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SaaS Product Crunch 質疑応答(全1記事)

2018.06.26

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「“会社さん”という人はいない」クラウドサインの責任者が語る、SaaS企業の営業戦略

提供:弁護士ドットコム株式会社

2018年6月4日、弁護士ドットコム株式会社が主催するイベント「SaaS Product Crunch」が開催されました。注目のSaaSプロダクトを手がける企業のプロデューサーが集結した本イベント。電子契約サービスの「クラウドサイン」、クラウド労務管理の「SmartHR」、学習管理サービスの「Studyplus」の事業責任者が、セールスやチームのマネジメントにまつわるノウハウを語ります。本パートでは、イベントに登壇したスピーカー達が来場者からの質問に回答しました。

海外貿易の信用状もCloudSignで送れるようになるか

司会者:ご質問のある方は挙手をしていただければと思います。いかがでしょうか?

質問者1:弁護士ドットコムの方に聞きたいのですが、最近海外貿易の話を聞きまして、海外貿易の場合、かなり紙を使ってやっているそうです。これを電子化したら省力化できると思っていますが、それについてなにか考えたことなどありますか?

海外で契約を行う際、信用状を使って取引をする場合なども紙を使用しています。それは原本を使って送るのですが、海外に送る際に紛失してしまうとまずいので、2回に分けて別の便で飛行機を使って原本を送る、といったことをやっているんですよね。

そういう話を最近聞いたので、うまく電子化するとかなり省力化できるのかなと思いました。

橘大地氏(以下、橘):勉強になりました。現在、CloudSignですでに英語や中国語など、多言語で送る機能を作っていますので、そういったものにはかなり対応できるようになると思います。

質問者1:おそらく国内では、マネーフォワードさんや国内の銀行などはうまくやっていると思うのですが、問題は海外の銀行ともやっていかないとうまくできないと思います。全世界は無理だとしても、中国やアメリカのみといったようにターゲットを絞ってやるとうまくいくのかなと思いました。

:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございました。

司会者:続いてご質問のある方はいらっしゃいますか?

課題や施策の管理について、それぞれの独自性

質問者2:今日は貴重なお話ありがとうございました。みなさんにお聞きしたいのですが、たくさん課題と施策があると思います。どうやって、なにをやるべきかというお話はある程度お聞きできたので、全体としてそれをどのように管理されているのかをおうかがいしたいです。

副島智子氏(以下、副島):SmartHRの場合は、課題管理ツールとしてJiraを使っています。

Jiraで誰でも起票ができるようになっていまして、スプリントは1週間単位です。誰でも起票ができるのでけっこうな量が起票されるんです。スプリントは水曜日から翌週の火曜日が1つの単位になっていて、水曜日が始まる前の火曜日に、「候補選びミーティング」という名前の1つミーティングをやっております。

その週に起票されたチケットを全部私やエンジニアチームの代表の者が見て、やる・やらない、いつやるということをスプリントにとりあえず入れます。

それを、水曜日に開発ミーティングをやっているのですが、そこでもう1回今週のスプリントの予定というところで開いて、全部見て、工数を出して、「じゃあできるね」「ちょっと工数溢れちゃったからこのチケットは翌週に回そう」といった感じでスケジュール立てをしながらやっている感じですね。

延々見送られていくチケットもあったりはします。そのうち島流しというスプリントができて、そこに入れられて「これいつやるねん?」みたいな感じのものはけっこうあったりします。

質問者2:ありがとうございます。

宮坂直氏(以下、宮坂):弊社ですと、開発の課題についてはお客さんから要望いただいたときに発生します。

「これも確かにやるけど、こっちのほうが出したらお客さんは興奮するんじゃない?」みたいな感じでやっているので、結局、課題が消化されていかないというのがうちの状態です。

だいたいその代わりに当てているのはけっこう大玉が多くて、例えば開発工数でいうと2〜3ヶ月かかるようなやつをやっていることが多く、覚えられちゃうのであんまり管理していない。Excelにも落としていない。すべて頭の中でやっています。

ビジネス開発も、複数プロジェクトを同じ人に渡してしまうと、簡単なほうから手がつけられてしまって、一番やりたい難度の高いこと、あるいは効率は悪いけれど資産になることが進まなかったりします。

そこをけちけち管理していて、もうこの1つだけ2つだけといってビジネス開発もアサインしていてここも覚えられるので、ほとんど管理していないという状態ですね(笑)。

質問者2:ありがとうございます。

:うちプロダクトとしては「esa」というプロダクト、つまりアイデアをエサにして鳥を育てるというプロダクトで管理しているんですけど、そのタスクの優先順位はうち独自でやっていますね。

もちろん緊急度とユーザーのペインというかけ算で優先順位をつけていますが、うちの特殊性としては、「それ×担当者の熱量」というのが重要です。同じタスクを熱量が高いときにやると1日で非常に質の高いアウトプットが出ますが、熱量が低いときにやると1週間かかってもアウトプットが低いものが出る。AというタスクとBというタスクがあったら熱量の高いほうからやるというのがうちの組織の特殊性ですね。

質問者2:ありがとうございました。

司会者:ありがとうございました。続いてご質問はお隣の方でお願いします。

インセンティブをうまくデザインする

質問者3:橘さんにご質問がございます。うちもパートナー戦略はいろいろ考えたりやめたり、いろいろしながらやっているんですが、パートナーや戦略を考えるときに、パートナーが想定よりもうまくいかないケース、逆にパートナーがいることによって、今後やりたいと思いついたときになにかしがらみになるなど、そういったことってあるんじゃないかなと思うんです。

その中で、ああいうシステムで、もうがっつり「この人たちとやる」とコミットできているのが不思議な反面、「しがらみになったりとかしたことないのかな?」みたいなところを疑問に思ったんですけど、そのあたりはどんな感じなのかなと思います。

:まずパートナーで失敗した事例と成功した事例でいくと、担当者ベースのインセンティブが働いているかというのをめちゃくちゃ重要視しています。

例えば営業では、プリンターを売るとショットで60万ぐらい入って、営業のインセンティブが初月に60万円つきます。CloudSignの場合は月1万円なので、なにを対象にインセンティブがつけられるか。会社としては売ったほうが得だけど、その営業マン1人にとっては売ることにインセンティブが働かないということはよくある現象です。

なので、サブスクリプション型のNPVの評価制度をその会社に入れてもらって、CloudSignだと固定費用と従量費用があるので、従量費用のほうも営業マンにインセンティブをつけてあげる。会社にとって得じゃなくて、一人ひとりのペインがインセンティブとして働かないと結局は回らないので、そういう設計が良いところ悪いところが成功か失敗かの秘訣だと思っています。

しがらみでいくと、「この業種だとしがらみがこうあるから」という都市伝説がよくあるんですけど、個人的にはあんまり感じたことがないですね。

同じ業種でもさまざまなパートナーさんが併存していらっしゃいますし、それはインセンティブが働けばその会社にとっても得なので、その仕組みなしに安易に組むと失敗する可能性はあるんですけど、うちは感じたことないです。

質問者2:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございます。ほかにご質問がある方?

使いやすければなんでもいい

質問者3:貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。聞きたいこととしては、プロダクトのデザイン、使いやすさに対して注力するタイミングについて、どんな意見を持っているかをおうかがいしたかったです。

副島:タイミング?

質問者3:そうです。おそらく最初のプロトタイピングは、実際にプランナーの方が作られたというお話もあったり。SmartHRさんやCloudSignさんはリリース時からしっかりデザインされた使いやすいものを作られていたのかなと思っているんですけど、どのタイミングで使いやすさに対して注力していくのがいいのか気になっていました。

副島:そうですね、うちの場合はまず「使いやすさ」が1番なんです。その使いやさが、デザインなのか、UIなのか、UXなのかみたいなところに、この言葉が合っているのかどうかわかりませんが、あんまりこだわっている感じは実はありません。使いやすければ、その方法・手段はなんでもいいという感じです。

実はデザイナーが入社をしたのは一昨年の11月ぐらいで、サービスがローンチしてから1年経過したぐらいから正社員としてデザイナーが入社しました。それまでの間はデザイナーがほぼ不在の状態でやってきました。

では、それ以前はどうしていたのかというと、「画面上のどこにボタンがあって、どんな状態だったらわかりやすいのか」というところを、私も含め開発者で全員で話し合いをしながら進めていました。ただ、ずっとその状態で続けていたので、本当のUI/UXのプロの方から見ると「あれあれ?」みたいなところはありました。

そのUI/UXのプロが今年に入って入社をしたので、実はそこから変わっています。今後そういったところも力は入れていきたいですね。

誰のユーザーエクスペリエンスを上げるのか?

宮坂:うちは優先順位としては、一番力を入れなかったのがビジュアルレイヤー。逆に一番注力していたのがアカウントなどの情報設計です。

例えば塾の講師へのアカウント。人に渡すアカウントだと「直営校」「フランチャイズ」で、直営校でも大手法人だと複数レイヤーがありますね。「教室長」「エリアマネージャー」「本部」などあって、このあたりの設計をしくじると巨大な負債になるので、この設計が一番プライオリティ高くすごい時間をかけます。

次に機能レベルでは、BtoBでよくあるのは機能が増えすぎて使いにくくなっちゃうという問題です。ですので、できるだけ使いまわしやすいような抽象的な機能、例えば生徒に担任を紐付けるって機能を作るのではなく、生徒にタグを紐付けるという。タグはどうにでも使えるという設計にしたり。

そうした機能の設計だけ注力して、デザインはリリース時に外注して作ってもらったデザインをひたすら無理くり貼り付け続けます。最近は開発が落ち着いてきたので、ちゃんとした正社員のデザイナーも入れてビジュアルレイヤーを作り直そうとしています。

:付け加えると、自分が意識しているのは、これも事業解像度の話なんですが、「会社さん」なんていう人はいないので、会社の中の誰かが導入しているわけです。

CloudSignでいくと、法務のCloudSignの導入のインセンティブと現場担当者のインセンティブやユーザーエクスペリエンスってそれぞれ違っていて、現場は自分が日々取り交わす契約を楽したい。上司はその承認を楽にしたい。法務は現場が結んでいる契約のブラックボックスをなくしたいという、誰にとってのユーザーエクスペリエンスかを重要視します。

「会社」が導入するんですが、みんな「会社さん」なんていう人はいないので、その中の導入担当者の誰のユーザーエクスペリエンスを上げるのか。その順番を間違わないようにというアドバイスはよくしていますね。

質問者3:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございました。

なくてはならないハイレベルなセキュリティ

司会者:続いてご質問がある方はいらっしゃいますか?

質問者4:ありがとうございます。私はセキュリティのエンジニアをしております。「お客さんの解像度の話でセキュリティ担当者がすぐ出てくる」といった話を聞かせていただいて、それに絡めてお聞きしたいんですけど。

具体的には、お客さんからセキュリティの要望あって、おそらくクラウドでは個別に対応することはなく、なんらかのかたちで十分ですよってことをお客さんにお伝えしていると思います。そこで、どうお伝えしていて、どこまでやっていらっしゃるのかをお三方に聞きたいです。

:CloudSignですと、各社のSaaSなどのクラウドを導入するときに「どのレベルのセキュリティが求められるのか」をまず各社さんが設定します。CloudSignの場合は契約書という情報をクラウドに預けるので比較的高難度と言いますか、高いレベルのセキュリティが求められます。

高いレベルのセキュリティチェックシートは大企業で100項目ほどです。大抵Excelやスプレッドシートで共有いただいて、それを埋めていきます。それはほぼ満額回答のようなかたちで、できるものはできる、足りていないところは足りていないので、開発のロードマップに入れるというところです。

CloudSignは、リリース2年半にしてはセキュリティに相当力を入れております。IP制限や二段階認証といったものはすでにほとんど開発で入れており、満額回答できるようにしております。

副島:SmartHRの場合は、中に入っている情報が従業員情報という完全な個人情報なので、サービスがローンチしたときから「1企業1DB」という作り方をしております。

万が一なにかあったときに被害は最小限で抑えられるように開発し、IP制限や二段階認証なども非常に早い段階から取り入れていました。

個人情報の取り扱いを前提にしておりますので、弊社ではセキュリティに関してはあまり言及されたことはありません。もちろん、大企業からはチェックシートをいただくこともあります。

あとは「サーバはどこにありますか?」というのはよく聞かれます。「AWS使っています」「それってなんですか?」という会話もまれにありますが、「大手の銀行さんも使っています」みたいな話をすると大抵、そこからさらにつっこみが入ることはあまりありません。

宮坂:学習業界はそういったご質問を受ける機会が少なく、Pマークを取っているかどうかを時々聞かれるぐらいでした。

司会者:ありがとうございました。

どんなパートナーと組んでやっていくか

質問者5:スタディプラスの宮坂さんに聞きたいんですが、SaaSの有料プランの設計を進めているなかで、無料プランはfor Schoolのときに考えなかったのかといったところをおうかがいしたいです。

宮坂:そうですね。今、Studyplus for Schoolは有料版のみで無料版はないです。というのも、基本的には今そこのチャネルについては、基本的には対面というか、それこそベルフェイスさんレベルでコミュニケーションして獲得するのが中心なので、あまりスケーラビリティ持たせようとしていないという理由で、今まで無料版は作ってきませんでした。

逆に言えば、今期はとくにそういったスケールをしていこうと思っているので、無料版を作ろうと考えています。ただ、無料版をつけるにも、ただ受け付けるだけではあまり効果がなさそうなので、パートナーを開拓しようと思っています。

具体的には映像授業を導入している塾さんは、学習管理もIT化したいと考えられている方が非常に多いです。ここだけの話ですが、映像授業の方々は映像を作る方々なので学習管理機能を持ってないんですよね。

なので、うちが無料版を作って「バンドルしませんか?」というかたちで映像授業を入れたら、うちの無料版がついてくるというパートナーを今は組んでいるところです。

質問者5:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございます。

その要望を誰が言っているのか

質問者6:お聞きしたいのは、プロダクトマネージャーとしてお客さんを知るような活動としてどんなことをどれぐらいやっていのるかという点です。背景として、私は今開発のマネージャーなんですが、少しずつプロダクトマネージャーとしての役割が増えています。お客さん側の情報を今のところあまり取れていないので、そのあたりをみなさんどうされているのかお聞きしたいです。

宮坂:弊社では私がプロダクトマネジメントもやっているので、直接お客さんとお話ししています。「どなたがそれを言っているのか」、つまり「どなたがその要望を言っているのか」というのが非常に大事だと思っております。

いわゆる導入モチベーションが低かったりリテラシーが低い方々のお話を聞くのか、それともテクノロジーに理解があってどんどんこれから塾をよくしていきたいという方々の意見を重視するのか。要するに、「誰が言っているのか」というのは非常に強いと思います。

僕らの場合では、そうしたリテラシーの高い方々には定期的にイベントを開催してご登壇いただいたり、そのあとに必ず二次会や飲み会を開催するようにして、意見交換するような狭いコミュニティを作ってやっています。

自らフィジカルアクションを行って真意や情報を獲得しに行く

副島:うちの場合は、そもそも私自身に労務経験があって、ただそこにあまり甘んじないようにしているので、SmartHRを使って労務業務をやっていらっしゃる方の声を聞くようにはしています。実際にユーザーさんの会社に訪問させていただいてヒアリングをさせていただくようなことはやっています。

そこでなにを聞いているかというと、先ほど申し上げたように、「欲しいものと使うものがどう違うのか」です。実際に「欲しい欲しい」ってみなさん本当によくおっしゃるんですけど、「本当に使うの?」を深掘りしてヒアリングをしてくるのが私の役目かなと思ってやっています。

そのあたりも営業の者が訪問した際に聞いていますが、根底の業務がわからないとユーザーさんが言っている言葉の真意がなかなかわかりづらかったりする場合もあります。そのあたりについては、私が訪問をして聞いてくるということをちょこちょこやっていますね。

:自分はプロダクトマネージャーというか事業責任者でやっているので、ロードマップも自分で意思決定しないようにしているんです。それでも重要視しているのは、物事が現場で起きているので、自分自身まだ現場に出てますし、意思決定するよりも現場に出続けることをすごく大切にしていますね。

単純に得られる情報は、テキストメッセージよりフィジカルアクションのほうが圧倒的に多いので、そのフィジカルアクションをサボらないようにしています。

司会者:それではお時間となりますので、お三方に拍手をしていただければと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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