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すべてはひとりの熱狂から始まる ―熱狂顧客を増やすために明日からあなたができること(全2記事)

2019.01.10

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楽天大学仲山氏×トライバルメディアハウス池田氏が語る、熱狂社員を育む「チームビルディング」の秘訣

提供:株式会社トライバルメディアハウス

2018年11月5日、品川インターシティホールにて株式会社トライバルメディアハウス主催の「熱狂ブランドサミット 2018」が開催されました。マーケターがどのように顧客を熱狂に導くかをテーマに、経営者やデザイナー、インフルエンサーといった、さまざまな立場の有識者がセッションを行いました。顧客を熱狂に導くには、従業員が自身のブランドに熱狂する必要があります。「熱狂ブランドサミット 2018」を締めくくる本セッションでは、熱狂社員を育むチームビルディングについて、楽天大学学長の仲山進也氏とトライバルメディアハウス代表の池田氏が意見を交わしました。本パートでは、ワークショップ形式でチームビルディングのコツを解き明かします。

もしも100社をエンパワーメントするとしたら?

池田紀行氏(以下、池田):じゃあここから最後の大締めなので……みなさん、こういうの嫌いだと思うんですけど、あえてやりますよ。実際に(ワークを)やってみる時間を設けたいと思うんですね。

ここからは仲山さんにバトンタッチをして。仲山さんは、いままでいろんなワークをやってきています。すごく短時間でワークをすると、頭ではわかっているのに、実際にそれを社内でやろうとするとぜんぜん使えないという。知識として頭には入ったんだけれども、消化できていなくて、また体内に摂取できていない状態だと思うんです。

今日も仲山さんと打ち合わせをしていて。この2人なので60~70分くらいしゃべり続けることはできるんですけれども。たぶんみなさんが持って帰って明日から「じゃあ」というときに、それだとまだやっぱり弱いよねと。

ワークというのはこんな大人数では絶対にやってはいけないというルールがあるわけですが(笑)。今日はそこへ果敢にチャレンジをしてみたいと思います。

みなさんはもういい大人なんですから、前や後ろや横に座っている方に恥ずかしがらず果敢に声をかけて、「一緒にやりませんか?」と言って、2〜3人のグループを作ってもらって。

それぞれ5分から7分くらい話し合って、「ああでもない」「こうでもない」「これはどうなのかな」とやりながら、2つのワークをやっていただきたいんですね。それは必ず一生消えることのないお土産として、みなさんの体内に残り続けるものになると確信しているので、ぜひ勇気を振り絞ってやってください。

じゃあここからは仲山さんに。

仲山進也氏(以下、仲山):ハードルを上げられてやりにくいんですけど。いきなりですが、お題です。最初にこのお題を作ったのは、岐阜県庁の職員さん向けの研修をやって、と言われたときです。

みなさんは、クライアント100社の担当です。自分が担当する100社をエンパワーメントする仕事です。エンパワーメントというのは、活躍してもらう、元気になってもらうための支援をするという意味です。

手元にあるのは100社のリストと、自由に使える経費は1年で100万円です。これは、「使えるお金はそんなに豊富にはありません」というくらいの意味合いでとっていただければと思います。「ネットを活用しなさい」と書いてあります。

となると、まず自分だったら何を用意して、どういう手順で何をするか。あとは、よくあるミスのパターン。ありがちなミス……あまり考えていない人が陥りがちな落とし穴はどんなことがありそうか、ということを考えてみてほしいんです。

これを同じテーブルの近所の人と「こんにちは」ってしていただいて、2〜3人くらいで雑談する感じでアイデア出しをしてほしいので。

「そういうのは絶対に無理」という人は、「俺には話しかけないで」というオーラをそこはかとなく発していただければ、たぶん周りの人も空気を読んで忖度してくださると思います。いまから5、6分くらい、ワイワイしながら進めていきたいと思います。

池田:2〜3人組でおしゃべりしてください。紙の左側にまとめてください。次に右側を使いますので、まず左側を使ってまとめてください。

(ワーク中)

キャンプの焚き火担当がやるべきことと、ありがちな失敗

仲山:はい、終了ー! ありがとうございます。だいぶ盛り上がっていますけれども、いまのを踏まえつつ、そのままあえて解説なしで次のお題にいきます。

次のお題は、こちらです。あなたはキャンプの焚き火担当になりました。手元にあるのは薪や炭100本と、自由に使える経費は1万円。あまり使えませんということですね。

何を用意して、どういう手順でやりますか? よくあるミスのパターンは、焚き火になかなか火が点かなかったり、消えちゃったりする人がやりがちなことです。はい! いまのメンバーで引き続きどうぞ。

(ワーク中)

はい、終了ー! ありがとうございます。では先に進んでいきます。焚き火の手順を分解すると、「着火」「送風」というプロセスがあります。

着火するためには(スライドの「マッチ」「ライター」「新聞紙」「着火剤」を指して)こういうものを1万円の中から買って用意をして。送風するためには、うちわなどを用意する必要があります。よくあるミスをちょっと考えてみたんですけど、いま話していた中に出ていますかね? こんな感じで。

でっかい薪をまんべんなくライターで炙り続けたり、マッチから薪に着火させようとしたり、湿った薪を一生懸命集めてきてがんばってくすぶらせたり。着火剤を「お~燃えた!」「うお~!」とか喜んでるだけで、薪をくべるのを忘れて、あっという間に終わる(笑)。薪が燃え始めたのに、また着火剤をくべる。

あとは風を送り忘れたり、逆に「風を送りすぎて火が消えてしまいました」とか。勢いよく燃える大きな薪だけえこひいきしたり。あとは、「せっかく火がついたけど、なんのために燃やしたか忘れた。企画を考えていなかった」というようなものを一応挙げてみました。

いまのを踏まえて、この焚き火の回答を最初のエンパワーメントのお題に当てはめてみてほしいんです。

このよくあるミスを仕事の話に置き換えて、「あ~、一度にすべてに着火させようとするのって、こういうシチュエーションと通じるね」というような。そんなおしゃべりをもう1回してもらってよろしいでしょうか。どうぞ。

(ワーク中)

チームビルディングと焚き火の意外な共通点

仲山:はい、終了ー! ありがとうございます。話を進めたいと思います。「熱狂」には「熱」という字が書いてありますけど、「着火」というのは「心に火をつける」ということと通じるなと。送風というのは支援し続ける。そんなふうにつながりそうです。

いま出てきた焚き火のミスを、ミスじゃないやり方と対比させてみました。(スライドを指して)こんな感じですよね。

適当に目を通していただければと思います。池田さんもこれを眺めながら、ツッコミ合いや掛け合い形式で進めていければと思いますけど、アウトドアの人には当たり前すぎて。

池田:焚き火の「着火の仕方」と「(火を)大きくする」のと「(火を)維持する」というやり方が、仕事のチームビルディングにほぼ共通しているということには気づいていないですね。(僕も)気づいていなかったです。

仲山:ちなみにチームビルディングと言うと、「社内のチーム作り」というイメージが強いかと思います。

でも、僕が思っているチームビルディングというのは、人と人との関係性をいい状態にすることです。そういう意味合いで捉えると、まさに今日のテーマの「お客さんのコミュニティってどうやって作っていったらいいんだろう」ということもまったく同じだと思っています。

池田:社内のチーム作りと、あとはインフルエンサーや熱狂的な顧客の人たちとの関係性作りも……。

仲山:社内の人だけも当てはまるし、お客さん同士の横のつながりだけにも当てはまるだろうし、お客さんと社員を含めたコミュニティにも当てはまると思っています。ちょっと進みますね。

「着火剤だけ盛大に燃やして、薪をくべるのを忘れていました」というのは、イベントを1発やって「楽しかったですね」って終わる感じと似ていますね。

あとは「こっちで薪がガンガン燃えているのに、少し離れた別の場所で火を起こそうとしたときに着火剤からやるやつなんていないだろ」って思ったかもしれないですけど。

例えば楽天だと、すでに楽天市場でものすごく売っていますという店舗さんがみんなの前で「うち、いままでこんなことをしてきました」と講演をすることがあります。

それはそれでいいんですよ。でも、聞いている人が始めたばっかりだったりすると、「がんばったらそこまでいけるのか!」と思うけど、トップを走っているようなお店の話ってステージが違ったり、けっこう抽象度が高い気づきを得たりしているので。

どうやって1歩を踏み出していいかわからない人にとっては、あまり具体的には役に立ちにくいというのもあります。それにも関わらず、ずっと事務局が選んでいる講演者はいっぱい売っている人ばっかりというようなことをよくやりがちじゃないですか。

周囲を熱狂に巻き込むにはどうしたらいいのか?

仲山:みんな火がついて燃えているんだったら、いろんなサイズの薪が燃えているわけで。大きい薪の話を聞いたら、次は小さい薪の話でもいいわけですよね。

池田:そうですね。

仲山:同じサイズくらいで燃えている薪の話のほうが、自分にとってわかりやすいようなことってあると思います。あとは、風を送らない。風というのは「コミュニケーションの量」と見立てるといいんじゃないかなと思っています。

それから、あおぎ過ぎて消火してしまうのは、よかれと思って運営側の人たちががんばりすぎてあれこれ手取り足取りやったりすると、だいたいうまくいかないですよね。

とくに県庁さんが開催する講座などは、よかれと思って事務局がいろいろやってあげすぎて、参加した人が「次はなにしてくれるんですかね?」ということになってしまっていたりします。

池田:すごく順番逆転の差し込みをしてもいいですか?(笑)

仲山:どうぞ。

池田:みなさん、Sli.do(会場からの質問を匿名で集められるサービス)の9811でいま質問をお受けしているので、もし(質問が)あればそこに送ってください。すでにいただいた質問で、いまのそれに関連するものがあって。

「チームのミッションや目標をメンバーに浸透させるのに苦労しています!」。ここに来ている侍社員が、ミッションや目標をメンバーに浸透させるのに苦労している(ということですね)。「リーダーとして大切なことは何でしょうか? 私のフォロワーシップが足りないのでしょうか?」と。

この、「私だってあおぎたいわけではないのだ」と。あおがなくても勝手に燃えていってくれるなら、それを見守って大きくするエンパワーメントはしたいんだけれども、あおがないとあおがないで消えちゃうから、あおがざるを得ないのだ、という問題。

仲山:でも、火がついていない人をあおいでも、なにも起こらないですよね。

池田:そういうことですよね。

仲山:結局今日のテーマって、たった1人の熱狂から始まるわけですよね。そこには、すでに燃えているものが存在しているわけなので。

池田:自分がね。

仲山:それを自分がやればいいという話じゃないですか。じゃあ自分の熱量をどう伝えていったら火が大きくなるか? って考えていくと、まさに焚き火だったらどうするかなって考えればいいわけで。いきなり、偉いけど湿っている人に時間を費やしすぎて、自分が力尽きるということをやっていても、あまり意味がないだろうし。

熱狂している人が直面する壁は、周囲との温度差

仲山:あと、よくありがちなのが、「コミュニティを立ち上げるぞ!」と言ってやるときのKPIが、最初に何人参加したかというような。「何十人じゃ恥ずかしいから、500人は集めろ」という。

最近「心理的安全性」という言葉が流行っていますけど、どんな人がいるかわからないところでは、怖くて発言できるわけがないので。

いきなり見ず知らずの人を500人とか100人とか、50人でも多いくらいだと思うんですけど、(その人たちに)「みなさん、発言してください」と言ったって、それは盛り上がるわけないよね、という感じで。

そうやってたくさん集めすぎて、「どこかから火がつかないかな」といろいろやっているうちに、燃料がなくなるということが起こりやすい気がするし。

池田:たぶんここにいらっしゃる方々は、「絶対に自分はそれなりに燃えているぜ」「燃えたいと思っているけど、結局周りに同志がいなくて辛い」というところが、多くの人たちですごく共通していると思うんですよね。

確かに仲山さんが言うように、まじめな侍の人たちはなぜか自分が燃えているから、そこに湿った薪じゃなくて、乾燥した薪……できるだけ小さくて着火しやすいやつを周りに置いて、火の塊をでっかくするのが、焚火の場合は最優先じゃないですか。

でも、いきなり「ここを突破すればうまくいくのではないか」とすごく巨大なゴリアテに挑んでいくような人たちも、確かにけっこう少なくない(笑)。自分は着火しているんだけれども、一番火がつかなそうなすごく大きな薪から攻略しようというところは、確かによくないなと思うんですね。

反面、小さい乾燥している薪のメンバーを集めて熱量を伝播させていく方法って、少なくとも僕が持っている答えは、理路整然と客観的なデータをもって「こうすれば絶対にこうなるから燃えようぜ」と言ったって燃えないものは燃えないという。

エビデンスなんかないし、「それをやったら絶対にうまくいくなんて保証がないから、これからやろうとしているのである」というところで燃え盛っているわけだから。

とにかく、どれだけ熱っぽくとうとうと語るしかないのかなと。語るしかない。僕はこういう人間なので語って、無理くり燃やすという感じでやるんですよ。みんながみんな、僕みたいな暑苦しい人間ではないので……。

仲山:わかります。すごくわかります。

池田:(笑)。

着火剤タイプの池田氏とうちわタイプの仲山氏

仲山:さっき、着火と送風ってあったじゃないですか。人の強みって……着火タイプの強みをお持ちの池田さんのようなタイプと……僕はうちわ的強みで、やる気がない人にやる気になってもらうことにはまったく興味を持てないし、そういう強みも持ち合わせていないんですよ。うちわ係。

池田:僕は着火剤係ですか。

仲山:そうです。

池田:なるほど(笑)。

仲山:そういう感じなので。あと、やりがちなのが、まさにさっきの100社というのって、楽天店舗さんをサポートするECコンサルタントというポジションがあって、リアルに100社くらい担当するんです。そこでやりがちなのが1対1を100個やろうとして力尽きる。

池田:うんうん。

仲山:僕はこの20年くらいずっと横のつながりを作るための活動をしてきています)。

池田:自分の担当クライアントの?

仲山:僕は楽天大学というポジションにあるので、担当という概念はないです。

店舗さんの横のつながりがなるべく生まれそうな場を作って、いい感じにかき回したりすると、もうすでに燃えている人がいるので、乾いている人が近くに寄ったときに、勝手に火が燃え移っていったりするんですよね。それ(着火)を自力だけでやろうとしたら、あっという間に力尽きるわけです。

なので、僕がいままでやってきたことは、燃えている人に乾いている人を近づけていって、まだ湿っている人はそこには投入せず、ちょっと寄せて乾燥するまで待つ。

(会場笑)

池田:乾燥させてからそこに投入すると。なるほど。

仲山:「なんかあのへん火が燃えてて楽しそうだな」と言い始めるまでは、まだ湿っているということで。

池田:意外に戦略家ですね。

仲山:戦略というか。それくらい効果的にやらないと、膨大な業務量に耐えられない環境だったんです(笑)。

池田:「熱狂」「チームビルディング」と言うと、「全部自分が着火剤にならなければいけないのか」「リーダーは全部やらなきゃいけないのか」というふうに僕も思ってしまうんですけど。

例えば、自分は着火剤だからワーワー言って、次にうちわ役をチームに入れようでもいいし。自分はうちわだなという方は、まずは着火剤のタイプをチームに巻き込むことが必要ということですか?

仲山:そうですね。着火剤タイプかすでに燃えている人がいれば、うちわがあればあとはいけるな、という感じですよね。

池田:なるほどね。

コミュニティやチーム作りの「失敗の呪文」

仲山:でも、着火剤タイプの人にありがちですが、湿った感じの人ばかりを集めてしゃべって、疲弊していることってありますよね(笑)。

池田:最後に首を縦に振らせなきゃいけない人間が、だいたい湿っているという共通項があるんですよ(笑)。

仲山:まあそうでしょうね。それはどうしたらいいんですか? ということをよく聞かれるんですけど、僕の答えは「だからこの(スライドの)範囲でできることを進めていくしかない」という。

池田:みなさん、「社内のアノ人だな」という顔が浮かびますね? その一番湿ったでっかい丸太を燃やすために、こっちはできる限りその丸太を乾かして燃えやすくするために、火を大きくし、少しずつ(火を)当てて乾かす。

仲山:そう。組織の真ん中でキャンプファイヤーをやろうとすると、大きい湿った薪の人が近くにいすぎて混じってきちゃうので、なるべくキワのほうで。「ちょっと乾いた人集合ー!」ってやり始めると、真ん中からは見えないところなので。

(会場笑)

池田:でもね、我々もけっこういまの話はすごく学びで。やっぱり熱狂だし熱狂社員だし熱狂経営だし、「目立ってなんぼ」「スピードだ」「最後のゴリアテを駆逐するのだ」という方向へ行きがちだから。やっぱり、すごくジメジメしたところで、いきなりど真ん中でキャンプファイヤーを燃やして、なんとかしようとしがちだと思います。

仲山:コミュニティやチームを作るときの失敗の秘訣が1つだけありまして。この呪文を唱えると絶対に失敗するという「失敗の呪文」があるんですよ。

(会場笑)

池田:ぜひ聞きたい!

仲山:ROI(Return On Investment:投資利益率)。

(会場笑)

池田:でも、その「失敗の呪文」を言う人たちが上のほうにいっぱいるわけじゃないですか。それはどうしたら?

仲山:その呪文を言われないところで焚き火を始めるという。

池田:あ、なるほど。既成事実化するまでは……。

仲山:結果が出始めたら、偉い人が「あれは何なんだ?」ってそのうち言い始めて。「結果が出ているんだったら、それでいいんじゃないか」って言いやすいわけですよね。

池田:既成事実化ですよね。呪文が出る前に盛大にキャンプファイヤーを燃やすと「お、お前ら何やっているんだ?」って興味を持たれるわけですか。

仲山:そう思っています。

池田:「目立たないところで」というのがポイントですね。それ、10個目に足したほうがいいんじゃないですか(笑)。「焚き火は目立たないところで」。

仲山:組織のキワでやる。

池田:(笑)。

上司を説得するのが難しい取り組みをどう進めるか

仲山:やっぱり社内で燃えている人や乾いている人を探すのが難しかったら、社外で探せばいいと思います。まさにこの場もそうだと思うんですけど……きっと、燃えている人しか、月曜日の日中というこの時間には来ないですよね。

池田:そうですよね。月初の月曜日という本当に忙しい中で、ここに来るということは。

仲山:まさに焚き火を始めるにはいい場所だと思います。

池田:みなさん、横・斜めで仲良くなったら、この集団から会社を越えた壮大な焚き火が業界の中で起こる可能性がありますよ。

質問が来てるんですけど、最後の解説が残ってるじゃないですか。ここは絶対に押さえておきたいというところを。

仲山:これはもう解説しなくても「なるほどね」と思ってもらえるように作ってみたつもりなので。ちょっとだけ補足をしておくと、いま言ったROIということも書いてあります。(スライドの)こういう感じですね。あ、めっちゃシャッター音が(笑)。

池田:今日は効果測定セミナーじゃないので、最後のROIの話ができないのが残念で仕方がないんですけどね。ここに「直接的・短絡的・短期的ではなくて複雑系であり、費用対効果ではなく相対効果である」と書いてあるじゃないですか。

なので、ROC、リターンオブコストじゃなくてROIで測るべきなんだが、それを最初のところから求めすぎるとうまくいかないという話は、たぶん一番真実味があると思うんですよね。ちょっとこの話は長いから、今日はあれですけども。

仲山:燃えている薪を最初に持って来たところからキャンプファイヤーを起こしたときって、じゃあ誰が偉かったんだ? というのがよくわからないですよね。

池田:そうなんですよね。最初の着火剤も偉かったし、うちわも偉かったし、薪も偉いし、いろんなものが偉い。まあ盛大に燃えていたら「この焚き火の火を起こすのにここまでいくらかかったんだ?」って得てして言わないもんですからね。

仲山:言わないですよね。

池田:確かにね。なるほど。では、時間がなくなりそうなんですが。このへんは仲山さんに聞いておきたい。「コミュニティやファンイベントをやりたいと考えているが、どうしても効果面で上司の説得が難しい。どうしたらいいですか?」。

仲山:これはもうさっき言ったとおりですね。

池田:じゃあこれは小さくやる?

仲山:上司を説得せずに、できる範囲で始める。

池田:なるほど(笑)。じゃあお金も労力も……。

仲山:お金? もはやインターネットというものは、お金がかからないですよね。

池田:SNSやメルマガなど、なにがしかでつながっている人たちに来てもらって。

仲山:無料でできる業務命令の範囲外のことからやり始める。お客さんと遊び始めるような感じですね。

前例のない試みの許可を求めるのは「上司に対する不親切」

池田:でも、この発想はなくないですか? これは規模の違いなのかわからないですけど、けっこう大企業の物事の動かし方って、やっぱりしっかりと順番を追ってやって「やりますよ。オッケーですね?」ってやっていかないといけないんじゃないかと。

仲山さんの話って、終始目立たずやるとか、気づかれないようになるとか(笑)。そういうのが多いじゃないですか。

(会場笑)

仲山:僕はいま、兼業自由、勤怠自由な働き方なんですけど決裁権限もないので使える経費が1円もないんですよ。

池田:仲山さんにね。

仲山:僕が決裁印を押せる予算はないので。あと、やろうと思ったことは社内でダメって言われたとしても、別に社外で自分の活動としてやればやれるわけですよね。

そんな状況で仕事をしていて思うのは、誰もいままでやったことがないことを「これ、やっていいですか?」って上司に聞くとするじゃないですか。そうすると聞かれたほうの上司は困るじゃないですか。

「『うん』って俺が言って失敗したら俺の責任になっちゃうから、俺は決められない』」って、もう1個上に上げるわけじゃないですか。縦ラインのところに誰か1人でも慎重派の人がいた瞬間に「やめとけ」で終わるじゃないですか。

なので、誰もやったことがないことを上司に許可を求めることは、上司に対して不親切であるというふうに僕は思っていて。

(会場笑)

勝手にやって、「なんかちょっと火ついちゃったんですけど!」って言う。

池田:なるほど。そのあとに上司に「2回目もやりたいんですけど」って言ったほうがむしろ親切であると。

仲山:「あ、燃えてんの?」みたいな。「だったら別にいいよ」って。

池田:「次10万円使っていいよ」とか。

仲山:「あのサイズで燃えてるんだったら、10万円使ってもいいよ!」というような。

池田:なるほどね~。極論を言うと、やっぱり「サラリーマンたるもの常にジャケットの胸ポケットには辞表を入れながら戦うのである」というような、マッチョな感じにも聞こえなくもないですけど。そういうことですか?

仲山:あ~。でもお客さんが喜んでくれているわけじゃないですか。そうすると、会社としても辞めさせる必要はないですよね。

池田:悪いことをしているわけじゃないですもんね、ぜんぜん。

仲山:お客さんが「あいつを辞めさせるなんてロクでもない会社だ!」ということになったほうが、ややこしくなるんじゃないですかね。

池田:ファンを人質にとるということですね(笑)。

仲山:人質じゃないんですけど(笑)。

本質を重視する「侍役員」に理解者になってもらう

池田:これは、百歩譲って気づかれないように手弁当で、事前に上司に「やります」と言わずにやって。「これだけやってうまくいったから、次もやっていいですよね?」と2回目に持っていくための適切な規模感って、それぞれだと思うんですけど、何人くらい?

仲山:それはもう、ケースバイケースです。上司との関係性にもよるし。

池田:5人かもしれないし、20~30人でもオッケーかもしれないし。とにかくお金をかけずできることでやると。

仲山:あと僕らみたいな働き方の共通点、トラリーマンの共通点というところで。だいたい会社の偉い人の中にそういう本質を重視する人がいて、そういう人が守ってくれるというか、理解者がいるような状況ができている人が多いです。

池田:そうですね~。やっぱり侍役員の後ろ盾が。

仲山:そう、侍役員ですね。

池田:俺の任期は2年だが、みんな「常務になりたい」「専務になりたい」「副社長になりたい」という2年のことしか考えていない。でも、俺はなんとかもっとよりよくしたいんだ、という侍役員がね。

仲山:だいたいいるはずなので。

池田:1人ね。「それもいないんですけど!」という心の叫びをちょっと感じますけど。

(会場笑)

それはもう転職をおすすめします!(笑)。ということで!

仲山:あっという間に時間ですね。

池田:仲山さん、規模も業界もさまざまだと思うんですけれども、いままでいろいろと支援してきた中で、最後に一言、侍社員の方々にメッセージをいただいて締めたいと思います。

仲山:メッセージですか。

池田:激励。

仲山:激励……そうですね。なんだろうな~。いま言ったような働き方の話を、この本の中に書いておきましたので。

(会場笑)

組織にいながら、自由に働く。 仕事の不安が「夢中」に変わる「加減乗除(+-×÷)の法則」

池田:宣伝!?(笑)。いきなり宣伝(笑)。

仲山:「なるほどね」って思ったところがあったら、買っていただければ幸いです。できればAmazonさんではなく楽天ブックスなどで(笑)。

(会場笑)

「やめてもらったら困る」と言ってくれる人を何人作れるか

仲山:僕は最近Webのメディアでトラリーマン的な人と対談する連載をやっています。やっぱり全員、孤独感を味わいながら社内で浮いているのを感じながら、でもやり続けているんですよね。そうしているうちに社外のファンが増えていったりして。

「いまの時代で安定とは何か?」と考えると、自分が作り出す価値を理解して応援してくれて、「めちゃくちゃ役に立つから、やめてもらったら困るよ。だから、買い支えなきゃ」と言ってくれる人を何人作れるか。会社やブランドにとっても個人のサラリーマンにとっても、それが一番の安定だと思います。

池田:じゃあいい機会なので、ここにいらっしゃっている方々に参加資格をご提供して、侍社員サロンfeaturing仲山学長という感じで(笑)。社内を越えて孤独な焚き火の戦いに勝利するんだ、という感じの心のブレない……。

仲山:ぜひ池田さんの家で。いま、池田さんはピザ窯を家に製作中なんですよね。

池田:うちでピザ!? いいですね(笑)。

仲山:みんなで焚き火をやって、ピザを焼いて食べたらいい。

池田:うちの庭のピザ窯で火の点け方をみんなイチから勉強してもらう。

(会場笑)

仲山:「なるほど、こういうことか」という。「仕事に役立つ!」などと言いながら。

池田:そろそろ締めてもよろしいでしょうか?

仲山:はい、お願いします。僕からは以上です。

池田:この人数ではやってはいけないワークショップも、みなさん参加型で見事成功できたんじゃないかなというふうに思います。仲山さんに拍手をお送りいただいて、最後のセッションを締めたいと思います。ありがとうございました。

仲山:ありがとうございました。

(会場拍手)

司会者:仲山さま、ありがとうございました。それでは最後に池田よりみなさまにご挨拶をさせていただきます。お願いいたします。

「とはいえ」から「じゃあどうする?」へ

池田:1、2分で終わります。みなさん月初の月曜日、こんな忙しい中、ご来場いただきましてありがとうございました。

3年目のブランドサミットは、いろんなプログラムがあって、個人的にはすごく楽しいものになったんじゃないかなと思っています。また来年、この会場でお会いしましょう、ということを言ってもしょうがなくてですね。

みなさんが、帰って明日から焚き火の火を起こすという、そろそろ動くタイミングに来ているかなと思うんですね。

みなさんの頭の中にはたぶんいま、こんな感じでいろんな話を聞いたけれども、「うちはお前が言うほど簡単じゃなくてだな」「すごい抵抗勢力とか、湿ってるというよりは水の中に薪が落ちてるんだわ」というような話とか(笑)。

(会場笑)

そういう感じなのかもしれないんですけど、結局みなさんは(スライドの「じゃあどうする?」を指して)この1つだけの問いで。(愚痴を言うために)新橋に行って酒を飲み続けますか? それとも「じゃあどうするか?」って考えて行動するか。そこだけだと思うんですね。

「とはいえ」なんていうのは言い始めたらキリがなくて、ありとあらゆる問題だらけなわけです。でもみなさんが「こんなクソみたいな会社、辞めてやるわ」って転職活動をしない限りは、いまの会社で、1回きりの人生ですから、命を燃やして楽しくてやりがいのある仕事をしたいじゃないですか。

そうであるならば、「こんなにでっかい会社で1人が動いたってなにも変わりません」って(思うのではなくて)。侍の人たちも、最初はみんな同じだったんですよね。

ファクトリエの山田社長の話にもあったとおり、「じゃあどうする?」というところから始めて、心が折れなかったたった1人の熱狂が、僕は会社の組織の歴史を大きく動かしていっているんじゃないかな、と思っています。

なので、みなさんぜひ「とはいえ」から「じゃあどうする?」に頭を変換してください。ここにいらっしゃる方々は、たぶん同じような問題意識を持ちながら孤独を感じている人たちの集団なんですね。

これだけ仲間がいるということだと思うんです。「いまのままじゃダメだ」「うちの会社、1人で戦うのはしんどい」ってみんなが思っていると思うんです。

いまうちでそういった場はまだ作りきれてないんですけど、1人で戦うには心が折れてしまうという人たちが緩やかに月に1回くらい集まって意見交換をしながら最後に飲むような感じの(笑)。そういう熱狂サロンができたら、僕は個人的にはすごくいいなぁ、なんて思っています。

また、「熱狂ブランドサミット 2019」を開催したいとは思っていますが、「もうあれから1年経ったんですね?」という感じでこの会場でお会いするんじゃなくて。ぜひ企業の現場で、ないしはそういったサロンで行動しながら戦うような、そんな感じの動き出す年にしていければなと思います。

今日は月初の月曜日にかかわらず、ここまで足をお運びいただきましてありがとうございました。これにてお開きでございます。ありがとうございます!

(会場拍手)

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