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Finance & Legal バックオフィス業務の無駄を徹底的に効率化する(全2記事)

2018.08.31

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バックオフィスの効率化は企業文化すら変えていく ビジネスを成長させる効率化ツール導入の考え方

提供:弁護士ドットコム株式会社

2018年7月26日、これからの時代に求められる最先端テクノロジーの活用事例をユーザー視点で紹介するイベント「SPIC 2018」が開催されました。Finance & Legalのセッションには、日本最大級の法律相談ポータルサイトを運営する弁護士ドットコム株式会社など4社が登壇。本パートでは「物件ファン」などのサービスを運営する株式会社ONDの松田氏と、経費精算システムを提供する株式会社エムティーアイの沖野氏によるパネルディスカッションの模様をお送りします。

バックオフィス業務は企業規模に関係なく発生する

別井貴志氏(以下、別井):今日のパネルディスカッションは、一応3つテーマを出しています。

最初にも申し上げましたけれども、バックオフィス業務といえば地味に見えるんですが、企業規模に関係なく、どこの会社でもバックオフィス業務というのは発生します。さらに、全社員に関わることです。

なので、ぜんぜん他人事ではなくて。ここをいかに効率化するかっていうことが非常に重要だと思っています。

先ほどお話いただいたのは契約の部分、それから経費の部分だったんですけれども、もちろんバックオフィス業務って、それ以上も以下もありますよね。

まず「バックオフィス業務を効率化しよう」って思ったときに、どこから手を付ければいいのか。そもそもそういう判断基準があるのか。そして、これは誰が旗を振るべきなのか。

最終的にはたぶん経営陣が納得しないと進まない話だと思いますけれども、やっぱり現場の担当者が手を挙げるべきなのか。ますはそのあたりについてお聞きしたいと思います。それでは松田さんからいきましょうか。

松田光憲氏(以下、松田):そうですね。まずなにからやるべきか、みたいな話でいくと、うちの場合ですとだいたいチームメンバーみんなで集まって、「今どんな仕事の負荷が高いか」みたいなのを洗い出すっていうことをやってるんですよね。

その中で「これはやっぱりデカい課題だよね」みたいなものを1個か2個に絞って、それに対して「じゃあこれ潰すためにどうすればいいか」っていう、そんな考え方で進めることは多いです。

別井:それは定期的にミーティングで洗い出すんですか?

松田:我々はこういう組織改善活動みたいなのを、3ヶ月に1回くらいのサイクルでサーベイを取っているというのもあって、その中からアクションプランに落としていくってことのをやってるんですね。なので毎回、なにかしら課題を見つけてそれをアクションに落として、効果あったかどうかPDCAを回してます。

別井:それ、リードしてるのはどこの部署で、誰なんですか?

松田:基本的に自部署のリーダーが回すようにしているので、管理部門であれば私が担当してますかね。

最初に考えるのは「その業務をやめられないか」

別井:なるほど。沖野さん、そのあたりはいかがですか?

沖野俊彦氏(以下、沖野):そうですね。弊社の場合ですと、まず業務の問題が起きたときに1番はじめにやるのが「その業務やめられないか」っていう議論で。やめられる業務はすぐやめる、というやり方が1番です(笑)。

どうしてもやめられないときにどうするかは、やっぱり関係部門の部門長がひとつに集まるのと、あとBPRの専門セクションが我々の会社の中にあるんですが、そこと一緒に「どうやると1番スマートなのか」を議論しています。そして、仕組みをみんなで考え合って作っていくという流れですね。

別井:なにかそこで衝突とかは起きないんですか? 「いや、無理。こっちはやめよう」とかってやっぱり起きますよね。

沖野:起きますけども、ぐだーってやってもしょうがないんで。我々、業務がタイトなんですよ。無駄に仕事したくないので(笑)。そういうことはできればやめたい。

別井:でもお二方に共通して言えるのは、今日から「ハイ! バックオフィス業務の改革やりましょう!」っていうんじゃなくて、ふだんから無駄をカットしていくみたいな文化はできてるんですね。

沖野:エムティーアイはそうですね。

別井:(松田氏に)いかがです?

松田:とはいえ、タイミング見つけてやらないとなかなか……。どうしても日々の連続的な業務に追われるっていうのはあるかなと思ってて。そういう場合は区切りをつける、ってことも同時にやってるような気がします。

別井:そんなことをみんなが見て、集約し、どこかでジャッジするんでしょう。「ここは本気で手付けようよ」ってなったあとに、テクノロジー使わないってことは絶対ないので。じゃあ次ここをやりましょう、っていったときに、どういうツール・サービス・ソリューションを導入するか、っていうような次の段階に移ると思うんですね。

解決したい課題でソリューションを決める

別井:続きまして、このツールを導入するときの選定ポイントみたいなのはどんなところなのかを次にお聞きしたいと思います。

前のセッションで「性能がありすぎたので別のソリューションに変えた」みたいなお話もありましたけども、じゃあ性能なのか、もしくは導入のしやすさなのか、トータルでいう導入のコストパフォーマンスなのか価格なのか、またはサポートなのか……。

いろいろ考えられると思います。ソリューションを導入するときの選定ポイントを教えていただきたいんですけど、松田さんいかがですか。

松田:そのツールを使ってなんの課題を解決するのか。やっぱり目的から入ることがすごく大事かなと思っています。今回のクラウドサインさんのケースでいくと、やっぱり契約書の締結でミスが起きてはいけないし、相手方への信頼が必要なものなので。

今回のケースでいえば、信頼重視だと。そう考えたときに、やはり弁護士ドットコムさんが運営されてるっていうのが(笑)。

別井:あぁ、なるほどね(笑)。

(会場笑)

松田:まちがいない、っていう(笑)。

別井:沖野さんはいかがですか?

沖野:まず1番に費用対効果があります。我々の場合、会社規模としてそんな大きくなかったり、でも小さすぎもしないっていうところで、わりと中途半端なんですよね。だからあんまり良いソリューションを買っちゃうとtoo muchになっちゃうし、安くてもダメだということもあって。だから、費用対効果が1番上がるソリューションをその都度選ぶ。そういう感じですね。

組織変更が多いなら、ツールの拡張性は必須

別井:今ひと言でおっしゃいましたけど、費用対効果で見るのもけっこうつらくないですか?

沖野:実はうちの会社、社内の決裁資料に思いっきり費用対効果のシミュレーションがすごい載っていまして……(笑)。

別井:あぁー、やっぱりふだんからそういうことやってらしたんですね。

松田:それって、労務コストとかそういうのを算出していますか?

沖野:全部算出しています。時間単価いくらっていうのも社内データから出しています。

別井:最初にそれをやるとして、次を選ばなきゃいけないってときの手順としては……まずなにかサイトで検索するんですか。

沖野:サイトの検索もありますし、ベンダーさんからのご紹介っていう話もあります。いろんなイベント行ったりとか、自分で見つけてくるのもあって。その中でいくつか選定して、だいたいこれでずっとやっていくんですけども。

そこで、費用対効果と製品の信頼性、あとは拡張性ですね。我々の会社も社内が常に変わっている会社でございまして。どんどん事業もできては消え、できては消えて。組織変更なんかも月2回くらいあるんですよね(笑)。

(会場笑)

別井:マジですか(笑)。

沖野:すんごい大変なんですけど(笑)。だから、コロコロ変わることに適応できるものでないと無理なんですよ。だから、あんまりガチッとした仕組みは絶対入れなくて。ちょっと前までERTみたいなのありましたよね。ああいうソリューション、絶対合わない会社なんです。

ソリューション導入は「誰が」決めるべきか

別井:松田さんはいかがですか、実際のツール選定の手順は?

松田:基本的に我々の場合は、入れたいと思った人が選ぶ、みたいな感じになるんです……(笑)。

(会場笑)

松田:なぜそうしてるかというと、もちろんコストとか高すぎることはダメなんですけれども、やっぱりその人が選んだほうが実際の導入とか、そのあとの運用とかを考えたときに浸透しやすかったというのはあると思うんですよね。なんかこう、あんまり上から「やれ」って入れても、その人も嫌々やってもしょうがないし。

それよりは、自分でやりたいっていうものを。だったらまぁこれでいけるよね、っていう感じで進めるっていうような。

別井:実際にじゃあ、「これ導入しよう」って決めるのは誰なんですか? 最終的には経営だと思いますけども、どこの部署の誰だったんですか。実例で言いますと。

松田:オズビジョンの例でいきますと、わりとティールっぽい組織なので、意思決定するのもその当事者が決めることが多いんですよ。うちの場合、年間予算はまぁもちろん、それは経営と最初に策定するんですけども。予算範囲内の手段は基本的にその部署だったりその個人に任せられるみたいな。そういう会社なので。

別井:じゃあなにかあるとその個人の人が責任とったりするんですか?

松田:やっぱりまぁ、責任とるのは僕になるのかなと思います(笑)。

別井:なるほど(笑)。沖野さんはいかがですか。

沖野:弊社の場合ですと、まずプロジェクトごとにプロジェクトオーナーが選定されます。そのプロジェクトオーナーの下にプロジェクトマネージャーがいて、さらにプロジェクトメンバーがいると。その組織で考えて、経営陣に「買いたい」って上訴するような流れですね。

別井:そのチームって、どうやって集まるんですか?

沖野:都度都度ですね。関係する人が集まって、その中で「このプロジェクトでは誰がオーナーになって誰がマネージャーやりますか」を決めていきます。ケースバイケースですね。

別井:なんでそんな方法が生み出されたんですか?

沖野:けっこう部門横断的なプロジェクトが多いんで、なかなか1部門では決められないんですよね。ですからプロジェクト単位で物事を進めていくほうが合理的かな、と我々の会社では考えています。

効率化で社内はどう変わったか

別井:そうやってソリューションを選定して、導入しましたと。今日の事例でもお話いただきましたけれども、効率化を進めて社内になにか変化があったんでしょうか? 働き方みたいなのも含めて、どんなことがもたらされたんですか?

バックオフィスって、効率化しても「便利になって当たり前だろ」みたいな感じで社員に受け取られたりするじゃないですか(笑)。面倒くささがなくなったぶんだけゼロに戻った、みたいなね。社内の反応だったり、実際の働き方が変わったことってありますか?

松田:ONDのケースでいくと、それによって著しく大きく変わったことは正直なかったかなとは思っています。そもそも最初が全員リモートからスタートした会社なので、効率化するのは、ある意味当たり前じゃないですか。

別井:やるしかないっていう。

松田:そうなんです。その前提のもとにある会社ですね。なので、それに対しては違和感ないというか、むしろ「うんうん、そうだよね」って感じでしたね。

別井:なるほど。沖野さんはいかがですか。

沖野:我々の会社ですと、先ほどのリーダーみたいな制度ありますけど、やっぱり「もっとこうしてくれ」とかニーズが上がってくるので、それを都度都度やっています。今も追加開発はどんどんやってるんですけど、そこから派生して、例えば「請求書なんかを同じようにOCRで処理すれば、支払書は勝手に作れるんじゃないの?」とかそういったものを開発しようとしたり。

別井:はい、はい。

沖野:どんどん拡張していくって感じですかね、常に。我々は数年前から文書のe文書化ってずっとやってきていて。なんでそれやったかっていうと、冒頭もちょっとおっしゃってましたけど、時間と場所を選ばない働き方しないとダメなんですよね。そのために文書は絶対にデジタルじゃないとダメだってわかっていて。

なので「印鑑やめようか」と。もう全部デジタルでやり取りすると。そうしたら、人は場所と時間に囚われずに働けるじゃないですか。そうすると、少子高齢化になっている世の中でも、在宅勤務もできるし時短勤務もやりやすいとかね。今はそうしていこうといろんな取り組みをしている感じですね。

組織文化に依存する業務効率化の進め方

別井:今回のイベントのテーマでもありますけれども、働き方改革って端的に言うと「多様な働き方をしていこう」って話だと思うんですね。うちの会社、みんな紙なんですよ。なんか偉そうに言ってるけど。うちはメディアとかも出していながらですが。

(会場笑)

別井:無数の紙とハンコの嵐なんですね。うちの会社はそうなんですけれども、なんていうのかな……「紙をやる」っていうのは、もはや文化になってるような気がするんですよ。あともう1つ、文化にまでなってるのが、出社主義。この2つがね、多様な働き方ができない2つの要素だと思っていて。

だからこそ、それを変えられるくらい「バックオフィス業務の効率化をするとできるようになるよ」ってことを社員にわからせる。社員だけじゃなくて、経営層にもわからせるっていう努力がすごく必要なんじゃないかと思うんですけど。いかがですか、松田さん。

松田:今のお話、すごくそうだなと思って。やっぱりツールとかの前に、組織文化がどうかっていうのが大前提だなと思っていて。ONDにしてもオズビジョンにしても、両方とも「フラットでありたいよね」とか、社員を基本的に信頼するような前提の会社なので。性善説というか、ですね……(笑)。ベースがそうなんですよ。

なので、こういったなにかしらツールを導入するにしても、まぁ効率化はすればいい。あんまりリスクも考えなくていいので。そういう文化が整ってるっていうのは、すごく大事なことだなというのは思いました。

別井:いかがですか、沖野さん。

沖野:いや、先ほどから「おっしゃるとおりだな」と思ってて。正直、在宅勤務しやすい仕組みづくりでやってきたんですよ。在宅勤務をしやすい制度を人事でも導入しました。でも実際使う人って限られてるんですよね。

うちはけっこう女性が多かったりして、みなさんお母さんなんですね。だから、わりと在宅勤務をフルに使ったりするんですよね。でもやっぱり出社しないとダメだと思ってる人って非常に多くて。

別井:そうなんですよ。

沖野:今は特別なフレックスを導入していて、コアタイムが13時~16時って感じなんですよ。その3時間だけいればいいってしてるんですけど、それでもやっぱり使う人は限られてますよね。意識改革も同時に合わせて進めないと、なかなか思ったとおりには進まない。そう思ってます。

意識を変えたいなら、まず自分の行動から

別井:その意識改革っていうのは、やっぱり目に見えるメリットが感じられないとね。言ってみれば、文化大革命になると思うんですよ(笑)。それがやっぱりね。

だって今はソリューションもあるし、導入しての運用は毎日使ってく内に変えてけばいいし。そういうのができるようになってるのにみんなやらないっていうのは、やっぱりリテラシーの問題じゃないと思いますよね。

沖野:ですから私は、部門長として率先して午後出勤してますね。

(会場笑)

松田:それも大事だと思ってて、自分もそうなんですよね。オズビジョンを辞めた理由は、そういう多様な働き方を自ら証明しなきゃいけないなっていうことなので。雇用契約をやめて業務委託契約に切り替えよう、っていうかたちだったんで。

別井:そうですよね。ちょっと大きい話をしましたけど、でも本当にそこを変えるっていう努力のほうがすごく難しいなって思っています。さらにこれって、経営層がわかってないと進まないじゃないですか。最終的にはコストの削減されると思いますけれど。そのあたりをどう広げていったらいいのかっていうのはね、もどかしいんですよ。

沖野:ちょうど政府が働き方改革をやってて、残業に対してもすごく厳しくなってるじゃないですか。

別井:はい、はい。

沖野:それに引っ掛けて、そういう制度をどんどん出してやってるんですけど(笑)。

別井:なるほどね(笑)。

沖野:労働時間を削減しようと。実際問題、顕著に残業時間減りました。

仕組みを変えることで、文化を変えていく

別井:ちょっと横道逸れますけど、メディアでもよく言われるように「いや、僕は(私は)もっと働きたいんだ!」っていう人がいるじゃないですか。

沖野:いらっしゃいます。

別井:働きたいと思う人はべつに、働きゃいいと思うんですけど(笑)。

沖野:僕も本当はそう思ってます(笑)。

(会場笑)

別井:なかなか大きい声で言えないですけどね(笑)。でも、そのためにもあんまりバックオフィス業務を軽んじちゃダメです。根幹だと思うんですけどね。だってそこに手間がかからなくなれば、もっとほかに時間使えますからね。べつに働かなくたっていいんですよ。余った時間はもっと有効活用できるし。

実は私、経費精算を会社に出さないんですね、怒られるんですけど。私は管理者なので、みんなの経費精算の紙が回ってきて、ぜーんぶチェックしてハンコ押すだけで、2~3時間かかるんですね。そのあとに自分で自分の経費精算なんかやってたら、それでなんか「多くて数万? もういいや」って思ってるんですよ(笑)。そういう感覚になりません?

松田:私はあんまり……ごめんなさい、うちけっこう効率化できてるかなって思ってるので。あんまりそういうのはないんですけど……(笑)。

別井:あぁ、なるほど。うらやましいです。

松田:いえいえ。そういう「文化を変えるための手段」としてツールから入るというのもアリなんだなと思ってて。メッセージとしてすごくわかりやすいじゃないですか。「システムが変わったから、これからは会社としてこういうほうにいくんだぞ」って。

文化を変えていくのって時間かかるんですけども、そうやって仕組みから変えちゃうと、スパーンと説明しやすいなって。だからぜひコンカーさんの導入を。

別井:(笑)。本気でいろいろ考えてるんですけどなかなかね……。すいません、私の愚痴になってきました。

(会場笑)

AI時代のバックオフィスに必要な人材像

別井:そろそろ時間ですね。一応こちらには「バックオフィス業務の効率化を進める今後の計画とあるべき姿」って書いてますけども。今回は契約と経費の削減でしたけども、なにか他にもここの業務を改善するのに手をつける計画でいる、とかですね。全体として今ある課題とかについて一言ずついただきたいんですけど。

沖野:最近ちょっと経営のほうから大きい課題が来ていて。「取締役会とか経営会議で決裁された事項を、文書渡すから勝手に機械が読み取って、必要な社内手続きが勝手に進むようにしてくれ」って言われてるんですけど(笑)。

(会場笑)

それ聞いて、「できません」って言ったらすごい怒られるんで。「まぁちょっと考えてみます」と(笑)。

(会場笑)

それで今ずっと考えてるんです。OCRの読み取り技術がけっこう進んでるっていうのと、あとAIも進んでいますよね。ただAIも機械学習ベースなんで、データ量がないとなかなか判断つかないというところと、あと自然言語処理のところもまだそんなに得意でもなかったりするんで、どこまで読めるかなっていう。

ただ、物事はシンプルに進めば1番いいじゃないですか。だからなにかそういう方法ってあるのかなって課題として考えてます。

別井:AIまで使われるようになったら、やろうと思えばバックオフィス業務なんてほとんど人手がかからないようにできちゃいそうな気がするんですけどね。

沖野:ただ、なんていうんですかね……システムのプロセスとかデータ管理の在り方とか、そういったことを考える人はすごく必要になってくると思いますね。

別井:なるほど。

沖野:だから、今までいた管理法務の人と素養の違う人がどんどん増えてくるのかなって。今経理も、実は3人くらいエンジニアなんですよ(笑)。

別井:あっ、そうなんですか!

沖野:10数人しかいないんですけど、3人はエンジニアで。ずっとRPAの開発やってたりとか、そんなことばっかりで。だんだん人も変わってくるとか、必要なタレントが変わるとか。そういう感じかなと思ってますね。

影響範囲の狭いところから改革していく

別井:なるほど。松田さん、どうですか。

松田:オズビジョンの会社の例でいいますと、クラウド会計サービスを導入させていただいています。今それがバックオフィス内だけで閉じちゃってるので、それをいかに全社に展開していくか、みたいなところですね。全社的にどう業務を効率化できているかっていうのは描いていかなきゃいけないなと思ってまして。

やはり管理部門の仕事って、本質的には事業をどれだけ支援していくかっていうようなところですよね。事業成長あってのバックオフィスだと思うんですけども、そのために管理部門だけが効率化されても価値はないなと思います。そういう視点を合わせられるリーダーになろうとは思ってます。

別井:ちなみに、効率化が進んだかどうかのKPIみたいなのってあるんですか? 測りづらいと思うんですけどね。

沖野:実施には一旦費用対効果出してみるんですけど、それって安定しないんで。一旦減ったとしても、新しい仕事がまだまだ出てくるんですね、結局。そこでまたぜんぜん違った才能を持った人がアサインされてやって来て、またべつの仕事やってというかたちになって。それの繰り返しですね。

別井:そうですよね。もう1個ぜひ聞いておきたいことがあるんですけど、「バックオフィス業務を改革するぞ」って進めるときにですね、これだけは気を付けたほうがいいことってありますか。これは絶対やるべき、みたいなポイントとか。

松田:自分なりに「こうするとだいたいうまくいくかな」っていうのは、やっぱり小さく始めることかなと思ってて。だいたいなんでもそうだと思うんですけども、まずはバックオフィスだけに影響があるようなところからスタートする。例えば契約書の締結のところとか。今回のクラウドサインさんであれば、我々の契約先からまずスタートしていくと。

それで「こんなメリットがあったよ」っていう事例をつくって、次のステップでは支払先に広げていこうとか。支払先に出したらうまくいった、じゃあ今度はクライアントさんに広げていこう、みたいな感じでしょうか。段階によって小さく、徐々に広げていくっていくことでだいたいは上手くいくかなと思っています。

改善ではなく、ゼロベースから考える

別井:沖野さんはどうでしょうか?

沖野:私はずっとそういう同じ業務をやってた部門の方と、意見が対立しちゃうんですけど……(笑)。

(会場笑)

まずは全部ゼロベースで考えましょう、全部なくしちゃいましょうと。なくしたときにもう1回作るとしたらどれが1番効率的かなっていうところから考えていく。それがいいんじゃないですかね。

なんか「今までこうやってきたんです」ってすごくこだわる人いるんですけど、それはそれで良かったんだと思うんです。でも物事はどんどん変わっているので。

別井:なるほど、じゃあちょっと……(松田氏に)あ、どうですか?

松田:確かに「そうだな」と思ったんですけど、課題解決に走っちゃうとどうしても小さくまとまっちゃうなと。あるべき姿から入って、それに向けてどういう手段がいいかっていうのは確かにそうだと思うので。

別井:その「あるべき姿」について聞きたいんですけど、こうやってバックオフィス業務を改革していきました、または夢の理想像でもいいんですけど、バックオフィス業務が効率化されたとして、そのできあがったときの企業ってどういう感じであるべきだと思います? 

沖野:端的には正直、言い難いものもあるんですけど。ヘッドカウント的に実はそんなたくさんいらないっていう考えもあるのと、あと一方で、やるべきことがさらに変化していくという気がしているんですよね。

とくに私は、わりと財務整理を中心に今までやってきたんで、そういうところで言うと、ブックキーピングするような人ってどんどんいらなくなってきています。もっとストラテジックに、ファイナンシャルな面から物事を考えられる、会社にアドバイスできるような。そういうセクションに変わらなきゃならないですし。

そうなると、今までの会計屋さんとか税務屋さんみたいな感じじゃなくて、データをいかに取り込んで、どういうプロセスで作っていって、それを分析してどうストラテジーとしてまとめられるか。そういった組織になるんじゃないですかね、将来は。

効率化がビジネスの成長につながるロジック

別井:なるほど。松田さん、いかがですか。

松田:今日はこうやって前に立たせていただいたっていうこともあって良い話ばっかりしちゃったかもしれないんですけど、うちの組織もぜんぜんうまくいってないところはいっぱいあるなと思っていて。

そんな中でやはり、先ほどのお話じゃないですけども、システムとかAIとかができることっていうのはそちらにお願いすればいいんじゃないかと思ってまして。やはり我々人間の価値って、不確実なものだとか曖昧なもの、感情的なもの……そういったものに取り組むことに価値があると思うので。

人間は長けたほうをやって、システムに任せたほうがいいことはシステムに任せる。そうなりそうだなとは思ってます。

別井:わかりました。今日の議論をちょっと、私なりにまとめてみました。

結局バックオフィス業務を効率化するっていうのは、導入コストはかかりますけれどもいろんなことがスピード化されて、最終的なトータルコストというのは削減につながるでしょうと。バックオフィス業務に携わる人たちだけじゃなくて、社員全員の労力が減る。それによって、本来注力しなくちゃいけないビジネス業務により集中できるようになります。

そうすることによって企業の成長につながって、それが社員の幸せにもつながる。最終的には社会貢献できるっていうストーリーになるのかなと思うんですけど。

これ、逆にも言えて。つまり企業が成長するためには、バックオフィス業務の効率化を進めなければいけないと私は今日感じました。

というわけでお時間ですので、ここで締めさせていただきたいと思います。みなさん、ありがとうございました。お二方に盛大な拍手をお願いします。

(会場拍手)

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