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米国アップル社、マイクロソフト社、そして国連本部も認めた83歳のアプリ開発者 若宮正子氏登壇!「MY SMART WORK LIFE」セミナー②。世界を魅了する理由に迫る!!(全2記事)

2018.09.27

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人工知能が真似できない、人間の「創造力」 83歳のアプリ開発者・若宮正子氏が語るプログラミング教育の価値

提供:Business-Airport

2018年9月6日、ビジネスエアポート六本木にて「米国アップル社、マイクロソフト社、そして国連本部も認めた83歳のアプリ開発者 若宮正子氏登壇!『MY SMART WORK LIFE』セミナー②。世界を魅了する理由に迫る!!」が開催されました。本パートでは、若宮正子氏がApple本社に招聘されたエピソードから、これから必要となるプログラミング技術の価値について語った講演の模様をお送りします。

Apple CEOからの招聘

若宮正子氏:そうこうしているうちに、Appleから日本語でメールが届きまして。私の話をいろいろお聞きになって、1ヶ月ぐらい経ってから「若宮さん、ご一緒にアメリカに行きましょう」と。別に一緒にアメリカに行かなくたって……と思いました。正直言って、私はアメリカがあまり好きじゃなかったので。

(会場笑)

「他の人との約束があるから行けないけど、どうぞよろしくね」と1回断ったんです。そうしたら、Appleの方がゾロゾロとお見えになって、「どうしても行きましょう。若宮さんにどうしても会いたいっていう人がいるんです」とおっしゃいまして。

「Apple社には親戚も友達もいないし、どなたがお会いになりたいんですか?」「CEOでございます」「CEOって会社で一番えらい人?」って言ったら、「そうです」って。そこまで言われて行かないのも失礼だと思ったのと、日にちは変えてもいいっておっしゃってくださったので行くことにしました。

ティム・クックを“stimulate”した若宮氏

日本の大会社の社長さんだったら、「Nice to meet you」と言って握手すると、スーッといなくなってしまいますよね。だいたいお付きの人も一緒になっていなくなってしまう。そういうものだと思っていたんですけど、CEOのクックさんは違うんですね。

「じゃあ、さっそくiPhoneを見ながら、いろいろお話を聞かせてください」ってどっかり構えちゃって。「どうしてここはこういうふうにしたんですか?」「このテキストは、字が小さくて読みづらいですよね? 年寄りの人は読めないでしょう?」とか、すごく細かいところまでいろいろ言ってくださって。

私はそのとき、つくづく思ったんです。さっきもお話ししたように、確かに年寄りにとってスマホって使いにくいです。だけど、それを電気屋さんの兄ちゃんに言ったってしょうがない。「僕たちは決まったものを売っているだけですから、そんなこと言われても困ります」って(なりますよね)。

じゃあ、箱モノのメーカーさんにお願いしたって、たぶん「うちは言われたとおりの箱を作っているだけですから、そんなこと言われても困ります」って言われると思うんです。でも、いま私の前に立っておられるこの方がCEOでいらっしゃるいうことは、会社で一番えらい方だということですから、箱にも中身にも責任を持っておられる。

そのうえ例えば普通のところだったら、「消費者のニーズなんです」って言ったら、「いずれ担当部署と上司に伝えます」って言われるでしょうが、あの方はきっと会社に上司がいらっしゃらないから、最終的に自分が引き受けるしかないんだと思ってたのです。だから、私の思っていることをみんな聞いていただこうと思って、必死になってしゃべりました。

でも、一生懸命に聞いてくださって、最後に、「あなたは私を“stimulate”してくれた」と(言ってくださった)。テレビのニュースでは(stimulateを)「勇気づけられた」って言っておられましたが、“刺激を受けた”とか、“触発された”といった意味なんですね。私はあんまり英語に詳しくないからよくわからないですけれど。

いずれにせよ、そういうふうにおっしゃって、ハグしてくださいました。

(会場笑)

hinadanの多言語化に挑戦

そんなこんなで、オーストラリアから来た10歳の坊やと、日本から来た82歳(クックさんがいい間違えをされた)のおばあちゃんが紹介されました。それで、(胸のペンダントを持って)そのときに堂々とこれをぶら下げて行ったということなんですね。

Appleの本社でも「せっかく見てくださった方が世界中におられるのだから、多言語化しなさい」って言ってくださったのです。多言語化するには、作り直さなきゃいけないのね。端的に言えば、英語がベースになって、日本語も外国語の1つになっちゃうみたいな。

「作り直すのはAppleの開発者がお手伝いしますから」って言ってくださったので、日本語のできる方に、遠隔授業で教わりました。去年の暮れに英語版をリリースして、今年の3月に中国語版をリリースしました。次のひな祭りの前に、韓国語版をリリースします。

あと、できればスペイン語、ロシア語、アラビア語をやりたいと思うんです。私もいろんな仕事がいっぱいあって、なかなか進んでいません。

プログラミング学習を阻むもの

そういえば、日本では2020年からプログラミングが小学校の必須科目になるってことで、最近プログラミングブームになったんです。ところが、ある60歳近い男性にそのお話をすると、「やめたほうがいいですよ」と。

「僕は昔プログラマーだったんですが、まずは眼精疲労で目がおかしくなって、その次に肩が凝って、最後に高血圧になって、開発部門から違う部門に配置転換してもらったのです。あれは健康に良くないです。うちの娘にそんなことを教えないでください」とおっしゃるんです。

だけど、いまは違います。昔は大企業とか大きな工場なんかの、デーンとした大きさのプログラミングの一部分をやっていたから大変だっただろうと思うんです。ところが、いまはプログラミングも多様化しているんですね。

例えば、従来からあった大規模なもの以外に、アプリ系、しかも、スマホだけじゃなくて、ウォッチとかAIスピーカーとか、いろんなものがそれぞれのアプリを必要としてるわけです。あと、電子工作系で、ロボットとかいろんなものもあったりして、すごく多様化してます。

それからもう1つ、これからIoTの時代になってきますから、プログラミングがもっと身近なものになってくるんですね。とくにこれからは、台所にもそういうIoT、インターネットが入ってきますから、もっともっと身近なものになります。

(スライドを指して)日本中で猪の被害がすごいんですけど、この檻の罠がどうも上手くいかない。ところが、福井県の谷川さんっていうおじいさんは、これを解決するのにプログラミングが役に立つんじゃないかと思われたらしいんですね。それで、「IchigoJam」というアプリを、たった9行(のBasicのプログラムを)書いて改造されたのです。そうしたらその年に猪が92頭も引っ掛かってきたのですって。

要するに、どんなにプログラマーが優秀でも、猪のことがよくわかってない人が作ったんじゃダメなんです。今まではプログラマーがプログラマーとしての道を極めていて、余計なことをしたら「素人はうるさい」なんていう時代だったんですけど、これからはより身近なところにプログラマがいるんじゃないかと思います。

身近な人を助けるためのアプリ開発

それから、アプリの甲子園っていうのがあります。高校生のアプリコンテストで、ここで2015年に優勝したのは17歳の高校生です。おじいちゃんが徘徊するんで、おばあちゃんが困っているんですよね。いつも探しに行かなきゃいけない。そこで彼は、おじいちゃんの靴のかかとにセンサーを付けて、それでおじいちゃんの居場所を調べて対応しているとか。おじいちゃんが途中で靴を脱いじゃったりするんですよね。

(会場笑)

そういうものを作ったんです。ところが、若いお父さん・お母さんにせよ、もうちょっと上のクラスになってくると、40代・50代ぐらいの人はプログラミングっていうのはあんまり良くないことだって思っているんですね。机にかじりついて、パソコンの前に座り込んでいると。

ところが違うんです。この高校生は、パソコンの前にずっといたんじゃないと思うんです。おばあちゃんがおじいちゃんを探してあちこちウロウロしてるときに、一緒になって手伝ったんだと思うんです。だから、靴を脱いじゃうとか、そういうようなことがわかるわけですね。

だから、プログラムをやるっていうことだけではなくて、リアルな生活をしっかり把握している人が作れるんだと思いました。それから、リアルな誰かの役に立つこと。農家の方がみんな猪に困っていて、そういう人の役に立つということです。

(スライドを指して)それからこれは???ハンガーと書いてあるんですけど、お母さんがいつもベランダに洗濯物を干すたびに、はしごで上がって行かなきゃいけなくて。何回も上がっていて、(一度干し終わったものが)まだ濡れて少ししっとりしているとわかったら、また(干しに)行ったりしていたんですね。

だからセンサーを付けて、「洗濯物が乾きました」っていうメッセージが届くようにしたらしいんです。それから「にわか雨が降ってきました」というメッセージも届くので、お母さんがいちいちベランダに見に行かなくてもすむようになった。これもお母さんのためにやっている(ことです)。

身近な人を喜ばせるためにプログラミングする

それからこれが一番感動したんですけど、「岐阜県の県立工業高校と盲学校のコラボがあるから来ませんか?」っていうことでお邪魔したんです。工業高校の電子工学科の生徒さんは、いずれ大規模な工場とか会社のプログラマーになるんだと思うんですけど、部活でもってゲームアプリなんかを楽しんでる。そして「盲学校の生徒さんたちが使えるようなアプリを作ってあげてよ」って言われているんですね。

彼らは盲学校に行って、いろいろ話を聞いてみる。いまも視覚障碍児のためのアプリっていうのがあるんですけど、なかなか使えない。聞いてみたら、同じ目が見えないといっても、いろんな見えない(がある)。

まったく全盲のお子さんもいるし、うすらぼんやり全体が見えるとか、目のある部分が欠けていて見えないとか、いろんなお子さんがいる。だから、一人ひとりに会って、よく話を聞きながら、その人に合うようなものを作ってあげたということなんですね。

なかには、黄色い背景色に黒で字を書くと読めるっていうお子さんがいて、その人に合ったアプリを作ってあげた。そうしたら本人もそうですし、先生とかみんなにすごく喜ばれた。だからいまは、プログラミングをするっていうことは身近な人に喜んでもらうためにするんだって思ったそうなんですね。

そういうことで、プログラミングが非常に流行りだしてるんです。(スライドを指して)こういうものを作るんですが、これは基盤も全部、一応はんだ付けをして作ってもらうことになっている。ただ、小学校の低学年は危ないから、はんだ付けはちょっと避けています。

それにいろいろ付けて、一応BASICでプログラムを書いてもらって、電気が順番に点くようなものを作りながら、子供さんたちにプログラミング学習をしてもらって、コンピュータの原理を覚えてもらったりしています。

私もそういうのをやるために、自分自身も一生懸命に電子工作の勉強をしています。(スライドを指して)このお獅子もセンサーで口をパクパクするとか、そういうものを作っております。

読み書き・そろばん・プログラミングの時代

これからは読み書き、そろばん、プログラミングっていう時代が来る。だから、町のパソコン教室もたぶんプログラミング教室になるんじゃないか、というようなことも言われています。それにシニア、とくに女性の方がプログラミングをがんばっています。お子さんに、プログラミングをおすすめしたいんです。

さっきも言ったんですけど、学童保育を今年の夏休みにやったんです。「おばあちゃんが教えるプログラミング教室」ってやったせいか、7人来たら7人とも女の子だったりするときもあって。でも、すごく良いと思うんです。これから受講者を増やしましょうってことで。

これからIoTの時代になると、台所もどこも生活密着型ですよね。だから、台所とかお家のなかをよく知っている女性がプログラミングをするということは、すごく良いことだと思いますし、現実的な意味でも、子育て中や介護なんかでなかなか会社に通えないっていうようなときにでも、テレワークとかあるいは自営業で、こういうIT関係の仕事は馴染みやすいんじゃないかと。

政府も非常に力を入れていまして、総務省でも今年から実験をやっています。「ジジババ世代、親世代、子世代、それに高齢者や障碍者を含むプロジェクトでもって、プログラミングを考えながらやってください」と、そんな話をしています。私どももそれをやっています。

創造することこそ、もっとも人間的な活動である

本題に戻りましょうか。なんで私が「私は創造的でありたい」と思っているかと言いますと、創造することこそ人工知能にはできない、もっとも人間的な活動だと思うからです。

私は人工知能に詳しくないですけども、人工知能はたぶん1を1,000万にしたり1億にすることはできると思う。だけど、0から1を生みだすっていうのは、おそらく人工知能にはできないんじゃないかと思うんです。それができるのは人間だと思うんです。だから、私は創造的でありたいと思うんです。

それからもう1つ、最近のいろんな活動のなかで、総務省の「未来のIoTの在り方」っていうのをやっていて、若手の官僚さんが考えたものに「あちこち電力」っていうものがあります。私は、今日の新聞を見て、「そうだ! やっぱりこれが一番大事なんだ」と思いました。

どんなにすごいものを考えたって、停電になっちゃったらもうダメですよね。計画停電になっただけでも、私たちは痛感したわけです。結局ローソクと湯たんぽしか使えなかったら、江戸時代に戻っちゃうわけでしょ。でも、「どこでも電力」「あちこち電力」っていうのは、電線がなくても電気が供給できる。いまそれをかなり研究している人がいるということなんです。やっぱりこれが一番大事かなと思いました。

中国はもう、スマホがないと買い物もできない

それから、5月に中国の西安に行ってきて、そのなかでびっくりしたことをお話ししたいと思います。

一番感動したのは、中国はいまとにかくスマホがないと買い物に行けないと。おじいちゃんが孫にお年玉をあげるときも、スマホからスマホであげるから、のし袋がいらないという。私は乞食には会わなかったんですけど、乞食もQRコードを出しているそうです。

(会場笑)

(スライドを指して)この人は豆腐屋さんです。豆腐は手づかみですよね。お客さんが鍋かなんか持ってきて、ガシャッて。あんまり衛生的じゃないかもしれないけど、すぐ隣にちゃんとQRコードがあるわけです。

(会場驚)

だから、この1枚の板の上に、ハイテクとローテクが並んでいる。これがものすごく中国っぽいなと思って、感動しました。

上海の交通大学の授業にも参加させていただいたのですが、3割ぐらい女性がいました。もう1つ、私は英語はおろか中国語もぜんぜんできないんですけど、いま翻訳する人がすごく進歩しているので、けっこう交流ができたことを感謝しています。そんなことで……(講演終了のスライドを見て)あっ。

(会場笑&拍手)

ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

お座敷に穴を開けることがもっとも良くないこと

司会者:ありがとうございました! 若宮さんでした。盛大な拍手をお願いいたします。ありがとうございます。本当にすばらしいです。次から次へと言葉が出てきて本当にすごいし、1つ1つがとても楽しいですよね。ありがとうございます。みなさんの背中に、たぶん翼が生えたと思いますよ。ありがとうございます。

ここで少しだけ質問をお受けいたします。よろしいでしょうか?

若宮:はい。

司会者:あと5分しかないですけど、質問をどうぞ。

(会場挙手)

はい、どうぞ!

質問者1:お話しいただき、どうもありがとうございました。お話をうかがっていると、創造性が次から次へと出てくるようで、そういう興味、知りたい意欲、行動したいっていうモチベーションがどこから出てくるのかっていうのが、すごく気になったんですけれども。

若宮:実はそれ、私もよくわかんないんです。

(会場笑)

若宮:DNAかもしれないですし、いまはわりと刺激に満ちた暮らしをしているので、余計に刺激が刺激を生んで。こういう講演会をやらせていただく機会なんかがあると、緊張しますよね。

一番大事なことは、とにかく間違いなくご指定の時間にご指定の場所に行かなきゃいけないということ。同じところに2回行くっていうことはあまりないわけですから。日本国中から海外まで行くわけですよね、ほとんど1人で。だから、緊張と計画性が必要なんです。

私の口の悪い友達からは、「マーちゃん、たとえば、芸者さんという職業の方には、お座敷に穴を開けるのが一番悪いことなのよ。芸が上手いか下手かは二の次三の次。とにかく間違いなくお座敷に行くようにしなくてはダメなの。あなたもお座敷に穴を開けることだけはやめなさい」って言われているんです。だから、毎朝、今日はどういうお座敷があるかをちゃんと調べて、とても緊張しております。

(会場笑)

司会者:ありがとうございます。

(会場拍手)

司会者:大丈夫ですか? はい、ありがとうございます。もう一方どうですか?

(会場挙手)

司会者:はい、どうぞ!

健康なんて二の次、三の次

質問者2:シンプルに、いま一番やってみたいことって何ですか?

若宮:やってみたいことはいっぱいあって。どうして1日に24時間しか与えられていないのか、本当に不思議です。みんなやってみたいです。

質問者2:ありがとうございました(笑)。

(会場拍手)

司会者:ありがとうございます。昨日テレビ朝日にいらして、スタジオで撮影をされたっていうことでしたよね? その宣伝をいたしましょうか。津田大介さんがキャスターのテレビ朝日の番組で、9月23日に放送ということなので、ぜひみなさん(ご覧ください)。日曜日の10時からということなんですけど、『日本にプラス』という番組ですよね。

若宮:そうです。

司会者:どんな内容ですか? ちょっとだけ。

若宮:88歳のコンピューターおばあちゃんっていう大川加世子さん……私の先輩ですよね。その方との対談を津田大介さんっていう茶髪のおじさまが仕切られるという番組でした。

司会者:ぜひぜひご覧ください! 9月23日(日)、午前10時からです。

若宮:ありがとうございます。

司会者:もう1問だけ、質問どうですか? 

質問者3:僕もたぶん同じタイプで、毎日楽しくてしょうがないんですけど。ちょっと1つ聞きたいのが、楽しすぎて眠る時間が短くなったりして、健康を害さないように、なにか気にしていることとかってありますか?

若宮:いいえ、それがぜんぜんないんです。健康のことなんか二の次、三の次で(笑)。

(会場笑)

質問者3:安心しました。このまま生きていこうと思います。ありがとうございます(笑)。

(会場笑&拍手)

若宮:どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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