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【BOOK LAB TOKYO・鶴田浩之氏×Airレジ・大宮英紀氏】Airレジを通して見えてきた、店舗決済の未来(全2記事)

2017.03.29

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「面倒くさい」はなくなり「不便」は残る、その心は? Airレジ大宮氏が語る店舗決済の未来

提供:株式会社リクルートライフスタイル

もしも決済や店舗業務がすべて自動化されたとき、失ってしまうものとは――? Airシリーズの事業責任者である大宮氏と、同システムを導入している「BOOK LAB TOKYO」を運営するLabitの鶴田氏が、キャッシュレスの理想と、店舗の現場が抱えるリアルについて対談。本パートでは「完全にキャッシュレス化されたら、失うものはある?」「逆に、残り続けるものはなにか」について、親しい間柄でもあるお2人が本音で語り合いました。

ファーストユーザーとして自分が使いたいものを目指した

大宮英紀氏(以下、大宮):BOOK LAB TOKYOさんは体験にフォーカスされているということですが。そもそも「BOOK LAB TOKYOをこういうコンセプトにしよう」と思った原体験ってあるのでしょうか? なんというか、なぜこういったコンセプトでお店を作られたのかなと思いまして。

鶴田浩之氏(以下、鶴田):お店の成り立ちは、個人投資家の西川潔さんの存在があり、共同プロジェクトというカタチでスタートしたものなんです。

今の時代に本屋さんという業態で、つくる人を応援する。営利目的ではなく、目標は持続させること、です。西川さんには恩返しをしたい気持ちもあり、彼の「投資以外の手段でも、若い人やクリエイターを応援したい」という考えを尊重したとき、普通の人は多分考えない書店という業態を提案し、、現代の社会的実験の要素もあると思います。

でも、事業計画の段階で、本屋さんだけだとうまくいかないことはわかりきっていました、そこにコーヒーのおいしさと、人が集まる場としてのエッセンスを添える。カフェというよりも、公式にはコーヒースタンド併設書店、という感じです。

調べると道玄坂は朝からやっているお店が少なかったので、朝早くから打ち合わせができるように営業時間を早めにしたり、自分が使いたいと思うものを目指しました。BOOK LAB TOKYOに来ることでお客さんがなにかアイデアを思いついたり、チャレンジしたいという気持ちになる場所にしたいと思っています。

ちょうど今、僕は「ブクマ!」という本特化型のCtoCフリマアプリを作っていて、急成長中なんです。出版業界としても紙媒体が減り、電子が伸びています。貨幣経済と出版物の歴史には、長い歴史があり、時代のニーズに合わせて変わりつつあるという共通する部分があるかもしれないですね。……と、そこまでかっこいいことが言えるものはまだ持ち合わせていませんけれど(笑)。

大宮:お店の雰囲気や体験、店員とお客さんの関係性などは、そういったものをデザインされて作ったんですか?

鶴田:お店の立ち上げにはクラウドファンディングも活用していて、やはり口コミされやすく来店客数は増えてきています。これからの時代は、ITビジネスも実店舗のスモールビジネスも、共感が大切になるのかなと。長期的には、Labitの社員にとっても福利厚生になると思っています。最近は、お客さんの中から弊社のプロダクト開発部門に採用面接で来ていただいたりも。

大宮:なるほど。

「面倒くさい」をなくす一方で、付加価値を残す

―もしも、Airシリーズで、決済とか店舗の業務が全部自動化されたときに、仮に、失うものかあると思いますか?

鶴田:それ、けっこう考えていたことなんですけれど……。僕は新しいものが好きなので、昔から自分でもキャッシュレス化を進めていたんです。コンビニでもどんどんカードを使っていますし、家計簿サービスも世の中に出てきた時からすぐに使い始めていました。

そもそも家計簿アプリで記録をつけるなら、カードのほうが便利じゃないですか。それを周りの人に、まるで自分がエバンジェリストのように推進していた時もありました(笑)。

だから、トラディショナルというか、伝統的な文化に対してもあまり固執しないタイプなんです。もしキャッシュレス化の時代がきたら……。お店側の立場としては、レジチェック作業などの工数やストレスが減らしてもらうことですね。っていいよね、みたいなことしか今は思いつきませんが。

「ブクマ!」を通して本のCtoCフリマアプリをやっていると、個人が商いを楽しめる時代がきている、と強く感じています。現金での商売から、ECになり、CtoCも根付いて、ECとCtoCの垣根はどんどんなくなっていく。個人間決済も含め、普通の人の生活にそういうサービスが定着すると、現金の意識は徐々に減っていきますよね。

紙の書籍と電子書籍もそうですけど、最初は上手に使い分けながら、少しずつ変わっていく。今は個人の時代だと思いますので、「電子マネーネイティブ」じゃないですけど、若い世代のキャッシュレス化に対する価値観は間違いなく、ボトムアップで世の中のトレンドを動かしていく要素になると思います。

「失われるものは?」と聞かれると、けっこう考えてきたんですけど……今は思いつかない、かな。小銭はなくなるのかな、みたいな(笑)。

大宮:(笑)。僕の中では、不便さと記憶の結びつきがあると思っているんです。不便だからこそ記憶に残るものって、確かにあるじゃないですか。

例えばキャンプ。都会やリゾートのほうが楽に過ごせるのに、わざわざ山の中へ行ってテントを立てて……といつもより不便になるようなことをやることになる。でもこれって、不便だからこそ思い出になるし、それが非日常的という価値だと感じられているから、それによって人生に彩りが生まれるからアクティビティとして人気を維持し続けているんですよね。それを、僕は大事にしたいと思っているんです。

キャッシュレス化に関して、よく「摩擦をなくしましょう」という表現が使われたりします。スムーズにキャッシュを使えるようになる、というニュアンスですね。でも、摩擦をなくしすぎた世界って、逆に気持ち悪いというか、良くない気もしているんです。

テクノロジーを使って今より楽にすることはもちろん大切。ただ、楽になった分、人間だからこそ価値を感じるというか、非言語的というか、そんなエッセンスが生まれる・加わえられるようなサービスにできないかなとも考えています。まさにAirレジはこれまでの作業を楽にするけれど、お店の方々がユーザーと親しくなり人と人との関係に新たなきっかけが起こることで、商いを通じた体験がさらに味わい深いものになっていく。

「完全キャッシュレス化」とともに、これまでの面倒くさい作業は失われていく。けれど、まさに付加価値を、どうやってそれぞれのお店の方々と作り上げていくのか。これはテーマとして非常に重要だと思っています。

鶴田:貨幣は国ごとにユニークな性質を持っているから、ビットコインなどFinTechの盛り上がりもありますが、電子化されることで世界はもっと小さくなっていくと思います。

完全キャッシュレスはない

大宮:ちなみにBOOK LAB TOKYOさんって海外の方ってけっこう来られたりするんですか?

鶴田:最近、増え始めているんです。ただ、そこまで多くはないですね。うちは路面店じゃないということもあるので。

荷物預かりサービスの「ecbo cloak」を友達の起業家が作ったんですけれど。それをうちでも導入したら、2日に1回くらいは旅行者の方がスーツケース預けに来てくれて、店頭に立ち寄ってくれるようになったんです。なので、今後も外国人の方は増えてきますね。

大宮:そういう方々からすると、日本の現金というよりも、カードのように、どの国に行ってもだいたい使えるような支払い手段が豊富というのは助かりますよね。

鶴田:そうですよね。

大宮さんにちょっと聞いてみたいんですけど、10年後くらいにキャッシュレス化がかなり進んでいたとして。今って、「え、クレジットカードは使えないんですか?」がたまにあるじゃないですか。現金主義のようなお店です。それが逆転して、「申しわけありませんが、現金は扱っておりません。お釣りのご用意がありません」というお店が発生すると思いますか?

極論ですが、仮にBOOK LAB TOKYOで「来年から現金をなくして、電子マネーかクレジットカード決済のみにします!」としても、お客さんは半分くらいにしか減らないと思っているんです。もちろん、今お店が渋谷という立地にある影響もありますが、そこを振り切ることも可能かと考えているんですね(笑)。

大宮:海外だと、そういう実験されているところがありますよね。話が少しずれますが、インドとかだと、みんな偽札を作るので、高額紙幣の発行をストップしました。

現金は、管理したり輸送したりするコストがすごくかかるんです。とくに、インドの田舎に行けば行くほど、ATMもなければ、輸送するときにリスクだし、持っていることもリスクになる。だから基本的に、「全部電子化にしよう」と国をあげてやってたりします。

鶴田:これから経済が発展していく中で、インドとかだと、最初から制度を設計してしまえばできますよね。

大宮:国自体が推進していることも大きいですよね。お金にまつわるいろんなコストや不正をなくすためにキャッシュレス決済を後押しする。

一方で、国はお金の流れを流通させる&責任者として管理しやすくする&税金を集めやすくするなど、推進する理由は他にもあるんです。でも、個人からすると、現金のほうがプライバシーが守られることがあるじゃないですか。電子マネーを使ったら、いつなにを買ったのかがバレてしまうし(笑)。現金だと、なんというか、足がつかないというか。

鶴田:はい。

大宮:これから先、人々の行動ログが足跡として残る、それによって便利さを享受できることが進むのでこの流れは加速していく方向は間違いないと考えていると思うんですけど、一方でその反動でプライバシーはとても貴重なものになる。だから電子マネーなどの支払い手段が広がる反面、現金のようにどうしても今回は「足がつかない」ようにしたいというシーンが出てきて、そのための手段が残るんじゃないかと思っているところです。

鶴田:そうですね。僕は正直、完全キャッシュレス化はないと思っているんですね。現金は残るはず、たぶん。それこそ、100年とか。わかんないですけど(笑)。僕が生きている時代には、現金は残ってるとは思います。

ただ、先ほどお話したように現金では商品を買えないお店が出てくるというのは、イメージできているんです。

大宮:そうですよね。そうなると、それも使えなくするもなにも、お店の方がコンセプトをもとに考えて、自由にやっていく。仮に現金を使えなくしたいと世の中がなったときに、それ以外の手段でお金をいただくというのが必要じゃないですか。

現金を残したくない人が代わりの支払い手段を自由に使える、駆使できるようにするというのが、非常に大事なんじゃないかなとは思います。それで言うと、僕自身はキャッシュレス、キャッシュレスと言っていますけれど、現金に近しい役割のものは残るだろうなと思っていたりするんです。

鶴田:ですよね。

鶴田氏「Airレジはインフラ投資事業」

大宮:ちょっと唐突な質問ですけれど。もし、鶴田さんがAirレジチームに入ったら、なにします?

(一同笑)

お店の方々の視点で、Airレジチームに入ったらどうするのか。Airペイでもいいんですけど、なんというか「俺だったらこんなことする」みたいな。お店をやってる自分だからこそこう思う、があるのかなと。

鶴田:すごく難しいけどいい質問ですね。

大宮:はい、でも聞いてみたいなと思って(笑)。

鶴田:面白くない回答ですが、まずは徹底的に知ることから始めますよね。最初の1ヶ月とかは、ずっと人に話を聞いてると思います。その上で、自分のバリューが発揮できる役割を探します。別にエンジニアでもいいと思うし、UIチームとか、カスタマーサポートでもいいと思うし。

それでいうと1つ、ちょっと経営視点が入りますが、自分が大宮さんのように経営も含めて長期的に考える立場だと、これはインフラ投資事業なんだという気持ちでやるかもしれないですね。

もしそういった役割があったら、本当に長期的に取り組みを目論んで、その価値観が絶対に揺るがないためのミッションや組織文化を作るところを最初に手がけるかもしれないです。

その意識を底上げして、1事業者の1事業で終わるのではなく「ここが潮目で世の中の歴史が変わる」くらいのつもりでやる。それだと、やりがいがあるのかなと思っているんです。そういう意味では、興味深いですね。ちょっと、やってみたいなと思いますね。

大宮:先ほどお話したように、世の中は便利になりつつ、Amazon Goやコンビニのような画一化的なお店が経済合理性に後押しされて急速に拡大していく、一方でコンセプトを持った人たちがそれぞれ自由にお店づくりをしていくという二極化があると思っているんです。

この自分だけのコンセプトをもつお店、例えば「このお店でしかできない体験がある」みたいなものがすごく大事になっていく。まさにAirシリーズはそういったお店の方々のインフラになりたいと思ってやっているので、そういったところで使ってもらえるようになりたい。それによってより自然にいろんなことができるきっかけが生まれるというのが、僕らが本当にやりたいことなんです。

まさに鶴田さんが話していたとおり 「1事業者で終わるんじゃねぇぞ」「インフラを目指せ」は、僕らとしても心がけているところです。今後で言うと、ラグビーワールドカップやオリンピックなど、海外の方々が日本に来るイベントがたくさん待っている。それに向けて、より活性化していかなければいけない。

もしかすると、そういったブームの後は、日本が斜陽で右肩下がりになるかもしれない。でも、そうならないように、インフラを広げていきたいですよね。

大宮氏「豊かな社会になるようなインフラを作りたい」

あとは、先ほど言われていた人と人とのふれあい。そういう意味で言うと、お金だけじゃない、いろんな機会や経験、豊かな社会になるようなインフラを作りたいと思っています。それを海外に輸出するのが、日本で僕らが育ってきた、文化をサービスをワンパッケージして海外に持ち込むことなんです。

なにかプロダクトだけ1つ、便利なものですって持ち込むのではない。フィロソフィーという文化みたいなものもサービスとともに海外輸出していきたい。これはすごく想いとしてはありますね。

鶴田:文化とサービスのワンパッケージって、すごく響きました。

大宮:話長くてごめんなさい(笑)。文明というのは、どこの地域でも普遍的に便利なものが文明。文化というのは、非合理的なところがあり、地域や風土と関連してだからこそなんとも言えない美しさのようなものを持つもの、それが文化だと思うんです。レジみたいなのは、ツールだから文明なんですよ。便利なものはどこにでも広がる。

文化は、そこに、レジプラス非言語的な、使いづらさもそうですし、これでなにかできる機能だけではない、機能的なものも含めたもの。それがユニークであればあるほど、文化として成熟しやすい。それをパッケージして、海外へ持っていきたい。僕が、今後日本というよりも海外も含め、グローバルを考えたときに、すごく大事だし、やりがいがあるなぁと思っていることなんです。

文明を持ち込むので言うと、アメリカはツール作って、制度作って、外部輸出がすごく得意なので、文化があまりない国なのでね(笑)。僕らは文化をちゃんと持ってるい日本としては、そういうものを広めていきたい。日本の中でも上手にやっていきたい。おっしゃられるように、インフラちゃんと作れよっていうのは、……肝に銘じてやっていきます(笑)。

鶴田:こういう大宮さんだから、安心して使えるなと思います。誰がやってるかって重要です。ツール選ぶときとかにしても、これからもどんどんアップデートされていくことにも期待ができるので。楽しみですね。なんか、改善されるのを期待しているということから、次なにが出るんだろうってことです(笑)。

大宮:ありがとうございます。本当に、最初のリアルタイム検索から始まって、メールを送ったときからこういう出会いになって、本当にうれしいなと思います。

鶴田:本当、うれしいです。

―今日はありがとうございました。

大宮・鶴田:ありがとうございました。

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