2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:株式会社JTBコミュニケーションデザイン
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加藤浩晃氏(以下、加藤):今回、医師×AIの起業家ということで、沖山先生と多田先生のお二人をパネリストとしてお呼びしました。僕は実はあまり意図していなくて、さっき話しながら気づいたことがあります。
「画像×AI」といいながら、沖山先生のインフルエンザは診断。多田先生は、眼底、CT、内視鏡といった専門疾患の見逃しをやめましょうといったこと。(疾患の)見逃しをなくしましょうという文脈で開発されている、医療×AIの画像という感じで整理できました。
そして、沖山先生は今、診断技術に取り組んでおられる。今までは人(医師)が喉のところを見たらインフルエンザとわかったけれど、そういう一部の人ではなくて、それをAIが診断できるようにしましょうと。要するに、見逃しをなくすというよりも、AIの技術でレベル感を共通化させましょう、みんなのレベルアップをしましょうというかたちのAIの活用の仕方です。
お二人を医療×AIの起業家ということで呼んでいたんですが、実は背景や見ているところが違うなと感じながら聞かせていただきました。
次になにができるかという話をしようかなと思ったときに、多田先生はまず、見逃しを防ぐために開発をされていました。ただ、それだけではなく、胃の画像が認識できるので、しっかり撮影できているかどうかをトレーニングするというか、ガイドするところにも使えるようになっているんじゃないかというお話だったと思います。
沖山先生は最近もnote(というWebサイト)などでもいろいろ書かれていましたが、医療×AIで、AIに関してなにができるかというところで、先生が考えられていることを教えてもらえますか?
沖山翔氏(以下、沖山):医師の間でも、やっぱり診察のスキルには格差があると思うんですよね。(それは)当たり前で、循環器内科の心臓のドクターは聴診の能力がものすごく高いけれども、肺のドクターはそこまででもない。餅は餅屋なのでそのとおりで、それ自体は悪いことじゃないと思います。
でも、現場で生じる歪みとしては、開業医をやっていたら、呼吸器内科の先生も心臓の病気を診なくちゃいけない。大きな病院だったとしても、全部の診療科のドクターがいるわけではないんです。
悪い言葉かもしれませんが、その晩に当直しているドクターに、当たり・外れが出てしまうんですよね。その晩の当直医の診療科と自分の病気がマッチしているかどうか。それによって診断率が高かったり低かったりすると。
これは誰のせいでもないんですが、今の医療においてすごく歯がゆい限界です。でも、そこにAIの聴診器があれば。聴診音から心臓の病気を診断できるようなAIデバイスを持っていたとしたら、呼吸器内科のドクターでは聞こえないようなかすかな心音であっても、そのAIに読ませればわかるかもしれないわけですよね。
つまり、AIは必ずしも検査だけでなく、人間が五感を使ってやっている診察技術のスキルアップやレベルの標準化にも役立てることができるのではないかと思っています。
そういうかたちでやると、毎晩どの日にどの当直の先生に当たったとしても、心臓の病気は見逃されないぞとなるかもしれないし、沖縄の離島の病院で高齢の先生が診察をしていても、同じ水準の診察が受けられるかもしれない。そういうところで格差を減らす方向に働く側面もあるのかなと思っています。
加藤:沖山先生に今、診察の水準を揃えるためと言っていただいて。(あとで)ググったりして見てもらうと、沖山先生はこのnoteの中でけっこういいことをおっしゃっているので、それを言ってくれるかなと思っていたんですが。
沖山:すみません(笑)。
加藤:紙ができて、僕ら医者がPubMed(国立生物科学情報センターが作成しているデータベース)で調べると、論文などがわかるようになったので……(沖山)先生がいるんだから、僕が話すより先生が話したほうがいいですね(笑)。
(一同笑)
沖山:医療の格差には、診察技術と知識の2段階があるなと思っています。知識の格差は、もう50年前は絶望的だったのが、今はほとんどなくなったんですよね。ブラジルで論文が出ると、僕らは次の日にはそれを読んでいて、日本にいるのに、「世界最先端のこういう治療ができたらしいから、今日からやってみよう」ということができてしまうんです。
これは、すばらしいイノベーションで、そのお陰で、ここ20年ぐらいで一気に医療の水準が上がったと思います。でも、それは知識の格差が埋まったというレベルなので、次は診察技術の格差が埋まるというパラダイムシフトが待ち受けているのではないかと思っています。
ブラジルにすごい耳(聴診の技術)を持ったドクターがい(たとし)て、僕も明日からそのドクターの耳がほしいと言っても、2018年現在は(その聴診の技術を手に入れることが)できないわけです。でも、ディープラーニング、AIの医療機器があれば、それができるんですよね。
誰かが30年特訓して、それこそ寿司職人の「匠の技」ではないですが、そういう聴診器の技術や、微妙な差異を見抜く目などが今ソフトウェアで再現できて。ソフトウェアで再現できればコピー&ペーストができますから、地球上のどこでもダウンロードができて。
法的な枠組みはくぐり抜けなければいけなくて、ちゃんと医療機器として承認されるという前提がありますが、それによって技術の格差が埋まる。
今の僕らは、当たり前のように知識の格差が埋まったことを享受していて、日々、そのありがたさすらあまり感じないわけですが、とんでもない革命だったと思うんですよ。技術が共有できるようになったら、それと同じぐらいインパクトのある、すごい革命だなと思っていて。それに一石を投じられる技術が、やっぱりディープラーニングなのかなと感じています。
加藤:ありがとうございます。僕から言うのではなく、沖山先生から直接言ってもらうほうがよかったと思います。
加藤:僕が山田さんにうかがいたいのは、やっぱり世界から見て「日本はこういうふうにしたらいいんじゃないか」というところ。もう1つは、「日本にもっとこういうベンチャーが出てきたらいいんじゃないか」「こういうふうなことをやりだしたらいいんじゃないか」とか。厚労省の人もいますので、さっき重点6分野というものがありましたが、「ここじゃなくて、もっとこういうところにも重点(分野)があるんじゃないか」とか。
控え室でわちゃわちゃしゃべっていたときは、個人的には、やっぱりRPA(ロボットによる業務自動化)がおもしろいなと勝手に思っていたんですが。どういうところがおもしろそうか、「こういうことやっていったらいいんじゃないか」というものはないですか?
山田泰永氏(以下、山田):なるほど。いろいろな分野に関わっていることもあって、個人的には、あちこちにチャンスが見えたりはしています。とはいえ、それは単なる思いつきレベルであって。
はたしてそれが、本当にビジネスや社会にとって意味があるかどうかはなんともわからないですが、考え方次第でいろんなところにいくらでもチャンスがあるなということで。
先ほど沖山先生から、本当に一例としてモダリティ(CTやMRI、超音波診断装置などに代表される医用画像機器)変換ということで画像(認識)の話がありました。これも本当に今のAIの得意技なんですね。ですから、画像のAIとしてわかりやすいのが、「人間が判断していること」です。
ガンか、ガンじゃないか。病気か、病気じゃないか。その判断を代替するのはわかりやすいところです。それ以外に、画像から画像に変換してしまうとか、画像からなにかに変換してしまうという、いわゆるモダリティ変換も実は非常に得意分野です。
先ほど、染色もなにもしていない画像を見ただけで、遺伝子的な変異をある程度推定できるという話がありました。似たような話でいうと、これはモダリティは変換していないけれど、同じ医療モダリティです。
例えばMRIで、通常の安い1.5テスラのMRIと、(値段の)高い3テスラのMRI。これらで同じものを撮ると、その画像は当然ノイズの量や解像度がぜんぜん違うわけです。その相関をずっと学習していくと、1.5テスラで撮って、ディープラーニングで処理すると、疑似3テスラの絵が作れる、ということがあり得るんですよね。
もしご来場の方(でモダリティをやられている方が)いらっしゃったら申し訳ありませんが、絶対にやりたくないことだと思うんですよ。例えばそういうところがあって、たぶんいろんな可能性があるんじゃないかなと。
山田:アメリカであった事例を1つ言います。これもエヌビディアのアメリカのスタートアップのパートナーで、Subtle Medicalという会社です。ここは、MRIの立体再構成という処理を、クラウドで(データを)もらって立体再構成して返しますと。人の目で見てわかる画像にして返しますよ、ということをやっています。
それが圧縮センシングやディープラーニングを使って、取得時点のデータ量が今までの5分の1ぐらいのかなり少ないものであっても、今までと同レベルの絵を作って返します、というサービスをしていると。
MRIは通常の検査だと30分ぐらい平気で占有されます。コンタクトタイムがあるよというところで、当然、アメリカの医療は日本と違いますので、詰め込めないとコストがかかります。
そこでクラウドにデータを投げて、今までの4分の1のデータ量の取得でいいんだったら、1人あたりの(診察)時間が短くなるわけですよね。それだけ詰め込める。じゃあ、そこにお金を払おうという医療機関が出てくるということです。これはアメリカの医療制度ならではなのかもしれませんが。
こんな感じで、本当に頭をやわらかくすると、技術的にもビジネス的にもいろんなところにいろんな可能性が眠っていそうだなと思います。ここだけでは語り尽くせませんが、一例として挙げてみました。
加藤:ありがとうございます。確かに、今の医療現場にはまだまだ課題がいっぱいあって。そこをいろんなテクノロジーで(解決しよう)というなかで、やっぱりAIは基盤となるものですので、いろんなものが解決できたりするんじゃないかと。そこが本当にニーズとマッチしているかどうかと。
医療機器やデジタルサービスは「ニーズドリブン」で、バイオは「テクノロジードリブン」ですよね、といったところがけっこう公知で言われていると思います。そういうところでしっかり合わせながらやっていくといい、という話だと思います。
そういうかたちで、たぶんAIが医療現場やこの社会のそこら中で(使われるようになる)。ボットで対応しているのは本当に人間なのかロボットなのかがわからなくなると言われているなか、医療現場でも、電話で問い合わせしていたものがボットで対応していて、予約するのはもうクリニックの受付の人ではなくなっているかもしれない。そういうふうに、だんだん医療現場にも(AIが)入ってくるとは思います。
例えばお二人の先生方は、今の自分のサービスもそうなのですが、なにか医療現場全体として、どういうかたちでAIが医療現場に入っていかなくてはいけないか、入っていくことに気をつけているか(ということについて)。沖山先生、考えていることがあったら教えていただけますか?
沖山:よく議論になる話題として、「人はAIの診断を受け入れられるのだろうか?」「納得できるのだろうか?」「責任はどうするんだ?」という論点があると思っています。これについて、クリアカットな答えはたぶんないと思うんですよね。
その結論に影響しているところとして、「社会がどういうふうにAIを見るか」というところはすごく大きいだろうと思います。例えば、日本人であっても、50年前や100年前は「写真を撮られると魂が抜かれるから怖い」というのは、一般的な感覚としてあったと思うんですよね。
エジソンが蓄音機を発明した時は、「音楽は本物の人が弾くからそこに美しさがあるのであって、蓄音機、レコードから出てくる音楽はもうぜんぜんダメだ」と世界中の人たちが心から思っていた。でも、今の我々は音楽を生で聞く機会は、たぶん全体の5パーセントぐらいで、ほとんどは違いますよね。そこに「美しさが失われている」とはあまり感覚的に思わないわけで。
世の中の人がどういうふうにAIというもの(を捉えているか)。「人工知能」と言うと、なにか1つの人格を持っているように捉えがちですが、人工知能ではなく人工知能技術を使っているだけなので、そこに対する免疫反応やアレルギーをどれだけ取り除いて、摩擦を生まないかたちで医療機器やAIをフィールドに持ってくるかがすごく大事なことだし、そこに時間を割くべきなんだろうなという実感はあります。
加藤:ありがとうございます。僕が多田先生にうかがいたいのは、今の話を受けて、今の時点でもう絶対的に、人間よりAIのほうが(正確に判断)できる部分がたくさん出てきている。だけど、責任は医師にあるというところで、今もAIはあくまでも支援で、医師が最終判断をしましょうというかたちで、厚労省としても医師法の立てつけ上、そういうふうになっていると思います。
今、各病院やクリニックで、こういう臨床研究だったり先生のサービスを使っている医師がいて、例えばその先生が内視鏡をしていて「ここがガンなんですよ」と表示されているときに、医療者はどういうふうに感じているか、どういうやりとりがあったかというところを共有してもらえるとうれしいなと。
多田智裕氏(以下、多田):一応、まだこれは未承認の期間なので……。
加藤:そうですよね。まず研究でやられていると。
多田:研究で使っているだけなので。今AIを導入している施設は、たぶんがん研有明病院さん、大阪国際がんセンターさん、仙台厚生病院さん(があります)。要は、そういうAIよりもいい医者がいる施設でデータを集めています。医者がやっていてAIが見逃したというような事態が起こらない施設で、今データを集めているというのが1つあります。
あくまでアラートなので、今はまだデータを集めているというのと、撮った動画で検証しているという立てつけです。がん研有明病院の先生がほぼすべて教えているので、現時点ではさすがに、彼らが見逃してAIが見つけるという事態までは起きていないですね。
加藤:それでも、動画などを見ていてアラートが出て、そのときの反応……まぁ、AIの教師データを作っているような先生は当然「ここだよね」と言ってくれると思います。では、先生が学会などで発表されたあと、ベテランのレベルまで達していない若者や中堅で今レベルアップしようとしている先生からはどういう反応がありますか? 反応として絶対的に「ぜひもう本当にうちに入れたい」というところ……。
多田:それはプレゼンすると、みなさんほぼ全員「買います」と(笑)。「承認が通り次第(導入)したい」と。
加藤:買いますというのは……。
多田:「欲しい、使いたい」ということです。
加藤:そういうサービスが出てきているときに、どうやって医療者は、自分のレベル感がわかっていてしっかり受け入れられるのか。やっぱり今から、すぐ受け入れられるようなかたちになっていくのか?
例えば、問診AIのベンチャーがあって、例えば肺炎が九十何パーセントと(診断を)出してきたんです。だけど、それは医師としてはけっこう普通に診断できるから、何パーセントと出てきてもあまりニーズがなかったということがありました。
Ubieという会社から話を聞いていると、そこで何パーセントと出てきたといっても、そこに対して、「ふーん」「俺、診断できたからぜんぜん大丈夫だよ」ということだったんです。
だけど、そこはタブレットに問診データを入力すると、電(子)カル(テ)に同時に要約して飛んでくるんですね。その要約にはとてもニーズがあって。そして、確かに自分の診断とダブルチェックができたので、それはうれしい、と。
ダブルチェックというか、診断の候補名を挙げられるだけではぜんぜんで。医師としては、「俺の診断は絶対に合っているし」「俺はできているはずだし」というところで、買おうか買わないかというところにけっこう判断をするということがありました。
今の先生の話をうかがっていると、ガンの見逃し……例えば普通の診断のパーセントが出てくるというのとも、医師としての感覚とも、またちょっと違うんだろうなというところもありますし。
多田:そうですね。ガンの見逃しという意味では、やっぱり人間なので、飲んだ次の日かもしれないですし、日本の場合だと1日何十件も内視鏡(検査を)やるので、20件もやると集中力が切れてしまうかもしれない。
そういう意味で、ベテランの先生でもともとの能力が(ある人が)、要は2人で診ているのと同じ状態になるので。ぶっちゃけた話をすると、1人で内視鏡(検査を)した先生が「異常なし」と言ったら見逃されて、永遠におしまいなわけですよね。
内視鏡をやった先生とAIが診てくれるんだったら、2人で診ているのと一緒なので、そういう意味で欲しいというか、医院に使って欲しいということがあります。
それから、これは余談になってしまうんですが。僕は(AIを)二次読影で使いたいと言いましたが、まだ私のいる医師会の先生方は僕の親の年代で、78歳とかなので、「人の目で見るから二次読影なんだ」「AIが見たのは二次読影ではない」と言われてしまいまして。医療現場ではそもそも、ちょっとまだ使用の目処がぜんぜん立っていない状況ではあります。
そういう意味では、僕が医師向けの講演などで言うのは、本当に便利なツールとしてまず使ってみるところから(はじめてみようと)。使ってみて本当に時間が短くなるのか、どれぐらい医者と差があるのかは前向きな試験でちゃんと組まないとわからないので。
RCT(Randomized Controlled Trial:ランダム化比較試験)というんですかね。そういったデータをちょっと取りたいなと思って、計画しているところです。
加藤:ありがとうございました。最後は医療×AIのお三方にひと言ずつお話しいただいて終わりにしようかなと思います。山田さんから、医療×AIで、今後日本においてもこういうふうに進んでいったらいいんじゃないかとか、こういうところに注力していきたいとか、最後にひと言、ふた言いただけたらと思います。
山田:わかりました。エヌビディアの立場としては、基本的にみなさんを縁の下で支える計算環境などをご提供しているので、あまり(お話しできることはないところ)なんですけれども。
期待としては、やはり先ほどもちょっと申し上げたように、本当にAI技術、センス、プラス、その業界ですね。この場合であれば、ヘルスケアや医療とうまくかけあわせると、本当にチャンスがあるところとか、ここに使えれば、というところがたくさんあるように見えています。
ですので、本当に「AI、これだけしか使えないじゃないか」「これしかできないじゃないか」という面もあるんですけれども。やはり「じゃあここだったら使える」「こういうふうにちょっとデータを加工すれば使える」「ここの部分は完璧にできる」という(こともある)。
(AI技術を)どこに使うかというところですね。あるいは、先ほどのモダリティ変換のような新たな価値といったところに非常に期待していきたいと思っております。
加藤:山田さんにうかがおうと思って聞かなかったところをもう1つ思い出したので、最後にうかがえれば。今日は、スタートアップや大企業の方、アカデミアの方も来られていると思いますが、エヌビディアとどういうかたちで組んでいったらいいかも教えていただけますか。
山田:そうですね。我々がスタートアップ支援でなにをやっているかというと、基本的にはマッチングですね。「AIを使いたい」「使って何かを改善したい」「新たな事業をしたい」「新たな価値を出したい」と思っているけれども、「自社内だけだとその技術がありません」「不完全なものしかありません」というところについて、補完できる技術を持っているスタートアップ企業さんをマッチングしていく、ということをよくやっております。
医療分野ではないんですが、先日1つの例としてあったのが、天気予報ですね。気象サービスの「ウェザーニュース」という天気予報のアプリを入れている方も多いかと思いますが、そことAIのスタートアップ企業さんをマッチングさせてもらいました。
何が起こったかというと、まさにモダリティ変換ということで、気象レーダーを雨がどれぐらい降っているかという可視化した画像に変換してしまうと。衛生の画像から、どれだけ雨が降っているかというデータに変換して、これから新たな気象サービスを作っていきましょう、ということがありました。
そういったような例で、テクノロジーの会社と、データを持っていてAIを活用したいと思っている会社をどんどん結びつけて、新しいことをしていくということをメインに今やっております。
加藤:最後にありがとうございます。それでは、多田先生が今後AIメディカルやご自身として目指されているところやビジョンを教えていただけますか?
多田:僕は内視鏡医として内視鏡AIというのに特化しているので、それしかちょっと(申し上げられることはありません)……。さすがに今はまだバッファ的にも、ほかに手を出す余裕がなくて。正直、今は医療の中にAIがいっぱい出てきているように思いますが、まだまだほとんど入ってきていない。
昨日も某大学の教授とお話ししていたんですが、その方が言っていたのは、「最近、人(患者さん)の見間違えが多いので、(患者さんを)呼び入れたときに顔が合っても、ちゃんと名乗らせて、IDを見て、受付番号と照合してから診察を開始しているんだよ」という話をしていました。
ちなみに、一昨日羽田から帰ってきましたが、今は入国審査に係員がいないんですよね。パスポートをピッと置くだけで、係員がぜんぜんチェックせずに機械の前を通るだけで通れるので。そういう顔認証で、患者さんの取り違えなどが一瞬で(解決)できるんじゃないかと思ったり。
導入する分野はいっぱいあるので、どんどん果敢に入ってくると、もっともっと盛り上がるかなと思っています。そういうのを期待しています。
加藤:ありがとうございます。最後、沖山先生お願いします。ビジョンや今後先生が目指しているところをお願いします。
沖山:私個人や会社として目指しているところは、さっきの診察をAI化していくこと。そして、どういう病院のどのお医者さんにかかっても標準的な医療(が受けられること)。そして、一般的な平均値に揃えるんじゃなくて、匠のレベルに揃えた診察が受けられるというような世界観を目指しています。
あと、一医師として、「こうなっていくべきなんだろうな、こうなるといいな」と思っている医療観は、本当に多田先生がおっしゃるとおりで。やっぱり、AIでできるところは無限にあるんですよね。世の中に病気が2,000、3,000とあって、そのスクリーニングと確定診断と根本治療と対症療法という、4つのかけ算だけでも1万領域があるわけじゃないですか。
1万の中で僕らが「こんなAIのニュースがあった」と見たことがあるものは、この中でたぶん一番詳しい人でも50領域ぐらいだと思うんですよ。だから、1万のマトリクスの中で塗りつぶされている領域はまだ50しかなくて、あと9,950を誰かがやらなくてはいけない。それは全医師が取り組んでもまだ足りないぐらいなので、もっともっとこういうことをやる人が増えなければいけないなと思うし。
医療は、競争ではないんですよね。アメリカが日本より先に開発したら、個人の意思の中では「悔しいな。日本もっとがんばろう」と思いますが、アメリカが作ったAIをみんなが使えたらいいじゃないか。診断してもらえるし、治療してもらえるし。
サイエンスの文脈もあるので、みんなで医療を発展させていって、全人類でその恩恵を受けられるようになってきつつあると思います。これをどんどん加速していければいいなと思っています。
加藤:ありがとうございます。このミートアップの前半のほうはどうでしょうかね。
本荘修二氏(以下、本荘):すばらしいですね。メッセージとして、無限に近いポテンシャルがあるということ。私も、今AIに取り組んでいる大企業さんをいろいろな分野でお手伝いすることがあるんですが、ソリューションから入っている会社が多いんですね。
多田会長も沖山社長も、具体的な問題を解決するというところから入られている。ここがやっぱり一番大切なんじゃないかなという印象を受けました。曽山さん、いかがですか?
曽山明彦氏(以下、曽山):ありがとうございます。みなさんいかがでしたか? 事前の打ち合わせで6人の方に集まっていただいて。「今日始まる時間は15時45分から90分間です。終わりの時間はここです。あとはすべてお任せします」という打ち合わせだったんですが、これだけ深くておもしろい話(を聞かせていただいて)、本当にお疲れさまでございました。モデレーターもやっていただいて、非常におもしろかったですね。
今、本荘さんが言ったように、やっぱりニーズから入っている。昨日ちょうど元ジョンソン・エンド・ジョンソンの社長の松本(晃)さんのオープニングセミナーがあって。僕がモデレーターというか対談のようなものをやったんですが、やはり(松本さんも)「患者さんを救いたいんだ」という思いから(はじめたそうです)。ベンチャーで成功するためにも、それが一番大事だよと。
お二方もみなさんそうで、それがお医者さんだったら、まさしく自分たちのニーズなんですよね。自分たちの効率を上げる、正確性を増すことが、患者さんの命をより救うことになる。そこにつながっているので、やっぱりライフサイエンスっていいなぁ、とすごく思いました。
本荘:そうですね。本当にありがとうございました。みなさん、4名のパネリストの方に拍手をお願いします。
(会場拍手)
株式会社JTBコミュニケーションデザイン
多田智裕
医師/ただともひろ胃腸科肛門科院長/東京大学医学部客員講師/AIメディカルサービス代表取締役会長 CEO
山田泰永
エヌビディア合同会社 エンタープライズ事業部 ヘルスケア・ライフサイエンスビジネス責任者/AIスタートアップ連携責任者
曽山明彦
一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワークジャパン(LINK-J)理事/事務局長
本荘修二
本荘事務所代表/医療系ベンチャー振興推進会議 座長
沖山翔
アイリス株式会社 代表取締役CEO/医師/産総研人工知能技術コンソーシアム委員/医用画像ワーキンググループ発起人
加藤浩晃
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