2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
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古野庸一氏(以下、古野):もともとのクエスチョンに戻して、3番の質問ですね。施策をいろいろ展開されていらっしゃるなかで非常に難しいことや「これはうまくできないな」ということ、苦労されたことを少しお聞きしたいと思います。本間様の方からお願いできますでしょうか。
本間浩輔氏(以下、本間):2つ、僕の経験の話をします。1つは、仕事が終わっているのに帰らない人っているんですよね。18時ぐらいに仕事が終わっているのに帰らない。「なんで帰らないの?」って聞いたら、「今帰ったら、暇かと思われて、仕事をアサインされる」と言うわけです。上長が部下の業務量をきちんと把握できていない。だから、部下も帰ることができない。
もう1つの話は、あるエンジニアが「なぜこの会社は能力が劣っていて残業する人の給料が、能力があって早く帰る人よりも高いんですか?」ということを言った。要するに、僕らはインプットばかりで測ろうとするんですよね。「頑張ってる」「遅くまでやってる」「早く来てる」とか。でも、やはり働き方改革をするために、アウトプット、もしくはアウトカムに対してちゃんと評価ができる仕組みがないと、彼らは早く帰ることができない。
その例でいけば、「自分の仕事をしっかりやり終えたんだから、18時で帰ります」と言えるような上長と人事制度がないとうまくいくわけがないし、成果を出さなくても、残業している人が結果としてたくさんの給料を得てしまうとしたら効率的に仕事をやる気にはならないと思うんですよね。これが問題だと思います。
これを突き詰めていくと、最終的には人事制度と上長の人事力。上長がどれだけその人の仕事のアウトプットを正確に見ているか。先ほどの話であれば、「いや、きちんと仕事をやっていて、18時で効率よく終わったんだから帰っていいよ」と言えるか、もしくは残業しないで18時で終わらせられるエンジニアに対して、残業して成果を出すエンジニアよりも高い給料を払えるか。
これは制度の問題でもあるんですけど、やはり現場のリーダー、管理職、直属の上長の人事力に負うところも大きいと思います。
古野:なるほど。今のお話を聞きながら……管理職の方っておいくつぐらいですか? 40歳ぐらいですかね。
いわゆる40歳より上の人の管理職が多いとしたときに、いっぱい働く、残業をした人が偉いという文化・価値観のなかでずっと育ってきて、「いや、そうじゃないんですよ」ということを今問われているような気がしています。管理職の教育のなかにそういった価値観の転換みたいなことも入っていらっしゃるのかということを少しお聞きしたいんですけれども。
本間:それは入っていると思います。くどいんですが、シンプルです。インプットじゃなくてアウトプットで評価しよう。以上です。これを会社の仕組みとしてできるかできないか。ここにかかっているような気がします。
古野:アウトプットを出そうとしたときに、やはり時間をかけてしまう社員・従業員がいるということに対して、上司は「う~ん、かわいいやっちゃ」とやるのか、そうじゃなくて「帰れ」とやるのか。そのあたりは実はみなさまの会社もすごく悩まれているところじゃないのかなと思うんですけれども、そのあたりはどうですかね?
本間:この議論を煮詰めていくと、メンバーシップ型かジョブ型かというところにもなってくるし、日本の風土に対する挑戦でもあると思います。
古野:なるほど。分かりました。今、やはり時間ではなく成果で見ないとダメだという話を少ししていたと思います。その成果をちゃんと上司が分かるようにならなきゃいけないよね、という話だったと理解をしましたけれども。そのあたりについて、味の素様や日本電産様でなにか思うところがあれば、ぜひご意見いただけたらと思います。
隈部淳二氏(以下、隈部):そうですね。成果をきちっと見極めるということについては、まったく同感ですね。
古野:ありがとうございます。どうですか?
平田智子氏(以下、平田):私も同様に成果を見極めないといけないということを考えています。先ほど会議の話をさせていただいたのは第1段階と申し上げました。これから実施することは、まさにヤフー様がおっしゃっていた、管理職のマネジメント力を向上させるということです。
当社では、管理職はオーケストラの指揮者の立場であると言っています。やはり団員の一人ひとりの状況であるとか、一人ひとりの個性といったものを見極めつつ指揮をしていく。それがやはり日本電産グループの管理職のあるべき姿じゃないのかと言われています。
そうなるための施策、教育であったり、あるいは職場での展開というようなことに力を入れてやろうとしているところです。
古野:ありがとうございます。おそらく今のお話は、時間の話もあるかもしれませんし……テレワークもそうですよね。テレワークで本当に働いているかが分からないなか、ある種社員を信頼して、一応時間も見てはいると思うんですけれども。出てくるアウトプット、成果がなんなのかということを見きれないと、なかなか普及していかないかなと思います。テレワークがいいかどうかはまた別の議論としてあると思うんですけれども。そういう理解でよろしいですか?
テレワークを一生懸命推進されている味の素様もいらっしゃいますし、ヤフー様も推進されているのではないかなと思いまして、そこを聞きましたけれども。
隈部:成果ということでいうと、日々会社に出社しているときに、上司・部下間で毎日「今日のアウトプットはどうだったか」ということはほとんど確認しないと思うんですね。ですが、テレワークになった途端に上司が「どこでなにやってるんだ?」ということが気になりだす。
古野:逆に問われますよね。
隈部:「会社にいたら聞きもしないのに、外に行った途端に気になるのはなぜなんだ?」という話になって。結局ある一定期間のなかで上司は部下の成果を見極めるわけですから、「その間どこで仕事しようとそれは本人に任せればいいじゃないか」ということで当社は考えています。
ただ、導入時はやはり1人で自由に外でやらせるということは、「サボるのではないか」とか気になる点は多々あったので、導入当初は「自律的に仕事ができると上司が認めた者に限る」といった制限を加えました。「業務終了後の成果報告」「始まる前、終わったときには電話かメール連絡」ということをルール化していました。
会社にいたらそんな確認もしないのに、外に行った途端にそこまで確認する必要はないのではないかということで、2016年からそういうものは全部取っ払いました。「一定期間のなかできちっと成果を見ればいいでしょ」ということです。
古野:そういう意味だと、やはり社員を信頼するということをベースにして任せている。その代わり、自由を与えるからちゃんと、責任じゃないですけれども「やることをやってよね」ということなんでしょうね。そうすると社員はかなりプロフェッショナルというか、自律的に動けないとなかなか難しい感じもします。
古野:そのあたりはずっと前からテレワークをやられているヤフー様は、たぶんいろいろ考え方があると思うんですけれども、どうですかね?
本間:味の素様のお話とまったく一緒です。テレワークでよくあるのは、「本間さん、私はテレワークに反対です」と人事の人間が僕のところに来て、「なんで反対なの?」と聞いたら、「私、1回実験でテレワークしたら、家で仕事しませんでした」と言うわけですよね。だから反対だって。
古野:(笑)。
本間:まあ、それはそうだろうと思います。ただ、味の素さんがおっしゃるとおり、ヤフーの場合もオフィスが変わって全館フリーアドレスですから、「じゃあ外に行ったらサボっていて、会社にいたら仕事してると思うのか?」という話ですよね。
困るのは、会社に時間どおり来て、メールチェックして、ランチをのんびり食べて、資料の作り直しでパワポのポイント数とか揃えて、それを仕事と思っちゃうこと。「サボってる」って自覚して家にいる方がまだいいですよね。
(会場笑)
古野:なるほど。
本間:なので、アウトプットをちゃんと見なきゃいけないというところに持っていかないと、僕はダメだと思う。
古野:実際どうなんですか。やはりテレワークされている人はサボってる?(笑)
本間:アンケートを取ったんですよ。本人だけに取っていると嘘つくから、上長にも聞いて。そうすると8割ぐらいは「成果があった」と言います。それは、行き帰りの通勤時間や、それに対するストレスがなくて、適当な頻度であればいいという人がいます。
一方で、会社にいるよりテレワークの方が生産性が悪いという人もいる。これまでの人事は、そういう人が少しでもいるとルール化しないんですけど、よく考えてみると、そのわずかな人のために制度を入れないのは正しくないように思います。
古野:そうですよね。会社に来ていれば仕事をしているかというとそうでもないということがまず前提としてあるかと思うんですけどね。分かりました。
古野:ではクエスチョンを進めたいと思うんですけれども、4番ですね。働き方改革の現状・成果といったところ。今までも、残業が半分になったとかいろいろ話は出てきていると思うんですけれども、プラスアルファ、一生懸命やった結果「こういうところで成果が表れてきている」ということがあればお聞きしたいと思います。
例えば味の素様でいうと、女性活躍促進、女性が生き生き働くということも1つの大きな目的としてあると思っています。そのあたりがどのように進んできたのかということを含めて、現状の成果を教えていただけたらと思います。
隈部:成果をどういうふうに捉えるかということはとても難しいと思っていますが、会社の事業利益、営業利益がこの取り組んでいる期間どうだったのかということと、総実労働時間がどう推移したのか、その項目を取ると、業績が上がり、総実労働時間は落ちてきています。そういうことで成果は上がっていると考えています。
あとは、働きやすさに加えて働きがいの向上も求めているわけで、そこについても組織文化診断やエンゲージメントサーベイのような調査のなかで、働きやすさ・働きがい向上指数も2桁以上が上がっているというスコアが出ています。
古野:2桁以上、すごいですね。
隈部:もう1つの女性活躍という観点でいうと、冒頭に少し触れましたが、いろいろな働く時刻などの変更のなかで、フルに働きたいのにどうしても働けなかった女性が育児短時間勤務をやめて、フルタイム勤務になって目一杯働けるようになるという方が増えています。
通常、我々の生活は朝・昼・晩という3区分のなかで生活を見ているかと思うんです。16時半に会社が終わるということで、朝・昼・夕方・夜という、夕方の時刻がもう1つ新しい区分として意識できるようになった。その夕方の時間をどう使っていくのかということを考えるメンバーが増えてきています。その時間をどう有効活用していくのかがとても大事なのではないかと思っています。
古野:その有効活用というのは、なにかイメージされていらっしゃるものはありますか?
隈部:そうですね。早く帰ることによって、それを勉強や、他の会社さんなど社外の方との接点を増やすことにあてるというような考え方もあるかもしれません。単純に時間が増えたから飲みに行く時間が早くなっちゃったという人とかもなかにはいたりするんですけど(笑)。実際、いろいろだと思いますね。
古野:やはり普通に社会生活をするというのは、味の素様のようにtoCのビジネスをやっていると生活者観点みたいなものがすごく大事になってきますよね。というふうに理解してるんですけど、どうですか?
隈部:おっしゃるとおりですね。ですから、とくに営業部門や事業部門など、消費者の方の行動を自分の生の目で見る必要がある場合に、夕方のスーパーマーケットなどでの消費者行動を自分の自由な時間のなかで見て、いろいろなことを考えたりする時間に費やすのはとても意味があることだと思います。
古野:わかりました。ありがとうございます。じゃあ日本電産様。成果について。
大山直子氏(以下、大山):弊社はまだまだ成果といってもこれからではあります。これまでは時間は無限みたいなところがありましたが、働き方改革を始めて、やはり定時内で仕事を終えようとする意識、業務の効率化という意識は会社全体として高まってきたかなと感じています。
古野:なるほど。要するに残業を半分にしてプラスアルファでいろいろな成果も出てきているという認識でよろしいでしょうか?
大山:はい。
古野:ありがとうございます。よろしいですか、本間様?
本間:正直、まだ成果は分からないです。一応データも取ります。ESも取ります。エンゲージも取りますけど、それが本当に働き方改革の成果なのかどうかはまだ分からない。
古野:ありがとうございます。おそらくは、労働時間が短くなったという成果はありますけど、本質的にそれが本当の成果なのかということも含めて、今後じっくり議論していくところかもしれません。
古野:時間もあまりないので、最後の質問にいきたいと思います。「今後どうされますか」というお話です。それと共に、ここで言い足りなかったこと、これだけは言いたかったことを一言ずついただきながら終わりたいと思います。それでは味の素様からお願いします。
隈部:今後の進め方ということでいうと、やはり味の素らしさ、味の素らしい働き方改革をもう少し突き詰めていきたいと思っています。当社は、食べること、運動すること、休むことそれぞれに関係する事業を持っているので、そういう会社の事業なども絡ませたなかで働き方改革を進めていければと考えています。
あとは新たに入れる制度というと、女性の活躍とも関係してくるんですが、今は配偶者などが異動することによってやむなく会社を辞めなければいけなくなる方々について再雇用制度を入れています。これを、再雇用ではなくて休職というかたちで辞めずに済むようにするとか、休職制度を超えてその旦那さんの赴任先に異動させる。要は今の所属のまま異動を可能にするとか。国内に限らず海外でもそういうことができないかと考えています。
古野:別の会社に旦那さんがいて転勤したら、それについていけるようなことも考えたいと。
隈部:そうですね。
古野:なるほど。分かりました。あと一言、これだけは言っておきたいということがあればお願いします。
隈部:大丈夫です。
古野:分かりました。では、日本電産様お願いいたします。
平田:今後は、やはり生産性を2倍にしていくということ。それによって社員が成長していく。そのなかで当社の業績目標を達成していこうと考えています。そうすると、やはり英語力を向上させる、あるいはマネジメント力を向上させるということのインプットを増やしていくことで、定時内でのアウトプットの質・量を最大化していくということ。これがこれからやっていきたいことだと考えています。
古野:言い足りないことはなにかほかにありますでしょうか。今後の話以外でもぜんぜん構わないですけれども。
平田:大丈夫です。
古野:はい。じゃあ、最後に本間様、お願いいたします。
本間:今の働き方改革の流れを見ていると、リスキーな面もあると思っています。例えば受験勉強を考えたときに、4時間勉強する人と8時間する人、どちらが大学に入りやすいかは、効率性の問題もあるけど、明確じゃないですか。効率よく仕事をすることは重要だけど、「日本全体で働かない運動をしていて本当にいいのか?」と思うこともある。
もちろん企業は、ワークライフバランスや社員の幸せは追求すべきです。でもこれで本当にアジアの国に勝てるのか。人事の責任者としても危機意識を持っています。
この話をしたところ、ある省庁の幹部クラスの人が「本間さん、ゆとり教育は修正するのに20年かかりました」と言っていました。本当か嘘かはよく分かりません。
働き方改革も、今から何十年かあとに、「あのとき、働き方改革なんてやっていて、経済が失速した」と言われないようにやらなければいけないなと強く思っています。以上です。
古野:ありがとうございます。3社様のお話を聞きながら、私自身が感じたことを少しお話しして終わりたいと思います。最後の話に非常に通じる話なんですけれども、単に働き方改革だけをやるということではないと思っていて、そこにはやはり企業だから当然業績というものがある。その業績を維持しながら、あるいは拡大しながら、どうやって働き方改革をやっていくのか。
非常に難しい問題だなと思っていて、それを現場にポーンって投げることだけは避けたいと思っています。その問題に経営もすごく真剣に取り組むし、同時にやはり人事も取り組むということがすごく大事だと思っています。
そのあたりは、この3社でいうと、やはりうまくそれをつなげてストーリーにしているなとあらためて感じました。単に働き方改革をやっているだけではなくて、要するにこれはマネジメント改革であり、マネジメントがよくなるにはどうすればいいかということを考えてストーリーにしていて、それを経営のトップ、あるいは人事が繰り返し語っている。じゃないとやはり動かないですよね。ストーリーがあって、それを語っている。そのことで社員の肚に落ちている。
やはり最終的に働き方改革を行うのは社員であり、「それはおもしろそうだ、そっちをやりたいな」と思えないと、改革にはならないと思っています。そこの肚落ち感、あるいは意義・意味が唱えられていることがすごく大事だなと思っていて、それが行動につながっていくんじゃないかと思って聞いていました。
では、以上をもちまして、このパネルの部を終わりたいと思います。あらためて登壇者のみなさまに大きな拍手をお願いいたします。
(会場拍手)
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