2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
『クリエイティブ・イン・フォーカス2017』発刊記念イベント(全1記事)
提供:ゲッティイメージズ ジャパン株式会社
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小林正明氏(以下、小林):みなさんこんにちは、ご紹介いただきました、ゲッティイメージズのシニアアート・ディレクター小林と申します。 まず『クリエイティブインフォーカス』っていうこの冊子について、少しご説明してもよろしいですか?
弊社にはクリエイティブリサーチというチームがあります。ご案内にあったように、実際にお客様が買った画像と、そこからどういうキーワードで検索したのか、その場所でどういう実際の広告があるのか。この3つの要素をミキサーにかけて、毎年6つのキーワードを選び出す。今ご覧になっている画面は、2017年以降の広告のキーワードです。
1番目がVirtualityです。弊社は、ビジュアルのコンテンツを扱っている会社です。写真、動画、イラストレーション、今やVR=バーチャルリアリティというコンテンツが、広告に中で非常に大きな幅を利かせてきている。そのことについては、追ってお話したいと思います。
2番目は、Color Surgeという言葉です。勝手ながら乱暴な意訳をすると、日本語で「色に溺れる」というんです。写真の1つの要素としての色じゃなくて、色そのものがビジュアルの主題になる。そういうキーワードですね。
3番目、これがUnfilteredですね。勝手な意訳をさせていただくと「生写真」といっています。
今まで広告写真、コマーシャルビジュアルには非常に作りこみがあり、ライトも完璧、Photoshopで完全なまでのビジュアルを作っていました。そういったものではなくて、非常にスナップショット的、あるいは報道的な、生に近い写真が広告の中で幅を利かせてきている時代になっているんじゃないかな、と。
4番目が、……すごい写真ですね、Gritty Womanです。Grittyは、直訳をすると「ザラザラゴツゴツした」という言葉なんですけど。
女性の広告写真の中での捉えられ方、要するに男性が見たがる女性像ではなくて、今社会の中でしなやかに、勇気やプライドを持って生活をしている女性像。それは一体どういう写真なのかという投げかけです。
5番目がGlobal Neighborhood。「世界の隣人」と、また意訳をしました。
もうご存知の通りSNSの世界では、国や文化を超えて、とあるブランドが製品サービスを訴求する時でも、ターゲットできるオーディエンスがどこにでもいます。それゆえに、非常にローカルなものでありながら、グローバル的なアピールになるんじゃないかといったような考え方です。
最後に6番目。これがNew Naivetyという言葉なんですけど、私なりの意訳は「写真で遊ぼう」です。
みなさんのお友達でも、SNSで写真を撮って、ユーモアがある……なんて言うのかな、ヘタウマっていうんですかね。プロには撮れない、ユーモアがあるオフビートなリラックスした写真が、実広告の中でもありなんじゃないかなということです。
だいたいその6つが、ゲッティが考えるポスト2017年のコマーシャルビジュアルのコミュニケーションのキーワードじゃないかと思っています。
湯山玲子氏(以下、湯山):おもしろいと思いますね。私は著作物で、『四十路越え!』『日本人はもうセックスしなくなるかもしれない』という本を書いたり、今も現代における男女のありかたなどの著作を多く出したりしている身です。そんな私からすると、このGritty Woman=「野性的女性像」と書いてありますけれど、これは非常に見ていておもしろかったです。
実は今、『女はつらいよ』みたいな、どこでもバランス良く母親も家庭も仕事もみんなこなしていて「いいね!」「輝いているね!」「素敵だね!」と言われるのが夢、というのがここ5〜6年でぶち壊れてきていると思います。
しかし、そのぶち壊れた中にも「私は立つぞ」というようなすごく強い気持ち。それががんがん伝わってきて、さすがだなと思いました。
小林:小池(百合子)さんの出現までに、やっぱり日本の政治は何十年もかかっているんですよね。
湯山:かかってる。そして、今でもただ1人でしょうね。
小林:国際経済機構の政治の参加、企業の中での賃金格差。それから教育、健康、非常に客観的なデータの中で、日本の男女格差は144ヶ国中111位なんです。
湯山:(笑)。ほんと? これはいろいろ考えるところありますけどね。
小林:要するに、Gritty Womanという言葉の中には「しなやかな」「私輝いている」いう感じがありますが、それはガテン系女性、理系女性である。いかにもステレオタイプに男性の職場と言われるところで輝いている女性ですよね。
湯山:輝いてないって。ズタボロだって。
小林:そうなの?
湯山:そうなんだって。
小林:それを言ったら、男性もズタボロだと思いますよ(笑)。
湯山:みんながズタボロの世界の中で、でも強く生きていこう……というほうが、私たちが広告写真に与えるリアリティとしては、届くんじゃないですか?
小林:うん。それで、ブランドが、企業が、そういう女性たちを応援する立場にある。というのが今の社会でものすごく重要だと思うんですね。そういった提言が、Gritty Womanです。
湯山:あともう1つ、私がおもしろいなと思ったのが、New Naivety、「写真で遊ぼう」です。これはここにいるみなさん、コメントの必要もないくらいなんですけど、YouTubeによってどれだけ私たちの世界が変わったか、広告環境が変わったか……ですね。私が専門として、音楽やアートの状況が変わったか、映画の状況が変わったのかは、今から5年前では、ちょっと想像できない話ですよね。
その中の1つとして有名なのが、猫の「だるまさんがころんだ」ですよね。これはなにかというと、素人さんがみんなに一番「いいね!」としてもらえるにはまず笑いがあり、クスッとできる動物や子供が必要。まあ、ナイーブですよね。
罪がない。そういったイメージがありますよね。それは本当に……逆に今非常に世の中は殺伐としていますけれど、YouTubeのように、人々に安らぎと平和を与えているものがある。その感覚は広告にもあります。むしろ広告は、商品を売らなきゃいけない肯定的なクリエイティブです。そこへ入っていくのは当たり前だと思うんですよね。
小林:そうですね、やはりステレオタイプな広告は「非常にプロフェッショナルなもの」というよりも、一般のお茶の間で中高生が「あー、おもしろい」と言っている。どの国であろうと、どこの文化であろうと、思わず見入ってしまうようなユーモア。クスッと笑ってしまうようもの。
湯山:国境ですよね。
小林:そうですね、あると思います。
湯山:あとはVirtualityですよね、これもうすぐVR元年が2017年くるという……。
小林:もう始まっていますね。ごめんなさい、話を……。
湯山:どうぞどうぞ。
小林:僕らは「ビジュアルコンテンツプロバイダー」という、ゲッティの立ち位置です。極端な話ですが、2万年前、人類がラスコーに顔料で壁画を描いたじゃないですか。あれは確か、2万年前ですよね? これから2万年後、いったいどういうビジュアルでコミュニケーションするのか。たぶん何百年後くらいに「あのころからVRってコンテンツが始まったんだよね」と言われるのが、この2〜3年だと思うんですよね。
経済史の分析ではないですが、VRやオーグメンテッド・リアリティ……昨年のポケモンGOのような世界中のユーザーをAIで巻き込むようなものですね。そういったことが間違いなく2017年の中で起こっていて、なにかアートホームなものでブランドが消費者とコミュニケーションするようになっていく。これは非常に重要な1つの要素だと考えています。
湯山:VRは本当にすごく魅力的なんだけど、その反面、社会の構図を本当に変えていく、怖いところもあるんですよ。私の専門のセックス関係だとするとですね、まず新しいメディアというのは……昔のVHSというビデオがみなさんの家庭に普及したのは、エロからでしたよね。
小林:そう。
湯山:そうなんです。エロの力というのは、人間の下部構造なので非常に強いんですよ。
小林:いや、その写真の進化を見ても、アートの進化を見ても。エロチシズムは本当に基本ですからね。それがなかったら、人類何千年か生きてなかったですから。
湯山:そう。
小林:だから「ヴァーチャルセックス」はありですよね。
湯山:ぜんぜんあると思いますね。少子化でしょ、今。人工授精ですか? そのちゃんと素性がわかった遺伝子があって、ラブシーンがヴァーチャルな視覚で得られて。あとはTENGAのようなものがあれば、他人、異性、恋愛を必要としない世界が、早晩に来ると思っています。
小林:あるかもしれないですね。ヴァーチャルリアリティの中で、卵子と精子が結合した後に産まれてくる子供たち。それがもうビジュアル化されていて、産まれる前にすでにわかっていて……という社会がくるかもしれない。
湯山:それで、完全に管理しやすい。
小林:広告として、コミュニケーションする時に、視覚として「ただ見た」という記憶よりも、VRは強烈なんですよね、「体験した」という体感の記憶に残るんじゃないかな。これを黙っているブランドはない。もうすでにVOLVOなのかLEXUSなのか、メディアでいうとニューヨーク・タイムズなのか、
ミッシェル・オバマさんなんかも、PRでVRのコンテンツを使っていたんですね。そういうものが使われ始めていて、これは単なるショーケースなんですけど。
湯山:今のお話で思ったんですけども、広告は裏腹ですね。例えば、すごく速い性能のマシーンに乗りたいと思ったら、これをつけて家で体感すれば別にハイウェイに行かなくてもいい。
小林:そうですね。
湯山:そう事物でいろんなもの、旅行もそうですけど「行って消費させる」というような商材ありますよね、いろんなところで。それが全部、ここで行えてしまうということは本当にありますよね。
小林:ただ世の中は、一元的な動きだとは思わないんですよ。だからこそ逆に本当に匂いがあり、風を感じる実体験ができる物の価値って、そういった触れるものもありえると思うんです。
おっしゃる通り、やはりコックピットのなんだとか、このテクノロジーは今までになかったものだとは思います。それが本当に低価格化し、いずれ数年後にはスマホでVRコンテンツができるようになる。というようなところに来ているなあと、いう意見です。
湯山:そう。私は、山に登ってみたくってエベレストへ行く。でも、エベレストを探検するって、すごくお金もかかって、死んじゃうことも……。そういった風も匂いも、五感をすべて装置で体験できる。この話はあとで出てくるAIでコントロールしてやっているんですね。
例えば、30万円払ってエベレストを体験できる装置。ディズニーランドみたいな。バーチャルリアリティランドみたいなものを、私がお金を持っていたら作りますね。
小林:ニューヨークのゲッティの人間が、リーン・インっていうNPOの団体と握手をしました。それが「なんでゲッティにあるライブラリーの女性って、男性が見たがる女性みたいな写真が多いの?」から始まって。先ほど湯山さんにいろいろお話をいただいたんですけども、本当に等身大の女性たち、それをブランドは必要としている。
世界中のクリエイティブがステレオタイプな女性じゃない。そこにあるリアルな女性たちを撮り進めてきました。そんな中、2年前、Genderblendという言葉を始めました。LGBTのジェンダーマイノリティの方々。そういった方々の社会進出、社会保障を訴求するブランドであるのは、とても大事だと私たちは考えています。
政治の世界、とくに日本の政治は何十年と遅れていると思うんですけれど。2020年の東京オリンピックを目指して、文科省が教育の現場で、クラスの15人に1人いる性的マイノリティの子どもたちに対する「お前は男だ」「女性らしく」といった暴言について、「教育の現場が変わらなきゃいけない」と言い始めた。これが昨年なんです。
また、渋谷区も昨年、同性結婚の結婚証明を発行しました。要するに私たちゲッティはGenderblend、非常に性的な……これはセックスといった動物学的なものではなく、男らしさや女らしさ、社会が定義するそういったものに対して、緩くフレキシブルであってほしい。そういった提言になります。
そこで今年はGritty Womanを。Gritty Womanの写真は……これを見ればわかりやすいな。実際に日本、ASIAの女性にこういったGrittyな写真を、日本のフォトグラファーに頼んでもなかなか撮れないんですよね。
湯山:(笑)。いないんじゃない?
小林:いや、実際にはいるんです。その方々、ものすごく輝いてるんです。それが広告の中で、「なんでゲッティ広告の中でその女性を撮りたがるの?」から始まるんですよね。いや、日本にも(そういった女性を撮れるフォトグラファーは)いらっしゃいますよ、たくさんね。
だから、そういう既成のステレオタイプに対する挑戦と言いますか、それを私たち特に今年、ずっとこの数年続いているんですけど、この先も続けていきたいと思っているんです。
ゲッティイメージズ ジャパン株式会社
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