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「働き方改革」と「幸せの経営学」 本当に社員と社会を幸せにする働き方とは?(全1記事)

2018.05.15

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幸せな社員は創造性3倍、労働生産性1.3倍 働き方改革における幸福度の重要性を説く

提供:ウイングアーク1st株式会社

最新テクノロジーやデータを活用する企業が一堂に会し、先進的な取り組みを共有するカンファレンス「ウイングアークフォーラム 2017」。11月14日に開催されたウイングアークフォーラム 2017 [東京]では慶應義塾大学大学院教授の前野隆司氏が登壇し、「『働き方改革』と『幸せの経営学』 本当に社員と社会を幸せにする働き方とは?」と題して講演を行いました。

エンジニアリング学的な視点から幸せの研究を行う

前野隆司氏(以下、前野):こんにちは、前野と申します。よろしくお願いいたします。働き方改革と幸せの話をするために、やってまいりました。

幸せの話をするというと、「どういう人なのですか」と聞かれるんですけど……。私はもともとエンジニアでした。キヤノンに勤めてまして、それから慶應義塾大学 理工学部 機械工学科に移ってロボットや機械工学の研究をしていたんです。

機械工学科に13年いた後に、新しい大学院ができました。今いるシステムデザイン・マネジメント研究科です。文系・理系という学問分野を超えて、イノベーションを起こしたり、大きな社会問題や、大規模で複雑な問題を解決する。そういう大学院ができたんですね。

それを機会に……人間にとって一番大きな問題はやはり「幸せ」「平和」といった問題だと思って、幸せの研究を始めました。

「幸せの研究をしている」というと、「ロボットと幸せってぜんぜん違うじゃないですか」とよくいわれます。ロボットの研究といっても、ハードウェアをつくるような研究だけでなく、心理学に基づく研究もしていました。人間がロボットを見てどう思ったのか、ロボットの感情はどう作るべきか、といったような、工学と心理学を重ね合わせる研究をしていたんです。

幸せの研究もベースは心理学です。人々に幸せかどうかを聞いて、幸せと、例えば生産性はどう相関するのか、といったことを調べる学問ですから、基本的にはそんなに違わないんです。ロボットと幸せ、一見違うようですが、どちらも人間の心を扱っていて、それをエンジニアリングの中の設計論という視点からとらえていきます。

ですから、私の研究は、「幸せ」の工学なんです。みなさんの会社でもおそらく製品やサービスを作られていますよね? みなさんが作る製品・サービスを「使えば使うほど人々が幸せになっていく」ようなプロダクトにするためにはどうすればいいのか、を考える。

あるいは、今日のテーマでもある「経営」。社員や社会の人が「この経営をしていくとどんどん幸せになっていく」という経営。あるいは街作りや組織作り。そういう分野の研究をしています。

今日は特に、働き方改革との関係についても考えたいと思います。

近年、働き方改革の他に、健康経営やストレスチェック、マインドフルネスなどが注目されています。経営者・人事の方、それから健保。いろいろな人がいろいろなことを言っています。それらについて、幸福学の研究者として考えてみたいと思います。

「労働力不足を解消し、出生率を増やす」は本当に幸せか?

まず、「働き方改革は、目的もやり方も間違っている」……間違っているというか、間違いやすい面があると思うんです。そういう話をしたいと思います。

働き方改革は、首相官邸のコメントによると「1億総活躍のためである」「中間層の厚みを目指してみんなで働くことが、より良い日本を作りますよ」ということです。これはまぁ、素晴らしいことだと思うんですね。

働き方改革の目的はなんでしょう? なんのために働き方改革をするのか。こちらも首相官邸の資料に出ているんですけれど、「深刻な労働力不足である」。だから、労働力不足を解消するために働き手を増やして、出生率を増やし、労働生産性を上げる。そうすると長時間労働が解消され、非正規雇用・正社員の格差是正ができて、高齢者の就労促進になって働き方改革ができていく、とあります。

これも素晴らしいことだと思うんですけれども、幸福学をやっている私から見ますと「ちょっと記述不足かな?」と思う面があるんです。もちろん、労働不足の解消を目指すことは日本のためには大切です。そして、経済成長することも大切です。

ですが、1つ欠けているのではないかと思うのは、「社員の幸せ」という視点です。

「欠けている」とは、首相官邸に物申しすぎかもしれません(笑)。言いたいことは、別の視点をさらに加えるべきではないか、ということです。なぜそう思うか。結論から言いますと、憲法13条にも書かれた幸福追求権の視点を、働き方改革にも採り入れるべきだと思うのです。すべての人は幸せになるべきです。幸せについてはたくさんの研究が行われています。「幸せな社員は不幸せな社員よりも、創造性が3倍高い」という研究があります。「幸せな社員は不幸せな社員よりも、労働生産性が1.3倍高い」という研究もあります。アメリカや日本で、たくさんの研究が行われています。

社員が幸せになると、欠勤率も下がります。幸せな社員は欠勤しにくいんです。心の病になりにくいから、休まない。月曜日にわくわくして仕事に行くわけです。離職率も下がります。仕事が楽しくて生き生き働いてるので、「転職しようかな」という気持ちもあまり起きないわけです。

ということは、従業員が幸せになっていれば、働き方改革が大きく進み、長時間労働も削減できることになります。なぜなら生産性が上がり創造性が上がるわけですから、長時間労働にもならないし、みんなが生き生きと働くようになってきますよね。

というわけで、働き方改革のためには「社員の幸せ」という視点を入れるべきだ……そういうお話をしたいと思います。

働き方改革の近道は「幸福度を上げる」

もう少し、働き方改革についての不満を述べさせていただきたいと思うんですけれども。

(会場笑)

働き方改革で、今いろいろな会社がつい陥りがちなのは、このパターンじゃないかと思うんですよね。「とにかく働き方改革しなきゃいけない」。国から言われてますからね。

働き方改革の進め方はいろいろあります。例えば1つの例として、「時短をしなければいけない」。「とにかく時短をしろ」「とにかく残業時間を20時間減らせ」「そのためのアイデアはこれから出せ」……なんとかして業務を効率化して、生産性を向上して、経済成長力を向上しないといけない、となりがちです。

これは結果から考えているわけです。とにかく時短すべき。そのために、なんとかして業務効率を上げるべき、と。

みなさんもすでにお気づきだと思うんですけど、これは順番がおかしいですよね。いまここに、水がいっぱいのコップがある。「まずコップを小さくしろ」「小さくした後で水を減らすことを考えろ」と言われても……困りますよね。まず水を減らしてからコップを小さくしなきゃいけないのに、「まずは時短だ」は、順番が間違っているんじゃないかということなんです。

(スライドを見ながら)正しいループは、こちらです。「仕事のやりがいと、信頼感のあるチーム」を作るための、「幸福度の向上施策」をまずはすべきなんです。なにしろ、幸せ度を上げると生産性も創造性も上がり、欠勤率も離職率も下がるわけですから、結局1人当たりのアウトプットは非常に上がるわけです。

つまり、「幸福度を上げる」が最初にある。その結果、さらにチームの結束力もあり幸せ力もある組織になる、そうするとさらに生産性が上がる。このループに入ると、それこそ「働き方改革」となるんです。

効率化・時短からスタートすると、実は幸せになりません。ここからスタートするとどうなるかというと、逆回転なんですね。まず「効率化、時短せよ」。そして「創造性・生産性を向上せよ」「なんかアイデア出せ」。

すると、「やらされ感」になってしまう。あとでお話ししますけど、「やってみよう」と思って、自分の意思で仕事をしていると幸福度は高まります。「これやっとけ」と言われて、やらされ感でやると幸福度が下がります。幸福度が下がるということは、創造性が1/3になるってことですからね。

そうすると「効率化せよ」「創造性・生産性を向上せよ」「いやいやそれはきつい」「アイデアが出ないじゃないか」と、幸福度は低下します。その結果、仕事のやりがい・信頼感のないチームになって、創造性・生産性が低下する。「それじゃまずいじゃないか、もっと効率だ!」となり、逆回転の悪循環ループになるんです。

似て非なるものです。回転が逆になるとうまくいかない。これが、幸福学なんです。幸せか不幸かという心の状態が、働き方や健康や、その他もろもろのことに影響する。だから、この点を明らかにする。行動経済学にも近いですね。

Well-Being経営に注目すべき理由

幸福学というとよく「宗教ですか?」と言われます(笑)。

(会場笑)

勘違いされがちですけど、まったく違います。

幸せを対象としているという意味では近いんですけど、私がやっているのは「幸福」の「工学」と「心理学」です。幸福を本当に学問として研究しているんです。

「やってみよう」と「やらされ感」。モチベーション研究というものがありますよね。モチベーションが高い人と低い人がいたとすると、もちろん高い方が労働生産性が高い。

幸福学の視点から見ますと、「やってみよう」について考えるとき、「幸せ」という根本のところに戻っていくと、より「どうすべきか」が明らかになる、と考えるわけです。

そこで、幸せの話をしていきましょう。先ほど、働き方改革や健康経営、ストレスチェックなど、いろいろなことが行われている、という図をお見せしました。

たとえば健康経営は、「体が健康であれば病気になりにくいよね、だからより働けるでしょ」、くらいの意味に捉えられがちです。しかし、実は違います。

この図の一番下に書いた「Well-Being」という言葉を、ご存知ですか? 辞書で調べると、「健康」「幸せ」と書いてあります。みなさん「健康」と「幸せ」が同じ英語だということを、ちょっと意外に思われたかもしれませんが。「Well-Being」という言葉の意味は、「良好な状態」「良きあり方」です。「心が良好な状態」であるのが「幸せ」で、「体が良好な状態」であると「健康」です。

ですから、「心と体の両方を良好な状態にする」がWell-Beingなんですね。これからは健康経営といっても、体の健康だけじゃなくて心の健康も含めて「Well-Being経営」をすべきだと思うんです。そういうふうに考えると、働き方改革ともつながってくるわけですよ。

ただ単に、「幸せだからまぁ、不幸せよりいいよね」「メンタルの課題に陥りにくい方がいいよね」というような一面的な意味ではなく、幸せ度が高い社員は、先ほど申し上げたように創造性も高いし、パフォーマンスも高い、うつになりにくい、離職しにくい。組織を生かすということも知られています。健康で幸せな人のほうが、不幸せな人よりも、だいたい7年~10年くらい長生きだということも知られています。

社員を幸せにすると、生産性・創造性が高まるばかりか、みなさんの寿命も長くなるわけです。長く幸せな人生を謳歌できる、ということなんですよね。ですから、幸せになることを目指さない理由がないくらい、幸せになる、社員を幸せにする、というのは目指すべき目標なんです。にも関わらず、今まであまりやられてなかった。だからこれからはWell-Being経営をもっと広めていくべきです。健康経営も働き方改革も全部ひっくるめて。

金・物・地位を得たことによる幸せは長続きしない

先ほどウイングアークの方が「人事部の名前を『People Success部』に変えた」とおっしゃっていました。やはり人事は本当に、社員を幸せにし、社会を幸せにするための部署だと思っていただいたほうがいい。

あるいは経営もそうですね。「CHO」という言葉があります。「Chief Happiness Officer」を設けよう、ということが、アメリカから始まって日本でも静かなブームになっています。社員を幸せにしておくことがアウトプットにもつながるし、社員にとってのやりがいにもつながるので、それをきちんとやっていくことが必要な時代がやって来たのです。

ここまで、働き方改革と幸せの関係について話してきましたが、ここからは幸福学の中身についてお話ししましょう。今日はいくつか覚えて帰っていただきたいことがあります。

1つは後でお話ししますが、私が明らかにした「幸せの4つの因子」の内容です。それともう1つは、幸せには「長続きする幸せ」と「長続きしない幸せ」があるということ。これをぜひ覚えて帰ってください。

みなさん、幸せのためになにが必要だと思いますか? 小学生に聞いても「金!」と返ってくることがあるんですけど(笑)。

(会場笑)

正解の1つです。金・物・地位を得ることは、幸せにつながります。「やったぁ!」とうれしい気持ちになります。ですが、金・物・地位を得たことによる幸せは、長続きしないんです。これはイギリスのネトル先生(Daniel Nettle)が言っていることです。

(金・物・地位を手に入れると)一瞬、すごく幸せになれます。「やった! ボーナスが出た!」と幸せになりますが、その幸せはすぐ、ジェットコースターのように急降下する幸せだ、ということがわかっています。

私たちの脳はそういうふうにできているんです。もちろん「高い地位に着くことによって社会貢献するための自由度を増したい」というような高尚な理由もあると思いますけど。そうでなく、利己的に地位を目指すと、それによる幸せは長続きしないんです。

利己的な欲……金も欲しいし物も欲しい……そういう欲による幸せは長続きしないように、私たち人間はできているんです。

長続きする幸せは「精神的・身体的・社会的に良好な状態」

一方で、長続きする幸せは、図の右側です。WHOが「精神的・身体的・社会的に良好な状態(Well-Being)である」ことが健康の定義だと述べています。精神の健康、身体の健康、社会的に安全で安心な良い環境にいること。そういう整った状態にあることが実は長続きする幸せに影響する。これらが、研究によってわかっています。

金や地位による幸せは長続きしない一方で、安全や利他性、つまり、みんなを幸せにしたいと思うことは長続きする幸せにつながるんです。なぜこっちは長続きするのか。

これは進化論的には、前者は個体維持の本能であり、後者は集団維持、遺伝子の維持という本能に基づいているからではないかと言われています。

自分がもしライオンに襲われそうになったらどうします? 必死に戦うか逃げるかして、とにかく生き延びようとしますね。つまり誰かと戦ったら、なんとかして勝ちたいと思うように私たちはできています。そして勝つとうれしいわけです。でも、その個体維持の喜びは、すぐに下がります。そうしないと、また外敵が襲ってきた時に危険ですからね。

ですから、現代人にとっての「お金が欲しい」は、他人と比べて勝つことの一例です。もともと人類が生まれた時にお金なんてありませんでした。本来は「敵と戦って勝ちたい」という個体維持本能だったものが、今では「お金や物を貯めたい」にすり替わっているんです。

貯蓄は本来、ライオンが襲ってきた時に生き延びることと同じです。自分が長く生き延びるためには、貯蓄しておかなければならない。物が欲しいのも同じです。自分の安全のために「これが欲しい」という本能があって、それによって「次に欲しい物」が次から次へと出てくるんです。でも本能によって、こちらは長続きしないようにできているんですね。

もう一方の非地位財型の幸せが長続きするのは、やはり利他性があるからだといえるでしょう。自分だけじゃなくて、自分の子どもたちを守りたい、あるいはコミュニティを守りたい、国家や人類をより良くしたい、あるいは地球環境を守りたい。

これらは私たち人類という種、あるいは地球生命圏を守りたいという本能があるからですね。そっちの本能が発動されるようになると、それは長続きする幸せだというわけです。

やらされ感で仕事をしていると幸せ度が下がる

私は、この長続きする幸せのうち、「心」の部分にフォーカスした研究を行ってきました。心の部分については、実はいろいろな研究結果があります。幸せの研究はもともと心理学だと言いましたけど、いろいろな心理学者によって、例えば親切な人は幸せ、利他的な人は幸せ、あるいは自己実現してる人は幸せ、自己肯定感が高い人は幸せなどなど、いろいろな心的要因と幸せの関係解析が行われてきました。

多くの幸せの心的要因をたくさんの人にアンケート調査し、その結果を因子分析にかけました。色は、無限にありますが、実は三原色の足し合わせで説明できるじゃないですか。同じように、幸せの三原色みたいなものを求めたのです。幸せの要因はたくさんあるんですが、それをまとめるとどうなるんだろう、というのをコンピューターで分析したのが「幸せの4つの因子」です。

この4つを満たしていると、どうも人々は幸せらしい。これが、私が因子分析によって求めた結果なんです。

1つ目は、先ほどから述べてきた「やってみよう」ですね。「よし、仕事にやりがいあるぞ、やってみよう!」。こう思う人は幸せです。みなさんはいかがでしょう。やらされ感のある人、あるいはやる気がない人、やる気がしない人……そういう人たちは、幸せじゃないですね。

「ライフワークバランス」といいますが、「ワーク」は重労働だけども、「ライフ」を充実させてバランスをとり、休日に家で生き生きと趣味に生きることができればいいんじゃないか、と考える人がおられます。

しかし、幸福学の観点から言わせていただきますと、違います。

1日の半分もある仕事がストレスでいっぱいだったら。これはやはりいろいろな病気になったり、幸福度が下がって寿命も短くなったりすると思います。だから、ライフとワークのバランスというよりも、ライフもワークも、どっちも幸せにする意味での心のバランスをとることが、これからは必要なんだと私は思います。

つまり、仕事でも私生活でも「やってみよう」。夢や目標を持って、やりたいことをたくさん持っている人は幸せですが、やらされ感でやっている人は幸せ度が低いのです。

8割の社員が「早く会社へ行きたい」と答えるホワイト企業

よく、事例としてお話しするんですけど、「ホワイト企業大賞」という、幸せな社員や社会を作っている会社を表彰する会があるんです。天外伺朗さんがやっていて、私も委員をしています。

2017年にホワイト企業大賞を受賞した西精工さんという、徳島の会社があります。従業員は250人ぐらい。西精工さんの社員のみなさんに、「月曜日に会社へ行きたいですか?」と聞いたんですね。そういうアンケートを取りました。

そうすると、なんと8割の社員が「月曜日に会社に行きたくて行きたくてたまらない」と答えたんです。いかがですか、みなさん。「月曜日に会社行きたくて行きたくてたまらない」という方はどれだけおられますか? 8割、おられますかね。

それくらい、仕事が「やりたくてたまらない」になっている人は幸せです。これが第1因子です。西(泰宏)社長に「家族みたいですね。本当に、みんな、そんなに会社に行きたいんですか?」と聞いたら、西社長は答えました。「いや、家族以上なんですよ」。

日曜日に、西精工に務めているお父さんが、家族と団らんして、サザエさんを見ながら晩ご飯を食べている頃に、「早く月曜にならないかなぁ、早くみんなに会いたいなぁ」と言いながらご飯を食べているんだそうです。

みなさんの会社はどうでしょうか? 金曜日になったら「早く土日になんないかなぁ、家族とキャンプに行きたいなぁ」と思うのと同じように、日曜日が終わる頃に「早く会社に行ってみんなと会いたいなぁ」と思えるなら、ライフもワークも幸せですよね。

社員同士の信頼関係・尊敬関係を築く会社は幸せ度が高い

2つ目は「ありがとう」因子です。人々との繋がりが密にあって、社員同士の信頼関係・尊敬関係がちゃんと築けている会社は、幸せ度が高いんです。西精工さんはなぜそんなに幸せ度が高いかというと、1つは朝にあります。朝礼を1時間以上やっているそうです。

朝礼を1時間以上ですよ。それこそ「働き方改革をしなきゃいけない」「無駄だから減らせ」と思われがちかもしれませんが、これこそがまさに必要なんです。1時間も朝礼をしていると、どうでしょう。

もし5分の朝礼だったら、部下に「今日やることをやっとけよ、できるか? よし、働け」みたいになりがちです。1時間も朝礼すると、「できます。とはいえ本当のことを言うと、ここはちょっと気になっててまだわかんないんですよね。本当は誰かの助けがほしいです」「いや今日は猫に子どもが生まれて、本当は早く帰りたいんですけど、でも仕事があるから帰れないんですよね」など。そういう細かいところ、プライベートなところも出てきますよね。

そうすると、「そこの仕事が難しいんなら、みんなで手伝おう」「よし、猫が子どもを産んだんなら、今日は俺が代わりに仕事しといてやるから早く帰れ」となる。ちゃんと深い会話をすると、もっと助け合えるわけです。信頼関係・尊敬関係が深くなるわけですね。

1時間対話をした後に仕事に入ると、幸せ度が高いわけです。特に西精工さんでは、理念やビジョンについてとことん話し合うそうです。みんなの目指す先を共有する。そうすると、「よし、みんなと一緒に働こう」と思いますよね。幸せです。その結果、創造性が3倍、生産性が1.3倍ですよ。結局、時短も達成でき、早く帰って猫の世話をできるわけです。

働き方改革は「効率化だ」という方がおられますけども、これは気をつけた方がいいポイントだと思います。働き方改革をしたかったら、無駄にも思えるような対話をして、人間関係や信頼関係、そしてやりがいを熟成するべきなんです。本当の無駄は省くべきですが、一見無駄のように見えるけれども実は大切なものは、決して排除してはいけないんです。

一人ひとりがやりがいをもって仕事をしていれば、先ほどから何度も言っていますように、生産性や創造性も上がるわけです。その結果として、時短になるんです。最初に申し上げたように「まず時短だ」から始めると、やらされ感になりますから幸せ度が下がって、ぜんぜん働き方改革にならないんです。

というか、「働き方改革」は「改革」ですよ? 「改革」というのは、レボリューションです。変革、つまり「全体を大きく変えましょう」というのが働き方改革なのに、多くの働き方改革は、「働き方改善提案」みたいになっていないでしょうか。改善は、部分です。

働き方「改善」では、部分しか直らないから改革にはなりません。「改革」にするためには、一見無駄に見えるような本質的な対話をとことん本気でしてみるべきなんです。深いところまで問題意識を共有し、わかりあい、全体としてみんなで変えようと合意するからこそ、創造性や生産性が高まり、真の改革が可能になるのです。疲弊している多くの日本企業は、もっとそういう活動をしなきゃいけないんです。

幸せな働き方は「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」

これを言っても、「前野さんの言うことはわかる。でも現実にはできないんだよ」とおっしゃる方も多いんです(笑)。特に大企業に多いですね。ここで必要なのは、経営者や人事の方の勇気です。無駄に思えることをやってみる。目の前の改良・改善は、すぐ効果が出ます。でも本当の改革は、やはり大きく変えるためですから、勇気が必要です。

私が推奨する幸せな働き方とは、「やってみよう」「ありがとう」、そしてこれからお話しする「なんとかなる」「ありのまま」という、かなり自由奔放な感じの働き方を推進するものです。これでは従業員を管理できなくなって、それこそ働き方改革どころか逆にぐちゃぐちゃになっちゃうんじゃないか。そう思われるかもしれません。

私と同世代、あるいは私より先輩の方はお気づきだと思いますけど、私が入社した1980年代ごろまでは、今みたいに労働規制も厳しくなかったし、家族運動会や社員家族旅行など、ごちゃごちゃしていたんですよ。その後、それでは公私混同的で良くない、欧米に勝てないと、どんどん効率化に向かいました。

ごちゃごちゃには、もちろん弊害もありました。でも、ごちゃごちゃしていた中から、イノベーションも生まれていたんです。

ごちゃごちゃしていると、なんだかみんな楽しい。楽しく働いてると、創造性が発揮できる。私がいたキヤノンでもそうでした。スポイトをいじっていたら、間違って半田ごてが当たった。液体が急に熱されて、ビュッと出てくる。汚れちゃった。それが発想のもとになってインクジェットプリンターを発明した……など。

戦後から1980年代くらいまでは、そういった武勇伝がいっぱいあったんですね。なんか変なことをやったらおもしろいアイデアを思いついたとか。そもそも松下(幸之助)さんの二股電球もそうですよね。本田(宗一郎)さんも盛田(昭夫)さんも、ごちゃごちゃした中で仕事をしてイノベーションを起こしていたわけです。

そういう中にこそ、創造性と幸せがあり、いい働き方があった。

いい楽観と悪い楽観

ところが、近年、欧米に打ち勝つためといって「効率化、効率化、効率化」を目指しすぎた結果、従業員の幸福度と創造性がすごく下がっている。今、働き方改革をする際に、さらに効率化だけを求めてしまうと、まさに働き方改革ではなく、悪化の方向に行くんじゃないか。このことを、私は心配しています。

そういうわけで、幸せの3つ目の因子は「なんとかなる」。前向きで楽観的な人は幸せです。4つ目は「ありのままに」。独立していて、自分らしい人は幸せです。これを言いますと「会社で夢や目標を持ってみんなで信頼関係を築くのはいいけども、楽観的で自分らしくというのは会社にはそぐわないんじゃないですか?」という方がたくさんおられます。

楽観的に、「原子炉を適当に作っといたけどまぁいいかなぁ」みたいな(笑)。そんな仕事されたら困りますよね。だから、楽観は仕事にはそぐわないんじゃないか、という方がおられます。

うちの博士課程の学生のひとりが、楽観の研究をしています。研究の結果、楽観にもいい楽観と悪い楽観があることがわかりました。悪い楽観はいい加減で「適当にやっとけばいいや」というものなのです。一方でいい楽観は「やるべきことはきちんとやり尽くしたから、後は思い切って楽しみながらいろんなことをやろう」というものです。

オリンピックの選手がよく言うじゃないですか。「もうやれることはやりました。あとは楽しみます」。ああいう楽観性と前向きさ。これは仕事にも必要ですよね。まさにイノベーションや新しいことをやる時に必要な、リスクテイクです。

リスクをとって、「よし、やれる」とやっていく際には、まわりのみんなの信頼が必要です。「やってみろよ」という、みんなの信頼があるからこそ、リスクテイクしてなんとかなるわけです。

それから「自分らしく」についても誤解されがちです。自分らしいのはいいけれども、勝手に「早く帰りまーす」と言う人ばかりだと困りますよ、と。「自分らしく」はそういうものではありません。「誰がなんと言おうとこの新しいイノベーションをやってみます」。という自分らしい強さです。

あるいは、倫理感ですね。会社が間違った方向に行きそうな時に、「これは間違っている、絶対誰がなんと言おうと反対」と、力強く自分の正義感を表明する意味での自分らしさを持っている人は幸せです。

幸せの4つの条件についてお話しして来ました。「幸せ」というと、お花畑にいたり、のんびり温泉に入ってるみたいな……(笑)。リラックスした状態が幸せかな、と思っていた方もおられたかもしれません。

しかし、おわかりでしょうか。幸せの条件は、もっとやりがいのある、やる気のある状態なんです。「やってみよう」「なんとかなる」「ありのままに」。力強くドーパミンが出るような幸せですね。一方で、「ありがとう」と感謝したり、人との繋がりがあるほうの幸せは、オキシトシンやセロトニンといった愛情ホルモンが出るような幸せです。「やる気」と「優しさ」。この両方をバランスよく持っている人が幸せなんです。

「この仕事をすることで、人々が幸せになる」

私もいろいろと幸せな会社を見て来ました。そんなホワイト企業を見ていますと、先ほどの西精工さんのように、本当に幸せな会社は、まず、「やってみよう」がすごいです。

みなさんいかがでしょう? みなさんは、天命・天職と言ってもいいくらい、人生をかけて絶対やり遂げたい仕事をしていますか? 天命・天職が見つかっている人は、ものすごく幸せです。そこまではいかないけど、まあまあやりがいがある仕事をしている、という人は、まあまあ幸せです。ちょっとやりがいを感じていない、という人は幸せ度が下がります。

ただ、やりがいを感じるかどうかは、仕事の内容だけでは決まりません。もちろん適材適所も大切で、あまりにも向いていない仕事に着いている人は、向いている仕事に移った方がいいでしょう。

しかし、たとえば、先ほどの西精工さんは、ネジを作っている会社です。ナットです。ネジを悪く言うつもりはないですけど、一見、地味ですよね。そのネジを作ることを、本当に社員の人たちが生き生きとやっていらっしゃるんです。みんなで力を合わせて、もちろん世界最先端の自動車用のネジを作られているんですけど、これを0.01mm改善するということにみんなが取り組んでいる。

端からみると地味な仕事に見えても、チームとして力を合わせてやることに、心から生きがいを感じておられるわけです。つまり、「天命、天職みたいな仕事はほとんどない」と言う人がいますけど、そんなことはないんです。どんな仕事だって、心から一緒に働きたい仲間とやれば幸せです。

それから、先ほども申し上げたように、人様の役に立つこと(利他性)は幸せです。重労働をやらされ感でやっていると不幸ですけど、「この大変な仕事をすることによって、人々が幸せになるんだ」と思うと、幸せにやりがいを感じながら働けます。

そういうことをちゃんと考えながら、前向きにリスクテイクして自立して、そして社員同士が本当に信頼のある関係を築いて働いていれば、人はものすごく幸せに働くことができるんです。昔の日本にあった良さを思い出しながら、幸せな会社を作っていく、ということが、これからの日本ではできるんじゃないかと思っています。

「大企業で1万人が全員幸せ」をできるのは日本企業しかない

ここからは、幸福経営学の先端的事例をお話ししたいと思います。

幸せの経営学といえば、先駆者は坂本(光司)先生ですね。ご存知でしょうか、『日本でいちばん大切にしたい会社』という本のシリーズがあります。社員が幸せになる経営に興味がおありでしたら、ぜひこれらの本を読んでいただくといいと思います。

いい会社がたくさん載っています。これは冗談か夢じゃないかと思えるくらい、本当に社長も社員も幸せに働いている会社がある。そして、幸せ度が高いと結局は利益も出るので、持続します。

いろいろな調査によると、平均値で見ると、中小企業よりも大企業の方が幸せ度が高い傾向があります。収入もいいし安定もしているからでしょうか。

しかし、坂本先生の本に載っているような本当に幸せな会社は、ほとんど中小企業です。100人とか、多くても600人ぐらい。その100人に対し、社長が本気で社員を幸せにしようと考えていて、それが社員にも伝わっている。そうすると、本当に100人が家族みたいになる。こういうことは可能なんです。それから、天外さんがホワイト企業対象で表彰している会社も、ほとんどが中小企業です。

しかし、幸せな大企業は難しい。大企業は効率化が成功したから大規模化しているわけですから、そもそも幸せの条件に相反します。大企業はピラミッド組織になっています。この全員が幸せになるのは、簡単ではないと思います。では諦めるべきかというと、私は、まさに日本こそが、それをできるんじゃないかと思うんですよ。

一見話は変わるようですけど、自動車を発明したのは日本ではないですが、世界一信頼性が高くて、安全で、乗り心地も良い車を作ったのは日本企業だと思うんですよね。

ということは、大規模で複雑な問題を、細かいところまで擦り合わせてきちんと最後まで作り上げるのは、日本人の素晴らしい力だと思うんです。これから推測するに、「大企業で1万人が全員幸せ」という会社を作れるとしたら、これは日本企業しかないと思うんですよ。

これこそ働き方改革です。1万人が幸せで、創造性が3倍で、みんなで力を合わせて生き生きとすばらしい製品やサービスを作っていく。こんなことができたらすばらしいですよね。こんな複雑で難しいことを成し遂げられるのは、日本企業しかないんじゃないかと思うんです。

やらされ感は行き過ぎるとバーンアウトする

私は「みんなで幸せでい続ける経営研究会」を去年から始めていて、大企業十数社の経営者と一緒に「大企業が幸せになるにはどうすればいいか」を考えています。

大企業が幸せになることはさらに難易度が高いんでが、ぜひこれを実現して、日本から幸せのモデルを世界に向けて発信したいと思っています。みなさんもご興味のある方はぜひ一緒に、研究と実践の活動をしていただければと思います。

ほかにも幸せな会社の例があります。「Great Place to Work」は、アメリカ発で日本にもありますね。いい会社を表彰しようというシステムです。あるいはグーグルが始めた、マインドフルネス。これも最近流行っていますね。これも私から見ると幸福経営学の一環だと思います。

瞑想することによって心が整って、そして創造性や生産性が高まる。これをグーグルが検証しました。アメリカのグーグル社員の1割くらいは朝、瞑想をしてから仕事に入るそうです。

もともとは仏教にあった瞑想が、ビジネスに取り入れられて、日本にも入ってきている。今や日本でも、瞑想してから仕事する人が出始めています。日本だと宗教への抵抗感が少なくないためか、アメリカやヨーロッパほどは広まってませんけれど。

もう1つ注目すべきは、ワークエンゲージメントという概念です。エンゲージメントは結婚という意味ではなくて、「仕事に没入する」。「フロー」という概念に近いと言われています。「フロー」とは、没入して、本当にやりたくてしょうがない状態になっていること。そうなっている人は、実はバーンアウトしにくいんです。

ですから、これも働き方改革をする際に気をつけるべきなんですけど、労働時間が長いと病気になるんじゃなくて、ワークエンゲージメントの状態、本当に快適な状態、やりがいとやる気がある状態だと健康に生き生きと働くことができます。

一方、「今すぐやんなきゃいけない」「上司に言われたからやらなきゃいけない」というやらされ感でやっていて、それが行き過ぎるとバーンアウトになります。バーンアウトとは、「燃え尽き症候群」。そうすると、心の病になってしまうわけです。

働き方改革の際に重要なのは、労働の量だけではなく質について考えることだと思います。労働という言葉自体が、なんだか、やらされ感ですけど。

(会場笑)

労働というか、やっている仕事をやりたくてしょうがない、という状態になっていれば、けっこう長時間労働になっても大丈夫です。いくら長時間労働をしても良いとは言いませんが。

個人的には、労働時間について議論するよりも、裁量労働制によって、各自が労働時間を選べるようにすべきだと思います。もちろん、仕事の質の改善とセットで考えることは前提ですが。

「従業員幸福度」を考えた経営をすべき理由

社員が幸せな会社には、たくさんの素晴らしい例があるんですが、一部をお話ししましょう。ネッツトヨタ南国さん、有名ですよね。横田(英毅)元会長。ネッツトヨタ南国の横田さんは、「会社の目的は、社員を幸せにすることだ」と明言されます。

そうするとよく反論されます。「いや、社員が幸せになるって気持ち悪い。そうじゃなくて、社会を幸せにするべきでは」。よくそういう反応があるので、それを横田さんにぶつけてみると、横田さんは、ぶれません。「経営者は社員を幸せにすることを第1に考えるべきだ。そうすると、大切にされた社員は社会を幸せにしようと思う」というんです。

幸せは「うつる」んですよね。そういう研究もあります。幸せな人は幸せを広げることができるんです。しかし、「自分は不幸でもいいから周りを幸せにしよう」が行き過ぎると、さっきのバーンアウトになります。震災復興の時に、本当に心優しい人がたくさん援助に行ったんです。「自分のことはどうでもいいからみんなを助けよう」。これが行き過ぎるとどうなるかというと、残念なことに、バーンアウトになってしまうんです。そうすると、彼らも助けられる側に回ってしまう。全員じゃないですよ、もちろん心の強い人もいます。

なにが言いたいかというと、やはり自分が幸せであること。幸せ度が高いこと。幸せとはなにかを理解して、幸せ度の高い状態に保ちつつ、人々のために尽くすこと。それらを持っている人は、幸せを広めることができるわけです。横田さんのいう「社員を幸せにする」も、幸せの連鎖のスタートです。社員が幸せならば、もちろんお客様に対してもすごく優しい、いい接し方をするわけですよね。こうして幸せな世界が広がっていくわけです。

横田さんが言っていました。「私たちは『家族を幸せにすることが目的だ』と言っても、誰も『おかしい』と言わないじゃないですか。なのに、会社の経営者が『家族のように大切な社員を幸せにすることが一番大切だ』と言ったら、『自分勝手だ』と言う人がいます。それはおかしいんじゃないか」と。

鎌倉投信の新井(和宏)さんをご存知ですか? 鎌倉投信は、リターンのいい会社に投資するのではなく、「いい会社に投資しよう」とおっしゃいます。もっというと、いい会社にするために、口も出されます。そういう会社が現れはじめているんです。

これからやるべきは、やはり「社員を幸せにする経営」だと私は確信しています。私が先ほど申し上げた「みんなで幸せでい続ける経営研究会」も、なんか気持ち悪い名前じゃないかと誤解する人もいます。

(会場笑)

「みんな」とは、「自分たちが幸せになることを起点に世界のみんなも幸せにする」という意味です。なにに力を入れているかというと、まずは幸せを「測る」ことです。幸せを測ることによってこそ、幸せ度を高められます。たとえば、幸せの4つの因子についてのアンケートをすることによって、それぞれの人の幸せの形を測ることができます。

私たちは、健康を測ります。健康は「健康」「不健康」という10段階があるというような単純なものではなく、体重や血液検査、血圧、睡眠時間など、いろいろなことを測れますよね。それによって、健康が多面的に理解できます。その結果、私たちはより健康になり、今や世界一の長寿国になったわけです。

幸せも同じです。一つの尺度で幸せかどうかだけを測るのではなく、もっと分解して、幸せをいろいろと測る。そうすることで社員の幸せ度を多面的に理解でき、幸福度を上げていくことができるんです。上げていくと、先ほどから申し上げているように、経営上もいいことがたくさんある。

これからは従業員満足度ではなく、「従業員幸福度」をきちんと考えた経営をやっていくべきだと思っています。満足は部分ですが、幸せは全体だからです。そのためのプログラムも作っています。

長時間労働より先に「不幸な働き方」をやめるべき

最後にひとつだけ実践例を示したいと思います。

私たちの研究グループでは、ある会社の「幸福度向上活動」を行なったんです。そのメーカーでは、いつも改善提案活動をやっている。「改善提案やっているんだったら、『幸せ改善提案活動』をやりましょう」と言って、やった結果がこれです。これを見ると、一見バカバカしく見えるかもしれませんが、面白そうな活動が並んでいます。

(会場笑)

「お菓子タイム」「感謝BOX」などなど。「普通じゃん」と思われるかもしれませんが、この下を見てください。この会社、実は、グループ10社中幸福度が最下位だったんです。

この会社の社長は、ホールディングの社長に「君の会社は、業績は伸びているけど、社員が不幸だから、もっと社員の幸福度を上げろ」と怒られたそうです。そこで、その社長は私のところに来られました。その結果、月に1回訪問して、半年間、幸福度を高めるプロジェクトを行いました。

それでやったのがこれですよ。部ごとに集まって自分たちで考え、レクリエーションしたり、感謝BOXを設置したり、と一見子どもじみていたり馬鹿げていたりするように見える活動を行なったんです。その結果、幸福度が半年で10社中5位にまで上昇したんです。

私は思いました。いかに、多くの会社は、幸福度向上を怠っていることだろうか。ちょっと会話をしたり、ちょっと馬鹿げたような無駄に思えるような会話をする介入をしただけで、幸福度はいかに向上することか。10社中最下位から5位ですよ。半年でこれだけ上がり、創造性も生産性も上がりました。ある社員は、鬱気味だったのが治ったといっていました。働けない人も減るわけです。

みなさんの会社は、幸せな会社ですか? きっと、最下位レベルではないとは思うんですけど(笑)。どの会社も、少しずつ幸せ度を高める活動していくことによって、確実に、幸せになっていくことができるのです。

最初に述べたことをもう一度繰り返します。働き方改革の順番が逆になると不幸になります。長時間労働をやめるのもいいですが、最もやめるべきは、不幸な働き方です。最もやるべきことは、まず、幸せになること。幸せは結果ではなく原因です。いかに幸せになるかを、皆で考え、実践すること。

すべての会社は、もっと幸せになるべきなんです。私は幸せの研究をしているので、幸せについての最新情報をたくさん知っています。そうすると、どんどん幸せになっていくんです。

(会場笑)

私ばかりが幸せになり続けている場合ではないですよね。私は、地球上のすべての人に、幸せになってほしいと願って、幸せの研究をしています。ぜひみなさんにも幸せになっていただきたい。心から願っています。みなさんが幸せになれば、みなさんの会社、お客様、そして世界中のみんなが幸せになっていきます。ぜひ日本から、いっしょに、幸せな世界を作っていきましょう。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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