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kintoneが生み出す一体感 - 変えよう。変わろう。-(全1記事)

2017.09.14

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システムづくりのゴールは78点を目指せ--老舗メーカーの企業体質を変えたマインドセット

提供:サイボウズ株式会社

業務の中でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、kintone活用のコツをそれぞれの視点で解説するイベント「kintone hive」。3度目の開催となる「kintone hive osaka」では、株式会社日阪製作所・情報システム部のが佐々江宏明氏が登壇し、「kintoneが生み出す一体感 - 変えよう。変わろう。-」というテーマで、kintoneを活用した業務管理の効率化やプロジェクトの進捗管理についての実例を紹介しました。

産業機械を手がける日阪製作所

佐々江宏明氏(以下、佐々江):みなさん、こんにちは。株式会社日阪製作所の佐々江です。本日は「kintoneが生み出す一体感」というテーマでお話します。どうぞよろしくお願いします。

では最初に、当社の紹介です。私たち日阪製作所は、本社と工場を大阪に置く産業機械の製造販売メーカーです。今年で創業75年、年商253億、従業員数は500名という規模の会社です。当社は、熱交換器事業、プロセスエンジニアリング事業、バルブ事業の大きな3本柱で事業展開をしています。私たちが持つ技術と製品は、衣食住、医療、環境、エネルギーなど、あらゆる産業分野を通して人々の暮らしを支えています。

熱交換器事業では、熱交換器の開発・販売をしており、大きなものではビルの空調設備や船舶、小型のものはエコキュートや床暖房に使われています。

続いて、プロセスエンジニアリング事業です。ここでは大きく3つの装置を作っています。レトルト食品や飲料、調味料などを殺菌する食品・液体殺菌装置。

注射器や点滴、輸液などを滅菌する医療用滅菌装置。衣料品やカーシート、インテリア商品などの生地を染める染色装置。どの装置も高いシェアを誇っています。

最後はバルブ事業です。さまざまな工業用バルブを作っています。日阪が作るバルブは、工場や工事現場など、あらゆるシーンで流体を制御するのに活躍しています。

また、障害者アスリートの支援にも力を入れており、現在は2名のアスリートが在籍しています。パラ水泳の中村智太郎選手は、昨年のリオオリンピックに出場し、7位の成績を残しました。

車椅子フェンシングの櫻井杏理選手は、今年ハンガリーで行われたワールドカップに出場して好成績を残すなど、活躍が期待されています。2人とも東京パラリンピックを目指して練習に励んでいます。

このように、みなさんの目に触れることはあまりないのですが、身近なところに日阪の技術は使われています。なので、ぜひ親しみを持って聞いていただきたいと思います。

エクセルが氾濫、業務が混乱

では、ここからは本題のkintoneの話題に移ります。私たちがkintoneに出会ったのは2011年。kintoneが市場に出てすぐのことでした。

それから6年が経ち、今では世界7ヶ国・16拠点で利用する、社内の最重要システムに育ちました。kintoneがなければ仕事ができない。そう言っても過言ではないくらい、私たちの大切なパートナーです。

しかし、最初からすべてが順調だったわけではありません。毎日少しずつ前進を続けてきました。そうした経験から、私が考えるkintone活用のポイントについてお話しします。

Key Point 1「はじめは小さく。」です。kintoneはスモールスタートが可能なシステムです。私はこの特徴を最大限に活かすべきだと思います。

私たちのきっかけも1つの事業部からでした。2011年、2つの部門が統合し誕生したプロセスエンジニアリング事業部では、それぞれの持ち寄ったExcelファイルが氾濫し、業務が混乱していました。大量のファイルに情報は埋もれ、製作者がわからないファイルの山に責任も見えなくなっていたのです。

こうした問題を解決したい。そう思ったときに出会ったのがkintoneでした。これなら課題を解決できる。そう確信し、すぐに導入をしました。

最初は5名ぐらいの小さなチームで、氾濫を続けるExcelを整理整頓しながらアプリを作っていきました。そして、利用者の意見を聞きながら改善を繰り返し、kintoneを活用していきました。そうすることでkintoneの裾野は、徐々にではありますが、広がっていったのです。

Key Point 2「現場が主役であること。」です。誰でも簡単にアプリが作成できるkintoneの特徴を活かすために、IT部門主導ではなく、現場主導でアプリの作成を進めることにしました。

まず最初にkintoneに携わったのは、営業・サービス部門という、システム構築とはほど遠い部署にいた女性社員の2人でした。彼女たちは課題を解決したい思いを持ち、アプリを作成しながら業務改善を進めていきました。

すると、「これは便利だ。効率的だ」という声が上がるようになっていき、次第には「こんな問題もアプリを作って解決してほしい」という要望が出てくるようにもなりました。そうした声にも迅速に応えていった結果、kintoneは浸透していったのです。

彼女たちの上司も、「課題があっても翌日にはkintoneで改善策ができている」と、日々良い変化を実感していました。

そうした取組みを一過性のものにしないために、私たちはkintoneプロジェクトを立ち上げ、お互いがお互いをフォローし合える、そんな体制を作りました。

それぞれの役割は、まず現場では身近な問題を解決するためにkintoneアプリを作成し、メンテナンスをしていく。部門のマネージャーは、業務の改革を統括しながらアドバイスを送る。私たちIT部門は、全体最適という視点に立って、システムコンセプトを維持しながら技術的なサポートを行っていく。

このように立場が違う三者が一体になることで、kintoneプロジェクトは円滑に動き、さまざまな成果をあげることができたのです。

「ゴールは78点を目指す」の真意

そして、これは最後のKey Point。「ゴールは78点を目指す。」ということです。

なぜ100点ではなくて78点なのか? システムづくりというかたちのないものにおいて、100点のシステムを目指しても課題だけが積み上がり、いつまでたってもスタートが切れないことになってしまうからです。

であれば、最初から78点という割り切りで改善を繰り返していったほうが、よほどスピード感のあるシステム構築が可能になります。

全員で「このシステムは78点なんだから、なにか問題があれば変えていけばいい」という意思統一をすることで、課題と方向性が明確になり、風通しのよい組織に変わっていくことができます。

そして残り22点。この部分をどうやって伸ばしていくか、チャレンジ精神と工夫を生み出すことにつながるのです。78点のシステムづくり、これは私たちの成功の合言葉です。

改めまして、この3つが当社でkintoneを拡大していった大きなポイントになります。

それでは、どのぐらい拡大していったのか? kintoneの利用者数は、導入当初15名でしたが、この5年間で30倍に増え460名となりました。今では従業員の約8割が利用するシステムになっています。

日阪には6つのドメインがあり、その中には451個のアプリ、52個のスペースが動いています。そんな中から私たちのkintone活用事例を紹介します。

紙ベースの情報伝達を刷新

まずはじめに、海外の部門から。スペースを活用しながらチーム力をUPさせた事例です。

これはアジア各国で営業活動を展開するチームのスペースです。このスペースの中で日々の営業報告はもちろん、スレッドやコメントを使いながら、誰でも気軽に意見交換ができるようになりました。

そうすることで、ふだん近くにいることは難しいのですが、チーム一体で仕事をしている、そんな実感が得られるようになりました。

訪問した国や地域をビンゴで埋めていくといった、おもしろい要素も取り入れながら、目標や進捗が見える工夫をしています。

続いて、製造部門から。物流を強化することで生産性をUPさせた事例です。日阪の製造部門は、外部の倉庫会社に在庫品の委託をお願いしており、もののやりとりを行っています。

これまではメールや電話でやりとりをしていたのですが、どうしても情報伝達に行き違いが発生してしまいます。そうなると、お互いが持つ在庫表に差異が生まれたり、手配ミスや配送ミスにより生産性が低下する課題を抱えていました。

この課題を解決するために、ゲストスペースを活用し、社外の人たちとも情報を共有しながらもののやりとりができる仕組みを構築しました。これにより正確な在庫管理ができるようになっています。

在庫表アプリでは、それぞれの部品の写真を表示することで、ものを取り違えるミスもなくなりました。また、アクション機能を利用して、出荷指示も1クリックで簡単に確実に行うことができるようになっています。

このように、リアルタイムで正確な情報を共有することで、私たちのものづくりの生産性は大幅にアップしました。

3つ目は、営業・サービス部門から。顧客対応の品質をUPさせた事例です。

これは我々の納めている製品のメンテナンスサービス業務を表した絵になっています。顧客からメンテナンスの依頼が営業に入り、営業はその情報をサービス部門に展開、実際のメンテナンスサポートはサービスセンターで行う業務の流れです。

しかし、これまでは依頼書という紙ベースで情報を伝達していたので顧客対応がどうしても遅くなり、部門間の情報連携ミスが生まれていました。

また、一度自分の手を離れてしまうと進捗がどこまで進んでいるのかわからない課題もあり、顧客の視点からすれば決して質の高いサービスとは言えなかったかもしれません。

そこで、紙の依頼書をすべてkintoneのアプリにすることで部門間のタイムラグをなくし、最短時間で顧客に対してサービスを対応できるようにしました。

すべての部門が同じ情報を見ることができるため、顧客からの問い合わせや確認に対しても、いつでも誰でも同じ品質で回答できるようになりました。こうした情報を蓄積していくことで、営業マンが新たな提案につなげるデータベースとしても活用しています。

また、サイボウズOfficeを使ってサービスセンターの人員の予定表を管理している部門もあります。

目標の進捗をリアルタイムで把握

最後は、システム部門から。基幹システムとkintoneを連携させることで情報活用力をUPさせた事例です。

受注や売上といった目標をみなさんも管理されていると思います。これまで私たちは「目標はExcelに、実績は基幹システムに」というバラバラな情報管理をしていたため、目標の進捗や達成度を確認しようとした場合に、手作りで時間をかけて資料を作っていました。

そこで、目標を管理する部分はすべてkintoneに登録することにしました。そして、データ連携ツールを使いながら基幹システムと自動的に連携させています。こうすることでリアルタイムに目標の進捗が見えるようになりました。

このダッシュボードでは、日阪独自のウェザーランクを採用して、目標を達成していくと雨から晴れにアイコンが変わっていくといった、わかりやすさと楽しさを加えています。

こうすることで、今まで資料を作るのが仕事だったのですが、情報を見て判断していくといった仕事の質に変化させることができました。

このように私たちの社内ではkintoneをきっかけにさまざまな変化が起きています。日阪製作所のスローガンは「変わろう!」「変えよう!」なのですが、この実践にkintoneは欠かせないものとなっています。

そしてもう1つ、kintoneを使うことで変わったと感じることが1つあります。それはシステムに関わる企業や組織、そして人の関係に変化が生まれているのではないか。そう感じるようになったのです。

私たちもさまざまなITサービスやソフトウェアを利用していますが、クラウド事業者、ITベンダー、そして我々ユーザー、ここには微妙な距離感を感じることがありました。

しかしkintoneの場合、この製品を中心にクラウド事業者のサイボウズ、そしてITベンダーや、このあとのkintone hackにも登場されるような開発者のみなさん、そして私たちユーザー。この距離感が縮まり、つながっている感覚を得ることができるのです。この関係性はシステムを使う上で安心感や信頼を生んでくれます。

kintoneが縮める距離感はさまざまなシーンで感じることができます。例えば組織の中であれば経営層や事業部門とIT部門。企業間であれば顧客と取引先。そして今日のkintone hiveのようなイベントで私たちユーザー同士が直接交流することができる。

この関係性は簡単に作れるものではありません。だからこそ、kintoneという製品も、hiveというイベントも、私はとても大切に思います。

kintoneにあってほかの製品にないもの。それはあらゆるところで一体感を生み出す、そんな力だと思います。私たちもこの力を使いながらこれからも、よりよいチームに、よりよい組織に、よりよい会社に変わっていきたいと思います。

以上で私の講演を終わります。今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)

どう一体感が生まれたのか

伊佐政隆氏(以下、伊佐):後ろで聞いていて、「どうやってこの一体感が生まれたのか」と思いました。

佐々江さんの言っていたとおり、僕らは、システムを作る人がプログラミングできる人でないと作れない状態から、プログラミングができなくても業務がわかっている人たちが自分で作れる場所を提供しただけのような気がしています。

今は本当にそうなんですよね。この一体感が生まれつつある環境というのはなんでしょう? 佐々江さんはどう思いますか?

佐々江:一体感は、小さなところでいろいろな実績を積み上げていった過程の中で生まれていった気がするんですよね。最初からみんなが一体感を持っていたということではなくて。

伊佐:そうですよね。

佐々江:小さな改善を繰り返していくというのが、最終的に一体感を生むという力の源泉になるんじゃないかなと思いますね。

伊佐:3点共有いただいた、「78点」という絶妙なラインがとくにすごいなと思いました。僕が大事と思ったのが、あそこですかね。やっぱり始められないのが一番もったいないからですからね。

完ぺきを目指しすぎて前に進めないのが一番もったいないので、「まあ78点でいいや」と思ったら前に進めて、改善ができて、そこにまたいろんなの人がつながっていくという結果になるんだと、佐々江さんのお話を聞いていてすごく思いました。

ご紹介させていただいたとおり、1年前にもここでご発表いただいて、1年経って今また新たなところが見えてきました。アプリの数もスペースの数ももちろん増えているんですけど、一体感という新たなところが見えてきた感じなんですね。

佐々江:そうですね。現場やいろいろな人の話を聞いても、やはり課題はまだまだ残っています。ただ、その課題を解決していく意識がチームの中に生まれているのは、これからいろんな取り組みで変わっていけるんじゃないかなと思っています。

非協力的な人を納得させるには

伊佐:もう1つおうかがいしたいのが、今日、発表していただいた社内事例の中で、「タイムラグがあった」というところがすごく印象に残っています。

まあ気にならない人もいるじゃないですか。「うまくできてないな。でも、いいや」みたいな。そういう声も多くて、改善しようとしてもなかなか上手くいかない話も聞くんですけど、そこに対してはどうアプローチしたんですか?

佐々江:kintoneを導入した当初もそうですし、いろんなシステムを導入したときもそうですが、やはり反対の声もありますし、非協力的な人たちと戦う必要もあります。

なので、やはり成功した事例を見せることが、その人たちを納得させる一番の説得力になると思ってます。とくにkintoneでは数々の実績を積み上げていったので、そういう意味では、継続的していくことで次に展開するというスピード感が早くなっていくと思います。

伊佐:400を超えるアプリがあって、50を超えるスペースがあるという話も、突然できたわけではないんですね。

佐々江:そうですね。

伊佐:小さい積み上げをして、成功を積み上げて、みなさんに理解してもらう。やっぱり、こういう順序が必要じゃないかと思います。

やっぱり、最初がけっこう難しい。なかなか最初でうまくいかなかったって、心が折れそうな時もたぶんみなさんあると思います。まずは、その小さい一歩をどうやって作るか集中して、1歩ずつやっていこうという感じですかね。

佐々江:そうですね。

伊佐:ありがとうございます。佐々江さん、改めましてありがとうございました。

(会場拍手)

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