
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
提供:株式会社リクルートホールディングス
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大久保幸夫氏(以下、大久保):いくつか項目別にディスカッションをしていきたいと思います。
最初に、長時間労働の問題。これは一番切迫していると同時に、本当に難しい問題だと思います。
みなさんにいろいろとご意見をいただきたいと思いますけども、最初に私から、今回、これについて分析をしているものがあります。データを出してもらえますか。
これは、職種別の労働時間のデータです。厚生労働省で行われた長時間労働問題の検討会で議論に参加するにあたってまとめものです。
法律を改正して労働時間の上限設定をするだけでは難しい。どうしたら長時間労働を縮減できるかというと、働く人の仕事別に、削減の仕方を考えていかなければいけない。あるいは、業界別、職種別の取り組みというものが、より重要になってくるのではないかと提案しました。
今回のパネル調査でも、この観点で検証したのが、資料の右側にあるところですね。
それぞれの仕事をしている方に、自分の仕事時間全体を100としたときに、自分自身の仕事の成果に直結する「本来業務」をやっている時間と、「周辺雑務」をやっている時間と、待機時間や客待ち時間のような「手待ち時間」の割合をパーセントで分けてみてください、という質問を入れています。
それを職種別に集計したものが、このデータです。この比率の差によって、長時間労働を圧縮するアイデアも違うんじゃなかろうかと思ったんですね。
きっかけは、トラックドライバーの話を聞いたことです。トラックドライバーは、長時間労働になりやすいと言われている職種です。いくらトラックドライバーの人に労働時間を短縮してほしいと言っても、なかなか無理がある。この調査結果からわかるとおり、荷物を受け取る時間、配送センターで待機している時間、最終的には、荷物を届けて納品するところで待っている時間、この「手待ち時間」の比率が高いのが特徴なんですね。
タクシードライバーも客待ちの時間がすごく長いんですね。ただ、その間は、1円もお金になってないわけですよね。大手タクシー会社の一部では、お客さんが待っている情報をいち早くドライバーに伝えることで、待機時間を減らす改革をしているところがあります。また、トラックドライバーについては、業界をあげて、お客さんを巻き込んで、「手待ち時間」を圧縮するためのプロジェクトが始まっていたりします。
また、「周辺雑務」について言えば、営業職が比較的多いですね。お客さんに、企画を考えて、営業をし、ご提案している時間だけではなくて、後処理としての雑務が相当あるんですね。これが営業職の特徴で、労働時間を長くしている。
その部分は、本当に営業職本人がやらなければいけないのか、あるいはオフィスに戻ってやらなければいけないのかと考えていくと、いろいろ処方箋が出てくるのではないか。
このように、長時間労働の縮減を職種ごとの仕事の分類から考えてみるという提案をさせていただきました。
それでは、この長時間労働の問題について、本日のパネリストのみなさんの会社で取り組んでおられることや、ご自身のお考えなどをお聞きしながら議論を進めたいと思います。
本多由紀氏(以下、本多):労働時間を減らすための努力というのは、これまでにもけっこうたくさんやってきています。電気を消す、ノー残業デー、責任者の評価のKPIの中に取り込んだりですね。そういったことを、さまざまやってきているんですが、なかなか職場の風景が変わらないというジレンマを抱えています。
先般、人事部で数字の面から実態を調べました。そこからわかったことは、どうやら働き方、労働時間には、一定のリズムがあるということです。
「労働時間を減らしましょう」と言うと、職場の責任者たちは「いやいや、仕事がどんどん降ってくるし、人はどんどん削減する方向だし」と言います。
しかし、実は、過去のデータと比較してみると、例えばマーケティングを担う組織は、年度によっていろいろ事情が変わっていたり、人が相当数増えていたりするものの、1人あたりの残業時間は過去5年間くらいほぼ同じなんですね。
それを、1人別に見ていくと、傾向としてだいたい毎年同じずつ残業しているんですよ。私たち人事部門においても、明らかに突発的な業務が入ったというような場合は、ぴょんっと数字が上がるりますが、それ以外のときは、一定のリズムを刻んでいるんですね。
ということは、やはり働き方というのは、その人や組織にリズムとして定着してしまっているので、実は人の数とか業務のプロセスを多少変えても、あまり大きな効果がないのではないかと考えています。
では、なぜ一定のリズムを刻んでいるのか。最近ずっと考えていますが、やはり1日24時間のペースが、みなそれぞれにあるのではないかと思います。
例えば、朝早く会社に来る人というのは、毎日必ず早く来て、夕方早めに帰るというスタイルをとっているわけです。また、夜型の人は夜型のスタイルです。そのなかで、仕事をする時間、寝る時間、食事、お風呂、交通機関で移動する時間、それからテレビを見たり、新聞を読んだりといったことが、おそらくあまり大きな変化なく、一定のリズムになっているのではないかなと思われます。
私自身、2人の子どもを育てていますが、これまで仕事をしてきた経験のなかで、生活のリズムが大きく変わったのは過去に1回、子どもを産んだときだけなんですね。自分の24時間の配分の仕方がガラっと変わったんです。それ以外のときは、やはり同じように過ごしていたなと思います。
そういう意味から、労働時間そのものに着目するというよりも、従業員一人ひとりの24時間の中で、仕事以外になにか、やるべきことを作るといった観点もあると考えています。例えば、もう1つなにか入れ込むことによって、24時間の配分の仕方を変えていくということに、少しアプローチを移していきたいということを、し始めているところです。
極端なことを言うと、帰ってもやることがないという人に、どんなに早く帰れと言っても帰らないんですね笑。そこで、他にやることを作ってもらうような働きかけも必要だなと感じています。
労働時間というものは、実はそうそう簡単に減らすことができないような現象があると、今すごく実感しているところです。
大久保:他にやることを促進して労働時間を圧縮するというのは、なかなか斬新な考え方ですね。要するに、人の数や業務プロセスに手をつけるだけではダメで、「リズム」、つまり時間の使い方に関する生活パターンを変えないと意味がないというお話でした。
三好さんはいかがですか
三好敏也氏(以下、三好):弊社でも、労働時間について、いろいろな取り組みをしているんですが、大きく分けて2つあります。
1つは、今もお話があった従業員の「意識を変えていく」です。労働時間に、いろいろな意味での制約を設けていくという取り組みはしていきたいなと思っています。
時間外労働の規制というのは、もちろん枠組みとしてあります。一方、これから施行しようとしているのが、例えばインターバル制などですね。
また、少し変わった取り組みとしては、子どもがいない営業職が、各職場で仮想でママになる宣言をするというものがあります。その従業員が、定時で出社退社するという前提で、その職場のチーム全体でいかに考慮していくかという、予行演習みたいなものです。このように、なんらかの制約をかけながら、限られた時間の中で仕事をする癖をつけていくという取り組みです。
当然、お金の場合になると、経営資源として、誰でも利があるということは認識していますが、労働時間になると、やはり少し甘えがあるんじゃないかなという気がしています。これも大切な経営資源だということで、上限を設けて、経営側も認識を変えなければいけませんし、働く人も意識を変えてもらうということが必要です。
もう1つの取り組みは、できるだけ「武器」をたくさん作ろうということで、在宅勤務の制度面の制約をどんどん外していく。あるいは、フレックスタイムで、コアタイムをなくしていく、といった取り組みをしています。
いろいろな意味で、自律的に仕事を組み立てようという意思が芽生えれば、あるいはそれができるのであれば、いくらでも使えるように、「武器」のほうを整備していくという考え方です。
ただ、この2つに取り組んでいるなかで、従業員と対話したところ、「なんとなく自分たちばかりが、生産性を上げろ、工夫をしろと言われている気がする」という声が聴かれました。一生懸命働いて、極端に言うと手取りも減って、密度が高くなるから疲れてしまう、なんのメリットがあるんだろうという声も出てきます。
そういった意味で、本当に大事なのは、やはり仕事を発注する側というか経営側が、この仕事はしなくていいよとか、この仕事はしなさいとか、ダラダラと放置するのではなくて、戦略的に、時間という経営資源をどこに配分するのかということを、きちんと考えて、業務量をちゃんとコントロールすることだと考えています。
大久保:ちょうどテレワークのお話が出たので、これについて聞きたいと思います。
今回私たちの調査結果では、テレワーク制度が導入されていても、実際にテレワークを活用している比率は、現状けっこう低いということがわかりました。
テレワークができる制度環境がありながら、テレワークをやっていないところが多い。なぜ、テレワークは浸透しないのでしょうか
要因分析をしてみました。業種別にみると情報業などは非常に進んでいて、職種別で言うと営業職で非常にテレワークが進んでいるんですが、それ以外の職業では、それほどでもない。
重要なのは、自分で仕事のやり方を決めることができると思っている人はテレワークの活用が進み、そう思っていない人はテレワークを活用ができていない、という結果です。これは、すべての職種について言えることです。
この結果を踏まえ、テレワークをどのように定着させて、機能させていくか、ご意見をいただきたいと思います。
本多:当社では今、テレワークの導入を一生懸命進めています。推奨していますし、嫌でもいいので、必ず1回はやってみてくださいと呼びかけています。まずは、とにかく体感してもらう。家では仕事ができないという方のために、サテライトオフィスもどんどん増やしています。
こうしたなかで、なぜテレワークできないのか。自問自答してみました。私は、まだ小さい子どもが2人いますので、「本当はこれ家でやれる仕事なんだけどな」と思っても、会社に来ちゃうんですね。
できない理由は、大きく2つあると思っています。1つは、管理する側として、姿かたちがないというよりも、その場にいる、そしていつでも声をかけられる、仕事ぶりが確認できるというのは、やはり安心だと思うんですね。なので、積極的に呼びかけてはいない。
一方で、実は管理される側、部下の側も、会社に来ているほうが安心なのではないかと思います。会社に来ていないということで、なにかしら引け目、負い目みたいなものを感じてしまうのかもしれません。
例えば、テレワークをすれば、通勤時間分は短縮できるはずですので、その分、早く仕事が切り上げられる。その時間を自分の好きなことに使えるという、言葉は会社の中でずっと走っていますが、それを本当に自己裁量でやってもいいのか、というような遠慮や不安があるのだと思います。
そして、そんなことを考えるくらいだったら、会社に行って、上司の目の前で仕事したほうが、お互い安心だからいいよね、という絶妙なバランスがとれているのではないかなと思います。
つまり、お互いが、自由裁量を持つことにもう1歩踏み込めてないことで、テレワークがなかなか進んでいかない。これをやると、きっと効率が上がる、とわかっているんだけれども、今ひとつそこに踏み込めないということです。
この点については私たち人事部としても、かなり強力に、ほぼ強制的にでも、テレワーク体験というものを、働きかけて、その良さを感じてもらいたいと思っているところです。
ちなみに、先般、外資系企業の方とお話したときに、人事担当の役員の方が、「私は、1日中会議の日は在宅勤務にして、全部インターネットの音声通話で会議をする」とおっしゃっていて、なんて進んでいるんだろうと思いましたね。
確かに、音声通話ソフトなど、ITを駆使すれば、どこにいても会議もできるわけです。1日会議だとわかっているんだったら、むしろ家で仕事をする、というところまで進んだ会社がある一方、日本の企業としては、労使という関係のなかでもう1歩踏み込めていないというところが、テレワークが進まない原因ではないかと感じています。
株式会社リクルートホールディングス
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