2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:Genuine Startups株式会社
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司会者:先ほどの与信から振った話に戻すと、個人の与信というところを、クレジットの情報というのが……最近、まさに例に上げていたVALUやタイムバンク。
あ、そうだ、経沢さんはやっていらっしゃるんですよね。
経沢香保子氏(以下、経沢):はい。よろしくお願いします。アドバイザーですので、みなさんぜひ利用してください。
司会者:みなさんタイムバンクって知ってます?
家入一真氏(以下、家入):僕、VALUの株主です。
経沢:そうなんですね。
司会者:あれ(タイムバンク)は時間は消せるんですよね。
経沢:消せます。タイムバンクは寿命という限りがあるんです。でも、VALUはどうするんだろう? 本人が死んだら。
家入:そのあたりは逆に言うとVALUはふわっとさせてますよね。優待をされていない人もいますし、優待も必ずやらなければいけないというものではないので、そこはたぶんタイムバンクさんと違うものなのかなという気はしますね。
司会者:ああいう個人の方に紐付く個人の価値、いわゆる評価経済だと思うんですけど、一方で「その出口をどうするの?」というか「最後はどうするの?」ということがわからないと。昔、円天事件ってあったじゃないですか。円天がお金をどんどん集めて、いろいろな商品と交換できるという円天マーケットがあったんですけど。
要は円天と言われているものが変わらないんじゃないかなと思っていて。みんなでそこを信用しているうちはいいんですけど、普通の銀行を信用できなくて取り付け騒ぎが起こるのと同じように、そこのプラットフォーマーというか、その人たちが信用できないとお金がどんどん出ていっちゃう。そういう破綻が起きやすいというか、仕組み的にはまだ少しそういうふうになっている。
経沢:運営者の倫理観がプラットフォーマーはすごく問われるなと思っていて、私、本当にこれから個人の時代だと思うんですよ。
資本主義というのは、基本的に安く大量に資本家が仕入れてきて高く大量に売るというところで、利益を最大化する構造ですよね。今までは、ほしいものがなかなかすぐ手に入りにくい時代だったから、それでも消費者は買ったと思うんです。
でも、これからの時代、先ほど吉田さんがおっしゃっていたように、できるだけ報酬を個人に渡すということはすごい重要なことだと思います。みんなが豊かさを享受する時代。今、キッズラインは、シッターさんが自分で時給を決めて、取り分の9割は自分なんですよね。だから、キッズラインはお客様とシッターさんから10パーセントずついただいているので、流通している8割を個人にお戻しているんです。
普通の会社は「8割です、儲かってます」みたいにやるなかで、「取り扱っている流通のほとんどはみなさんのものです」「私たちは場所を作ってルールを作って、トラブルがあれば間に立って問題解決センターをやっています」と運営しています。
その時にやはり運営者の倫理観、なにを実現したいのかということをすごく強く思っていないと、「もう少し料率を取ろうかな」とか「この件は個人間同士で勝手にやってください」みたいな話になって、その場所で人々が輝かないと思います。
このなかで「個人の時代になる」と思ってプラットフォームをやりたいという方は、倫理観というか、自分たちはどうあるべきかみたいなものを毎日問うぐらいの気持ちだといいかなと思います。
CtoCのメリットは、消費税にもあると思います。キッズラインのベビーシッター利用は消費税がかからないんですよ。手数料しかかからないから、本当に安く使えるんですよね。個人間ってすごいなと思います。
司会者:なるほど。
吉田浩一郎氏(以下、吉田):でも、「未上場の株式会社って死んだらどうするんですか?」という話と一緒で、それも税務上の価値と本人たちが思っている価値は違うわけじゃないですか。
ブロックチェーンみたいに、基本的にブロックチェーンはリファレンスがあるインターネットなので、要は現実世界というのはリファレンスがあるわけですね。インターネットは匿名性の世界だったので、この匿名性で今もうみんな嫌気がさしているわけですよ。
そういうなかでブロックチェーンというものが生まれた。これは現実世界とインターネットのいわゆるハイブリッド、アウフヘーベンみたいなものが起きていると思っています。それによってなにが起きるかというと、人材というものの証券化ですよね。
今まで歴史的にみて、あらゆるものが証券化されている。まずこの土地。みんな同じ枠じゃないですか。どこにあっても同じ枠なんですけど、相場というものが生まれて、「六本木の土地が坪がいくら」みたいな。
賃貸で、安いところは坪1万で、高いところは坪5万とかやっているわけじゃないですか。そもそも賃貸という概念も、所有ということがめんどくさいから、流動化させるために月貸しで所有できるようにしたわけですね。だから、重たいものが軽くなるのは世の中の必然なんですよ。
さらに、REITってありますよね。不動産は持てないけど、1万円から不動産の権利が分散化したものを証券化させている。だから、そういう意味では社会の中で唯一証券化が行われていなかったのが人間だったというだけなんですよね。要は証券の流れからみたら、証券化されていないほうがおかしいんです。
だって二酸化炭素だって証券化されているし、全部金融ビジネスになっていっているわけです。あるいは為替取引とか原油とかとうもろこしとか、全部証券化されているんです。
人間だけが証券化されていなかったというなかで、ブロックチェーンなどによって人間にリファレンスができるようになって、「これだったら人間の証券化ができるよね」ということが、今始まった世の中のトレンドなのかなと。
だから、「株主が亡くなったらどうすんだ?」という話はありますけど、ブロックチェーン自体は、要は信用が10万個とかに分散化されて、1個だけ書き換えられないようになっているという原理なので、実社会の名刺や登記簿と同じように扱えるとしたら、基本的には実社会の不動産とかと同じように扱えるはずだという感じだと思います。
経沢:家入さん。
家入:僕は信用をどんどん売って、今は信用を失っているので。
吉田:(笑)。
司会者:いや、最近のCAMPFIRE、すごいじゃないですか。先ほどの料率の話でいくと、いったんナシにしたじゃないですか。それは声をあげる閾値を下げるということで、すごくいいプロジェクトが増えたと思うんです。先ほどの、クオリティがどうなんだという話でいくと、やはりそれはそれでいろいろあったんじゃないかなと思うんですけど。
家入:そうですね。僕らも同じですよ。審査というものはプロジェクト単位でやっていますけど。明らかに法的にダメとか、詐欺みたいな感じなのでダメというのはいいんですけど、倫理的にどうかという問題はけっこう定期的にあるんですよね。
その時にどう判断をするのかということは、本当に難しい。社内でもよく議論になりますし、自分的にはOKだと思っても「いやいや、これはナシでしょ」ということがある。
でも、議論が起きるというのはすばらしいことだなと思っていて。最終的には僕がジャッジしないといけないんですけど。
だからプラットフォームをやるということのコストみたいなものを最近よく考えるんですけど、そういった面が求められるようになっていくとコストがどんどん上がっていくなというイメージですかね。
先ほど吉田さんもおっしゃっていましたけど、少し前のインターネットというものは、ある種リバタリアンな感じで、「当事者間で自由にやって。僕らはただ場を提供してるだけだから」というスタンスでよかった部分もあったと思うんですけど、もう今はそうは言っていられないんですね。
司会者:最近どこかで見たんですけど、昔はそう言っても、ネット上での発言ってそもそもちゃんとわかっている人同士でしかできなかったというか。今は簡単にTwitter、Facebookの画面でみんなが声をあげられるようになったから、昔よりもむしろやばくなっているんじゃないかという。
家入:そうですね。なので、よく言われることなのかもしれないですけど、やっぱりマストドンみたいなものが出てきた背景にはきっと、インターネットがある種理想としていた「みんながつながって、みんながハッピーな世界」というものがどうも幻想だったらしい、ということが今僕らが直面している現実で。
「国を超えて、肌の色を超えて、言語を超えて、みんな仲良くなれるじゃんと思ったら意外にそうでもなかったよね」というのは、今のTwitterを見ていてもそうじゃないですか。「だったら、もういっそのこと気の合う仲間とか、なにかしらの属性で小さなコミュニティを作っていったほうがいいんじゃないの?」というのが今の流れなのかなと。
インターネット空間自体はたぶん、どんどん広がっていくんでしょうけど、一方で人を中心とした経済圏やコミュニティというものは、たぶんどんどん小さくなっていくんだろうなと思っています。
ただ、こういうものは螺旋のように繰り返すので、またどこかのタイミングで極限まで小さくなった瞬間にまた爆発して広がっていくみたいなことは、ビッグバンじゃないですけど、そういう瞬間はあるのかなと思います。今はトレンドとしては個人を中心とした経済圏みたいなものは小さくなっていくイメージがあります。
司会者:今日は働き方も含めて、個人にもとづくものがトレンドであるとした場合、個人との反対側にあるのかなと……。先ほど信用の話も出ましたけど、大きな会社や大きなものに対する信用というものが今揺らいでいるのか、あるいは新しい価値になりつつあるのか。
今日の1つのテーマなんですけど、そうはいっても、インフラをやっている会社だとしたら絶対にその社会から逃げられない。インフラを提供しているのでそこから離れられない、地域から離れられない、みたいなことを、NTT西日本さんが事業としてやっていらっしゃるということなんですけども、それならそれですごい信用というかブランドだと思います。
それと、今言ってきた流れがクロスするのか。大企業も、先ほどあったように全部を踏み潰すのではなくて、どちらかというと今はみんな「オープンイノベーションやろうか」「一緒にやりましょう」みたいになってきているので、そのあたりのお考えをお聞かせいただければと思います。
吉田:もう別の経済圏ですよね。今はインターネットが新しい世界を開いて、ソフトバンクの孫さんのプレゼン資料にありましたけど、20年前のNASDAQの時価総額ランキングのTOP10はほとんどオイル会社だったのが、今はほとんどインターネット会社です。おそらく、(今後)10年20年ぐらいにはブロックチェーン関連とブロックチェーン上の企業になると言われていますね。
そういうなかでいくと、もうまったく別の経済圏が動いているわけなので、大企業とぶつかることはまったくないなと思っていて。大企業からすると、むしろ新しい世界のイノベーションのジレンマに対してバリューを提供できるわけなので。
よく言うのは、大企業のなかでイントラプレナーでやるときに、予算を小さく申請するのは明らかに間違いだという話です。要は500万、1,000万で立ち上げたら、とかげのしっぽ切りでやめさせられるだけなので、やはり少なくとも1億は必要です。
そうすると、上司も1億使われたら大変じゃないですか。だからだんだん本気になってくるんですよね。だから、やはりサラリーマン社会のとかげのしっぽ切りにならないように、大きな絵を描くということがサラリーマンはできないわけなので、イントラプレナーとしての役割というものは、めちゃくちゃでかい絵を描いて、「これやるためには10億、100億必要です」と。
吉田:大企業の中の人が取れないリスクを取ってくれるというのが、イントラプレナーにしてもアントレプレナーにしても求められていることです。だから「500万、1,000万でちょっとプロトタイプ作ります」みたいな提案は絶対にやめたほうがいい。
大企業側はめちゃくちゃお金があるけど、イノベーションのジレンマを抱えているというのがポイントなので。だから「ブロックチェーン会社を作るので10億でやりませんか?」という提案のほうが、たぶんNTT西日本さんはワクワクするんじゃないかな、みたいな(笑)。
司会者:なるほど(笑)。
吉田:大企業の人は、未来に向かってある意味無責任にお金を使うということができないんです。だから、無責任に未来を信じて、「ブロックチェーンになにかあるんじゃないですかね。10億ぐらいでちょっとやらせてください」のほうがいいと思いますね。
司会者:ちゃんと稟議を書かせたほうがいいと。
吉田:そうそう。それで役員も当事者になって、「ブロックチェーンってなんかあるらしいぜ」「10億使うんでしょ、大変だな」みたいな感じで。そういう巻きこみ方をしていかないと、大企業を本気で変革させることはできないという感じですね。
経沢:すごくいいお話でした。内側からの改革という意味では、まさにそうだなと思ったんですけれども。
ベンチャーとして大企業と連携をすると考える場合に、今は命を預かるサービスだからなおさらなのかもしれないんですけど、多くの人は安心をお金で買うんだと思うんですよね。保険とかもそうですし。
「なにかあったときに大企業のほうが安心だから、多少高くてもいい会社から買いましょう」。でも、実際によく見れば、賢い消費者になれば、大企業じゃなくても安くていいものはたくさんあって。
例えばユニクロとかもそうなんでしょうけど、そこからイノベーションが行われている場合が多いので、向こうは安心とブランド、こちらはクオリティとスピード感という、その差分をどう交換するかということが連携のポイントになるんじゃないかなとはなんとなく思っています。
私が過去に憧れるというか、例えば「グリーさんがゲームを開発して、KDDIさんで売りました、ブレイクしました」みたいなことは、ベンチャーの中では「なんかいいな」みたいな(笑)。
そういう一生懸命作ってきたものを爆発的に広めるには、やはり大企業さんの安心感と、すでに持っている顧客網というものはいいなと思うわけなので、連携したいと私はいつも考えていますね。
司会者:じゃあ家入さんからも。
経沢:どうですか?
家入:そうですね、なんでしたっけ。大企業……。
経沢:連携とか。
家入:連携……う〜ん、そうですね。
経沢:GMOとかとなにか……。
家入:僕はペパボという会社ではわりと仲間外れだったので。
経沢:そうなんですか(笑)。
家入:仲間はずれというか、仲間がいなかったというか。
経沢:独自のカルチャーを大事に。
家入:あまり意識したことはなかったですね。今、CAMPFIREで取り組んでいることとしては、例えば大企業さんがオープンイノベーションということでイベントをやったり、実際にハッカソンをやったりしましたと。「よかったね」で終わるケースがやはり多かったので、そうではなくて「ちゃんとかたちにしましょうね」ということでクラウドファンディングを使うとか。
あと、地方創生系の取り組みは、きっとこれから日本の地方でどういったものを作っていくかがすごく重要になっていくと思うんですけど、やはりベンチャーだけだとできないことがあったりするし、行政だけでもできないことがあったりする。
なので、地方のいろいろなマルチセクターで、地場の企業だったり、そこになにかいろいろ協賛する大企業だったり、ベンチャーだったり、NPOだったり、行政だったり、大学だったり、ということになるんでしょうけど。そういう複合型でモデルを作っていくことがすごく大事なんだろうなと思っているので、そういった取り組みをCAMPFIREとしてやり始めたという感じですかね。
司会者:大企業と組んでやったりはしていないんですか?
家入:地域の発展がまさにそういう感じで。あちらからお声掛けしていただいて、「じゃあこんな感じでやっていきましょう」みたいな感じで。
大企業といえども、そういうジャンルに熱意を持った若い人たちって優秀な方がたくさんいるので、そういった方々と一緒に作るのはすごく楽しいです。あまり大企業だからどうこうって考えたことはないですけど。
でも、やはり時代の変化のなかで「大きなことがいいことだ」という時代から、今回震災などを経験したことできっと「大きいと逃げ遅れる」ということに気づいたんだと思うんですよ。だからといって、大きいことがよくないという話ではなくて。
例えば、今CAMPFIREって音楽事業がすごく伸びているんですけど、音楽産業1つとっても、今までは大きな傘の中で売れないアーティストの食い扶持を売れるアーティストの売上だけでカバーしていた。
しかも、そこに付随するマネージャーとかの手伝う人たちですよね。1つのコンテンツづくりに関わる人たちがめちゃめちゃいて、その人たちみんなを守るという大きな傘だったと思うんですけど、それでは成り立たなくなってきたというのが現状で。
そこからこぼれ落ちる人たちが出てきたのを、クラウドファンディングで一部レコーディング費用を集めましょうとか、予算が出ないんだったらクラウドファンディグで集めましょうとか。
これって、出版も映画も同じようなかたちで起きている現象なんですよね。だから大きな傘で全部を守るというよりは、どちらかというと小さな傘がたくさんできていくみたいなイメージなんだろうなとは思います。
例えば出版社1つとっても、著者の印税は10パーセントぐらいじゃないですか。だけど、なぜ10パーセントかというと、残りの部分でいろいろな人たちを食わせたり、コストをもっていたりするから、10パーセントしか渡せませんという話だと思うんです。
そこをもっとユニット単位で小さく切っていけば、もしかしたら著者に50パーセント、60パーセント渡せるかもしれないし、著者もフリーの編集者を自分で選んで、その編集者にも例えば20パーセント渡すとか。
そういう分配のモデルが、かつての吸い上げて上から再分配するという仕組みじゃなくて、水平に分配していくようなモデルになってくるだろうなというのはイメージとしてあります。大丈夫ですか?
経沢:いい話でした。
司会者:いい話です。今日は全体的に「いい話になるように」ということで。
家入:そうなんですか。
司会者:笑える必要ないから。
吉田:今日は夏野さんがいないので。
家入:そうそう。この前なにか一緒にやった時に、夏野さんすごく怖くて。すごいしゃべるじゃないですか。すごいしゃべられると、だんだん心が弱ってきて。
吉田:(笑)。
司会者:ゆっくりお話しいただいてよかったんじゃないかと思います。
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