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IoTの先へ - インターネットを活用し「体験」を共有する社会へ(全2記事)

2017.10.31

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IoTの先にある「DoT」を目指して デジタル化が変えていくモノづくり企業の未来

提供:ダッソー・システムズ株式会社

2017年10月3日から6日にかけて行われた、アジア最大級の規模を誇るIT技術とエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC JAPAN 2017」。ダッソー・システムズ株式会社による講演「IoTの先へ - インターネットを活用し『体験』を共有する社会へ」では、モノづくりからコトづくりへとトレンドが移り変わる時代のテクノロジーによる業務変革について語りました。

モノづくり企業に求められる変化

立田新氏(以下、立田):3番目、「モノづくり企業に求められる変化」と書いております。

ここでは消費者の観点ではなくて、消費者のみなさまに提供する製品や、製品プラスアルファのところで、比較をしてみました。モノづくりのところでは3つほど書いております。

これまではどちらかというと単品の製品を提供して、基本的にはハードウェアベースの製品でした。ハードウェア中心の製品になりますと、もちろん1つしか形を提供できませんので、基本的には1つのニーズにしか対応できませんでした。

ただこれがコトづくりになりますと、コトづくりを構成する要素としては、製品だけではなくて、サービスであったり、コンテンツであったり、いろいろな要素でもちろん提供されているわけですね。

AppleのiPhoneですとか、iPhoneに付随するサービスがいい例かと思いますけれども、製品自体はiPhoneであっても、サービスやコンテンツという意味では、Apple Store経由で音楽を購入したり、もしくは動画を購入したりということで、1つの体験、コトづくりを構成している要素としては複数あるわけですね。

もちろんそれを実現していくには、お客さんの多様なニーズに対応していくには、ハードウェアベースであれば1つしか形が取れませんので、ソフトウェアというかたちでお客様の多様なニーズに対応していくというところがあるかと思います。

そういったかたちで製品がどんどん変わってきています。そうなってくると、実際にそれを提供する企業様もどんどん変わってきています。企業活動自身ですね。

(スライドの)左側のモノづくりのほうを見ていただきますと、例えば、これまでは企画や設計を行っていたのは基本的に製品だけでした。バリューチェーンで見ても、基本的には自社主義というところがありましたけれども。

これがコトづくりになりますと、体験というものを企画していく、もしくは体験を演出していくと言ってもいいかと思います。そうなってくると、体験をつくっていくためには、ただ単に製品だけではなくて、製品を使う人であったり、その人が製品を使う環境であったり、状況などを含めて、企画や演出をしていくことが求められます。

ここでもiPhoneの例がいいところかもしれませんけれども、iPhoneの場合であれば、音楽を買う時には、わざわざCDショップに行ってCDを買うという流れではなくて、Apple Storeに行ってボタン1つ押せば購入できる。ある意味、Appleは人がどういう工程を経て価値を享受していくかというところを変えていっています。

バリューチェーンに関しても、コトづくりになりますと「流動的、アライアンス」と書いております。これはもちろん、Appleさんで全部が提供できるかというとそうではなくて、例えば、コンテンツを提供している音楽の会社様、もしくは映画会社様含めて、いろいろな会社様と提携していく必要があるという意味で、「アライアンス」と書いております。

バーチャルな世界とリアルの世界が近づいていく

同時に、IoTが今どんどん広がってきているわけですけれども、これを実現していくためには、IoTイコール、いわゆるデジタル情報をインターネット上で介在させるわけです。そのため、やはりいろいろなものをデジタル化していかなければ、そもそもそれが成り立ちません。

今までは、例えばモノづくりをしていく際には基本的には現物主義でした。なので、ある程度設計が終わった段階で、試作をつくるにしても、基本的には試作というのは実際のモノをつくってみる。それで、検証する際には、例えば落下させて強度が十分かを含めて見ているという、現物主義のところがありました。

実際に業務を行うにしても、これまでは各部署単位で最適化されているという、どちらかというと局所最適というところがありました。また、一番下の検証方法のところにいっても、これまではどちらかというと、お客様のニーズを先読みして、お客様がこういうものをほしくなるだろうということを前提にして、製品をつくって市場に出していたというところがあります。

これが、コトづくりの流れになってくるとどうなるかというと、今まで現物で確認していたモノをバーチャル世界の中で検証していく。製品自体をそもそも電子化して検証できるようにするというところもありますし、これからIoTの時代、デジタル化の時代になりますと、情報の流通が圧倒的にモノを流すのとは変わってくるわけですよね。

そういう意味ではスピードを上げていかなければいけませんので、社内のプロセスも含めて最適化していかなければ、そのスピードは出せないと思っております。もちろんこれは社内のスピードだけではなくて、社外とコラボレーションするスピードも含めて、高めていかなければ、どんどん競合には負けていくだろうと思っております。

(スライドの)一番下に「アジャイル、ニーズ検証型」と書いておりますけれども、これまでは先ほどお話したように、ニーズ予測型ということで、ニーズを予測してモノをつくって提供していましたが、これからは開発している途中でもある程度検証できるレベルのものをつくって、お客さんに渡して、フィードバックループをモノ自体をつくる前に回す。

そういうことをやっていくことによって、「この製品が確実に売れる」という段階になったら製品を出すというかたちで、変わっていくだろうと思っております。業界ではMVP、Minimum Viable Productという用語があるんですけれども。お客さんに検証してもらえるレベルのものができたら、もうお客さんにどんどん渡して、売れるかどうかフィードバックをもらうという流れがどんどん出てくるだろうと言われております。

もちろん、こういったモノづくりからコトづくりへの変化も重要なんですけれども、IoTになりますと、よりバーチャルな世界とリアルの世界、現実の世界がどんどんくっついていくというところがあります。

(スライドを指して)この図では左側に現実の世界、右側にバーチャルの世界を書いております。

先ほどお話したとおり、これまではかなり現物主義でモノづくりをやっていたところもありますけれども、これがどんどん仮想の環境の中で、簡単に言うとパソコンの中で開発が進んでいくだろうと思っております。

実際に開発が終わって、製造して、お客様にどんどん使ってもらうようになったら、現実世界のほうでお客様が使っていく。それで、お客さんに利用されると、どんどんデータがたまっていきますので、このたまったデータが、またモノづくりをしている会社に戻ってくる。

それを例えば次の機種の開発に使ったり、もしくは新機能を開発して、今すでに使っているお客様にも、例えばソフトウェアのアップデートというかたちで提供していくことも増えてくるかなと思っています。

そういう意味では、Teslaさんがここでのいい例になるかと思います。Teslaさんの場合であれば、車を販売したらそれで終わりというモデルではない。Teslaさん自身は「そもそも車販売という業界ではない」と明確に言われています。

Teslaさんの場合であれば、一度車を販売した後の新機能の提供ですね。例えばオートパイロットという新機能を提供するために、ソフトウェアのアップデートで新しい付加価値を提供して、持続的なマネタイズの手法を確立されていたりするというところですね。

もちろん、これを実現していこうとすると、いろいろなものをデジタル化する必要があるというお話をしました。とくにお客さんのやり取りも含めて、デジタル化していく必要がどんどん高まってきます。

モノ自体のデジタル化「Digitization of Things」

そういう意味では、左側にあるモノのインターネット、Internet of Thingsというものは、どちらかというと現物があるという前提において、現物からの情報を持ってきて、バーチャルの世界に転写するという、RからVへの流れかなと、基本的には思っています。

ただし、先ほどお話したとおり、デジタルで情報を流通していく、もしくは情報だけではなくて体験を流通させていくという意味では、そもそもVからRの流れ自身もデジタル化しておかなければいけません。

弊社がよくお話ししているのは、「DoT」と勝手に呼んでいますが、モノ自体のデジタル化ということで、「Digitization of Things」と呼んでいます。

いろいろなモノ自体をデジタル化しようと思ったら、モノ自体にもいろいろな要素があるわけですね。例えばこの図を見ていただきますと、モノをつくるにしてもいろいろな観点でもちろん考えていく必要があります。

モノをつくるにしても、プラスチックがあるのであれば、プラスチックの特性を考えると、分子レベルでのモデリングやシミュレーションができなければ、電子化もしくはデジタル化はできないですよね。

もしくは、モノづくりをしていく時には、例えば「iPhoneに十分な強度があるか?」ということであれば、(スライドの)一番左上の構造の部分ですし、「iPhone、熱出しすぎてないかな?」「バッテリーの温度上がりすぎじゃないかな?」という意味では、熱という特性もシミュレーションできなければいけないわけですよね。はたまた流体ということで、液体が流れると、気体が流れるという特性があるのであれば、そういったところを含めて、バーチャルの世界でモデル化してシミュレーションできるような必要があります。

もちろんこういった技術というのは、今までなかなかテクノロジーが追いついてなかったところもあるんですけれども、最近はわりとモノ自体の原理原則、特性であったり要素というものを、モデル化もしくはシミュレーションできるようになってきています。

そういった意味では、実は弊社は最近よくM&Aを行っているんですけれども、買収を行っている理由としては、基本的にこういったテクノロジーをどんどん取り揃えていこう、という方向性があります。

もちろん、モノ単体でどんどんデジタル化していく、イコール、モデル化・シミュレーション化していくというのは、非常に重要です。ただし、先ほどお話したとおり、これからはモノだけの時代ではないので、モノだけをデジタル化しても意味がないわけですね。

逆の言い方をしますと、例えば(スライドの)左側にある洗濯機の例です。

洗濯機の中に使われている部品や基板などを見てみますと、基板の中に使われている半導体含めて、例えばどういう挙動をするか、どういう動作をするかというところも含めて、きちんとデジタル化しておかなければ、製品自体のデジタル化はできないわけですよね。

もちろん家電という製品だけで見るのではなくて、家電が使われる状況ですね。例えば、(スライドに)「フロア」と書いてますけども、実際に洗濯機が使われる家の中だとか、そういったところも含めてデジタル化していかなければ、お客様の体験を体現することはできないと考えております。

実際、今日最後に事例を紹介するところは、建物・フロア・家電というところで、Boschさんとやらせていただいたプロジェクトがありますので、そこをご紹介してまいります。

弊社の別のセッションになりますと、(スライドの)一番上の街や建物、そしてフロアのレベルで、実際にシンガポール政府とやらせていただいたお話もしております。もし興味がありましたら、そちらの講演もぜひ聞いていただけたらと思います。

上流から下流までデジタル化

こういったかたちでいろいろと、モノ自体、もしくはモノにまつわるいろいろな要素をデジタル化していく必要がある、というお話をしてきました。そうしてくると、今までそもそも現物ありきの社内のバリューチェーン、社外とのバリューチェーンになっていましたけれども、それを変えていく必要があります。

具体的にいきますと、これまではどちらかというとモノづくりの後半のほう、実際に現物に転写していく、現物をつくっていくところに注力をしておりました。

これからはどちらかというと、実際にモノができる前の段階、コトづくりの段階というところにより注力していく必要があると考えています。ただし、もちろん最後には製品という現物をつくる必要がありますので、今後も右側のモノづくりと連携させておく必要があると考えています。

そういう意味では、これからは上流から下流まで、モノづくりの左側から右側まで、全体をカバーできるような仕組みが必要になってくる、というところですね。

弊社はそれを支えるような仕組みとして、一番下に「3DEXPERIENCEプラットフォーム」と書いておりますけれども、デジタル化をしていくところ、データを流通させていくところをやっていこうと考えております。

そうなってきますと、もちろんこのデータを流通させるのであれば、データの場合は現物と違って、あまり融通がきくわけではありません。データを流していこうと思ったら、加工が必要だったりします。それをできるだけ簡単にしていくためには、どんどんデータが簡単に流れていく仕組みが必要になってきます。

弊社はこのプラットフォームというものを使って、モノづくりの上流の段階から下流の段階まで、データを加工することなく流すことができるような仕組みを実現しています。

言葉で説明してもわかりにくいところがあると思いますので、ここから実際に動画のデモンストレーションをご紹介したいと思います。

動画で紹介する前に振り返っておきますと、モノづくり自体は、これからは上流から下流までデジタル化していくところが必要になってきます。

これから、それ以外にも変わってくるポイントがあります。例えば、今まで商品企画と呼んでいたところがありますけれども、これからは商品を企画するのではなくて、体験を企画する、もしくは体験を演出するというかたちになってきます。そういう意味では、お客様がどういう行動を取るか、製品自体をどういう設計にしていくかというところを含めて、デザイン思考的な観点が必要になってくると考えています。

それ以外にも、「システム設計」と書いています。これまでは製品1つをつくればよかったんですけれども、これからは製品だけではなくて製品の周りの人や製品を使う人、製品が使われる環境を含めて設計していく必要がありますので、そういった俯瞰的な視点が必要になるという意味で、「システム設計」と書いております。

あとは、実際にある程度モノがバーチャル空間の中でできてきますと、それを実際に検証できるような仕組みももちろん必要になってきます。現物ではなくてバーチャルの世界で検証できるようなところですね。

それで、実際にバーチャルの世界である程度設計が終わったら、あとは実際のモノをつくる、現物に転写する必要がありますので、そこはもちろん、これまでと変わらないところになるかなと思います。

ただし、これまで以上により柔軟なかたちで、モノをつくっていくかたちになるかと思います。みなさんもちろん、3次元プリンターですとか、メイカーズということで企業ではなくて個人の方々がモノをつくっていくという流れもありますので、これからはどこかの企業にお願いするのではなくて、例えば山田太郎さんにお願いするというかたちも出てくるかな、と考えています。

あとは、実際に販売するところになりますと、バーチャル体験をしながら、最近のテクノロジーでいうとVRなどを使いながら実際に製品の販売をしていくところも出てくるだろう、と思っております。実際にここの部分を動画でご紹介したいと思います。

ここからは実際に動画でご紹介していきますけれども、流れとしてはこちらの図のようになっております。(スライドの)左から今ご紹介したデザイン思考、システム設計、バーチャル検証、アジャイル、調達・製造・流通、そしてバーチャル体験ということで、ご紹介してまいります。

デジタル化でモノづくりはどう変わる?

(動画が流れる)

今、画面が切り替わりまして、デモの動画になっております。まずは、一番最初の「デザイン思考」からご紹介してまいりたいと思います。

このデザイン思考というのは、もちろんいきなり製品をつくっていく、体験をつくっていくのではなくて、最初はお客様がどういったものを必要だとか市場調査していくわけですね。これまでであれば、マーケティング会社に依頼していましたが、そうすると2、3ヶ月ぐらいかかるので、これからはインターネット上でリアルタイムに市場の情報を取っていく。

こういったかたちで、競合の製品と自社の製品が、どういう印象を受けているのかを含めて、リアルタイムで市場のインプットを取っていくことができるようになっております。

そして、次が意匠設計ですね。デザインというところでも、抜本的に変わってくるかなと思っております。

これまではデザイナーさんが会社の中で仕事をするのが当たり前だったかもしれません。しかし、デザイナーさんの発想はどこで出てくるかわかりませんので、これはちょっと突拍子がないかもしれませんが、これからはバスの中でそういうデザインを実際にスケッチにしていったり、ということもありえるかなと思っています。

あとはもちろん、このデザインを実際のモノにしていくためには、2次元のスケッチから3次元のスケッチにしていく必要があります。そういったところもきちんと電子化した状態で共有していくことができるようになっております。

これまでは、紙のスケッチを書いて共有していくということもあったかもしれません。今後は電子化した状態で、例えばお客様ですとか、場合によってはグローバルにいる同僚と、電話会議をしながらデザインをレビューしてもらうということが可能になってきます。これも電子化、デジタル化されているからこそ、可能になります。

もちろんこの段階で、すでにデジタル化されておりますので、簡単にレンダリングをして、本物チックな色を付けたり、将来的にどういう製品になるのかを、デザインの段階でもある程度想像できるようになってくると思っています。

次に「システム設計」のところですね。

ここは俯瞰設計やシステム設計と呼んでいますが、これまで製品単体で設計していましたけれども、これからはいろいろな要素が絡んでくると思っています。

これは洗濯機単品ですのであまり説得力はないかもしれませんけれども、洗濯機の中を見ても、そこには例えば基板が使われていたり、ドラムがあったり、ドラムを支えるためのバネがあったり、いろいろな要素があります。そういったところを、バーチャル空間の中で再現していくことによって、わざわざ実際のモノを使わなくても、ある程度は検証、確認ができるようになってきます。

これを現物でやっていたらお金も時間もかかりますが、そういったところを省略できるということですね。こういったかたちで、ドラムで使われているゴムのパッキンなども含めて、シミュレーションをしていく、デジタル化していけるというところでした。

次に、実際に洗濯機をインターネットにつなげるように、Wi-Fiのモジュールをつなげられるようにしているところです。こういったかたちで、どの部品が依存関係があるのかを定義できるようになっております。

これは逆の言い方をしますと、どの製品とどの製品が依存関係を持っているのか、どういうインプットを持っているのかということをきちんと定義していくことによって、それぞれのお客様が得たい体験がどういうものから成り立っているのか。製品の原理原則、もしくは体験の原理原則というものを図式化できるようになっています。

ある程度それが終わりますと、このドラムを回すとどれぐらいの振動が起きるのか、どれぐらいのバネの反発力になるのか、というところを含めて、この仮想環境の中でシミュレーションして確認していくことができるようになっております。

店舗の仮想化、販売後のデータ活用

そういったかたちである程度モノができてきますと、それを今度は仮想環境の中で確認できるというところですね。例えばこれはHTC社のVR機器を使っておりますけれども、これを使うことによって、まだモノがない状況でも、モノがどういう印象になるのか、どういう挙動になるのかを確認できるようになっています。

それで、ある程度モノができたと仮定していきますと、次に、実際に現物をつくっていくという流れになります。

ここでは、実際にそれをどういう流れでつくっていくのか、どういう加工をして、どういう組み立てをしていくのかというところを、バーチャルの世界の中でモデリングしたり、シミュレーションしたりできるようになっています。

ここも、ただ単に流れをつくるだけではなくて、実際にそれが可能かというところも含めて、3次元の情報を使いながら検証していく、もしくは測定していくということができるようになっておりますので、実際に3次元の中で検証を行って、最適化していくことが可能になっています。

「3次元の中である程度モノがつくれるだろう」となったら、実際に組み立て・加工される方向けに、電子版の作業指示書を含めて作れるようになっています。もちろん今でも電子版の作業指示書はあるかと思いますけれども、これがもちろん他のデータとつながっているので、なにかを変更した時にでもすぐに最新バージョンの情報が見られます。

これは実際に現場の方が入力されているところですけれども、先ほどの作業指示書を見ながら、「ここの作業は終わりましたよ」ということを、3次元の組み立て指示書を見ながら確認できます。そういった現場の情報はダッシュボードで見られるようになっていますので、工場長などは必要な対応をすぐに行うことができるというかたちになっております。

ある程度モノができてきますと、それをいかに市場に流すかというところになります。そのサプライチェーンや物流の最適化も含めて、このバーチャル環境の中でできるようになっています。

あとは、一番最後に販売というところになってまいります。販売するにしてもいきなり販売するのではなくて、店でこの製品を置いた場合にはどうなるだろうという店舗の仮想化を含めて、できるようになっています。

「店舗の中でどういう展示、棚割りをしたら一番売れるのだろう」というところをバーチャル化をしていくことによって、一番売上効率が上がるような配置をするということが、仮想環境の中で事前に検討しておけます。

実際に店のほうで販売するにしても、現物を置いて販売するのではなくて、こういったVRを使いながら、この製品を実際に体験してみる。お店のスペースの関係もありますので、全部のカラーバリエーションやモデルを置けるわけではないですよね。それがVRの世界であれば、ワンクリックでどんどん切り替えることでそれが可能になっていきます。

もし「ちょっと中身を見たい」ということであれば、現実ではできないような分解をしたり、中を見たりすることができます。

実際にこれをお客様に買っていただきますと、インターネットにつながった洗濯機になります。これは今、MicrosoftさんのAzureと連携した、洗濯機のデータを取ってきたものを表しています。

実際に洗濯機を使っていただきますと、どんどんデータがたまってくるわけですよね。そのデータを、今回の例であればMicrosoftさんのAzureですけれども、クラウドのほうにためていくことができます。

それで、このお客様がどういう使い方をしているのか、何時にどういう設定で使っているのか、その時の洗濯機のパラメータ、例えば回転数や振動数はどうなっているのか、というところを情報としてためることができますので、次の機種を開発する時に、「どういうところが問題だったんだろう」「どういう使われ方をされているんだろう」というところを、実際にデータとして確認することができます。

今は1台1台の単位でデータを見ているわけですけれども、そうではなくて、もちろんお客様が持っていらっしゃる膨大な数の製品をダーッとグラフ化して、総合的な観点でも見ることができるようになっております。

もし特定の機器を詳細に見られたかったら、「この機器がいつ使われた」とか「10日前に使われた時にちょっと変な振動がしてた」というところを含めて、インターネット上から確認したり、もしくはアラートを出してもらって早めに不具合の対応をするということも可能になってくるかと思います。

こういったかたちで、製品が使われている状況を含めてビジュアルで確認していけるというかたちになっております。

革新的なオーストリアのスマートビル

非常に簡単なデモンストレーションではありましたけれども、モノづくりの上流から下流まで。実際にお客さんが導入されて、導入されて使われている状況が、モノづくり企業のほうにも見えてくるというところを、見ていただきました。

この部分を少しまとめてみますと、ここではコトづくりということで、「コトづくりにはこういう変化がくる」というお話をさせていただきました。それに対して、(スライドの)右側にある5つの業務改革の軸が必要になってくるというお話をさせていただきました。

一番最後になりますけれども、「革新的な事例」ということでBoschさんの事例のご紹介のほうをさせてください。

こちらの事例ですけれども、先ほどの5つの業務改革の軸に照らし合わせますと、(スライドの)上の4つの範囲ですね。デジタル化からバーチャル検証・体験というところを、Boschさんのほうではやっておられます。

このプロジェクトの概要をお話ししますと、配布資料の右側にもおそらく写真があると思うんですけれども、これはオーストリアに実在するビルで、Lifecycle Tower Oneというビルです。このビルの中に、実はいろいろなセンサーが埋め込まれています。

例えば、明るさを確認するようなセンサーや、人がいるかどうかを確認する赤外線センサー、もしくはにおいを確認するセンサーとか。照明も実はセンサー付きということで、稼働しているかどうかを確認できるような機器が、この建物の中に入っています。

どういうユースケースを想定してこのプロジェクトをやったかといいますと、ここでは詳しくは話しませんけれども、5つのユースケースを想定してこのプロジェクトをやりました。

こういうお話をすると、「これ、エネルギーマネジメントじゃないの?」「省エネじゃないの?」とよく言われるんですけれども。

省エネは、もちろん照明管理やエレベーター管理、遠隔監視というところに入ってはいるんですけれども、それ以外にも空間管理や空質管理というところで、このプロジェクトをやっております。そのため、省エネ以上のところを一緒にやらせていただいているというかたちになっております。

具体的にどういう価値があったかというところを、B2Bという観点、そしてB2B2Cという観点でまとめております。

例えば、ビルを実際に運用する方からすると、できるだけ運用コストを下げたいわけですよね。同時に、利用者様の利便性は下げたくない。逆に最大化したい、というところですよね。逆にビルの利用者様からすると、できるだけ便利だとか、利便性が高いということを求めていらっしゃるのかなと思っています。

これを(スライドの)右側にまとめております。下が「リアル」ということで、実際に建っているビルですね。上に「バーチャル」と書いてありますけれども、ビルのバーチャル版、デジタルモデルがあります。

どういう仕組みでやっていたかといいますと、先ほどお話したように、実際のビルの中にはいろいろなセンサーがあります。機器があります。そういったところから情報を引っ張ってきて、Boschさんが持っているクラウドの中にどんどんためていきました。その情報をこのバーチャルモデルの中に移していったというかたちになっております。

スマートビルディングの未来

ここまでであれば、一般的な見える化だったりアナリティクスの領域とそこまで変わらないかと思います。今日ご紹介する動画は、ここまでの内容になっております。ただし、今後このプロジェクトは、それ以上のことをやろうとしています。

具体的には、今後はためた情報を最適化していって、それを現場のほうに戻していくということをやろうとしています。

少しわかりにくいので補足説明しますと、例えば部屋の中の室温を制御しようとすると、もちろんエアコンや照明があったり、人の体温があったり、もしくは外から差し込む太陽光があるわけですよね。みなさんがコントロールできるところがあるとすると、例えば冷房やブラインドの角度なども室温に関係あるわけです。

だから、室温を最適化しようとすると、人の数や冷房の性能、太陽、もしくはブラインドというものをきちんと制御する、もしくは依存関係を認識しておく必要がありますよね。そういったことができるのが、最適化というところになっております。逆に言うと、先ほどお話したとおりで、そういったいろいろな要素をモデル化、シミュレーションできるというところが、この最適化に必要な要素ですね。

ここのところ、実はかなり重要なんですけれども、世の中ではあまり話されていないところですので、ある意味ここが今日の講演の一番肝のところだと思っていただいてもよろしいかと思います。

それで、実際にこれを動画でご紹介したいと思います。

ここからは、実際に先ほどのLifecycle Tower Oneのプロジェクトの内容になります。ここにはBoschさんの名前だけを出していますけれども、それ以外にもいくつかの会社様と共同でやらせていただきました。(動画を指して)これが実際のビルですね。オーストリアにあるLifecycle Tower Oneというビルです。インターネットで検索しても出てくるようなビルです。

これがビルの実際のモデルです。ビル全体がもちろんモデル化されていますし、Boschさんのクラウドから情報をリアルタイムで取ってくる。例えばどこの階が電気を使いすぎているかということを、リアルタイムで見える化していくことができます。

もちろんクラウドには時系列の情報が入っていますので、8月の消費電力を見るとか、もしくは9月30日の消費電力を見るとか、そういうこともできるようになっています。

これはもちろん建物全体でやっているだけではなくて、フロア単位でもあります。今、右上にウインドウが出てきましたが、これは照明一つひとつを管理しています。照明がきちんと稼働していれば緑色、ちょっと消費電力が多かったり稼働していなければ赤色で表示されています。

こういったかたちで、3次元で見るだけでもより直感的に判断できるというところがありますので、より早く対応するということができるようになります。それ以外にも、消費電力だとかいろいろな要素を、例えば部屋の占有状況を含めてグラフ化していくこともできるようになっています。

一番最後の部分になりますが、このフロアのどの部分が一番使われているのかというところを含めてビジュアル化していくことによって、例えば「ここはモノを置いてもいいよね」「ここは占有率が高いので、モノを置かないようにしよう」というフロアのよりよい使い方を含めて、使っていけるようになっています。

このCEATECでも、今どこのブースに人が集まっているかがグラフ化されていると聞いておりますけれども、それをビルの中でやってみようというのが一番最後のところでした。

最後になりますけれども、また3つのポイントということでまとめておきました。

少し時間もありますので、最後のまとめに入っていきたいと思います。

私のほうからはDS-1ということで、「IoTの先へ」ということで講演をさせていただきました。この講演以外にも、先ほどお話していたスマートシティですとか、シンガポール政府とやらせていただいたバーチャル・シンガポールという取り組みがあります。

街レベル、建物レベル、フロアレベルでのバーチャル化、もしくはバーチャルとリアルがどうつながっていくかというところにもしご興味がありましたら、右側のPL-3、PL-4というところですね、その講演のほうをぜひ見ていただけらと思います。

真ん中の「デジタル・イノベーションが創る産業と都市の未来」は、この私のセッションと右側のセッションの合体版になっております。少し内容は異なっておりますが、ご興味がありましたらそちらも確認していただけたらと思います。セッションはかなりご好評いただいておりまして、いっぱいになっているかもしれませんけれども、その場合はあしからずでお願いいたします。

ということで、長いセッションではありましたけれども、最後までご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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