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HAKUTO リクルートテクノロジーズ 有志エンジニアによるミートアップ(全2記事)

2017.03.27

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「宇宙を人類の生活圏にする」民間発の月面探査チーム・HAKUTOが描く、近未来のビジョン

提供:株式会社リクルートテクノロジーズ

「宇宙を人類の生活圏にする」をビジョンに掲げ、月面資源開発の事業化に取り組む民間宇宙企業ispace。同社は、民間月面探査チーム「HAKUTO」を運営し、Googleがスポンサーを務める月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に参加しています。HAKUTOのコーポレートパートナー企業である株式会社リクルートテクノロジーズは、月面探査ローバーのステータスデータおよび月面の環境データのビックデータ解析で連携していきます。2017年12月に予定されているロケット打ち上げに向けて、HAKUTOとリクルートテクノロジーズの有志エンジニアによるミートアップが開かれました。

民間月面探査チーム「HAKUTO」の概要

中村貴裕氏:本日は、HAKUTOの概要と我々ispaceが中長期的にやろうとしていることをご説明させていただきます。

 まず今、「Google Lunar XPRIZE」という国際的な月面探査レースに参加しています。世界のトップランナーとして、民間月面探査プロジェクトチーム「HAKUTO」として、運営・実行しています。

このレースは非常にシンプルです。まず、月面にロボット探査機を着陸させます。そのあと、着陸地点から500メートル移動させて、最後に月面の画像・映像を地球に送信します。

打ち上げの期限を2017年末として、民間資本のみで実行します。この条件を一番最初にクリアしたチームに賞金2,000万ドル、日本円にするとだいたい22〜23億円が贈られるというレースです。

もともと34チームぐらいありましたが、どんどん絞られて、今年がファイナルイヤーになるんですけど、5チームに絞られています。

HAKUTOは「白い兎」ということなんですけど、5チームの中の1つに残っています。あとは相乗り先のインドのチームインダス、イスラエルのチームとアメリカのチームと、多国籍のチームが残っています。

あちらにローバーのモックアップを展示させていただいているんですけど、ローバーの設計がFIXしまして、今まさに製造に入っているという状態です。

ispaceとしては、これ(月面探査レース)は最初の月面でのハードウェアの実証・ソフトウェアの解析という位置付けで考えています。

ispaceのビジョンとしては、「Expand our planet. Expand our future.」というかたちで、宇宙に人の生活圏を築く、そういう時代を創造するということをビジョンに置いています。

なので、このビジョンに向かって、月面を中心にサービス・ビジネスを作っていくことをミッションとして考えています。

月面の資源を有効活用するisapceのビジョン

次に、ビジョンムービーを見ていただきます。

これは、2030年ぐらいの世界をイメージしています。今のムービーのご説明にもなりますが、今、月面には水がだいたい60億トンぐらいあると言われています。

その水を水素と酸素に分けると、ロケットや輸送船の燃料になります。あとは、月面で人が暮らすための飲み水や燃料電池にもなります。

そういったかたちで、水を中心に、人工衛星だったり、輸送船だったり、ロケットだったり、人のために資源を有効活用していくビジネスをしようと考えています。

宇宙資源に対する高いニーズの背景

月もそうなんですけど、火星に行くための燃料補給も月でしたほうが全体のコストは非常に安くなります。

地球から月の軌道を経由して、そこで燃料補給して火星に行くのは、地球から直接火星に行く場合の10分の1ぐらいのコストです。

今、グローバルでニーズも顕在化してきています。(スライド)左側は、ULAというロッキード・マーティンとボーイングの合弁会社で、ロケットを開発している会社です。

彼らも水のデータや水そのものが実際にほしいと。それをベースに燃料補給、宇宙船の燃料補給をすることを具体的に始めています。

あとは、こちらの静止衛星です。実際、人工衛星の寿命はだいたい15年ぐらいで、最後は燃料切れで寿命が尽きます。そこに水を補給することで長寿命化して、全体のビジネスとしてコストを最適化しながらやると。なので、非常にニーズがあると言われています。

結局、根本的な経済合理性は何かというと、地球から1キログラムを静止軌道に持っていくコストに比べて、月から静止軌道に持っていくコストはだいたい100分の1ぐらいに変わっています。

これは物理法則で、重力の問題でそうなっているので、月になにかしら資源があれば、そこから静止軌道に持ってきたほうが圧倒的にコストメリットがあります。そういったところが本質的な経済合理性で、今はこういう世の中が来ると言われています。

2030年に向けた3つのステップ

そんななか、我々として、先ほどの「Expand our planet. Expand our future.」というビジョンに向けて、いくつかステップを刻もうとしています。

まず2017年、HAKUTOで実際に小型ローバーの技術検証を行います。これはプロモーション的な意義もありますし、レースというプラットフォームに乗りながら、ハードウェア、ソフトウェアの検証にもなる。そういった最初のステップだと考えています。

そのあと、ムービーにも出てきましたけど、複数の月面探査ローバーを月に送り込んで、実際にどこに水があるのかというデータを取得します。

水が非常に貴重なものになるので、そのための地図を作ります。そのデータやマッピングしたものを販売していくサービスをやろうとしています。

最後、2030年には、実際に採れた氷水を燃料化して、衛星事業者さんや輸送事業者さん、ロケット事業者さんに販売していくかたちでビジネスのステップを刻もうとしています。

データ解析の目的と最終ゴール

次に、データ解析の目的をご説明させていただきます。

今回は基本的には地球からのリモートコントロールなんですけど、最終的には月面でローバーの自律走行を行いながら資源開発、水資源の開発にとって必要なデータを効率的に収集したいと思っています。

そのために、月面のいろんな環境情報から最適な走行の計画、自律するための走行計画のリコメンデーションを解析によって取得して、それを自動で回していきたいと思っています。

月面の地形環境情報はいろいろあります。丘があったり、クレーターがあったり。センシング情報によって、どこに水が存在しやすいかという傾向・トレンドが出てくると思うので、そういった情報だったり。

あとは、操作ログとミッション情報。実際に機器を走行させるので、走行させたところから、ホイールの回転とか、スリップのしやすさとか、姿勢とかの情報も得られます。

それと地形環境情報を合わせて、安全に資源のデータにたどり着く経路を自動で最適化することができます。あとは、今回の我々の売りなんですけど、省電力が必須になってくるので、電力節約の最適化の手法にも活用されます。

こういったものをパラメータとして持ちながら、自律走行を行って、資源データを効率的に収集することをデータ解析の最終的なゴールにしたいと考えています。

解析したデータの活用方法

最終的なゴールは、だいたい2020年前半〜中盤ぐらいを考えています。そのために、今回のミッションでは、いくつかやりたいと思っていることがありまして、地形画像データをカメラで取得して、地形画像の分類をやりたいと思います。

あとは、イレギュラーなケースが発生する前兆を検知するための要素も分析によって調べたいなと思います。

ここはできればというところなんですけど、地形画像の分類ですとか、異常の前兆検知から、次にとるべき操作のリコメンデーションにつなげられればと。

これはミッション中は難しいと思うので、実際にミッションが終わって振り返ったときに、「次にミッションをするときに、こういったケースではこういう操作方法をリコメンデーションすればいい」といった示唆を得ることができれば非常によいかなと考えています。

実際に月面でミッションを実施して、いろんなデータがたまります。それらをリクルートテクノロジーズさんにお渡しして、いろんな解析手法があると思いますので、いろんな軸で切っていただいて、解析結果の共有をプレスリリースや講演、学会での発表でうまく活かせればいいかなと思います。

分析手法と対象データ

次に考えうる分析手法。これは我々が考えている仮説で、今回得ることができる対象のデータです。

水や資源の存在度、水平分布もそうですし、ムービーに出てきた、垂直に掘って得られる分布データもそうです。

あとは今回、モーターコントローラの温度、起動からの経過時間、ローバーの走行距離の関係、カメラによる静止画とニアリアルタイムの動画も取得する予定です。PDUというのは、バッテリー温度、充電電流/電圧、残存電力。あとは慣性計測装置(IMU)の加速度、温度、姿勢などの情報があります。

これらをもとに、相関の強いものと弱いものを定式化したり、時系列で機器の温度の変化を見たり、いろんなアウトプットの仕方があるかなと考えています。これは内部でブレストして、今回のミッションでやれればいいかなと思っています。

月面の画像をたくさん撮りますので、それから地形の分類をすると。今回はできないんですけど、将来的にはスペクトル分析で、「レゴリス」という月の砂があるんですけど、そういった元素組成や分布、量、資源の分類をしたいと考えています。

これは関連データとして、画像だったり、TOFという赤外線センサー、あとはボディ自体の温度、先ほどのIMU(慣性計測装置)と、ホイール。そういったものをベースになにか地形の分類ができるのではないかと思います。

あとはエラー検知の話で、オペレーション上問題になった箇所を、直接的な情報や間接的な情報から、エラー前の前兆を関連づけることができればいいなと思います。これはサブシステム全体のデータやエラーデータがもとになるかなと思います。

最後、リコメンデーションの部分、できればいいなというところで、操作ログとか、インフラの情報、あとは環境情報をもとにリコメンデーションと関連づけることができればいいかなと考えています。

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