2024.10.10
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『モノづくりの現場での、派遣という働き方白書』ライフスタイル実態調査報告(全1記事)
提供:UTグループ株式会社
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石川善樹氏(以下、石川):よろしくお願いします。石川です。UTグループ様と関わらせてもらったのは、ちょうど1年くらい前からです。
私たち(が取り組んでいる)予防医学や公衆衛生は、弱い立場にある方々をどういうふうに支えられるかを考える分野なので、最初はお互いの知見共有を目的とし、こういう白書(『モノづくりの現場での、派遣という働き方白書―ライフスタイル実態調査報告―』)を作ろうということではありませんでした。
そんな中で現場の第一線でいろんな支援をされているUTグループ様のお話を伺っていたところ、非常におもしろかったんですね。そのため派遣社員の実態をきちんと調査し、今回の白書を作ろうということになりました。
この白書の趣旨をひと言でいうと、製造業の現場で働かれている派遣社員の方々にとって「働くこと」、あるいは「自分の人生をどういうふうに感じているんだろうか」ということの実態を明らかにすることです。そのために、いろいろな内容から調査しました。
まず最初に概要のみお話をしますと、去年の8月から9月にかけて調査を実施しました。これは、Web調査というかアプリで(回答)できるようなもので、トータル1,891名の方々から回答を得られました。
みなさまのお手元の白書に沿ってお話をしたいなと思うんですけれども、今回どういう考え方、枠組みで調査を実施したかが11ページに書いてあります。右側に要因、左側に結果、真ん中に属性と書かれた円があるんですけれども。
今回私たちが調べたかったのは、まずは派遣の現場で働かれている方々のストレスがいかほどなものなのか。そして、ストレスというマイナス要因のみならず、仕事のパフォーマンスはいかがですか、と。
あるいは、ちょっと聞き慣れないかもしれませんが、ワーク・エンゲイジメント。要は、仕事に対して活力や熱意を持って没頭して取り組んでいるかを伺ったんですね。
おもしろいもので、1,891名から取ると、当然ストレスが高くてパフォーマンスもエンゲイジメントも低い方もいれば、非常に生き生きと働いている方々もいるんですね。そういうばらつきが何によって生まれるかを、今回こちらの(11ページの図の)要因と書かれたものから調査しています。
要因を「ONタイム」と「OFFタイム」に分けました。まずオンに関しては、そもそも業務負荷が高いとストレスも高いよね、とか。あるいはロールモデルですね。自分が憧れたり尊敬できるような人がいるかいないかで大きく違うのではないかと。
あとは、上司や同僚とのどのような関わりが仕事のストレスややる気、パフォーマンスに影響するのか。そして、上司からどのようなサポートを得られるのかといったことがONタイムの事柄。
もう1個はOFFタイムですね。食生活、睡眠の状況、あるいは肩こりとか腰痛とか、休日の過ごし方ですね。それが結果(的に)、仕事の現場でのストレスややる気、パフォーマンスに影響するのではないか、という関連性を見ることが今回の調査の趣旨になります。
もちろんアンケート調査ですので、因果関係はわかりません。あくまでも相関関係ですが、まずは現状を知ることで、次の対策の手がかりの一歩にしようということで行いました。
これは(要因と結果の)2つの事柄の相関を見るうえで、属性は、例えば結婚されている方もいればそうでない方もいるし、高卒の方もいれば大卒の方もいらっしゃいます。もちろん収入も違います。
こうした要因や結果に影響しそうな属性は、統計学的にちょっと調整して、どういう要因が右側の結果に影響するかを見たのが今回の調査になります。
12ページ(左側の図)にいくと、このような図が描かれていると思います。通常、白書や分析をやると、ややこしい数字とかデータが並びがちなんですが、今回は直感的に理解していただけるように、ストレスに対しての要因が大きな丸ほど大きく影響すると考えてください。
今回の場合は、やっぱり業務負荷が高いことがストレスと一番関係してくると(いうことがわかりました)。これは直感的にも当たり前だと感じると思います。そして、肩こりや腰痛による業務支障がストレスと非常に関連が強いこともわかりました。あるいは、睡眠時間が少ないとストレスが強くなるという。
ある意味、BIG3みたいなものですね。製造業の派遣労働者のストレスに影響する要因はこの3つです。周りにあるものが、この3つほどじゃないけれども影響する、ということが要因になります。
みなさまのお手元の白書の13ページ(右側の図)が仕事のパフォーマンスです。これに影響するのは、オフタイムの事柄がけっこう多かったですね。野菜や果物を摂取しているかとか、休日に家族や友人と過ごしているか。そして、肩こり・腰痛。こういう要因が出てきました。
このメカニズムや、本当に因果関係があるのかはわからないんですけれども。例えば、野菜や果物の摂取と仕事のパフォーマンスということを考えると、野菜や果物を摂っていない方は、おそらく炭水化物の摂取が増えるんだと思うんですね。
そうすると、血糖値の乱高下が起こるので、仕事に集中しにくかったり、眠くなったりするわけです。当然パフォーマンスも低いだろうということで、野菜や果物の摂取が多いことは、間接的に血糖値の安定を招いているのかな、とか。例えばそういうメカニズムが考えられます。
そして、休日に家族や友人と過ごしている方々ですね。これも、なぜ休日の過ごし方が仕事のパフォーマンスに影響するのかという詳しいメカニズムはわかりせんが。
ただ、スポーツの世界でも、最近はグラウンドの中でどう練習してもらうかだけじゃなくて、オフの時間の過ごし方がグラウンドでのパフォーマンスに影響するだろう、と言われています。そういう意味でも、休日の過ごし方がパフォーマンスと関連するということは、何が関係があるのだろうと。ここは今後詳しく見ていきたいと思っているところですね。
肩こり・腰痛も直感的に理解いただけると思います。これはみなさんのようなパソコンで作業をされている方も同様だと思うんですけれども、製造業でも例外ではないと。
白書の14ページ(左側の図)は、ワーク・エンゲイジメントと関連する要因です。繰り返しますが、ワーク・エンゲイジメントは仕事を生き生きやっているかということですね。活力や熱意をもって、没頭してやっているのかどうか。
丸が大きいほど影響力が強いのですが、まずは「休日に仕事関連の活動を2日間やっているか?」。これは勉強とかそういうことですね。
今回、私たちも驚いたんですが、1,891名の派遣労働者の方々のうち、自主的に休日に勉強をされている方が3割を超えていらっしゃったんですね。非常に熱心な方々が多いなということなんですけれども。
これは、因果(関係がある)かどうかはわからないですね。そもそも仕事を生き生きやっているから、休日に仕事関連の自主的な勉強をされることもあると思うんですけれども。
今回、非常におもしろかったのは、現場のロールモデル。つまり、派遣先に尊敬したり真似したいなと思えるようなロールモデルの方がいるかいないかが、ワーク・エンゲイジメント(仕事のやりがい)に非常に強く関わることがわかりました。
ちょっと整理すると、これまで、派遣労働者の方々のストレスや仕事のパフォーマンス、ワーク・エンゲイジメントにどういう要因が影響するのか、まずはその実態を明らかにしようということでお示ししてきました。
今回おそらく1番おもしろかった発見の一つが、派遣先の現場のロールモデル。実際にその方々がどういう関わりをすると、ワーク・エンゲイジメントが上がるのかを精査したのが15ページの(右側の)図です。
ここにはいろんな言葉が載っているんですが、とにかく注目していただきたいのが、1番真ん中にあるところですね。真ん中にあるものほど関連度が強いです。
「当たり前のことでも褒める」「努力して仕事をすれば褒める」。褒められることが仕事のやりがい、生き生き度につながるという。一見当たり前のように思えるんですけれども、その重要性が改めて明らかになったということですね。
私たちは日々暮らしていると、どうしてもいろいろなことが当たり前になってしまって、褒めたり感謝したりしなくなります。今回とくにおもしろかったのが、努力して仕事をして、なにか成果がでたら褒めることは私たちもよくやると思うんです。
ただ、当たり前のことでも褒めている人たちが存在するわけですね。派遣先の現場での当たり前というのは、例えば「毎朝ちゃんと来てえらいな」とか。別に成果が出てなくてもいいんですよ。とにかく「お前は本当に正直にやってすごいな」とか、そういうことですね。
人柄を褒めるとか、当たり前のことを褒めていらっしゃる方々がいて、そういう方々のもとで働いている派遣労働者の方々は、仕事に対して極めてやりがいを持って取り組んでいると。
ともすれば派遣の仕事は、どちらかと言うと単純作業の繰り返しになることも多いんですけれども。今回、アンケートだけではなくて、(白書の)第2章には具体的にインタビューした方々の事例も載っています。
人っておもしろいもので、同じ作業をしていてもやらされ感の強い人と、ありがたいと思ったり、あるいは同じ作業をしながらも毎回なにか発見しながらやってる人たちに分かれるんですね。
その作業の中身自体をいじくるというか、極めておもしろいもの、やりがいのあるものに変えていくのは、どうしても派遣労働の場合だと難しいんですけれども。
ポイントは、仕事の中身自体を変えるのではなく、周りの人の働きかけですね。当たり前のことでも褒めるなど、例えばそういうことをすると仕事に対するやりがいとか生き生き度が上がるんだなぁということが今回わかったということです。
最後に私からは、分析結果のまとめについて。みなさんの資料だと16ページに書かれていることですね。正面のスライドに書いてあるとおり、ストレスやパフォーマンス、エンゲイジメントにどの要因が効くのかを改めて分析してみると、こういうようなことがわかったと。
一見、これは「それはそうだろう」「当たり前だろう」というような項目もあるかもしれませんが、大事なのはこうやってきちんと定量化して、数ある要因の中で優先順位を付けたことがまず今回の第一歩になります。
最後にまた社長からお話があるかもしれませんが、例えば野菜や果物が影響するのであれば、現場で出される食事をもっと変えようとか、いろんな取り組みの方向性が見えてくるわけです。
肩こりや腰痛というのがこんなに要因になっているのであれば、なにか肩こり腰痛を解消できるような施策はないのかとかですね。
ワーク・エンゲイジメントで言うと、ロールモデル。何度も言いましたが、当たり前のことでも褒めるという、こんなにお金を使わずにできる施策はないわけですね(笑)。ちょっと言えばいいわけですから。
まずはこのような結果を発見でき、次のフェーズはこれ(施策)を実践していく。あるいは、さらにこの発見を深掘っていくということになると思います。
今まで派遣という一括りで括られがちだった業界にとって、モノづくり大国日本の現場の最前線で、一生懸命にモノづくりをされている方々の実態が初めて明らかになった。地味な作業ですが、これからもこういうことを丁寧に積み上げていきたい、と先ほど社長も述べられていました。
白書はだいたい数字とかグラフが並びがちなんですけれども、これはできるだけ直感的に(理解できるように作っています)。また、(白書の表紙には)「はたらく、くらす、いきる」とあります。
モノづくりの現場で日本を支えてくださっている方々が、働くことや生きることをどのように感じていらっしゃるか。それを丁寧に見たのが今回の白書です。
巻末の資料(の37ページ以降)に、より詳しいデータを載せています。時間がないので詳しくは述べませんが、例えば「あなたは何歳くらいまで生きると思いますか?」といった、ちょっと変わった質問もしています。
今、人生100年時代と言われていますけれども、一般的には80歳と答える方が多いのが日本という国です。「何歳まで生きる予定ですか?」と聞くと、たぶんみなさんも「80歳くらい」とお答えになるんじゃないですかね。
今回、派遣の方々にお伺いしてみると、すごく低く見積もられている方々が多く、平均は70歳です。私がインタビューさせていただいた、茨城の工場で働く20代の女性は「35歳」とおっしゃってましたね。「35まで生きられたら御の字です」と。
なぜそうなっているのだろうか? ということを今後明らかにしていきたいですし、そのヒントの一端は第2章に書かれているようなことになります。
調査自体は極めていろんなことを聞いて、たくさんの分析をしたんですけれども、そのエッセンスを端的に直感的にわかっていただけるように、今回の白書をまとめさせていただきました。私からは以上となります。ありがとうございます。
(会場拍手)
司会者:ありがとうございました。さて、ここからはCampus for H共同創業者の石川善樹様、UTグループ株式会社代表取締役社長兼CEO若山陽一より、今回の白書作成までに至った経緯などを伺ってまいりたいと思います。
石川様、若山さん、よろしくお願いいたします。まずはじめに、共同調査をするに至った際の経緯と、お互いのどういったところに期待をされているのかを教えていただきたく思います。では、石川様からいかがでしょうか?
石川:調査に至った経緯は、先ほどちょっとお話ししたんですけれども。UTグループの社員のみなさまとお話しすると、現場の話を非常におもしろおかしく教えてくれるんですね。
例えば、工場の派遣労働者の方々との飲み会を開催したときにどんな話が飛び出すとか。
司会者:飲み会での会話(笑)。
石川:言っていいのかどうかわからないですけど(笑)。結局、話の中心は男性が多ければ「結婚したい」とか「彼女がほしい、でも出会いがないんだ」とか。まあ普通の若者の会話なんですけれども。
じゃあ、なんで結婚できないんだとか、なぜ彼女が作れないんだという話になってくると、やっぱり派遣というところがすごくキーワードになってきて。
それはなぜかと言うと、例えば合コンをするにしても、仲間とするわけじゃないですか。でも、派遣の現場だと例えばシフトの時間が違ったりするので、友達と一緒に休日を過ごしにくい現象があるんですね。
司会者:なるほど。そもそも予定が合わないんですね。
石川:そうなると、当然、休日を1人で過ごさなきゃいけない機会が多いんですね。そういう人たちにどういうサポートができるんだろうとか。そんなことをいろいろしゃべっているうちに、エピソードとしてのいろんな話が出てくるんです。
それで、全体としてどうなっているのか、まずは傾向を掴んでみませんか? ということになって、今回の白書(の発行)に至りました。
司会者:なるほど。では、若山さんに対してどういったところを期待されていらっしゃいますか?
石川:本当に恥ずかしながら、若山さんにお会いするまで、派遣の現場でこんなに熱く正義に燃えてやってらっしゃる方がいることを知らなくてですね。
(若山さんが)やっている取り組みを聞けば聞くほど、本当はこれは国がやるべきことだとか、あるいは国に限らず、一市民としての私たちがちゃんと業界の構造を知って……。
だって、私たちが持っている携帯電話は、例えばこのUTグループの派遣社員の方々が作られているものだったりもします。こういうことも知って、一市民としてなにかサポートできないかということは、本当は考えるべきだと思うんですね。
例えば、小さな女の子が虐待されて亡くなったという事件がありましたけれども、ああいうときに私たちは燃え上がるんですが、日常で淡々と起きている派遣の現場にはちょっと目を向けにくいところがあります。
そこで本当に一生懸命やってらっしゃる方々がいる。とくに若山社長がそういう方で、これはぜひなにか一緒にやりたいなと、最初にお会いした日に思いました。
司会者:最初の印象として、一緒になにかを作り上げていきたいという思いがあったわけですね。では若山様はいかがでしょうか?
若山陽一氏(以下、若山):会社を創業して24年目になりますが、今日までいろいろありました。たくさんのお客様に支えられ、社員が少しずつ増えてくることで、実は当社は、製造派遣の業界の中では初めて上場した会社になりました。2003年12月に上場したんですけれども。
派遣業界はプライベートカンパニーが多いんですが、それは1人の株主に対して数万人の従業員がいるという状況です。そういうものをいびつに感じていまして、我々は派遣で働いている社員の人たちをまず正社員で雇用しようと取り組んできました。
それから、その人たちが会社の経営に参画できる機会や、会社の成長とともに自分の成長を実感できるような状況に少しでも近づけたいと思いました。実は、製造派遣業界の中では初めて、従業員持株会に派遣社員が参加できる仕組みを作りました。
そうこうしていると、やっぱり従業員でありながら株主である人たちがたくさん増えてきて、それに伴って自然に会社を上場しようという流れになりました。それが、2003年に業界で始めて上場したということになったんですね。
その(上場した)ときは、会社の規模もまだ派遣社員ベースで1,000人くらいでした。そういう意味では、ある程度、社員の人たち一人ひとりの顔がおぼろげながら想像できてはいたんですけど。
若山:それから、お客様の状況に支えられながら少しずつ社員数が増えて、ちょうど今期で社員数が2万人を超え、業界で最も多い数になってきました。その変遷を踏まえて、会社は成長しているんですけれども、「社員一人ひとりが成長を実感しているかな?」というのが常に疑問としてあってですね。
会社の中でもいろいろな取り組みはしてきたんですけれども、主観的にしか会社を見られなくなっている自分もいますので、「それ(自分の疑問)が現実味を帯びているのかどうか」を客観的に、ある意味調査していただくことが必要だろうなと思っていました。
それから、もう1つはそれぞれの社員の人たちがどんなことを考えているのかなということも、もはや創業のときに居酒屋で社員の人たちと決起集会をやって、現場を立ち上げていた頃とは変わってしまってまして。
どういう人たちがどういうふうに考えているのか、なかなか本音がわかりにくくなってきているので、それをまとめて外部の有識者の方にお力を借りて調査してみたいなと思ったのがきっかけです。
自分の事業を説明するときも、外部データがほとんどなかったんですね。例えば、今でこそ、製造派遣業界で働く人が40万人いることが厚生労働省の調査によっても明らかになっています。
ただ、その人たちがどういう属性でどう働いているのかを周りに聞かれても、答えられない私がいました。一方で、自分の会社の社員や業界のことをなかなか語れないというのも、経営者としてどうなのかなという思いがあってですね。
そういう意味で今回、とくに石川さんは「人生100年時代」ということで、1つの会社に属して働く人たちがほとんどいなくなってきている時代に突入しています。かつ、世の中的に言いましても、非正規労働力と言われている人たちが大半を占めてきています。
事業会社として、その人たちの枠組みとして何が提供できるのかなというところですね。会社や個人の寿命、働く時間が長くなる一方、会社に属する期間はどんどん短くなっていると思います。
会社と従業員の関わり方が今後どう変化していくかは、当然ながら経営においても重要な要素でありますので、その先駆者で非常に知見の深い石川さんに、このことを打診したのがきっかけなんですね。
司会者:ありがとうございます。
石川:(派遣社員の方々の属性や本音を)客観的に見たいということで、白書の45ページ(右側のグラフ)をご覧いただくと、極めておもしろいデータがあります。Q21の「仕事についてどのように感じますか?」ということなんですが。
例えば09番の「仕事をしていると、つい夢中になってしまう」という選択肢を見ると、「よく感じる」が15.6パーセント、「とてもよく感じる」が6.2パーセント、「いつも感じる」が6.3パーセントです。
仕事をしているとつい夢中になっちゃう方が、3割いらっしゃるんですよ。これはたぶん、一般企業に比べても極めて高い数字だと思うんですね。
これはワーク・エンゲイジメントを測る質問なんですが、こうやって客観的に出ると現状もわかるし、他業種と比べてもうちはどうなんだというのがわかるようになったり。
例えば、03番の「仕事に熱心である」と答えた方が4割近くいらっしゃるのは、恐るべき数字だなと私なんかは見ていて思いましたね。
司会者:今回の調査の結果を受けて、少しお話にもありましたが、今後の製造業の派遣労働者の働き方の変化について、どうお考えでしょうか? 石川様からお願いいたします。
石川:働くことと生きることはセットで考えないといけないんですけれども。例えば、白書の22ページ。第2章に、女性にインタビューさせていただいた事例が載っています。
40歳女性ですね。1番上を見ると、転職が7回と書いてあるんですね。ご本人に「何歳くらいまで生きる予定ですか?」と聞くと、「70歳くらいまででいいかな」とお答えになっています。
70歳まで生きる予定で、仕事を退職されるのはだいたい60歳くらいだとこの女性は答えていたんですね。文章の一番最後に、「60歳までに200万円貯めておくと、きっと老後は安泰だろう」と。これは何を意味しているかと言うと、まず見積もりが楽観的ですよね(笑)。
司会者:そうですね。
石川:60歳までに200万あったら安心だと思ってらっしゃるんですよ。もう1個は、70歳まででいいかなとおっしゃっているんですけど、これも見積もりが楽観的ですよね。
司会者:こちらも。
石川:日本女性の平均寿命はほぼ90歳に近いですから。
司会者:そうですね。
石川:つまり、自分が何歳くらいまで生きる予定なのかということと、そのためには何歳まで働きたいのかということは、やっぱり変わってくるじゃないですか。
そういう意味で、これからの、とくに派遣ということを考えると、共通して言えるのが、“人生の見積もり”をあまり考えられていない方が多いんです。とくにお金のことは、より輪をかけて考えていらっしゃらない方が多くてですね。
お金のリテラシーを上げていったり、そもそも今、この日本という国では平均寿命が何歳なんですよという。ヘルスリテラシーって言うんですか、(健康の)リテラシーを上げたり。
あるいは、先ほど飲み会の例を出しましたが、休日に1人で過ごされる方が多い。いろいろな地域で働かれているので、1人でぼーっと過ごしていると、例えば退職したときにハッと気づいたら、ぜんぜん(地域と)つながりがないということになったりしかねないので。人間関係をどうしていくのか、地域の中にどう溶け込むのかというような。
これは白書に書いてあるんですけれども、ちょっと整理すると、これからの派遣労働者の働き方として重要になってくるものが、健康のリテラシー、人間関係のようなソーシャルなリテラシー、お金のリテラシー。
僕なんかは、三大リテラシーというふうに思ったんですが。この3つに関して、スタッフのベースをきちんと揃えていくことが大事なのかなと思いました。
司会者:ありがとうございます。続きまして、若山さんはいかがですか? 今後の製造業の派遣労働者の働き方の変化につきまして、どうお考えですか?
若山:当社に限って、今考えていることを言いますと、先ほど申し上げましたように、我が社の派遣で常時働いている社員たちがちょうど2万人を超えた状況になっています。
実は、毎月だいたい1万人の方から当社に応募があるんですね。月間で1万人というと、ものすごい数です。それだけの方が当社に応募してきてくださって、そのうち750人の方を採用させていただいています。ですから、月間約750人が入社するんですね。
一方で、2万人の社員が分母にいますので、もちろん退職する人もいらっしゃいます。2万人を分母として、だいたい月間3.5パーセントの人が辞めるという計算になります。だいたい年間で4,000人~5,000人が増加しています。
月間の採用能力とか採用人数は、いわゆる派遣で働いている社員の人たちに選ばれている数なので、それはそれでよしとしまして。それは、お客様の職場条件がいいということももちろん起因していますけどね。
若山:同時に、辞めている人が3.5パーセントいるということになります。具体的に見ていきますと、入社して3ヶ月以内の退職者が、今申し上げた退職者数の70パーセント(を占めているかたち)なんですね。
ですから、入って3ヶ月以内に辞めてしまう。逆に言うと、4ヶ月経過すればだいたい定着していくことになっています。その最初の3ヶ月はすごく大事なんですね。
最初の3ヶ月でどういうことが起きるかと言うと、それぞれに個別に(できごとが)あると思うんですけど、今申したように毎月750名が入社している状況ですから、日常的に社員が入っている状況なわけですね。
とくにお客様の職場によっても、もちろん濃淡はありますけど、たくさんの人が一気に入ってきて辞めていくとなると、いわゆる一般の企業のように、一堂に(介して)4月1日に入社式を行って、見渡せば同期が誰かわかるという状況ではなくて。毎日毎日、日常的に入社が行われて、知らぬ間に去っていく人がいるということです。
そういう意味で言うと、毎日毎日イベントをやるわけにはいきませんから、一人ひとりの入社のイベントに対する受け皿みたいなものが、ルーティン化されていくわけなんですね。
ご本人にとっての入社のタイミングは、言ってみれば人生にとってある意味、大きなイベントの1つです。自分が大きなイベントだと感じていることに対して、(実際には)ルーティン化されている受け入れ態勢が、たぶんギャップを感じてしまう要因になるんじゃないかなと思っているんですね。
なので、当社は退職する人たちについては、まず会社をよく知っていただいたり、入って早々に会社の状況をよく理解してもらったり、お客様と当社の関係性がどうあるかを知ってもらったり。
会社にどういう人がいるのか。例えばわかりやすい話で言うと、食事はどこで取ればいいのかとか、休憩場所はどこだとか、そういった細かなことを教えてもらわないと、どんどんどんどん嫌になってくるんですね。
入って早々、昼休みにどこで食事をしていいのかもわからない。どこで休憩していいのかもわからない。この仕事は誰に聞いてもわからない。そういうことが続くと、もう嫌になってきて、「受け入れられてないな」と直感的に寂しさを感じるんだと思います。
それで退職する人が増えるということです。今我が社でやっている取り組みは、「安心・つながり・成長」と言ってますけれども、従業員の人たちに3つの価値を提供することに経営として努力しています。
若山:とくに(重要なのは)つながりですね。今申し上げたように、派遣で働く社員の人たちは入社時期がバラバラだったりして、組織のロイヤリティをお客様企業に置いたらいいのか、我々UTグループに置いたらいいのかもわかりにくかったりします。
要するに、派遣職場で働くということは、お客様(の会社)に直接出社して直接帰るわけですから。その時間はお客様の管理下にあるので、そこで我々のマネジメントが介在する余地も失われます。これはもうしょうがないことなんですね。
このように、ある一定の制約があるマネジメントの中で働いている人が、会社や自分のことを組織がどうバックアップしてくれているのか見えるようにすることが必要だと思っています。
それは、アプリや社内のSNSを活用したりして、従業員間および会社間のつながりを持てるようなこと(体制)を作り上げています。より使い勝手および利便性(を高めて)、羅針盤のように自分がどこに属しているのかがわかる状況を、もう少し細かくやっていく作業がまず大事なのかなと思っていますね。
司会者:なるほど。温かく受け入れているんだよという気持ちと、それを表現できるアプリケーションなどの活用方法ということですね。
では最後に石川様、UTグループを筆頭に今後、派遣会社、雇用会社に期待することはどんなことでしょうか?
石川:業界では当たり前かもしれないんですけど、端的に言うと、私自身にとって発見だったのは、実は「派遣の現場はダイバーシティの最前線であるな」と感じたんです。
さまざまな年齢、性別、国籍の方々が入り混じって仕事をしている。まさに日本がこれから求められるダイバーシティ、そしてインクルージョンですね。受け入れられるという。
この最前線の現場が、実は派遣現場で起きているんだと思ったんですよ。であるならば、まずはこの派遣現場でダイバーシティな人々をどう包摂していくのかということ。その施策というかヒントが出てくると、派遣の話のみならず、日本全体にとっても、非常に有益なものになるなと思ったんですね。
そういう意味で、これは決して派遣に閉じた話ではなく、これからの日本を考えるうえでも非常に重要な現場になっているんだなということを、今回の調査を通して勉強させていただきました。
司会者:ありがとうございます。では若山さん、UTグループとして今後どういった構想をお考えでしょうか?
若山:社員数がだいぶ増えてきたこともあり、我々は今回、石川善樹さんから調査をいただいたこともありまして、やっぱり働いている社員の人たちを健康面および生活面からもサポートできる体制を取っていこう、と今企画し始めています。
具体的には、実は2万人の社員のうち1万人が当社の借り上げた社宅に入寮しているんです。社宅というのは、基本的に借りたワンルームマンションであるとか、アパートから勤務しているということになります。
半分以上の方が当社の借り上げ社宅に入っている状況で、直接工場に出社します。出社して、昼ごはんは基本的に工場の中の食堂を利用して食べて、帰ってきたらだいたい家で食べるということになるんですが。
そのときに独身の方は、3割くらいの方は自炊してるようなんですけど、大多数はコンビニエンスストアで買ってきたり、食事もだいたい決まったものを食べる人が多いようです。
先ほどのデータにも出ていましたように、食習慣とか食生活が本人の仕事のやりがいなどにもつながるということですので、そういう食事をもう少し効率よく提供できる機会はないかなと。
全国の給食事業の会社と提携を進めたり、独自に働いている人たちに合わせた健康管理をしながら食を届けられるような状況を整えていこうと考えていたりですね。
あとは肩こり・腰痛みたいな話もありましたけど、これもけっこう重要なことだと思っています。(肩こり・腰痛を)1日でリセットできるかということ。次に持ち越さないことは、やっぱり次の活力の重要な要素だと思っています。
例えば派遣会社で言うと、障害者の法定雇用率が2パーセントを超えてくると、お客様の職場の中に障害者の人たちを受け入れる余地はまだそんなに多くないので、実はこの五反田のオフィスの中にも障害者の方をたくさん雇わせていただいています。
そういった人の職場として、例えばですけど、マッサージの人たちを雇って、福利厚生として、工場現場の人たちのマッサージのサービスにあてるとか。働いている人一人ひとりのために、我々の中で循環をうまく作って、きちっとやっていきたいなと思っています。
若山:そういう意味においては、仕事は当然、お客様の力を借りないとできないことがたくさんあります。この調査にもありましたけど、派遣先のロールモデルというのが非常に重要視されていました。
派遣元である当社のロールモデルもあるんですけども、やっぱり働いている人にとっては、我が社だけではなくてお客様を巻き込んだり、もしくはお客様に同意いただいたロールモデルというものがやっぱり現実味を帯びるわけです。
その現実味を実感したときに、毎日の仕事に活力が生まれることもあるでしょう。当社では「ネクストUT」という制度があります。これは、お客様が採りたい人、この人採用していいよ、という人についてはTemp to Perm(紹介予定派遣)じゃありませんが、お客様に(社員として)ご紹介させていただくと。
従業員の人もお客様も望む場合は、積極的にUTを超えるキャリアチェンジである「ネクストUT」をしてもらいたいということでやっています。実はこれも目標を置いてやっています。
今は年間500名の目標で、おそらくそれは実現できる水準にあるかなと思っています。だいたい年間1割くらいの人が、そのようにしてお客様企業の社員になっていくような道も作っていきたいと思っています。
「安心・つながり・成長」の中で言いますと、キャリアの連続性を矛盾なく作っていくことと、それをバックアップするための生活習慣や健康状態からきちっと会社が関与し、サポートしてあげられるような状態を作っていくことがこれから重要なのかなと思っています。
そして、未来はおそらく派遣人材が数としてはもっと増える世の中になっていくと思いますし、10年後の未来などから考えると、派遣人材または外国人労働力ですね。
それから、エンジニアの人たちはほぼフリーランスの人たちが多くなってきています。1つの企業に属さない人たちは今はマイノリティですけど、10年後の未来はおそらく主戦場にいるような人たちも、今申したような属性の人たちが増えてくると思います。
そういった人たちに合わせた、いわゆる「働き方のプラットフォーマー」として存在していく取り組みを、惜しみなくやっていきたいなと思っていますね。
司会者:ありがとうございます。石川様、若山さん、ありがとうございました。
石川・若山:ありがとうございました。
(会場拍手)
UTグループ株式会社
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