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「風林火山ストレージ」と名付けた理由は? クラウディアン本橋信也氏インタビュー(全2記事)

2017.11.08

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「ストレージ?」「なにそれ?」を変えたい 日本発ベンチャーが“風林火山”で上げた狼煙

提供:クラウディアン株式会社

なぜストレージが「風林火山」? 日本のNTTグループをはじめ、海外のクラウド事業者も多く利用している日本発ストレージ製品「CLOUDIAN HYPERSTORE」が、リリース7年をむかえ、大きくアップグレードされました。そのキャンペーン名が「風林火山ストレージ」。販売元であるクラウディアンはなぜ、風林火山×ストレージという異色の組み合わせを選んだのでしょうか。仕掛け人でもある同社COO本橋信也氏に話を聞いてみたところ、そこには「日本国内のストレージへの認知度の低さ」「増え続けるデータ量管理問題」などがありました。(キャンペーン特設ページはこちら)。

「ストレージって、非常に地味なイメージなんです」

――今日は御社のストレージ製品「CLOUDIAN HYPERSTORE」(以下、HYPERSTORE)が今年11月から「風林火山ストレージ」というキャンペーンを開始していると聞きました。その「風林火山」「ストレージ」という組み合わせが特殊すぎると言いますか、あまり見たことがない印象があったので、この名前になった経緯などうかがいたいと思っております。

本橋信也氏(以下、本橋):はい、よろしくお願いします。

――さっそく「風林火山ストレージ」についてなのですが……。

本橋:その前に、私から質問させてもらってもいいですか。ずばり「ストレージ」についてどういったイメージを持っていますか?

――え、ええっとですね……ストレージというと、パソコンやスマホのデータを保管しておく場所というイメージですが……? あとは正直、あまり意識したことがないです。

本橋:そうなんですよ、パッとした印象がないんです。だからストレージって地味なんですよね。というか、みんながあまり気づかない領域の製品ですよね(笑)。

――いや、地味とまでは言ってませんよ!(笑)。しかし、確かにパッとしない印象は失礼ながらあります。

本橋:この流れからお話ししますと、我々としてもストレージ自体の認知度が低いので、魅力などを伝えるのに苦労しちゃうわけですよね。それはたぶんうちだけじゃなくて、ストレージを提供してる外資の大きなベンダーさんもそうだし、ほかのところもそうだと思うのですけれども。

――ストレージって、まだ身近じゃないですしね……。

本橋:そうなんです。みんなが気づかない領域だからこそ難しい。一般紙にもストレージの会社の記事は載らないんです。新しい製品が出ても、別に大きなニュースにはならない。そういう意味では非常に地味ですよね。

一般の人とは少しかけ離れたところにある。けれど、実はすごく身近なものです。その伝え方を、なにか考えないといけない。

「いい製品だから広めたい」「でもわかる人は限られている」

本橋:会社として、ストレージの認知度についてずっと課題を抱え続けてきました。

我々の製品ではやはり最先端技術を使っているのですが、それを説明しようとすると日本では馴染みのない表現も多くなってしまうんですね。そうすると、理解されないんです。そのジレンマをずっと抱えています。

技術系の方々や、ふだんからそういった言葉に慣れている人には伝わるんです。しかし、そうでない方に初めてカタカナの多い用語を聞かせても「難しい」となりますよね。

そうするとやはり「なにかわかりやすい言葉で話さなければいけない」となります。

――共通言語を探すことに近いですね。

本橋:そうなんですよね。

本当は、できれば機能部分についてもすべて日本語で、それもひらがなで書くくらいにやりたいんです。でもそれをやると今度は逆に伝わらなくなったりするじゃないですか。そこがすごく難しいところですよね。

我々としては、やはり多くの人に伝えたいわけですよ。しかし、製品を買う人はやはりIT業界で働いている人やクラウドの中の人といった専門的な業界にいる人だったりします。

それで言うと、IT部門でストレージをやっている人たちも同じジレンマを抱えていたりするんです。

例えばストレージの新製品があり、それを購入したい時。1つ上の上司であれば理解してもらえるけれど、それが企画や管理部門などになると伝わらなくなったりするんです。そういった話をお客さまからときどき聞くのですが、もうなんというか、こちらもすごく申しわけない気持ちになるんですよね。

いい製品だからこそ、多くの人に理解してもらいたいと思っている。けれど、わかる人はすごく限られている。だから、購入を考えている企業でも、社内の意思決定に時間がかかったり、説明に苦労したりする。それを避けたいんですよね。

私たちからすると「製品を購入したいと思っているんだ!」と言っているお客さまが、社内で稟議を通すために時間をかけて苦労している。もしかすると、嫌な思いをしているかもしれないんです。だって上司から「なんだそれは?」と言われているかもしれないじゃないですか。それを、とにかく助けたい気持ちはありますね。

日本でも今、ストレージに注目が集まりつつある……?

――ストレージを話題にする人たちが集まるコミュニティも限られている印象があります。その人たちが「これはいい!」と言ってはじめて広がっていくというか、採用されていくというか。

本橋:後ほど製品の詳細について触れますが、先にお話ししておくと、そもそも僕らの製品がアメリカで売れた理由にはストレージの専門家たちが組織の中心にいたからなんです。日本だと、ストレージの専門家みたいな人はそれほどいませんよね。でもアメリカだと、ストレージの営業をやっていたり、技術開発をやっていたりする人たちがグループとしてつながっていました。

我々にはストレージ業界のベテランで「30年間、ストレージ業界にいます!」という人が世界の営業をリードしています。それは、業界の核になるような人です。その人が持つお客さまも、いろいろストレージを使う人だったりします。そういった人脈をよく知っているんですよね。

そして、そのマッチングがソーシャルメディアみたいに広がっていくわけです。要するに1つのハブ、大きなドットがある中心点を押さえたら広がっていく流れで、我々の製品がうまくいったんですね。そのコミュニティに比べると、日本ではストレージに関係する人が少ないかなという印象です。

――これから日本でもストレージに関係する人が増えていく傾向はあるのでしょうか?

本橋:そもそも、インフラの製品には、3つの大きな要素があります。1つはサーバ、要するに計算するということですね。2つ目はネットワーク、伝え合うということですね。そして最後はストレージ、データを貯めるということ。

基本的にみなさんはパソコンなどで行う計算処理は身近になっています。ところが、データを貯めることに関しては、まだ注目されていません。

しかし、スマートフォンの登場で写真だけでなく動画もどんどん撮影し保存される流れが出来上がっています。そして今、「画像データでいっぱいになっちゃった」などが起こり始めています。そこで社内からでも無料のクラウドに放り込んでいる人もいますよね。

そういう意味では、ストレージはインフラの中の最後の領域です。「データがいっぱいになった」「なにかいい解決策はないか」となってはじめて注目され始める。

――ということは、今は注目される一歩手前くらい……?

本橋:そうであってほしいですね(笑)。とはいえ、冷静に見てもこれからは違うでしょうね。地味な領域だったものが、みなさんが興味を示す領域になりつつあります。

「ストレージを知らない」企業に広まらない

――今回「風林火山ストレージ」としてキャンペーンを行うHYPERSTOREは、2010年には誕生していたものだったんですか?

本橋:正確にいうと、2011年はじめにリリースしましたので、もう少しで7年です。

HYPERSTOREは映像や画像、音楽といった膨大なデータを経済的に保存できるストレージ製品です。

GoogleやAmazon、Facebookなどのサービスは世界中の何億人もの人が写真などのデータをアップロードしていますよね。そういったサービスは、膨大なデータを経済的に保存するために自社開発のストレージを使っていたりします。

HYPERSTOREは、そういったストレージと同等の機能を持っています。そのため、お客さん自身で開発しなくても大量のデータを保管することができます。これがAWSのAmazon S3と同じ方式だったことから、オープンソースエンジニアたちに「なんちゃってAmazon S3」と言われることもありました(笑)。

初期のころに弊社の製品を採用してくださった企業が採用を決めた時の理由は至ってシンプルです、「Amazon S3と同じことができるソフトウェアだから」。しかし……。

――ストレージにくわしくない企業になると、理解度が一気に下がる?

本橋:はい。「なぜ企業の中にAmazon S3みたいなものを作らなくちゃいけないんだ?」「データはクラウドに預ければいいじゃないか」という話が出てきたりするわけですよね。

その中で我々ができるのは、とにかく広くいろんな人に理解できる言葉に落とし込む。腑に落ちるような表現を探す。もっと言うと、自分たちの会社がもっと有名になれば「クラウディアンのものだったら間違いないよね」みたいになるわけじゃないですか。そういうところに持っていきたいですよね。

当社では数少ないですが、私はエンジニアではないので開発には貢献できない、だからそれが自分の役目だと思っています。

「ストレージの理解度を上げたい」から誕生した風林火山

――そんな中で「風林火山」というワードが誕生したのでしょうか?

本橋:もともとの経緯は、ヒーローものにして商品の認知度を上げたらどうだろうかというアイデアがありました。例えばガンダムとか、今の30〜40代の人たちが子どもの頃にすり込まれているようなアイコンです。それが時代をさかのぼり過ぎて「風林火山」になったわけです(笑)。

なぜそうなったかというと、弊社には「SAMURAI」というアプライアンス製品があります。アメリカのデザイナーが、我々の会社が日本生まれであることから日本の兜をモチーフにしてデザインしました。それもあり、製品の要素をいろいろ整理していき、戦国時代を代表する「風林火山」を思いついたんです。

もちろん、カタカナや英語だった部分を漢字にしてギャップを出すことで「あれ?」と思う人がいるんじゃないかという狙いはあります(笑)。昭和のオヤジギャグテイストかもしれないとも思っていますが(笑)。

――そんなことは(笑)。でも、このワードを見て確かに驚きました。ストレージの世界観に「風林火山」というワードが入るとは個人的に思っていなかったので。てっきり、武将好きな人がいたのかと思ったのですが?

本橋:弊社にはスターウォーズ崇拝者は多いですが、武将好きはいないですね(笑)。

――いないんですね(笑)。

製品の要素を分類した結果「武田信玄と同じだった」

本橋:我々が非常に苦労したのは「伝えること」です。苦労したがゆえに「なんでもできる」という言い方をすることが多かったんです。

――なんでもできる?

本橋:なんでもできる=機能が豊富ということです。Amazon S3と同じことができる製品なので、例えば統計機能のほか、課金機能、顧客管理機能などもついています。要するに、これ1つで課金してもらえるサービスを作ることができるんですね。

だからお客さまのところへ行って「なんでもできるんですよ」「こういう機能があります、ああいう機能もあります」と話すことが多かったんです。しかし、お客さまにとってはその説明では腑に落ちないことがだんだん気づいたんです。

なんでもできるということは、なんにもできないことにかなり近い。だから、お客さまからすると、本当に腑に落ちるものというか、ほしいものをズバッと刺してほしい。そのほうがお客さまは早く買ってくれます。「困っていることを解決できますよ」の提案のほうがいいわけですよね。

その経験から、いっぱいある機能の中で3〜4つに絞って製品のメリットを伝えたほうがいいと気づきました。「じゃあ、その3〜4つとはなにか?」「どんな要素がお客さまに求められているんだ?」と、あらゆる機能を洗い出しました。それを整理して行き着いたのが「風林火山」の4つの要素だったんです。

まず「風」は疾さを意味します。HYPERSTOREは、10分で設定できます。また、利用開始後の拡張や修復なども自動に行えるので、運用に手間がかかりません。

「林」は徐(しずかさ)です。ストレージシステム全体を格納できる容量は、ハードウェアを追加するだけで無限に拡張できます。また、一定期間で使わないデータがあれば、パブリッククラウドに自動転送も可能です。

「火」は勢いです。データの処理性能はもちろん、耐障害性も非常に高いレベルを維持しています。データを預かるサービスなので「突然止まる」は許されません。その点、この製品は常に動ける仕組み備えています。

「山」は守りです。HYPERSTOREはハードウェアが故障しても、データを喪失しないように複数のデータ保護オプションがあります。データを複製して複数データセンターに保存する機能を使えば、大規模災害時にもサービスを継続できます。

――すごくロジカルなカタチで落とし込まれた結果だったんですね。

本橋:そうなんです(笑)。要素の整理方法で活用したのがロジカルシンキングのMECEでした。洗い出した要素を抜けもれなく、重複なく整理したんですね。風林火山はある意味、究極のMECEなので、論理的に整理していったグループを表す名前を探した結果、武田信玄と同じだったということなんです(笑)。

(一同笑)

ヒットのきっかけはトランプ大統領

――HYPERSTOREは、具体的にどういったシーンで使われているのでしょうか?

本橋:実際にHYPERSTOREの使用事例としてよくお話ししているのは、アメリカで40年以上続くコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」ですね。ここでは、それまで保管していた膨大なテープデータを移し替えて活用してくれていますね。

これのきっかけとなったのが、前回のアメリカ大統領選でした。そこでドナルド・トランプさんが立候補したことで急に注目が集まって……彼が出演していたであろう回を過去40年分の中から一つひとつ探さなくてはいけない事態になってしまって。

――過去40年分からですか! 

本橋:その探し出す苦労を経験したので、過去の映像を検索できるよう、我々の製品を使ってすべてオンラインにしたんです。

あとは、首都高速道路沿いにビデオカメラを設置して、その撮影映像から走っている車種をAIで見分けるというものがあります。そのデータを元に、六本木のデジタルサイネージに広告を流したのですが、AIのトレーニングや流れ続ける車の撮影映像の保存のために採用されていました。

同じ技術を使って道路の交通量調査にも採用していただきましたね。車の台数や渋滞状況を把握するなどは、これまで人間が期間を限定した統計サンプルとして一つひとつ数えていたので……。それを計測し続けるデータとして管理できるようにしたんです。

そのほか、欧州では2018年からGDPRという規制が導入され個人情報の保管先を明らかにしなければいけないことになっています。そこで、国産のデータセンターで管理できるクラウドストレージサービスを提供するためにHYPERSTOREを採用する動きも活発化していたりします。

――事例、めちゃくちゃおもしろいですね!

本橋:そうそう。「こういうところで使われているよ」と事例を話すと、みなさん急に腑に落ちるんですよね。それまでは「ストレージ、なにそれ?」なのですが、三段論法で事例を混ぜながら話すとようやくわかってもらえるという。ちょっと面倒くさいんですよね(笑)。

――AIやIoTの進出もありますが、テレビの4Kとか8Kとかも出てくるとしたら、さらに重要性が高まる分野であるというのは、事例をみるとさらに腑に落ちますね(笑)。

本橋:でしょう?(笑)。今後、テキストより写真や動画でコミュニケーションをとることが多くなるのはほぼ確実なんです。だって、文字を読むより動画や画像でできたほうがコミュニケーションとしては一番楽ですし、インターネットの歴史でもその流れはあります。となるとますます、ストレージの存在価値は高くなってくるはずなんです。

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