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感動を生み出すイノベーションの瞬間(全2記事)

2017.12.21

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盲目の学生はプログラミングを学べないのか? 障害を乗り越えるために、テクノロジーができること

提供:DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA実行委員会

2017年11月13日~15日にかけて、新しい社会のスタンダードと向き合う都市型サミット「DDSS(DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA) 2017」が開催されました。2日目のキーノートでは、マイクロソフト Innovation DirectorのHaiyan Zhang(ハイエン・チャン)氏が登壇。「感動を生み出すイノベーションの瞬間」というテーマで講演を行いました。

世界をより良くするためのアイデア

ハイエン・チャン氏:こんにちは。私は「マイクロソフト英国ケンブリッジ研究所」でイノベーションディレクターを務めるハイエン・チャンです。

多様性あふれる世界でのテクノロジー発明、というテーマでお話をしたいと思います。

渋谷での「Dive Diversity Summit」が私にとってどんな意味を持つのか、という話の前に私の経歴をご紹介したいと思います。

私は、ソフトエンジニアやデザイナーとして革新的な物を生み出すことで、人々の生活をより良くしようとしてきました。多様性のためにテクノロジーはなにができるか、この問いの意味を説明いたしましょう。ご紹介したいプロジェクトがあります。

まずイノベーションを生み出すためのプロセスすべてです。私たちが新しい技術を発明しようとする時、それをより良い物にしようと多くの声があがります。

次に「新技術という未知」という難しさがあります。これから生み出そうとしている未知の技術が、誰にでも利用できるように設計しなければいけません。

そして最後に、人々の生活をより良いほうへ導かねばいけません。それはテクノロジーが未来の私たちになにを残してくれるのか、という私たちのヴィジョンなのです。つまり、そこには多様性に対する共通の認識があります。

新しいものを生み出そうとする際のプロセスについてですが、約7年前、イノベーションコンサルタントにて、オープンイノベーションのプログラムに取り組みました。約15万人の参加者たちにあるロゴのデザインをしてもらおうとするものでした。

これは「子どもたちがどうしたら必要な食べ物と栄養をとることができるのか」「政府に抑圧されている国の人々をどうサポートしていくのか」「貧しい国の子どもたちの精神面をどうサポートし、向上させていくか」のアイデアを得ようとするものです。

つまり私たちは、社会的な課題に取り組んでいる政府や、貧困の改善に取り組んでいる団体をサポートするテクノロジーという構想を育んでいました。

そこで、このようなプラットフォームをつくりました。約半年の間に15,000人がログインし、何百時間もそこで過ごしました。

けれど、ここには賞金も競争もありません。デザインや記録を手に入れるためではなく、ある大きなプロジェクトをやり遂げるためには数多くのやり方があると、知ってもらいたかったのです。

競争せずにアイデアを高めることができる

1つ例を紹介しましょう。

そこにはライター、経営学を専攻している生徒や先生、証券取引のできる人など、いろいろな人たちがいました。よいアイデアを提案できるかは問題ではありません。そこに参加し、一緒に会話をするだけで「アイデアの質を高める」の一助になるのです。

競争というのは、いいアイデアを生み出すにはあまりいいアイデアではありません。それよりも、アイデアをミックスしていく方が効果的です。

例えば、1つの案から次の案を生み出していく、という方法がありますね。「こんなアイデアはどうだろう」「いいね、そこから着想をもらって、こんなアイデア思いついたけど」と、たくさんのアイデアが出てきます。

だれかのアイデアがほかのアイデアよりも優れている、という考えはしません。そして、まったく異なるタイプの試作品を得ることができました。それはただの記録やホワイトボード上の物だけではなく、まったく新しいタイプでした。

これはプラットフォームで取り上げられた課題から始まった試作アプリです。基本的な人権を守ろうと活動し、政府に捕まる可能性がある人や、その家族、ボランティアの人のために警告を出すことができるアプリをつくることができたのです。

数年前、イノベーションデザインの研究のためにケンブリッジのあるプロジェクトに参加しました。マイクロソフトの研究ラボはとても個性的です。1991年にビル・ゲイツによって設立され、1,000以上のPh.D.を持った研究者が世界中にいて、8つのラボに60人以上のコンピューターサイエンスのアナリストもいます。もちろん、日本にもラボはあって、私もラボに行くのが大好きです。

私たちがなによりも注目して、力を注いでいるのは「アイデアを統合していく過程」です。

例えば、ニューヨークのラボと協同で行われた研究ですが、視覚、知覚、認知学的な能力に注目しました。私たちのつくるソフトウェアは、誰にでも使えるものでなければいけません。世界中には何十億もの人が、なんらかの障害を持っていると言われています。そして、その70%は視覚からくる情報を頼りにしています。

そのため目に見えるものを怖がることがあるのです。どうすれば、そういった人が本当に必要なことを知り、恐れを抱かずにテクノロジーと向き合えるようになるのでしょう。

これはアメリカで行われた調査の統計です。国内では5人に1人は障害を持っていて、その3人に1人は世帯主、子どもなら学校の7クラスあったら1人の生徒は障害を持っていることになります。

それでも学校に通ってみんなと同様のクラスに出て、自分たちの困難と向き合いながら、授業で苦労を感じながら、科学を学ぼうとしています。

障害を得た子どもをサポートするテクノロジー

そこで私たちはすべての人が使えるテクノロジーの開発に注力しています。すべての人が社会に参画し、会話に参加できるように。

こちらはケンブリッジの私のラボでの研究です。ジュリアと共同研究して行いました。

まずプログラミングの知識がない子どもにプログラミングを教えます。8歳から9歳までの子どもたちを対象に行いました。目の見える子どもはハンズオンを行い、タイピングをしながら学んでいました。

けれど、目の見えない子には、教室で朗読をする方法しかありません。実際にイギリスでは12歳以上の子どもにはコンピュータープログラミングを必須科目としました。これはかなり革新的な試みです。目の見えない子には、なにもできることがありませんから、外に出てなにか別のことをするしかありません。

こういった子のために「耳と手だけを使ってプログラミングができるコードや方法」はないのでしょうか?

(スライドを指して)これは初期に作成したおもちゃのラフスケッチです。言語をある特定の形で表現し、ケーブルで繋げていきました。この写真がそのサンプルです。目の見えない子どもにも、プログラミングを学び、同じように考えるスキルを身につけ、学校でも自信を持ってほしい。

それぞれの形は、プログラミングの状態を表しています。例えば、ループであったり、ノブのような形はパラメーターであったり。子どもたちは音楽を奏でるようにそれぞれのブロックを繋いでプログラミングをつくることができるのです。

「将来はエンジニアになりたい」のためにできること

最初の話に戻りましょう。イノベーションに至るまでの過程でしたね。

私たちのラボにはエンジニアやデザイナーといったメンバーがいます。毎週のように子どもたちに来てもらって、このおもちゃの形はどうか、触り心地はどうかなどフィードバックをもらっています。

ある子は、これまでコードの存在すら知らなかったのに、研究が終わる頃には「将来ソフトエンジニアになりたい」と言ってくれました。これこそが、とても重要なことなのです。

こちらはおもちゃが実際にどう動くかのサンプルです。

(動画が流れる)

それぞれ形に対応した音があります。もっとクラスを面白くするため、(犬の鳴き声のような)面白い音もとりいれています。

私たちは実験を重ね、このおもちゃを使った効果的なカリキュラムも研究してきました。そして、このおもちゃを自分たちで製造し、小さなブランドをつくることになりました。

今以上に学校のような場所でコンピューターサイエンスな試みが必要だと感じているからです。

今年の終り、恐らく来月にはローンチできるかと思います。なので、何百人ものアメリカの子どもたちがコードを理解し、楽しんでくれるようになるよう願っています。

テクノロジーは難病と闘う子どもを救えるか

人々の生活をより良くするためという観点に戻りましょう。どうしたら、全ての人に新しいテクノロジーを使ってもらい、その生活を豊かにできるのか。どうしたら、そういった人々の声を得ることができるのか。

最近、マイクロソフトはBBCとコラボし、私は「The Big Life Fix」という番組に携わりました。これは、障害を持つ人の悩みをテクノロジーで解決しようとするドキュメンタリー番組です。

プロジェクトの一例をご紹介します。1年半前にヴィッキーという女性に会いました。彼女は4人の子どもがいて、その内の2人は線維異形成症でした。

この病気は、生涯付き合っていかないといけない病気で、12,000人に1人、また20,000人の子どもがかかっていると言われています。この病気を持つ子どもの平均寿命は約41歳前後と言われています。

この病気では、内臓機能に問題を起こし、肺に定期的にねばねばした粘液が溜まってしまいます。そのため、毎日1~2時間かけて咳をしてその粘膜を外に出さないといけません。

小さな子ども、特に赤ちゃんだと死につながってしまうケースもありますので、この数時間はとても貴重な時間となります。

けれど、ヴィッキーにはそれが非常に難しいのだと言います。子どもたちが15歳、18歳になり、数時間もそのために費やすのは難しい。もっと外で遊びたい、友達と一緒にいたいと思うはずです。

しかし、この治療が命にも関わる重要なものだとも知っているのでとても悩んでいました。

さて、私たちはその命を救うためになにができるでしょう?

咳をデジタル化したことで研究が進んだ

これを見てください。既存の物とあまり変わらないように見えるかもしれませんが、この機器は肺に圧力をかけて咳を促す装置です。私たちはセンサーを追加しました。

センサーを追加し、咳の回数をビデオゲームのコントロールと連動するように設定したのです。このプロトタイプでは、デジタル信号を使ってそれぞれに違うビデオゲームを楽しめるように設定しました。

これは咳によって送られるデジタル信号の例です。興味深いのは、これはIoT製品ではよく見られることなのですが、あるロンドンの大学でこの病気を長年研究している研究者の方たちにとってはとても驚きだったようです。

つまり、彼女は長年、病気の治療法やセラピーを行っており、咳がこのようにデジタル化できること、またそれが実際に視覚化できることに驚いていました。彼女は、「これでもっと多くの子が救える」と泣いていました。治療履歴の記録や、症状をより効果的にトラッキングできるからです。

これは初期の方の試作品です。いくつかのビデオゲームを再生することができました。これは、ただ単に息を吹きこんだり呼吸をしたりするだけでは不十分です。そこで、1つのボタンを追加しました。咳をするとキャラクターが動くのですが、ボタンを押すとキャラクターがジャンプします。

次のステップは、これはただの1on1のゲームではないということです。多くの男の子たちは、1つのゲームを数週間ほど続けていると飽きてしまいます。

もっとたくさんの種類のゲームが必要です。ゲームのなかでスキルアップができるような。どこでそのようなスキルアップを取り入れられるのでしょうか?

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