2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
サンシャイン水族館の飼育員に密着!(全1記事)
提供:株式会社BSジャパン
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ナレーション:人気(ひとけ)もまだまばらな朝7時の池袋。そこへ出勤してきた青年。
杉本巧樹氏(以下、杉本):おはようございます。
ナレーション:杉本巧樹さん、23歳。いったいどんな仕事をしている人なのでしょうか?
杉本:私は水族館の飼育員をしています。
ナレーション:池袋のランドマーク、サンシャイン60を含むサンシャインシティの屋上に、およそ40年前に開業したサンシャイン水族館。
年間およそ120万人が訪れる日本有数の水族館。大都会のビルのなかでおよそ550種、2万3,000点もの生き物たちの生態を間近で感じることができます。なかでもトレーニングされたアシカたちの楽しいショーや、まるで都会の空を羽ばたいているようにも見えるペンギンの水槽などは人気のエリア。連日大賑わいです。
杉本さんはずっと水族館で働くことに憧れていました。
杉本:高校生ぐらいの時には、水族館の飼育員というのは自分の中で決め始めていて、北里大学の海洋生命科学部を卒業しました。 ナレーション:しかし、飼育員への道は狭き門でした。
杉本:思うようにそういった飼育員の募集が出ない年もあって。運がよくて、私の年はわりと募集もありまして。
ナレーション:そして昨年、念願の水族館の飼育員として就職。しかも、パフォーマンスなどを行うお客さんに大人気のアシカの担当です。しかし、楽しいことばかりではありませんでした。
杉本:最初はやっぱり多くはできないので、こういった裏のところから私は最初習っていきました。一番肉体的につらいのは搬入ですね。
ナレーション:決して派手なことばかりでない裏方の仕事。
杉本:デザイン会社など、そういったほかの業者さんとも話し合いながら……。
ナレーション:入社して知った思いがけない仕事の内容。好きなことが仕事になったときの意識の変化。今回はそんな憧れの職場で見た理想と現実に迫ります。
この番組は「働くって“だから”おもしろい!」をテーマに、全世代に向け、転職や学生たちの就活など、働き方のおもしろさとその魅力を伝える番組です。
友近氏(以下、友近):こんばんは。友近です。
原田修佑氏(以下、原田):テレビ東京アナウンサー、原田です。
そして、これまで企業や求職者のサポートを続けながら、就活や転職などをテーマに国内外で年間200回以上の講演を行ってきた、仕事のエキスパート、佐藤裕さんです。
佐藤裕氏(以下、佐藤):よろしくお願いします。
原田:さて、今回は夏らしい水族館のお仕事です。みなさんサンシャイン水族館は行ったことありますか?
友近:あるかな……ないかもしれないです。
原田:本当ですか。裕さんは?
佐藤:昔行ったことがあって、今一番行きたいかもしれないです。
原田:今一番行きたい?
友近:へえ、水族館に行きたいってことですか?
佐藤:はい。あの話題の天空のペンギンのやつが。
原田:7月にちょうど新しく展示されている。
佐藤:そうですね。
友近:水族館は、本当に大きいよね。水槽が。
原田:大きいですね。
友近:あの中で人間も一緒に泳いでるでしょう?
原田:大丈夫なんですかね。サメとかと一緒に泳いだり。
友近:そう。怖いし。あと、水はきれいなのかとか思っちゃうよね。もちろんきれいにしてる。それがお仕事なんでしょうけどね。
原田:(VTRで)ちょうど今、水槽を磨いてましたね。
ナレーション:サンシャイン水族館の飼育係はアクアスタッフと呼ばれ、魚類・両生類担当の魚チーム、アシカ・アザラシなどの哺乳類担当の海獣チームなど、4つに分かれています。
海獣チームの中でも、アシカやアザラシを担当する杉本さん。まず行うのは餌の搬入。
杉本:今日ですと、だいたい700キロぐらいの餌をこれから運んでいきます。
ナレーション:餌を手作業で荷降ろしします。冷凍のイワシや貝類など、1箱およそ10キロ。70箱にもなります。
杉本:餌の搬入はだいたい1個10キロとかして、それを何十個と運んでいくので、それはけっこうな労働です。一番肉体的につらいのはそういった搬入ですね。
ナレーション:このような重労働も生き物たちを飼育するには欠かせない仕事です。しかし、どうして飼育員になろうと思ったのでしょうか?
――目指すキッカケ
杉本:幼い頃に父親の影響もあって山や海などの自然に……例えばクワガタとか生き物を夏に採りに行ったり、そういったところによく連れて行かれた影響もあって、やっぱり自然というものが好きで。
その中でも個人的に海の中の生き物というのがすごく魅力的で、そういったところで、「将来なにになろう」と考えた時に、水族館の飼育員を選びました。
ナレーション:高校に入る頃には目標を定め、大学ではクラゲの研究をしながらも、水族館でアルバイトやボランティアをしていました。覚悟はしていましたが、やはりつらい作業です。
搬入が終わると、次は餌の調理。
杉本:こんなふうに(凍った餌を)水と空気の力を使って溶かして。やっぱりどうしても身が崩れたりとかがあるので、そういったものを選別して、動物たちにはちゃんとしたきれいなものを与えています。
ナレーション:今回はバイカルアザラシの昼食を用意するそうです。
杉本:サバ、サンマ、イワシ、シシャモという4種類の餌を使っているんですけど、サバだったら200グラム、サンマ300グラムというふうに、それぞれ決まった量の餌を与えて。そこらへんの餌の管理もしています。
スタッフ:匂いがすごいですね。
杉本:もう自分の手から魚の匂いは取れないぐらいになっちゃうので、たぶんみんなもう誰も気にしていないです(笑)。
(魚を指して)シシャモです。オスのシシャモを与えています。
選別してメスがあった場合は捨てるんですね。メス、私たちは子持ちシシャモとかよく食べると思うんですけど、卵を摂取しすぎると消化に悪かったり、そういった理由からあえてオスのものだけ与えています。
ナレーション:10時のオープンに向けて館内は準備に追われ大忙し。そこへアシカを伴ってステージに現れた杉本さん。オープン直前になにが行われるのか!?
昨年、飼育員となった杉本さん。オープン前に行ったのはアシカのショーのためのトレーニング。実はこの日々のトレーニングで、ある重要なことを行っているのだそうです。
杉本:こんなふうに、アシカの体を触って毎日、ケガとかないかとか、口の中を見て……。
ナレーション:生物の観察をするためにも欠かせない仕事です。今ではアシカと仲が良い杉本さんですが、入社時には違う部署を希望していたそうです。
杉本:大学時代はクラゲを研究していたので、希望はお魚チームのクラゲとか、ああいったものをやりたいなという希望はありましたが、パフォーマンスなどをするアシカチームになるとはぜんぜん思ってなかったです。
スタッフ:最初に(配属を)聞いてどう思いましたか?
杉本:すごいビックリしました(笑)。正直、自分の中のちょっと興味が薄い部分もあったので、知識もないし焦りも感じつつ「大丈夫かな?」と思っていました。最初は正直怖かったですね。「襲われたらどうしよう?」とか。
もちろんそんなことはなかなかないんですが、相手をしているのは生き物ですので、なにがあるのかわからないのと。やっぱりそういった信頼関係が最初はない中、少し不安なところはあったんですけど、今はアシカたちとも仲良く、日々独り言のようにアシカに会話しながら楽しくやっています。
――仕事の楽しさ
杉本:生き物・アシカにもそれぞれ個性があって性格があるので、毎日毎日同じような日々はなかなかなくて、変化を楽しめるというところ。また、自分の成長とともに逆に動物たちの練習の成果であったり、そういった成長も見られるので、そういったところが楽しいところです。
ナレーション:午前10時、オープンを迎えました。
オープン早々、お客様のエリアを抜け向かったのはバックヤード。そこにはなにやらレバーがたくさんついた機械が。
杉本:これがろ過器になります。
ナレーション:水槽の水をろ過しているこの機械、定期的に清掃が必要なのだそうです。
杉本:少し水を抜いて、最初は空気の力を使って固まっている汚れを崩していきます。
ナレーション:ろ過装置を清掃する必要性はわかっていますが、実際やってみると最初は戸惑ったそうです。
杉本:やっぱり、いざやってみると、今まで触れていたものが本当にこんな小さな水槽の小さなろ過槽という感じだったので、ものが大きくて水量も扱う量も違って。ちょっと操作を間違えると大変なことにもなりかねないので、そういったところでは最初は戸惑いましたね。
ナレーション:就職をしてまだ2年目。1年経ってみて、働くことへの気持ちは変化したのだろうか?
杉本:例えば、少しバルブが開いていたことによって、水が漏れていたり、水槽の水位が少しずつ減っていったりですね。やっぱり、責任感というところも、自分の発言だったり、一つひとつの仕事に対してそういったものが生まれるので、もちろん当たり前ではありますけれども、今までの学生気分ではやっていけないところがある。
本当に社会人1年目、やっぱりちょっと軽い気持ちでやって失敗してしまったところもあるので、そういったところが本当に身に染みて勉強になった年でした。
ナレーション:就職し、最初の1年で成長した杉本さん。責任を感じながら、30度を超える炎天下のなか1人で清掃すること、およそ1時間。孤独な作業です。
スタッフ:暑いですね。
杉本:そうなんです。基本的に飼育生物が屋外にいるので。「黒いね」ってすごい言われてしまいますね。
スタッフ:いい感じですよ(笑)。
ナレーション:この日は3つの装置を清掃しました。いくら暑くても、生物を扱うからには重要な仕事なのです。
友近:でも、希望していたものに、飼育員になりたかったということなんですよね。それになれているというのが、まず1つすばらしいことで。いくら夢見ても努力してもその希望ポジションにはいけませんからね。
原田:そうですね。でも、アシカの飼育員をしていて、非常に懐いていたというか、アシカも言うこと聞いてましたね。すごいですね。
佐藤:2年ではあそこまでなかなかできないんじゃないかな、という印象もありますけどね。
友近:めちゃめちゃ難しいって聞きますけどね。
佐藤:ですよね。
原田:裕さん、新人の段階で抱えるさまざまなこと、ここに見えてくるキーワードはどんなものでしょうか?
佐藤:はい。「理想と現実におけるギャップ」です。多くの方が、ギャップというのは「なにかが違う」ことだと思うんですが、「働く」についても、まったく違う環境だったり、人だったり、そもそもの自分のイメージとか、いろいろなギャップが生まれるということが今日はテーマなんじゃないかなと思います。
原田:最初からやりたい仕事ができるというのは、なかなか難しいことですよね。
友近:そりゃそうですよ。
佐藤:それが幸せじゃない可能性もありますからね。
ナレーション:12時を過ぎ、館内も賑わっている頃、早番の杉本さんはお昼の時間。実際入社して思いがけなかった仕事もあったそうです。
杉本:はい。今、うちで特別展「もうどく展2」をやってるんですけど、それの担当だったので。
ナレーション:杉本さんの担当した「もうどく展2」は、毒を持った生物が多数展示されている特別展です。
杉本:アミューズメント施設という面もあるので、イベントなり、そういったものを企画していかなければいけないのは少しわかってはいたんですが、どの生き物を展示しようかというところから始まって、会場の装飾などの部分も……もちろんそういった部分はプロの方にお願いしてしまうんですが、うまく自分たちの思いを伝えないとやっぱり違ったものができてしまうので。
ナレーション:初めて担当した企画という仕事。美術デザインの発注をするなど想定もしていなかったこと。生物の知識だけではない能力も求められる仕事でした。水族館の飼育員として求められる人材について、副館長の長塚さんにお聞きしました。
長塚信幸氏(以下、長塚):社会人として一般常識を持っていて、あとはいろいろなことに興味を持って首を突っ込む。そういう姿勢がほしいなと思いますね。1つのことにいくよりは、アンテナの大きさ・感度が大事だと思っています。
ナレーション:午後ウェットスーツに着替え、アシカの水槽の清掃に向かいます。実はアシカに飼育員としての大切なことを教わったそうです。
ナレーション:水族館で働く杉本さん。午後はアシカの水槽に潜り、清掃します。スキューバダイビングのライセンスのほかに、潜水士の国家資格も取得しています。いざ水槽の中へ。心配そうにアシカも見守ります。
杉本さんは、あることをきっかけにアシカから学んだことがあるそうです。
杉本:少し軽い気持ちでアシカと一緒にトレーニングしているなかで、やっぱり、そのアシカが私のことをまだ新人だとわかっているので、ちょっとナメられて水槽にボンと、アシカは遊び半分ですけど、突き落とされてしまったことがありまして(笑)。
もちろん私にもアシカにもケガはないんですけれども、ペットのような感覚ではやっぱり接することができない部分もありますので、もっと考え方を改めようとは思いました。
ナレーション:軽い気持ちで行ってしまったトレーニング。生物を扱うことは簡単なことではないと、覚悟の甘さを思い知らされたできごとでした。
アシカのショーを見ようとお客さんが集まる後ろで黙々と水槽を磨きます。孤独と戦いつつも、実はやりがいがある仕事。
杉本:とくに小さいお子さんとかよく「なにしてるんだろうな?」って見てくれるので、そういったところでこういった、アシカだけじゃなくて飼育員さんのほうにも目を向けてくれるので、ちょっとうれしく思いつつやっています。
ナレーション:清掃すること40分、見違えるようにきれいになりました。
杉本:このあと悠々ときれいなところで泳いでくれるかなと思いながらやってました。
ナレーション:やっと慣れてきた飼育員の仕事、入社当時、先輩に言われた心に残る言葉があるそうです。
杉本:先輩に「洗い方に愛がないな」って言われました。最初は、例えば洗い物をしてるときにちょっと雑であったり、やっぱり自分の中では洗っていたつもりが泡がほんの少し残ったりとか。
生き物を扱っていくなかで、そういったものも自分たちでしっかりと管理していかないと、生き物たちにツケが回ってしまうので、そういったところはやっぱり厳しく指導されました。
ナレーション:子どもの頃から憧れていた水族館の仕事。しかし、そこで見えたのは経験の浅い自分と意識の低い自分。
スタッフ:この仕事の一番の楽しさはなんですかね?
杉本:やっぱり生き物の魅力をお客さんに知ってもらうことですね。
ナレーション:現実をきちんと受け止め、生き物のため、お客さんのため、今日も夢の仕事を続けます。
友近:まず、あの水槽の中の掃除、大変そうですね。あれをまたお子さんに見せるというのも勉強にもなりますしね。
佐藤:いいですね。そういう仕事もあるんだということが。
友近:そうそう。でも、やっぱりいろんなことに興味を持つとか首を突っ込んでみるって好奇心が大事ですよね。
佐藤:そうですね。
友近:どの企業や仕事でも言えることだと思いますしね。無関心だとなにも広がらないですし。企画みたいなこともやらせてもらってて、それがかたちになるとやっぱりうれしいですしね。
私、たぶん動物を扱うって、すごくデリケートやから怖いというのが先に来ちゃうんですよね。でも、興味はあるんですよね。その興味があれば一歩踏み込んでみてもいいということなんでしょうね。触れてみてからわかることもあるだろうしね。
原田:そうですね。
友近:でも、賢いって言うてましたよね。アシカもね。
原田:そうですね。新人がわかる。
友近:(原田氏に)見透かされるで。
原田:間違いなくアシカにバカにされそう。
(一同笑)
友近:ねえ。
原田:ねえって(笑)。
ナレーション:それでは、佐藤裕による今回のジョブポイント。
佐藤:理想と現実のギャップ、これは「働く」については必ずあると思っています。イメージでいうと90パーセントぐらいはギャップがあると思っていて。でも、90パーセントの中身が、良いギャップもあるんです。悪いギャップもある。なので、そこはもう期待値で。
大事なのは、10パーセントはもともと思っていたこと。そこが合っていれば、やっぱりどんなに苦しくてもまずは進めてみるということが、あとにつながるんじゃないかなと、そんなふうに思います。
友近:そうですね。
ナレーション:水族館の飼育員になって2年目。右も左もわからなかった自分が、自ら経験し、いろいろな教えを受けながら、やっと周りが見えるようになってきた。
――将来の夢
杉本:まず、私の夢自体が水族館の飼育員だったので、その夢自体が叶った今は、今度は逆に飼育している生き物の本来の姿を見たいなと思いまして。主に海外とかになってしまうんですけれども、ゆくゆくはそういったところで現地の生き物たちを見て、そこで得たものを自分たちの飼育に活かせたらいいなと思っています。
ナレーション:小さい頃から憧れていた水族館の飼育員。それが現実になった時、本当の夢はもっと先にあることを知った。
働いて生まれたギャップ。つらいことや失敗をしたこともあった。でも、今立っているのは入り口にすぎない。目標をもっと先に見据えながら、現実を一歩一歩進んでいく杉本さんにとって仕事とは?
BSジャパン「ジョブレボ!」にて8月4日(金)放送
株式会社BSジャパン
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