2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
提供:DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA実行委員会
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夏野剛氏(以下、夏野):みなさん、こんにちは。この場所は駅から遠かったですよね。ありがとうございます。司会の夏野です。
今日は、まさにDDSSのシンフォニックなパネリストとして素晴らしい方々に揃っていただいたので、さっそくはじめていきたいと思います。
このパネルでは、1つずつキーワードを出してもらっています。それぞれ素晴らしいキーワードが出てきているので、なぜそれを出したかというお話をまずうかがっていこうと思います。
自分の紹介が必要であれば、それも入れていただいて、そのキーワードについて4人でディスカッションします。本当は最初に1人ずつ紹介してくれと言われていましたが、それはやめました(笑)。みんな知っている人だと思いますから。
それではさっそくパネルをはじめましょう。キーワードは先に見せてもらっていますが、ちょうどいい感じにそれぞれみなさん違うキーワードを出していただいているんですね。盛り上がりなどを考えまして、私が勝手に編集させていただきました。
水口さんのキーワードからはじまって、佐藤さん、りゅうちぇるさんのキーワードで終わる、というかたちで仕立て上げました。それでは水口さんのキーワードからお願いします。なにやら難しいですよ。
水口哲也氏(以下、水口):ありがとうございます(笑)。いきなり漢字ばかりになってます(笑)。
夏野:一応、読みますね。「共感覚的表現・体験(シネステシア)」。
水口:synesthesia。
夏野:シネステイシア。
水口:シナスタジアなども言いますね。
夏野:シナスタジア、それではお願いします。
水口:みなさん、こんにちは。水口哲也です。僕はテクノロジーを使った新しい体験や表現を作るのが好きです。ゲームを作ったり、最近ではVRの開発をしたり、メディアアートなどを大学でやっています。
「共感覚的表現」は、五感、つまり視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚が代表的です。昔からクリエイターやアーティストは、「絵を描く」「文を書く」ときに、自分のイメージを、ある手段を通して、それに乗せて表現することをしてきたわけです。
今までは映像だけ、視覚だけ、あるいは視覚と聴覚の組み合わせなど、合わせ技もすこしはありました。それでも実は映像は誕生から130年間、1回も四角いフレームを出たことがないんですね。
130年前に映画が誕生したとき、色や音がなくて、向こうから近付いてくる映像を見て、みんながこわいから逃げ出したのです。それに色が付いて、物語が付いて、みなさんの知っている今の映画のようなメディアが生まれました。テレビを見ても毎日いろいろな映像が出てきます。
それらはどんな映像でも四角い枠のなかにありました。それがついに「VR・AR・MR」という新しい技術の投入によってとっぱらわれようとしている。しかも3Dで見えます、というわけです。
VRは今で言えば片目フルHDですが、あと5年くらいでフル版や4Kになり、10年ぐらいで指数関数的に伸びていく技術の進化で言うと、片目8Kの時代が、たぶん10年から15年ぐらいでくるでしょう、と。
例えば佐藤さんは大阪にいて、りゅうちぇるはアメリカにいる。ですが、これをお互いの角度で、お客さんから見ても、ここにいて会話しているような雰囲気が、VR・AR・MRによってあと10年で作れるという話ですよね。
こういう時代に生きていて、インターネットができて以降の僕らは、情報の流通ができて、情報を送受信することはできました。これが複合的にデータ数も増えて、体験を送受信できるような時代がやってくると思い、このキーワードを挙げました。
水口:VRの映像を用意しているので、1つ見てもらえますか? 僕が作った去年の作品です。
(映像が流れる)
水口:『Rez Infinite(レズインフィニット)』という作品です。4Kまでの映像というのは映画の世界では当たり前で、実は2001年に作ったものを4Kまでリマスターしているんですね。
今のテクノロジーで新しいものを追加して、これだけたくさんのパーティクルがインタラクティブに音や音楽に反応して、色が変わって、フィジックスが変化するという表現が可能になりました。これをVRで見ると、完全にその世界のなかに没入するわけですね。今までは画面の向こう側にあった世界に入るということです。
例えば、音楽に合わせてパーティクルや色、動きが変わって、立体的に見えます。終わったあとの感じがぜんぜん違うんですよね。やった人の反応や表情を見てると「なんじゃこりゃ」という感じです(笑)。なんと言えばいいのかわかりませんね。言葉が出てこないんですよ。
みなさん一生懸命言ってくれるのですが、なにを言っているのかわからないんですね(笑)。「クレイジー」「ずっと行っていたい」という感じになってしまいます。ビデオの最後の彼には「今まで体験したことがない」とも言ってもらえました。とにかく「可能になったもの」というところですね。
夏野:ちなみに会場のみなさんでVRを体験したことがある人はどれぐらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
お、けっこういるねー! ちなみにりゅうちぇるは?
りゅうちぇる氏(以下、りゅうちぇる):僕、大好き。
夏野:VRやってるの?
りゅうちぇる:大好きです。
夏野:PSVR?
りゅうちぇる:今はバラエティ番組でもVRが使われていて、実際にロケで景色のあるところに行けなくても、それをVRで体験して「わあ、すごーい!」みたいな感じです。行ったことあるような感覚になるので、すごいなって思っていました。
夏野:それが「共感覚」ですか?
水口:共感覚的な体験にアップデートできてしまうということですよね。つまり、目の前に「もの」があって、それが音を発しながらまわりをまわってるだけなのですが、それだけでも今までの現実とは違う「新しいファンタジー」ですよね。
水口:テレビ番組も変わっているのでしょう。それが教育の現場、我々が教えている大学や小学校でも目の前になにかがあって、そのなかにものがあって、体験をしながら学習するという時代が、あと10年後、それ以降、当たり前になる可能性があります。
夏野:応用できるかどうかの1つの分かれ目は、さっき水口さんが言ったことですね。情報の流通の垣根が世界レベルでなくなって、ボーダレスになって、情報はどこでも手に入るようになりました。つまり「インターネットの革命」がありました。
そして今度は、VR体験のような表現が流通するようになりました。この「体験」という表現が情報とくっついて教育になるということですよね。
水口:そうですね。
夏野:あるいはほかのアプリケーション。例えば仕事とか。今、VRというのはエンターテインメントからきています。今まで起きてきた「情報革命」の流れと一緒になったとき、非常に大きな社会的革命が起きる可能性がある、ということですかね。
水口:おそらくVR単体ではイノベーションは起こらないと思われます。夏野さんがおっしゃったように、「VRとAIが融合する」「ブロックチェーンのような新しいテクノロジー」などが盛んです。これからはいろいろなものとくっつき、より重層的にいろいろなものを使えるようになるのではないか、と思います。
例えば、佐藤さんがクリエイティブにいろいろなクライアントといろいろな会議を日夜やっているでしょう。会議が終わるとテーブル上にあったものを1回片付けて、1回消してと、やります。だけど、MRのグラスで見られたら「あの途中からまたはじめようぜ」といろいろなプロジェクトをマルチで管理できるんです。
夏野:しかし、怖いですよね。どこまでが自分の記憶で、どこから植え付けられたのかわからない世界。
水口:怖いですか?
夏野:若干。
水口:佐藤さんは怖いですか?
佐藤夏生氏(以下、佐藤):若干。
水口:若干(笑)。
夏野:りゅうちぇるは?
りゅうちぇる:見たことないものを見て「こんなのがあるんだ」「怖いな」って感覚は、最初の印象的としてはあるのかなと思います。なにが怖いって、それに慣れちゃうことですよね。たぶん。
夏野:確かに、それは正しいね。科学技術がどんなに進化しても、人間は必ず慣れます。その典型がスマホですよね。スマホが出てきてからまだ10年経ってないんですよ。でも、もうみんな慣れちゃって。
水口:みんな忘れていますが、最初に仕掛けたケータイの文化のときは、携帯電話で話をすると「脳がやられる」と言われました。
夏野:言われました、言われました。
水口:訴訟問題が起きた人までいますよ。
夏野:起きました。
水口:「健康は害するし、人間性が失われるんじゃないか」と言ってましたよね。
夏野:その前は「ゲーム脳」というのもありました。
水口:「ゲーム脳」もありました。
夏野:「ゲームをやりすぎてゲーム脳になると勉強ができなくなる」。
水口:「写真を撮ったら魂を抜かれる」。
夏野:カメラが魂を抜くと言いましたね。
りゅうちぇる:それはやばいですね。
(一同笑)
水口:あらゆるメディアが誕生したとき、最初はそうですよね。
夏野:言われましたよ、一億総白痴化。
水口:何百年前に本ができたときにも「これは人間を悪魔にする悪魔のものだぞ」と言われて焼き討ちにあいました。
夏野:共感覚的表現や体験、あるいはネットの世界などを1番わかりやすいかたちで表現しているのは『攻殻機動隊』という漫画だと思っております。インターネットの商業化がまだまだ進んでいない1989年に描かれた漫画ですが、この頃に描かれた漫画ということに深い意味合いが込められております。
とくに「共感覚的表現」については、その漫画のなかで記憶が人に植え付けられて犯罪に使われてしまうんです。そのようなシーンもあるのですが、おそらくそれすら人間は受け入れてしまうんでしょうね。
水口:そのなかで最適化して『猿の惑星』のような……少なくともポジティブな使い方、プラスの使い方をしていくとは思います。当然、どんなものでもマイナスは生まれますから。
夏野:ちなみに「体験」とは、今はまだ「ネットで体験すること」と「リアルに体験すること」ではリアルのほうに価値がある、という考えが強いと思います。この共感覚的表現や、シネスタージア……?
水口:シネスタジア。
夏野:そう「シネスタジア」が完全に実現するということは、リアルな体験とバーチャルな体験の区別がなくなるということです。バーチャルな体験のほうが自分の意志で手に入れやすいですから、恋愛はなくなりませんかね?
水口:なくなるんですかね?
夏野:リアルな恋愛は面倒くさいですよ。
水口:ああ(笑)。
夏野:「めちゃめちゃ好きで結婚したはずなのに今は罵りあってるのよ」ということもあります。
水口:なんかね。
夏野:ねえ、あるよね? 佐藤さん。
佐藤:そうですね(笑)。
(一同笑)
佐藤:今のところ僕は怖い。テクノロジーが怖いというよりも、たぶん今の価値観が物理的な距離感に影響していると思うんですね。要するに「家族が1番」「次は友達」あとは「学校」という価値観です。物理的な距離でコミュニティや価値観が形成されるとき、多様な価値観が、もうすぐ1メートル先、すぐ30センチ先にいる状態だと思うんですよね。
先ほどの映像で「アナザーワールドだ」と言っていました。おそらくそういった未来のアナザーワールドへの鍵やパスポートが、ダイバーシティに対する「距離」なんですね。「価値観の違う人がすぐそこにいる」「地球の裏側の人がここにいる」という文化を吸収して、すべてが違う人たちと同居しています。
もちろん「同居」ではありませんが、「交わる瞬間」というのが爆発的に増えます。それを気持ちよく思ったり、自分にとっていいインプットにするためには、ダイバーシティや多様性の受け入れ方や向き合い方があると思います。
つまり「多様性大爆発」が起こって技術がバーンと進化すると、加速度的に多様性は広がります。価値観の違うものを分かっていくことが怖くもあり、楽しみでもある。そう解釈してみました。
夏野:確かにね。
水口:ここは「次のレベル」という感じもしますが、「人間は味覚や嗅覚、肌と接していないといけない」、つまり「粒子が触れて反応しないといけない」という部分が最後の砦として残りそうです。映画『マトリックス』のようにステーキを食べる、ということはありません。それは実際に目の前のものに影響されると思います。
逆に、非常にリアルで目の前にあるように思えるのに「触れない」「臭いがない」というのはあります。目の前にパリの綺麗な町並みがあって、音も聞こえてきて、だけどなにかが欠乏している感覚があれば、そこに行きたくなるという感覚を誘発すると思うんですよね。
もう1つ、マイナスばかり考えていても仕方がないのですが、プラスのほうを考えます。例えば、りゅうちぇるがライブをやることになったとしましょう。目の前にいる人は2,000人かもしれませんが、世界中で、行きたいけど行けなかった人たちが繋がれる幅のようなものができるのではないでしょうか?
夏野さんも経験していると思いますが、大学で授業やると目の前に10人とか15人いるときあります。でもネットで視聴している人も、あとでビデオで履修すれば大丈夫という人たちもいますので変なことになってるんですけど、よりダイバーシティが出てくると思います。
夏野:人間がどちらの方向に行くのか興味があります。先ほどのVRの世界というのは、遠い人が近くに居ながら、気に食わなければオフにできるじゃないですか。それに対してまわりの家族、学校のクラスというのはオフできない関係です。
いつでもオフできるということに流されて、まわりの多様性が受け入れにくくなるのか、それとも、それでも多様性とバーチャルに触れ合う機会がどんどん増えることによって、全体としては寛容な方向にいくのか。どっちになるかわからないですね。
それは人によって違うのかもしれませんが、社会全体としてはどちらの方向にいくのか、というのはアカデミックな立場から関心があります。ただ、テレビなどのエンターテイメントの作り方もぜったい変わりますよね。
りゅうちぇる:そうですね。やっぱり、それこそ先ほどのライブでもそうですし。社会を考えて、学校などで使うのは、良いことと悪いことができてくると思うんです。
ふだんはなかなか会えない家族や夫婦同士、お互い遠距離恋愛をしている人が、どういうお家に住んでいるのかなども、VRではとてもわかりやすいかたちで見られます。実は絆をすごく深めてくれるものだと思うので、僕は好きだなと思います。
夏野:隠したほうがいいものと、隠さないほうがいいものの判別がつかなくなるのか、それとも判別をつけるようになるのか。
佐藤:意外と「隠しているもの」というのは、最もその人の本質や本性が出ますよね。本性をVRやテクノロジーに乗せるほうが意外とおもしろくなりそう。乗せないとおもしろくないし、逆に、技術がVRだけになりますけど、サグラダファミリアに行きたいと思ってる。でも足が悪くて行けないということでVRで見る、と。
本当にサグラダファミリアに旅行したら、サグラダファミリアを見ていながら、大道芸が記憶に残っていて、「サグラダファミリアを見に行ったけど大道芸のほうが記憶に残った」ということで帰るかもしれません。もともとの目的と持って帰るものがずれるところが起こりにくくなるのがいいのか悪いのか。
水口:見たくないものもあります。例えば、アパホテルの話題で写真がパッと出てきますよね。申し訳ないのですが、目が合った瞬間に、「あっ」と思ってしまうときがあります。お台場にあるフジテレビがピカピカ光ったときは「見えなくてもいいのに」なんて思っていました。
夏野:人間は見たくないものは見えていても、記憶に残っていないことがよくありますよね。
水口:まあ、そうですね。
夏野:脳が慣れていくっていうのもあるかもしれません。
夏野:ちょうどいいお話になったので、佐藤さんのキーワードを出していただきましょう。こちら「気持ち悪いの可能性」です。この言葉が気持ち悪いですね。
佐藤:ではひとまず説明しますね。
僕はいろいろものを、クリエイターとして作ります。おそらくなにか1つのものを作るときは毎回プロジェクトによって違いますよね。そうすると、そのときになにか1つのことを突き詰めたら違うスキルとマインドがないとだめなんです。
僕はいつも「気持ち悪い」ということを大事にしています。普通は気持ち悪いことは避けるんですよね。避けるとどうなるかというと、いつも同じところに落ち着くんです。
逆にいつも同じものに落ち着くことで、そこがグーって伸びていくこともあります。良いか悪いかの話ではありませんが。やっぱり社会は動いてるんですよね。気持ち悪いものが、ある種、社会の変化だと思います。
例えば中学生がスマホを持つということは、昔は親からしたらわかりませんよね。気持ち悪さというのは、時代とともに動いてくると思います。それこそ20年前の男女雇用機会均等法がなければ、就職なんて大変だったでしょう。
感覚も動いてくるものですから、おそらく感覚が動いてるっていうことと、もっと自分にしか持てない感覚と他人の感覚を自分に身に着ける、そういうステータスは武器になるので。その意味において気持ち悪い自分が、気持ち悪いなという部分ですよね。
気持ちいいの限度は、自分の能力の限度ですから、自分の「気持ちいい」を飛び出すところに、「気持ち悪い」ところに、たぶんクリエーションの可能性があるな、と思っています。これはほぼダイバーシティの感覚と一緒です。
今まで「ダイバーシティ」と言えば、「いろんな人がいるね」で止まっていました。渋谷では違いが力になります。「いろんな人がいるね」というのは、いろいろな人がいることで同じ人がいる以上のなにかが生まれるということです。
佐藤:それが今まさに社会の問いになっていますが、そういう意味では、自分ではない人がいるということをどうシナジーしていくかと考えます。言葉は悪いんですが、気持ち悪いということを許容したり、そこに可能性があります。これは気持ちとしては非常にポジティブだと思うんです。
自分が「気持ち悪い」と思ったら、いいものゲットしたということです。自分にとって新しいもの、新しい可能性が出るのかなと思えますから。気持ち悪いということを許容することが、新しいものを生む可能性なのではないかと僕はいつも思っています。
夏野:ちなみに最近は、「保毛尾田保毛男問題」というのがありました。みなさんご存知でしょうか、20年前に当たり前にテレビで流していたウッチャンのキャラクターをこの時代に再現したら大炎上してしまいました。
これはまさに典型ですよね。20年前はおもしろいキャラとしてやっていましたが、今になって考えたらぜんぜんおもしろくないという話です。
佐藤:あの問題は置いておくとして、おそらく気持ち悪いと思う社会というのは、これからもあるんですね。それを削除する必要はないんです。「違うな」「気持ち悪いな」と思うことを「おもしろいな、自分とは違うな」と受け流してみたり、取り入れてみたりという受け手の受容度がポイントです。
気持ち悪いことはぜんぶ排除する社会は、僕はあまり綺麗にならないと思います。ぜったい自分にとって良いことと人にとって気持ち悪い、いいことは違うと思うんです。違うことはいっぱいありますから。
DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA実行委員会
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