのセミナーに行ったら、「万人に使えるので大丈夫ですよ」というようなことをセミナーで言っていまして。最初はちょっと怪しいなと思ったんですけど(笑)。

まあちょっと聞いてみるか、ということで詳しく話を聞いてみたところ、すららならできるのではないかと思い、最終的に導入を決定したということになります。ICTにしかできないすごさを知ったところは大きかったですね。

すらら導入を決めた3つのポイント

教材の選定ポイントはいくつかありますが、やはり基礎学力向上の実現が大きなテーマかなと思っております。

まず1点目は、総合コースと保育コースに入学してくる生徒は、中学校の範囲の学力の定着が不十分です。

もちろん、きちんと定着している人もいますが、全部の層に対応していないと意味がありません。上位層だけに使えるとか、下位層だけに使えるというのは意味がないということです。

ICT教材を使うことで、これまでできなかったことができるようになりました。自動化された機能があるかというのは、導入の大きなポイントになるかなと思っております。

実際にすららで使っているドリルでは、一人ひとりに合った問題が出題されます。なので、その点についても我々が要求していたものになっていたかなと思います。

2点目は、生徒の家庭学習を充実させられるということ。恥ずかしながら、特別進学科には頻繁に課題を出していたんですけれども、総合コースと保育コースについてはそれほど多く課してなかったんですね。だから、家庭学習をしっかりさせるということは大きなテーマだったんですね。

その点、すららにはわかりやすいレクチャーもありますし、個別に出題されるドリルもありますから、自分で勉強を進めていくことができます。家庭でもできるという点で、我々の要求していたことを満たすことができました。

3点目は、教材会社が豊富な成功事例を持っていることです。これはけっこう重要で、先生方は授業をすることは得意なんですが、ICT機器を扱うことは意外と不得意なんですね。困ったらやらなくなる、ということが起きてしまうんです。

それをすららは全部助けてくれます。こちらが持っていないノウハウでも、「これ、ちょっとできないからお願いします」と言うと担当の方が全部やってくれるので、比較的スムーズに導入することができますね。その点もすごくよかったかなと思っています。

大掛かりな環境整備からスタートしない

このあと紹介があると思いますし、今日講演もしていただきますが、開星高校にも行ってきまして「すらら入試」という新しい入試を持って帰ってきています。これは実際に本校でも導入させてもらっております。

現在は少しずつ環境が整ってきており、ICTも整備されてきました。昨今では電子黒板やタブレットの導入が進んできていますが、本校では環境の整備からスタートしたのではなく、教材の検討からスタートしているのが特徴かなと思います。

大掛かりな環境整備からスタートすると、「予算が取れないから来年に回そう」となって、次年度繰り越しになります。当たり前ですが、ICTを導入する目的は機器の導入ではなく、学力の向上ですよね。早く導入したほうが早く学力がつくということになりますから。

職員の中には、ICTのような機械があまり得意ではない先生方もいらっしゃいますので、いきなりフルスペックでスタートすると、尻込みしてなかなかスタートできなかったりするんですね。スモールステップで導入するのは、先生方に慣れてもらうためにもいいのではと考えています。

iPadとタブレットPCの導入で、すららができる環境が生まれた

授業をご覧になっていただくとわかるように、本校ではCAI(コンピューター支援教育)教室を中心に学習を進めていっています。当初は最初からあったCAIの教室だけで運用していました。

1学年だけでスタートした当初は数的に十分だったのですが、その生徒たちは当然学年が上がっていきますから、去年度は1年生と2年生、今年度は1年生から3年生までと人数が増えていって、1つの教室だけではまかないきれない状況になりました。

そこで去年度はどうしたかというと、考えに考え抜いて、iPadを50台入れました。1学年50台で、今年度はさらに1学年増えて回らなくなったので、もう50台。今iPadを100台入れています。

iPadは教職員も持っていまして、それも含めると校内には全部で150台あります。それからWindowsのタブレットPCが50台ありますので、もともとのCAI教室を加えるとだいたい200台くらいで、一気にすららができる状況が生まれております。

100台のタブレットのネット接続に必要な環境整備

我々はこのように教材の検討からスタートしたんですが、教材からスタートすれば、どれくらい設備が必要かが明確になってきます。今後の環境整備の進め方においても、設備が多すぎたり足りなかったりすることがなく、適度に進めることができるんじゃないかなと思っております。

実は、今後校内のWi-Fiをどうするかが大きな問題になっています。今日参加されている先生とも話したんですが、フルスペックで整備すると、やはり2,000万円くらいは費用がかかるということでした。一気に2,000万円はちょっときついものがあるので、正直今後どうしようかと考えています。

本校も一部のエリアでWi-Fiは引いていますが、実際に100台で一気にすららをやるとなると、ちょっと今のWi-Fiではきついものがあるかと見ておりまして。その点、LTE(Long Term Evolution)はすばらしいですね。まったくのノントラブルでできています。

実験の一環でオープンスクールを夏にやったんですが、そのときに80台を一気に動かしたんですよ。そうしたらWi-Fiが止まりましたからね。ということは、ちょっとやそっとのWi-Fiでは耐えきれないかなと。そのあと、すぐLTEに切り替えてスムーズになり、事なきを得ました。

Wi-Fiはどれくらい整備するかでコストが大きく変わります。たしかに数千万円かければすばらしい環境ができますが、ちょっとでもケチると危ないというか。まずいのは、Wi-Fiが止まると授業ができなくなりますからね。

ICT教育推進室を作って教員全体で取り組む

本年度の運用体制についてお話しします。実は、機器を揃えるだけではなかなかうまく回りません。

スライドの題名に「みんなでやる」とあるように、本校では学校としてICT教育に取り組んでおりますので、使いたい人だけが使うといった方針はとっていません。ICT教育推進室という組織で運用しております。

学校現場では何を使ってどのように指導するかは先生に任せられていますが、使える先生と使えない先生が発生してしまうとちょっとまずいことになるんですね。

使える側の教員の蓄積されたノウハウがあるとしても、もしその先生がいなくなったら、それが全部なくなってしまうことになります。それでは学校としての取り組みにならず、失敗することになります。

だから、本校におけるICTの運用については、個々の取り組みではなくて、学校として取り組みをしようということで、「みんなでやる」という精神でやっております。これがICT教育推進室で行っているということです。

一応私が室長で、全体の統括をしているかたちです。その中に「チームすらら」というチームがありまして、今日はそのリーダーからも発表があります。

同じように、「チームClassi」「チームロイロノート」もありますね。あとはICT関連支援の教諭もおり、ツールごとに担当チームを作って運用しております。こうすることで組織としてのノウハウを残すことができますし、使う使わないに関わらず、さまざまな教員が関わって運用することができます。

専門の組織を作ることのメリット

もう1つ、組織を作ることのメリットがあります。校内に詳しいリーダーを作れるということです。校内にリーダーがいれば、ちょっとしたことでも気軽に聞けるというのはメリットじゃないかなと思います。

ちなみに、ICT教育推進室のなかでiPadを使っていますので、iPad を自在に活用できるようにApple Teacher の認定をを目指しております。冒頭で喜多校長が話しましたけれども、校長先生は本校のApple Teacher第1号です(笑)。iPad大好き、iMac大好き、Apple大好きということもあって、すぐ取得していました。

ちなみに私自身もApple Teacher を取得しておりますし、今年度の目標は10名取得できたらと思います。今のところ6名認定を受けております。最終的には、すべての教員がApple Teacherを取得できたらと期待しています。

最後に、私がこの3年間でICT教育のリーダーをやってきた中で重要だと思うこと、失敗しない秘訣は、やはり物ではなくて人だなぁと思います。そこで(先生たちの中で)誰にやってもらうか、誰をリーダーに選ぶかということはすごく重要で、成功か失敗か決まってしまうのではないかなと思います。

管理職の先生方と相談しながらもやっていくんですが、管理職の先生方だけに頼るのではなく、現場の教員から提案をして動かしていく。そういうボトムアップの動きが必要じゃないかなと思っています。

現状維持は後退と同じ

ちなみに今日発表する「チームすらら」のリーダーは、学校でも信頼がおける仲間ですが、プライベートでも釣りに行ったりするような気の置ける仲間の1人です。

参考までに、私がICT教育の推進メンバーを管理職の先生方に提案するときに、いろいろな資料を提示したりしました。(スライドを指して)これは今年度のものです。2点目に(書いてある)「Apple Teacherになろうプロジェクト」を、8月29日からスタートしているような状況です。

このように、ICTの活用についてはまだまだのところはありますが、私の気持ちとしては現状維持は後退かなと思っております。「やってダメならしょうがない、また次を考えよう」といった気持ちでやっております。

そうしているうちにいろんな取り組みがスタートし、現在私はたくさんの取り組みに時間を奪われて身動きできなくなっておりますが(笑)。とはいえ、覚悟を決めてやっておりますし、失敗できないという気持ちでやっております。ちょっと大きい話になりますが、ICTを活用しながら日本の子どもたちの学力向上が実現できればなぁと思っております。

今日セミナーにお越しいただいた先生方と情報交換をしながら、これからのよりよいICT活用について、今後も意見やノウハウを交換・共有できればと思います。これからもよろしくお願いしたいと思います。以上で終わります。

(会場拍手)

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