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東京の未来を語るトークショー(全1記事)

2017.09.07

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「人の目配りを自分にインストールしたい」村松亮太郎×川田十夢が描く、東京のリアルな未来予想図

提供:株式会社ネイキッド

「都市とはアートである」のコンセプトのもと、インタラクティブコンテンツやプロジェクションマッピングなど、さまざまな仕掛けで東京の街を再現した体験型イベント「TOKYO ART CITY by NAKED」。8月23日には、イベントの総合演出を務めた株式会社ネイキッド代表の村松亮太郎氏とAR三兄弟の川田十夢氏によるトークショーが開催されました。プルーム・テック喫煙可の実験的な空間の中で、アートやテクノロジーによって東京という都市がどう変わっていくのかについて、ざっくばらんに議論を交わしました。

「TOKYO ART CITY」で東京の未来を語る

司会者:「TOKYO ART CITY by NAKED」は、「都市とはアートである」をテーマに、人の営みや、都市を形成するさまざまなもので構成しております。

本日は、少し先の未来の東京を感じてしまうような空間の中で、東京の未来を語ります。アートの側面からは、本イベントの総合演出である村松亮太郎、また技術の側面からはAR三兄弟・川田十夢氏に、本日はご登壇いただきます。

なお、本日のトークショーはプルーム・テックをご使用いただきながらご覧いただけます。それでは、お2人に登壇いただきます。みなさま拍手でお迎えください。

(会場拍手)

では、まずはお2人からご挨拶を頂戴したいと思います。まずは村松さん、よろしくお願いいたします。

村松亮太郎氏(以下、村松):ネイキッドの村松です。みなさん、こんばんは。

会場:こんばんは。

村松:ありがとうございます(笑)。今日は30分トークをしようと思います。(会場を見渡して)みんなこれ立ったまま? すごいね。これはかなりおもしろくしゃべらないと、川田さん。

川田十夢氏(以下、川田):まずいですね。

村松:川田さん、この間のラジオもそうですけど、声がかっこいいですよね。

川田:声がいい。

村松:言われるでしょ?

川田:声のよさは隠しきれないですね。

村松:言われるんだ(笑)。

川田:僕、J-WAVEで今『INNOVATION WORLD』という番組をやらせてもらってるんですけど、このあいだ村松さんに出ていただきまして。

(村松氏を指して)もうね、ハンサムでしょ。このハンサムさがなかなかラジオで伝えられないなということもありましたけれども、そのご縁でちょっと今日はお邪魔しました。

村松:今日はアンサーソングのように答えていただいて。

川田:そうなんですよね。

司会者:ありがとうございます。では、椅子のほうにお座りください。

アートやテクノロジーで都市の生活はどう変わる?

村松:これ、今日、プルーム・テックを吸っていいんだよね?

司会者:そうです。もちろんです。

村松:ということですよね。もちろんですよね。

司会者:吸っていただいて。

川田:プルーム・テックをお持ちの方はぜひ吸いながら。これ未来っぽいですよね。(村松氏の吐いた煙を指して)いま煙が出てるけど、これは煙じゃないというね。蒸気だと言ってましたけれども。

村松:そうですね。トークイベントでみんな吸っている光景はけっこうおもしろいんですよね。

川田:おもしろい。

司会者:それでは、いくつかお二人に「東京」をテーマに質問をさせていただきながら、進行させていただければと思います。都市の生活はこれからも技術やアートで大きく変わっていくと思いますが、お二人にとって、東京の未来はどう変わっていくとお考えですか?

村松:これね、プルーム・テックはまさにわかりやすいんですけれども、「未来をテクノロジーが変える」とかいろいろあるじゃないですか。こういうことってすごく大きく語られるじゃないですか。ただ、「あんまり関係ない話されても……」というところって、みなさんあると思うんですよね。

実際、もっとリアルに僕らに近いところの未来でなにが起きるのか、そこが変わっていかないと、なんかいやだなって。僕らは都市生活者ですから。喫煙もまさにそうじゃないですか。プルーム・テックにもテクノロジーが使われているわけですよね。

川田:ですよね。だからテクノロジーが、身近なところからいろいろ変わっていくことがあるかもしれないし。というところからお話ししましょうかね。

村松:そうですね。この間のラジオでも話してたんですけど、僕は比較的イメージから入りますけど、川田さんはテクノロジーから入られるということで。

川田:そうですね。

村松:僕はこのイメージからTOKYO ART CITYという場所を作ってやっているわけですけど、逆に技術というお話からいくと、こういうプルーム・テックみたいな技術をどう思われていますか?

「こういうのっておもしろいんだよね」とか「東京の街を実際に変えていったり、僕らの生活を変えてると思うんだよね」っていうものはありますか?

川田:東京の景観という意味で、いよいよ海外からのお客様も増えるし、気を遣わないといけないことが増えていくなかで、プルーム・テックは、吸っていいことにする1つのテクノロジーだなと思うんです。今の流れとしては、喫煙者に対する風当たりが強すぎる。

村松:迫害に近いですから(笑)。

川田:吸っていい場所がどんどん限られてくるし、吸うという行為さえも難しいなかで、僕は1回5、6年前に、タバコの広告がなかなか難しいということで相談を受けて、じゃあARで……。みなさん寄席とか行かないかもしれないですけど、寄席に出てくる芸人さんで、吸っているタバコを1本バクっと食べたら2本になって出てくる。最終的には10本ぐらいポコって出すみたいな芸人さんがいるんですよ。

村松:(笑)。

川田:そういう芸人さんがやるような芸をARでできたらいいなと思って、その技術を作ったんですけど、採用されなかったんですよね。それは、逆に助長したらおもしろいかなと思って、いっぱい煙がバーっと出たらおもしろいかなと思ってやったら、そういう冗談も通じないような雰囲気があって。

だから、やっちゃいけないことをやっていいことにするというのは、1つのテクノロジーだし、見立て次第だな、という。今回、こういう場所で(プルーム・テックを)吸っていいことになっているというのは、第1歩だなと思うんですけどね。

人間の振る舞いがより自由に機能するテクノロジーを

村松:プルーム・テックと喫煙の関係にかぎらず、テクノロジーの発達によって、普通はなかったことがアリになるということは絶対に出てくるじゃないですか。「それはアリなの? ナシなの?」みたいな話はきっとほかにも出てくると思うんですね。

川田:出てきますよね。

村松:スマホみたいなものもね。さっきもちょっと話してたんですけど、それこそ電子メールも最初に出てきた時は「手書きじゃないと失礼だ」みたいな話もあったわけじゃないですか。

川田:そうですよね。「矢文じゃないと失礼だ」とか、「鳩じゃないと失礼だ」とかね。時代によってはあったかもしれない。

村松:(笑)。

川田:(会場に向かって)そんなにシーンとしないでくださいね(笑)。

(会場笑)

村松:そうなんですよね。だから、テクノロジーで自由になれること・可能になることもあるし、そうすると、今のルール内とか、僕らの普段の生活のパターンの中に収まらないことが出てきますから、こういう議論は絶対にたくさん出てくると思うんですよね。

川田:そうですよね。だから、人間の振る舞いがより自由に機能するようなテクノロジーがいいですよね。

村松:そうですね。だからプルーム・テックも別に……これはTOKYO ART CITYのテーマに一応関わってくるんですけど、変な話、ただ広告としてやっているわけじゃないんですよね。「この技術が東京の街をアートにするときに意味があるから、ぜひ一緒にやりましょう」というお話だったんですよ。

川田:なるほど。

村松:今回(TOKYO ART CITYに)入っているものって、ほぼそうなんですよね。ミュージックストリーミングサービスの「AWA」さんも一緒にやってるんですけど、ただ広告でやってるんじゃなくて、東京で今一番聴かれている曲が流れるという構造にして作ったんですよね。

川田:なるほど。

村松:そういう造りなんですよ。あくまでコンテンツとして扱うという。だから、本当はこの会場全体で「プルーム・テック(の喫煙が)ずっとアリでもいいんじゃない?」みたいなことも言ってたんですよね。

川田:一応ギャラリースペースですもんね。ここね。

村松:そうです。

川田:だから、あらゆるギャラリーでそういうことがアリになったらいいですよね。

村松:そうなんですよね。この(会場の)なかで別に未来のセグウェイみたいなものが走っていてもいいし、未来のタバコとしてプルーム・テックを吸ってもいい。そういう体感も全部できるような場所になると、かなりおもしろいなと思います。

でも、リアルな東京の街だったら意外とダメだったりするじゃない。「ここだったらできる」というのを、仮想東京としていろいろやってみたらおもしろいんじゃないかなという。

「TOKYO ART CITY」は大いなる実験の場

川田:そうですよね。なんか1つ、吸うという行為がトリガーになってもおもしろいですよね。(会場の)自動販売機で飲み終わったペットボトルを置くと……やりました、みんな? あとで楽しんでもらいたいんですけど。この展示の中にいろいろな仕掛けがあるんですよね。

村松:そうです。

川田:いろいろな仕掛けがあるなかで、トリガーの1つとして、せっかく扇子を持ってきたので……。

(扇子を煙管に見立てて吸う仕草をする)

……みたいな。

(会場笑)

川田:今、煙見えた?

(扇子でそばを啜る仕草をする)……見えた? そば(笑)。

(会場笑)

川田:今、見立てのテクノロジーをやりましたけれども。「吸う」という行為が1個のトリガーになって、ふわーっと雲が流れたりとか。

村松:おもしろい。

川田:おもしろいですよね。だから、なにか1つのトリガーになるのはアリかなと思いますけどね。

村松:それはまた違うテクノロジーが絡んでいて、みたいな。その行為がまた別のものになっていく、みたいなことになってくると確かにすごくおもしろいですよね。

川田:だから、ここで行われていることが都市で明るみになっていくといいですよね。

村松:本当にそうだと思う。そういった意味では、「勝手に実証実験をいっぱいすればいいのに」ぐらいの感じだと思うんですよね。「やってみたいことをやってみていいよ」みたいな場所になるというか。

川田:そうですよね。これも、大いなる実験だなと思っていて。

村松:もうおっしゃる通りだと思います。

川田:自動販売機も、せっかくサイネージ化されているのに、遊びが少ないじゃないですか。ただ、普通の自動販売機と同じようにジュースが並んでいて、押したら出てくるって、なんの遊びもないじゃないですか。だから、なにか見立てが1個あってもいいですよね。

村松:そうなんです。(会場の自動販売機を指して)これも一応ジュースを買うと壁が一面マッピングであふれるので、ジュースを押すたびにいちいち壁がシュワーっとなるんです。街でそんなことがあってもおもしろいじゃないですか。

川田:おもしろいですよね。

リアルな街には規制が多い

村松:なかなか東京の街中では規制が多くてやらせてもらえないじゃないですか。

川田:そうなんですよね。

村松:今日はけっこう規制との戦いみたいなトークですね。

川田:そうですね。規制は本当に多いんですよね。

僕が考える自動販売機の未来は、ちょっとした診断をしてほしくて。指先からセンスして拾える健康情報ってけっこうあるんですよ。だから、選ぶときに1回指をかざしただけで、触れただけでその人の体内状況をスキャンして、「今ちょっと塩分足りてませんよ」とか、それで必要なものをおすすめしてくれるとか。

村松:「コーラやめとけば?」みたいな。

川田:そうそう。

村松:「それよりアクエリアスにしておけ」とか?(笑)。

川田:そうです。「アクエリアスのちょっと薄めのやつでお願いします」みたいな。なんか薄いやつありますよね(笑)。

村松:減塩アクエリアスみたいな(笑)。

川田:そうそう。そういうことがあってもいいなと思うんですけどね。

村松:でもそれは比較的、けっこうリアルに近いものが出てきそうじゃないですか。

川田:出てきそうですよね。

村松:センサーで測られて、ちゃんと最適化されるような。

川田:それを利用していけば「薬も全部自動販売機になればいいし」とか、いろいろ考えてたんですけど、いちいち法律が出てくるんですよ。薬事法(注:現在では薬機法)もそうですし。

村松:そうですよね。

川田:なんか「この街は自由にしていいよ」って……日暮里とかいいじゃないですか。

(会場笑)

村松:日暮里! 日暮里はいいんですか?(笑)。

川田:日暮里、なんか自由にしていいじゃない。雰囲気的に。

村松:なんかわかりますけど(笑)。

川田:「日暮里ぐらいは自由していいよ」って言ってほしいですよね。

村松:とりあえずここ(会場)でまずやってみて。ここがOKになったら、次、日暮里で試すみたいな。

川田:こういうスペースでいろんな実験をやるというのは本当にすばらしいことだと思いますよね。

村松:実験の場ですね。だから、広告ってよくアートとの関係みたいなことが言われますけど、広告がどうのというよりも、広告も逆にアートの一部として取り込んでしまえば別にいいというか。

アートを広告っぽくするんじゃなくて、街の現象として、捉え方によれば、広告的なものもすべてアートたりえるわけですから。それこそウォーホルですよね。それは解釈の仕方かなと思います。

アートの場でテクノロジーの実験を

川田:そうですよね。なにかをきっかけにして……(床のマッピングを指して)めちゃくちゃかっこいいですね。これは渋谷なんですか?

村松:(天井を指して)これ、今、赤信号なんですよ。

川田:ほう。あ、赤だ。

村松:赤信号だから、(床に)車が走ってるんですよ。青になりました。青になったら人が歩くんですよ。

川田:ふーん……。

村松:「ふーん」って(笑)。

川田:いや、感心してるんです。

村松:ありがとうございます(笑)。これ本当は、人流計測を本当の渋谷のスクランブル交差点でやろうとしてたんですよ。今歩いている人をそのまま全部計測してデータにして、ビジュアライゼーションしようとしてたんですよ。

川田:リアルタイムにやるとなったらめちゃめちゃ大変だけど、おもしろいですね。

村松:めちゃめちゃおもしろいです。そうなってくると、僕らだけではやれなくて、人流計測とかそういうことができる企業さんの協力も必要になってくるんですね。でも、そういう人たちが「俺たちはこういう技術を持ってるんだ」と。「だったら1回アートの場で実験しようよ」みたいなことがこの場でできたらおもしろいなと思ったんですよね。

プルーム・テックもある種の実験だと思うんですよ。「こういう場所ではアリにしてみない?」って。屋内で吸うということに関して、ギャラリーの中で吸うことってないじゃないですか。

川田:ないですね。

村松:そういうことことをやること自体がおもしろいというか。別にアートって表現物だけじゃないし、コミュニケーションや行為も、アート的なものがあるかもしれないし。そういうものをこの場ではいろいろアリにしていけると。

川田:そうですよね。制限とか……あとはなんだろう、スケールアップというか。なんか僕、うっかり落語家みたいな格好してますけど、落語って座布団の上で1人だけいて、その人の振る舞いによって、いろんな登場人物が出たり消えたりするじゃないですか。

だから、どちらかというと制限の中の表現で。制限されているからこそよくなるものってあるような気がしますよね。そういうもので、なんかやっていけそうな気がしますけどね。

司会者:まさに今お話しいただいていたような、2人にとって東京の生活にこれから起こしていきたいムーブメントですとか、「生活をこんなふうに変えていったらいいんじゃないか」というお考えはなにかありますか?

アートを定義するのは誰なのか?

村松:僕は今回「TOKYO ART CITY」という、「アート」という言葉をあえて入れたんですね。今まで僕は「アート」という言葉を自分で使ってこなかったんです。むしろ一切使わなかったというほうが強いと思います。

ただ、今回それを使ってみたのは、別に僕がアートをどうのって言ってるんじゃなくて、あくまで「TOKYO ART CITY」なんですね。「その意味とはなんぞや?」みたいなところにポイントがあって。

例えば我々は「FLOWERS」というイベントをやったりするんですけど、そこにもすごいインスタグラマーさんとか(が来る)。Instagramで僕が作った作品を撮って、加工して、また(Instaglamに)あげているわけですよね。これがまたけっこうきれいだったりするわけですよ。そして、ある種自分の作品としてインスタグラマーの方々が出していくわけですよね。

この二次創作みたいなものって、音楽では当たり前に起こっていることなんですよね。この二次創作というものをどう考えるかという。「これも1つの作品だよな」みたいに思って。

「だったら」と思って、今度僕は、Instagramの写真を使ってハッシュタグをあげてもらうとその写真で花の作品ができるっていう作品を作ったんですよ。

そうすると、コミュニケーションが循環するというか。僕が作った作品があって、それを撮った方々の作品があって、またそれを扱った僕の作品ができあがるという。

こうなると、どれが作品かというよりも、「行為自体がある種のアート行為だと言えるのかな」みたいなことを思ったりしました。

でも、そのインスタグラマーのプロフィールを見ると、「サマンサタバサ好き そしてアート好き♡」みたいな感じだったりするわけですよ。僕のなかのアートの概念がぶっ壊されるんですよね。良いとか悪いとかいうより。

だから、言葉の定義もどんどん変わっていっている。「あれ、僕の思っていたアートって、もはや若い子たちは思ってないんじゃないか」「アートの意味が変わってるかもしれない」みたいなことを思い始めたんですよ。

川田:その指摘はけっこうクリティカルだなと思います。ある時代においての時代の窓ってポスターだったり、またある時代はちゃんと美術館に行ってフレームの中の作品を見ていくけど、今一番見ている画面というか枠って、スマホですもんね。

村松:そうなんです。

川田:だから、「そこで機能する作品」という言い方は、この間お話ししていて「なるほどな」と思いましたね。

村松:「誰がアートの定義を決めるの?」みたいな気分になってくるので。

川田:そうですよね。

村松:僕がやってることってアートなの? サマンサタバサ好きのその人がやってるものはアート作品なの? ギャラリーでやってる人はアートなの? どこからアートなのか、よくわからなくなってくるし。

川田:日暮里でもいいですからね。別に。

村松:ええ、そうなんですよね。

川田:……日暮里、あんまり?

(会場笑)

川田:日暮里、そんなひっぱらなくていいですよね。

“価値”はどこにシフトするのか

村松:そもそもウォーホルも最初はそれで叩かれたわけじゃないですか。「あんなもんアートじゃねえ」と。

川田:そうですよね。

村松:常にそういうものなんじゃないかと。アートの大衆化が今すごく進んでいて、それこそSNSとかで加速して、アートって完全に大衆の手にあるんじゃないかな、みたいなことを思いました。

その「一人ひとりの表現が形成している東京」って考えると、TOKYOというART CITYだと捉えてもいいんじゃないかということなんですよね。意味としては、「僕のアート」ということじゃないんですよね。

川田:みんなInstagramにあげるときも工夫しますもんね。自分も(写真に)入ったり入らなかったり、あと目の前にあるものを「この作品だ」っていって……ここで撮っていいんですよね?

村松:いいんです。

川田:撮影していいなかで、なるべくきれいにやっぱり撮ろうとするし、アングル次第によってはその人のセンスが超出ちゃうし、おもしろいですよね。

村松:そうなんです。「俺のはアートで、サマンサタバサ好きのお前のはアートじゃねえ」って言われても、「それ誰が決めたんだよ?」って話になってきちゃうし。

川田:そうですよね。

村松:そうなんですよ。僕でもそもそも怪しいってなってくるし、「じゃあ客にとってアートってなにか?」ってまた違うし、となってきちゃうので。そういうものが概念が変わっていけばいいなと思ったんだけど……これなんの話だっけ?

川田:制限、生活。

司会者:そうですね。人々の生活に、こういうアートですとか、川田さんですとテクノロジーの側面から、どのように変わっていくと……。

村松:ああ。だから、それぞれのクリエイティビティ、それぞれの自己表現みたいなものをもっとどんどん発揮できればいいのに、みたいなことを。

「価値がどこにシフトするか」ということでもあるんですけど、物質的なところもあふれきった今、「価値はどこにあるの?」みたいなことをよく思うんですよね。

川田:そうですよね。

村松:そういうことを表現できる街になっていったら、東京の人たちが作る東京になって、東京っぽさというものがもっと色濃くなっていくんじゃないかなと思うんです。僕はそういう未来だといいなとは思います。

カメラ越しに見た世界が3センチ角で把握できる

川田:そうですよね。1回目のオリンピックの時は、とりあえずフォルムを作ることだった気がするんですよ。街の中に大きなものを作る。だって、なにもなかったですから。

今って建物はそんなに新しく作らなくてもよくて、やっぱり行為とか見立ての更新が必要だなって。同じように、この(会場に展示されている)東京駅のマッピングじゃないですけど、同じように見えていたけど、違う文脈が表れたり、歴史が表れたり。そういうことを2020年以降も本当に考えなきゃだめだなと思いますよね。

村松:まさにその価値というところですよね。建物や物質的なことを作っていくことではない部分ですね。「見立て」というのは、そういう意味では、(川田氏は)AR三兄弟じゃないですか。ある種の見立て的なことと絡んでいるし……。

川田:うん、お金でつながってますからね。

村松:(笑)。さっきの扇子でも見立ての話があって。見立てということはやはりすごく考えられておられるんですか?

川田:見立てがすごく重要だなと思っていて、例えば僕らが作っているやつ。非常口のマークがあるじゃないですか。非常口にカメラをかざすと、中のピクトグラムが脱走するんですよ。脱走して落ちちゃって、助走してまた元のところに戻ろうとするというのがあるんです。

それは僕からすると現実から地続きで。確かにそこに点在しているけど、その続きを考える見立てという。このノリは、僕けっこう好きで。この間、オリンピック委員会みたいな人が来て、「全部そうしませんか?」と提案しましてね。

村松:へえ。

川田:オリンピックの競技でピクトグラムを使ったのは、日本が最初なんですよね。ピクトグラムという概念であらゆる競技を説明したのは、東京オリンピックが最初なんですよ。

日本ってアニメーション大国だし、動きの続きとかを見せるのが上手だから、例えばすごくマイナーなスポーツのアイコンにかざすと「こういう競技だったんだ」ってわかるとか。あとは、それこそああいうものを街にコピー&ペーストしたら、「三段跳びの選手はこんなに飛ぶんだ」ということが見えたり。そういうことはけっこう想像してますね。

村松:今、実際、東京の街とか東京の生活のなかで「あれは絶対に使える」「絶対にあのへんがおもしろい」というテクノロジーって実際にあります? 未来のすごいことじゃなくてもいいので。

川田:今、自分で作っているのがまさにそういうテクノロジーです。カメラ越しに見た世界が、全部3センチ角で把握できるんですよ。それは9月に出るiPhoneとかで標準装備されると言われているんですけど。

だから距離感が全部わかっちゃうんです。距離感が全部わかると「等身大」という概念が出てくるんですよね。例えば、三段跳びの選手をここにコピー&ペーストしたら、実際にすげー飛ぶ、みたいなことが等身大で見られる。「歩道橋とか超えちゃうんだ」というのが見られたり。そういうふうになってくると、また見立ても変わってくるなという気がしています。

村松:歩道橋、なにで超えるんですか?

川田:棒高跳びとかで。ちょうどそれぐらいの高さなんですよ。

村松:棒高跳び、すごい。へえ。

川田:速度や時間、距離などをより厳密な解像度で見立てが作れるようになるので、それはちょっと考えているし、そういう路線でなにかご一緒できたらおもしろいかなと思うんですよね。

すごい未来を語るより、実現して形にすること

村松:なるほど。僕、川田さんが一番おもしろいと思うところは、すごい未来を語るのって実はそんなに難しくないと思っていて。川田さんって「もうちょっとこうだとさ……」というスタンスをけっこうとられるじゃないですか。僕、それはすごく重要だなと思っているんです。なにか夢みたいな話を議論するのはそんなに難しくない。

川田:そうですね。

村松:だから、実際のところですよね。「僕らの生活を実際に豊かにするか」とか「それおもしろいね」とか、価値があることと紐付けられないと実際に使えないというか、あまり意味がないという話になっちゃうから。

川田:そうなんですよね。

村松:そういう、近いところをすごく気にされてるなと思うんですよね。

川田:大げさなことを言う人はわりといっぱいいるじゃないですか。

村松:わりといっぱいいますね(笑)。

川田:だから、ちゃんと役に立ったり、ちゃんとおもしろかったりするほうがいいかなと思うんですよね。

村松:そうなんですよね。実際、プルーム・テックって今、使うことができているわけじゃないですか。だから、使える技術じゃないと意味がない。「こういうことをやったら、こういうことになりえる」という話をして、「そんな未来すごいな」とばっかり言っていても……それはそれで必要な部分はあると思うんですけど。

川田:そうですよね。

村松:話としてはおもしろいかもしれないけれども、実際はやっぱり関係ないことが多いじゃないですか。なにか実際のところにつなげていけるというのは、すごく価値があるところだなと思うんですよね。実現して、形にしないと。

僕も、自分で「クリエイティブモンスター」とよく言ってるんですけど。「しゃべったりつぶやいたりする暇があったら、ものを作ってやる」みたいなところがあって。形にすることの重要さということはすごく思うんですよね。

そういった意味では、技術というのは、なにかを形にすることを昔よりも簡単にしてくれたり、そういうところで役立ってくれるかなというのもあるんですね。

川田:そうですね。あと、人の目配り・気配りを自分にインストールしたいな、というのはけっこう昔からあって。

村松:ほうほう。

川田:例えば、建築家が街を歩いていたら、みんなが素通りするような建物でも「ここがすばらしい」とかわかるじゃないですか。そういう誰かの経験を最初から備え付ける。だから、街を歩くのが楽しくなるわけですよね。そういうことにも使えるなと思って。

僕なんかちらっと「これ(今回の展示で)なにかできないですか」「でも、そろそろ終わっちゃうし」「じゃあ次のタイミングで」となったときに、「誰かにとってはこう見えている」ということが可視化できたらおもしろいなと思いましたね。

村松:なるほど。そうそう、今回なにかできないかなって言ってたんだよね。「もう終わっちゃうじゃん」みたいな(笑)。

川田:1週間、2週間で終わっちゃいますもんね。

村松:さすがに難しい。

川田:そういうことをなにかやっていけたらいいなと思いました。

川田氏が考える新しい芸術祭

村松:本当にそうですね。目配り・気配りとおっしゃっていましたけど、都市って、当たり前ですけど意味があってできているものが多いじゃないですか。

例えば、よく「○○芸術祭」というのが最近流行っていますけど、ただ意味なくそれを持ってきて「アートだ」と言うのって、ちょっと微妙じゃないですか。

川田:そうなんですよ。そういえば、その話をしたかったんですよ。

村松:あ、なんですか、それ? しましょう。

川田:芸術祭はちょっとしんどいなというのがあって。「しんどいな」というのは、その1年はいいですよ。でも、作ったあとのことはあんまり考えていなくて。

僕が考えている芸術祭の楽しい世界は、例えばいろいろな現代アーティストがいますから、「みんなで怪獣作ろう」といって怪獣を作るんですよ。その怪獣にお客さんが来ます。そこで人気投票するんです。人気あるモンスターは強いんですよ。その翌年は、そのモンスターを持ち帰れるようにするんですよ。

僕、目の前にあるものをホイポイカプセル(注:漫画『ドラゴンボール』に登場する、大きなものを収納できる架空のアイテム)みたいに、3D形状をそのまま持ち帰れるような技術を今作っているので、持ち帰れちゃうんです。

村松:それはどういうことですか?

川田:ポリゴン化して、それをデータ化して持ち帰れるんです。持ち帰ったあとに3Dプリンターで出力できるんです。

ということまで、1年あればできちゃうから、みんな持ち帰ったりして、モンスターを手の上で持てる。ポケモンのもっとやばいやつみたいな感じです。

フォルムは現代アーティストが作っていて、2年目にそのストーリーが現れて、その次にマッピングして戦わせたりとか、めちゃめちゃいいじゃないですか。

村松:いいですね。

川田:そういうのやりませんか?

村松:いいですね。持ち帰って再現できるっておもしろいですね。

川田:再現できますね。

村松:僕、おもしろいなと思ったのが、さっきの話で、昔「やっぱり電話で話さなきゃダメだ」みたいな人がいたじゃないですか。「電話でやっぱり本当の声を聞いて」って。「あれ、そもそも本当の声じゃねえっつーの」っていう話じゃないですか。

川田:そうですよね。

村松:電気信号にして送ってるわけじゃないですか。再現してるだけじゃないですか。今の話と実はまったく一緒なわけですよね。ポリゴンで(データを)取って3Dプリンターで再現できるという話と、電話で直接話した声って、実は原理的に、ある意味同じじゃないですか。

川田:同じだと思いますね。転送させてますからね。

村松:そうなんですよね。だから当たり前になっていくんだろうなと。それでいうと、触覚とかも送れるようになるでしょうし。

送るって結局は、電気信号を受けて、こちらで再現するという技術なので、この技術はかなりいろいろ応用されていくんだろうなと思いますね。電話的な考え方というか。

イメージの人とテクノロジーの人は相性がいい?

川田:なんとなく僕……村松さんと並ぶと、村松さんは顔小さいし、写真を撮るときに僕は一歩引いて、遠近感テクノロジーを使って写真に写ったりするんですけど。

村松:女の子じゃないんですから(笑)。

川田:たぶん相性いいですよね。

村松:と思いますよ。

川田:ぜんぜん話をしてなかったけど、イメージの人とテクノロジーの人は、実は相性いいかもしれないですね。

村松:そうかもしれないですね。

川田:だからなにか具体的に1個1個やっていくと、新しい未来がね。

村松:そうですね。僕も、あんまりなに考えてるのかよくわからないみたいで。話さないとたぶんわからないタイプなのかなと思う。

川田:ハンサムすぎるから。

村松:なんですか(笑)。

川田:どう考えても。だって、ネイキッドのイベントに行くと、村松さんのポスターがバーンってあるじゃん。

(会場笑)

川田:ねえ。(会場が)笑ってるっていうことはたぶんそうなんですよ。

村松:そうか(笑)。

川田:「ハンサムだな」と思って写真を撮っちゃうんですよね。

村松:じゃあ次から(鼻を指しながら)マッチ棒をここに入れて写るとかね。

川田:いやいや、やめてください。

村松:それはダメですか?

川田:それはもう僕が許しません。ハンサムの路線は維持してください。

村松:じゃあ床屋の、(ポーズをとりながら)昔の草刈正雄さんみたいな感じの髪型で、より強調するみたいな。

川田:いいと思います。イメージで……(会場を指しながら)だってこのイメージってやっぱりすさまじいですよね。イメージからこうやって組み立てていくっていう。

村松:僕はイメージからですね。どうしても。

司会者:盛り上がっているところ、申し訳ございません。そろそろお時間となります。

村松:盛り上がってきたのに(笑)。

イメージや勝手な決めつけが壊れていったらおもしろい

司会者:最後に、ゲストの川田さんから、ぜひ本日のご感想いただければと思います。

川田:僕、村松さんとお会いするのは2回目で、ラジオからこういうふうになって。ラジオではここまで深い話ができなかったですよね。だから、続きの話ができたし、また会話が続きそうだし。

みなさんもけっこう聞いたことのない話だったんじゃないですか。日暮里の話はもう忘れてもらっていいんですけれども。

村松:(笑)。

川田:今日の会話のなかにいろいろな材料があるなと思いました。とても貴重な体験させてもらいました。ありがとうございます。

司会者:ありがとうございました。村松さんからも一言ご感想をお願いいたします。

村松:喫煙者ではない……ですよね? 川田さん。

川田:そう、今は喫煙者じゃないですね。

村松:単純に、僕はおもしろいと思ったんですけど、プルーム・テックはどう思いました?

川田:おもしろいですよ。吐いた煙は水蒸気というかスチームだから、副流煙でもなんでもなくて。だから、タバコを吸いたい人も、タバコが嫌だという人も共存できるから、それをテクノロジーが解決したのはいいなと思いますね。

村松:まさに今言ったところが、今日のまとめかなと思っています。煙に見えるけど、煙じゃないんですから。なんかいろいろなことをこうね。

僕も、ハンサムというネタで変にキャラを決めつけないで(笑)。「そんなことないんですよ」という。それと一緒で、(煙に見えるが)実は水蒸気なわけじゃないですか。そうやっていろいろなイメージとか勝手な決めつけみたいなものが壊れていったらおもしろいなとすごく思います。それが前進させていくのかなという。決まりきったものを壊してくということが重要な気がしています。

司会者:ありがとうございます。今後の2人のコラボレーションにも期待したいと思います。それではこちらでトークショーを終了したいと思います。ありがとうございました。

川田:ありがとうございました。

村松:ありがとうございます。

(会場拍手)

イベント終了後の2人のコメント

川田:今夜はこの「TOKYO ART CITY」で村松さんとトークをさせてもらいまして、今回のこの展示自体もいろいろな見立ての提案だなと僕はみたんですけど、実験場という側面もあるというお話で、「なるほどな」と思いました。

僕もいろいろ都市で仕掛けたいことがいっぱいあったので、一緒にやったらできることもいろいろあるし、そういう見立ての発明、あるいは都市の景観であったり見え方の発明というのは、引き続き会話をしながら、なにか試せたらなと思いました。

今日は貴重な機会をありがとうございました。

村松:「TOKYO ART CITY」という作品は、あえて「アート」という言葉を使いますけども、「場」そのものをアートにするというちょっと変わったコンセプトなんですよね。

そういったなかで今回、例えばプルーム・テックというのは、これはこの場に1つ存在しているコンテンツだと思っています。

そして東京という場には、例えば広告が東京の街中に存在するように、このなかにも存在します。でも、それは「アートとは別に広告を打つ」ということではなくて、広告という存在を街の場の一部として取り込んでいるだけなんですね。それも1つ、東京というもののアートたりうる要素だと思っています。

そうなってくると、もはや広告であるのか・そうでないのかということはぜんぜん問題じゃないと思っていて、もうすべてをコンテンツとして捉えていっていいのかなと思っています。

それは今回、川田さんに参加していただいたこともそうだし、こういう場ができることもこのアートの特徴だと思うし、そこでまたなにかが生まれてくるのかなとも思います。

プルーム・テックであろうが、川田さんとのコラボレーションであろうが、はたまた違うものであろうが、そういったものが生まれてくる「場」みたいな作品になっていると僕はうれしいなと思っているので、少しでもそういう伝わり方をしてくれる、トークイベントだったらうれしいです。

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