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マーケターが知っておくべきメディアエンゲージメントの深め方と活用の可能性(全2記事)

2017.02.10

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「このままでは日本のメディアが悲惨な状況に」質が問われる時代、メディアが果たすべき使命

提供:株式会社ユーザーローカル

「データ活用の今を知って、未来を考える」というテーマで、デジタルマーケティングの最先端に取り組む広告主や、人工知能、メディア業界の変化の最先端に携わるキーパーソンが一堂に会した「ユーザーローカル マーケティングカンファレンス2017」。成長を続けるメディアに携わる3人のキーパーソンが登壇した「マーケターが知っておくべきメディアエンゲージメントの深め方と活用の可能性」では、3社のメディアの事例を参考に、デジタルメディアの広告価値の可能性について語り合いました。

東洋経済の「信頼」の作り方

山田真紗義氏(以下、山田(真)):「信頼度」という言葉が何度か出てきたかと思うんですけど、東洋経済さんにぜひお聞きしたいと思うのが、ファクトベースの話を記事制作の条件にされているというところです。そこで気になるのが、コストがけっこうかかるんだろうなというところで。

今日はマーケティングのイベントでもあるので、その評価指標というか、KPIみたいなお話もできたらと思うんですけど。読まれる記事、PVを稼ぐ記事というのと、東洋経済さんだからこそ出せる記事、伝えるべき価値みたいなところ。結局、数字として返ってくるところは違ってくるのかなとは思うんですけど、そのあたり、どういうふうに守っていこうとされていますか?

山田俊浩氏(以下、山田(俊)):そうですね。実は「東洋経済オンライン」は1日だいたい10本から15本ほどの記事しか配信してないんですけれど、そのうち1本か2本で、その日のPVの8割、9割を取るんですね。例えば、本日ですと、貧困に関しての記事が、おそらく200万から300万PV、1日でいってしまうんですね。「じゃあ、ほかはどうなの?」というと、かなり差がつくんですよ。

そうすると、編集部的にはどうしても「あまり見られない記事をやってもしょうがないんじゃないの」という雰囲気になってしまうんですけど、そうじゃなくて、やはり狙って「これは必要なものだからやるんだ」というものに関しては、多少PVが少なくてもやっていく、と。

ですから、1本1本の記事をKPI的に見ると、取材に行って、カメラマンも連れていってとか、いろいろなコストがかかってるわりには見られていない記事というのは、あるにはあるんですね。ただ、これはやっていく、と。

あとは、その日に見られなくても、意外に半年ぐらい経ってから検索で、あるいは、その問題自体が注目されることによって読まれることもあるので、「ストックしておく」という意味でも必要なものについては手を抜かないということもあります。

直接的に、たくさんコストをかけたらたくさん読まれる、とはならないところが悩ましいんですけれども、全体のポートフォリオの中ではうまく利益が出る構造になるようにということを、今は気をつけてやっていますけれども。

山田(真):そのバランスを取られてるのは、編集長なんですか?

山田(俊):編集長がそれをやれるとすごくいいんですけれども、今、部員一人ひとりが自分の中で「やりたい」と思うもの、やりたいけれども読まれないかもしれないというものに、みんなチャレンジしろ、と。

そのためには、やはり、時事的なものですとか、読まれるものというのも、それなりに自分の中ではやりながら、一人ひとりがそういうポートフォリオの感覚を持ってやれるように、ということをやっています。

1人の編集者というのは、1日1本か2本やればいいということになってますので、その中でバランスを持ってみんなやっていく、ということを心がけてます。

山田(真):ありがとうございます。もう1つ質問したいと思うんですけど、先ほど2億PVという数字が出ていたんですが、1億PVを達成してから2億PVに至るまでが、かなりスパンが短かったなと。かなりの急ペースで成長されているんだな、というところなんですけど。

ほかの媒体社さん、ビジネス系の媒体社さんと比べて伸びていますという話もありました。ほかの媒体社さんが、2016年になって課金を開始したのかとか、別にそのタイミングではなかったと思いますし、無料会員登録が急に2016年にできたのかとか、そういうタイミングでもなかったと思います。

それで、東洋経済さんはずっと無料で展開されて。いわば、各社の取り組みが大きく変化したわけではないにも関わらず、東洋経済さんがものすごく伸びている要因というのは、どういったところにあると思われていますか?

山田(俊):リニューアルしたのが2012年の11月ですから、4年ぐらい経つんですけど、その間、ずっと伸びているということが、やはりネットの世界の特徴だとは思うんです。ブランディング的には、「経済ニュースを見るなら東洋経済」という認識が、読者の間にも浸透しているのかな、ということは感じます。

他社がなにもやっていないわけではなくて、2016年の間は、やはりIDをとるということに多くの会社がシフトしてます。そのために、ロックをかけたり、あるいは、1ヵ月前のものを読めなくしたり、ユーザーから見ると、ある意味すごく使いにくくなるというようなことがありましたので。

そういったこともあって、東洋経済オンラインのほうに読者が流れてくれたのかな、と思います。その点は、ちょっと謙虚に考えたんですけれども(笑)。

東洋経済オンラインは課金にしないのか?

山田(真):ありがとうございます。新聞社さんとかも含めて、紙を持っている媒体社さんって、ブランディングの行き着く先として、どうしても囲い込みというか、課金というところに目が行きがちかなと思っていまして。3,000万UBでしたっけ?

山田(俊):はい。

山田(真):それくらいあると、「『東洋経済オンライン』に金を払ってもいいよ」というユーザーさんって、もしかしたらけっこうな数、数千人とか数万人単位でいらっしゃるのかな、とも思うんですけど、今後の展開をちょっとお聞きしたいなと思っていて。

課金のトレンドとして、音楽業界で起きていたことがメディアのほうでも起きている、という印象を受けます。例えば、音楽業界でAppleが、アルバム単位じゃなくて曲単位で買えるようにした。iTunes Storeの話ですね。その後、大量に持っておくんじゃなくてアクセスして聞くっていう、ストリーミングの文化があります。メディアについても、出版分野ですがdマガジンとかAmazonの読み放題サービスの事例があります。

ちょうどタイムリーに、LINEさんと文春さんの話が最近上がっていまして、「文春砲だけを切り出して少額でLINEで買えるよ」という話がありますけど、そういったマイクロペイメントみたいなことって、東洋経済さんでも「特集だけ売ります」とかできるんじゃないかと思うんですが、そのあたり、課金全般についていかがでしょうか?

山田(俊):会社全体で見ると、東洋経済オンラインが完全に無料なんですよね。それと、『週刊東洋経済』がありますので、この『週刊東洋経済』が実はWebサイトを持っていまして、「週刊東洋経済プラス」というサイトなんですけれども、こちらが有料なんです。

ですから、今後やっていくとしたら、当面の間は東洋経済オンラインの中でロイヤルカスタマーのみなさんには、ぜひ「週刊東洋経済プラスも読みましょう」と。そこは月額2,500円もしますので。そこになるべく引っ張っていくといいのかな、と思います。

これは、東洋経済オンライン自体にプレミアムなものを作ってしまうと、ある意味、週刊東洋経済のほうのユーザーを取ってしまうんですね。これは会社の中で悩ましいところでもあるんですけれど、今は、週刊東洋経済のほうになるべくお客さんを引っ張っていく、というようなことを考えています。

それと、課金ということでは、実は我々は出版社としてはユニークなことをやっていまして。東洋経済オンラインの記事のなかに、東洋経済から出している出版物の、半分プロモーション的な記事があるんですけれども、ここで我々が出している本をプロモーションしていきます。そして、Amazonのリンクを貼って買えるようにしますということを、この2年くらい、ずっとやっているんです。

これがかなりいい成果を挙げていまして、書籍の中でヒットがだいぶ出てきているんですね。ですから、東洋経済オンラインのなかで課金をするというよりは、東洋経済新報社全体のなかでは、お金を払ってくれる方を、東洋経済オンラインとは別の場所で取っていこう、という戦略になっています。

山田(真):会社全体としてのキャッシュポイントが複数箇所にあって、そのプロモーションとかにオンラインの媒体も使われている、というようなお話ですね。

山田(俊):はい。

ハフィントンポストの“取材力”に期待されている

山田(真):ありがとうございます。今、伸びている要因とマネタイズのお話をうかがってみたんですけど、「ハフィントンポスト」について、2013年の5月に日本にやってきて、まだ3年半くらいしか経ってないんですよね。伸びた要因についてうかがえればと思うんですけど、いかがでしょうか?

竹下隆一郎氏(以下、竹下):そうですね。やはりソーシャルメディアに強かったという面。当初は、SEO対策というか、すごく検索に引っかかりやすくなっていて、その後はやはりソーシャルの時代が来たので、ソーシャルメディアで非常に広まって。良い記事を作り、どう読まれるかを研究し続けてきたメディアです。

さきほどの数字も全部オーガニックというか、別に広告も打っていなくて、自然に広まっていったので、そこが伸びた要因ですね。

山田(真):ハフィントンさんも全部無料で見れるというか、マネタイズはもっぱら広告だけという感じですよね?

竹下:そうですね。

山田(真):接点として、ソーシャルメディアで接触するユーザーさんって、どうしてもソーシャルメディアのユーザーさんなので。その後、ハフィントンポストという媒体のブランドを定着させるにあたって心がけていることがあるのか、それとも、もっとソーシャルで多くの人にとりあえずリーチするぞという新規ユーザー獲得の拡大路線なのか、どちらでしょうか?

竹下:当初は拡大路線で、2016年もそうだったんですけど、後半くらいから、拡大と同時にブランド路線でも同時並行でやっています。

例えば、LINEさんと組んだのも、ハフィントンポスト側に編成権があるというか、自分たちで記事の順番を決められるので、「必ずしも読まれるかわからないけど、ハフィントンポストらしい」というチャレンジングな記事を入れたりして。たとえ外に出して分散した後も、ハフィントンポストらしさを保っています。

あとは、イベントを少し強くやっていきたいと思っています。イベントは2つありまして、こういう場のリアルなイベントもそうですし、Facebook Liveといって、Facebook上でライブ中継が今できるので、それも積極的にやっていますね。

山田(真):ありがとうございます。ブランドが浸透したからこそという話で、さきほど深掘りしたかった、ユニクロさんの取り組みですね。ほかに同じような事例は、そんなにないんじゃないかと思うんですけど。

メディアのドメインのなかに、いわば箱を1部屋設けるようなかたちで、クライアントのオウンドメディアを展開させます、という事例って、まあ、「Guardian」とかがやってたりするわけなんですけど、それとも少し違いますよね。

完全に編集記事で、今まで蓄積されてきたものも、そこの部屋に収まっているわけですよね。そのあたり、どういったコミュニケーションのうえでああいうかたちになったのかということをお聞かせいただいてもいいですか?

竹下:やはり、クライアントさんの理解が大変重要ですね。クライアントさんが、単に例えば「フリースの記事を書いてください」「ヒートテックの記事を書いてください」みたいな場合、まったく成り立たないので。もう少し深掘りしてもらって、「自分たちの会社はなぜ存在するのか」というのを、きちんとコミュニケーションできるクライアントさんだとすごくやりやすい。なので、必然的にグローバル企業さんになります。

なぜかというと、例えば、今ユニクロさんって、パリのオペラハウスの近くや、ニューヨークですごくいい市街地のど真ん中にあります。私も行ってきたんですけど、すごくいい場所にあるんですね。それで、ユニクロさんなど日本企業が外に出て行く時に、海外から「なぜおまえたちは存在するんだ?」ということを、けっこう問われると思うんです。「あなたたちはZARAとなにが違うのか?」「GAPとなにが違うのか?」と。

そういった時のコミュニケーションが得意なのは、やはり外に出て行って1から自分たちのことを説明している企業さん。「単なる宣伝じゃなくて、読者にとってもいい価値を提供できますね」となるので、そこはポイントだと思います。

山田(真):ユニクロさんくらい広告費がある会社さんだと、テレビCMもバンバン打っていらっしゃいますし、日本語で展開されているFacebookページだけでも100万人ぐらいファンがいたりするんですけど。リーチだけで考えたらテレビやオウンドのアカウントもあるなかで、なぜハフィントンさんと組まれたのでしょうか?

竹下:やはり、我々のネットワークやブランドが持っているカラーやトーンでしょうか。例えば、ユニクロさんが今回出してきたお題は、「服とはなにかをみんなに考えてほしい」。「なぜ毎日こういう服を着るんだ?」という時に、我々はふだん取材をしているので、ネットワークがあります。「80歳のおばあちゃんで、毎日オシャレをしているおばあちゃんがいますよ」「病気で入院している子供が、服を毎日変えることによって、どんどん治っていったという事例を知ってますよ」といったことがわかる。

あるいは、我々は働き方っていうのをすごく大事にしているメディアなので、いろいろなイベントを開いています。それで、転職した人たちや働き方に関心がある人たちと良い関係を築いて、すぐ連絡もできるんですね。リストというか、取材先ですね。そうすると、「転職することによって、服がどんどん変わっていった人を知ってますよ」「アポイントできますよ」という。そこに期待していただいたんだと思います。まさに取材力だと思います。

動画メディアが獲得した新しい時間

山田(真):ありがとうございます。では、立ち位置がだいぶ変わる吉田さんに聞いてみたいと思います。先ほど、「ブランディングの一環として、書籍を出しました」という話がありました。

アプリのほうは、ストック型の接点として出されているかと思うんですけど、まず、「なぜこれほど急拡大できたのか」というところですね。「DELISH KITCHEN」が始まって、1年くらいでアプリや書籍に至っているわけですよね。そのあたりの要因などをお話いただけたらと思います。

吉田大成氏(以下、吉田):「動画が見られる環境が整った」ということが、すごく大きかったと思っています。スマートフォンや通信といったインフラ系が整い、各種プラットフォーマーさんが動画コンテンツを推していました。

もう1つが、そのなかでなにが大事だったかと言われると、最後まで見られて、ユーザーがリアクションをとってくれるコンテンツを作り続けられるかどうかだと思っています。

純粋に広告だけでユーザーさんを増やしていくというよりは、いかにオーガニックで見ていただけるかどうかをすごく大事にしているメディアなので、シェア数やコメント数が多くなるようなコンテンツを作り続けてきたということが、すごく大きかったのかなという気がしています。

山田(真):オーガニックで増えている割合と、広告で増やした割合は、だいたいどれくらいになるんでしょうか?

吉田:そうですね……オーガニックのほうが大半です。

山田(真):ありがとうございます。あとは、ユーザーローカルとしてたくさんデータを持っていまして、いろんなアカウントのデータを見ながら、どうしてもエンゲージメント率であったり、アクション率が下がってくるというのが目に見えてわかるんですが、そうしたときに「じゃあ、どうやって生き残っていくか?」みたいなことを考えるんですけど。

「どうやって差別化するんですか?」ということはほかでもたくさん聞かれていると思うんですが、どういったことをお考えでしょうか?

吉田:コンテンツの差別化として、もともと僕らが動画メディアをやり始めた時に、きっと同じようなジャンルで出てくるメディアさんはたくさんいらっしゃるんだろうな、というのは思っていました。

やはりメディアとしてのコンセプトをしっかり持って、そこにファンをつけていけるかどうかということが、すごく大事かなと思っていました。なので、「DELISH KITCHEN」であれば、「だれでもおいしく簡単に作れるレシピ」をお届けするというコンセプトなので、エンタメ性が強いものなどはやらないと決めていました。

ファンの方に、「ちゃんと作れるね」「明日のごはんに使えるね」と思っていただければ、毎日見ていただけると思っていたので、その軸だけはぶらさないように運営をしてきました。

山田(真):ありがとうございます。短い動画で料理を見せるというのは、SNS上にほかにもたくさんアカウントがあるので、競合を挙げるとキリがないというか、いくらでもパッと思い浮かぶんですけど、新しい市場なんじゃないかなと思っていまして。そうなってくる時に影響を受けるのはどこなのかな、と。

生活者の可処分時間を奪うという点では、ゲームとか、なんでも競合に当たるといえば当たるんですけど、「動画メディアで料理をやってます」という媒体のもう少し大きい枠で、ただし大きすぎないところで……。例えば、それがテレビなのか、雑誌なのかでいうと、「このあたりから自分たちがライバル視されそうだ」というのはありますか?

吉田:僕は前職がグリーという会社で、モバイルのゲームをやっていたんですけど、その時も「既存の家庭用ゲーム市場を奪ってるんじゃないか」もしくは「そうじゃない市場を取ってるんじゃないか」ということをけっこう言われました。

僕らの動画を見ていただけるのは、例えば「家事が終わった後のスキマ時間で数分ぐらい見よう」とか、「お買い物に行く途中で、スマホを見ながら見てもらおう」という、今までメディアに接点がなかった時間だと思っています。

モバイルゲーム市場も、僕は2006年、2007年ぐらいから、ちょうどゲームを始めたんですけども、その頃だいたいソフトウェアの売上で3,000億ぐらいでした。今、モバイルゲームと家庭用を合わせると、1兆円ぐらいありますが、家庭用はそれほど落ちてはいないんです。

そう考えると、同じようなかたちで、今のテレビ・ネットを合算したメディアへの接触時間は、実は増えているので、新しい時間を取れているというところがすごく大きいのかな、とは思っています。

メディア同士でキュレーションし合う

山田(真):ありがとうございます。時間もあと5分くらいなので、2017年年始ということで、最後にみなさまから一言ずつ。2017年、あるいは2017年以降、「こういうことにチャレンジしていきたい」といった抱負があればお願いしたいと思います。山田さんから、お願いいたします。

山田(俊):この1~2年、力を入れてるんですけれども、自分たちはパブリッシャーであると同時に、やはりプラットフォームとしてもなにかやっていきたいということを常々考えています。そのなかで、例えば、「東京カレンダー」さんや「GQ JAPAN」さん、あるいは、「西日本新聞」さん、「福井新聞」さんなど地方新聞、そういったほかのメディアの記事を配信しています。

先ほど、1日に自分たちが作れる量が10本から15本ほどとお伝えしましたけれども、配信している記事としては20から25本ありまして、1日5本ぐらいは他社のコンテンツを実は配信しているんですね。

これはなんのためにやっているかといいますと、やはりどうしても、Yahoo!やSmartNewsといったプラットフォームの引力というのは非常に強いものがありますので、メディア同士でもなんらかのかたちで、お互いの読者に対して「なにを求めているか」ということをキュレーションし合って。

ですから、例えば、竹下さんともし組んだとしたら、東洋経済オンラインのなかのオリジナル記事で、「この読者にこれは響くんじゃないか」というのを選んでいただく。そして、私たちのほうも、「このなかで、この記事は東洋経済の読者には必要なんじゃないか」というようなことでキュレーションし合う。

そういったかたちで、メディア同士が自分たちの読者が一番求めているものはなんなのかということを、自前主義だけではなくて、お互い協力し合ってこの輪を広めていきたいな、と思っています。2017年はぜひ、そういう年にしたいなと。

竹下:すごくおもしろいですね。ぜひ、なにかやれたら(笑)。

山田(俊):やりましょう(笑)。

山田(真):ありがとうございます。では、続いて吉田さん、お願いいたします。

吉田:僕らは一昨年くらいからメディアを運営しながら、「質」というのをすごく大事にしてきました。料理系であれば、料理研究家や管理栄養士がレシピ考案していますし、それ以外のメディアでも、専門家の方と一緒に作っています。

やはりこれからも、メディアの質が問われると思っています。これはユーザーさんに対しても、メディアに対しても、広告主の方に対してもそうだと思っているので、信頼度も含めて質にこだわりを持っていきたいと思っています。

その分、コストは上がりますが、逆にそういうメディアだけが伸びていくというか、そういうメディアだけになっているような状態を作っていけることが望ましいんじゃないかなと思っています。

2つ目に、今までのメディアとは違い、映像として伝えられる点がすごく大きいと思っているので、そこをどんどん極めていきたいです。

最後、今までテレビCMで商品を認知することがすごく多かったのかなと思っています。ただ、なかなか見てもらえない年齢層ができてきているなかで、その代わりとしてデジタルの領域で、どういうふうに自社の商品をブランディングしていけるのかというところが、メディアとしても、広告主としても課題なのかなと思います。

僕らが提供しているブランドコンテンツというタイアップコンテンツは、質にこだわるからこそ伝えられることがたくさんあるんじゃないかな、と思っているので、その部分を進化させていきたいと思っています。

私たちはどんな社会を望むのか?

山田(真):ありがとうございます。最後に竹下さん、お願いいたします。

竹下:そうですね。まあ、お二方に付け加えるのも、蛇足なんですが、やはりメディアの質が問われる時代になっていまして。ハフィントンポストも、今すごく話題のキュレーションもしているんですけど、昔から非常に慎重に……例えば、社員2人以上は必ずチェックするとか、医療情報などは、場合によっては、ほかの別のお医者さんなど専門家に問い合わせて、裏を取ったりもしているんですね。

ただ、そこの努力はなかなか表に出てこないですし、読者にとっては関係ないので表立って言うことはなかったんですが、そこはやはり今日来ていらっしゃる方みなさんで共有したいな、と思っています。

それから、先ほど山田編集長がおっしゃったように、メディア同士で連携して質を上げていかないと、どんどんメディア自体が悪くなってしまう。アメリカなんかで、フェイクニュースといって、大統領選に影響を与えてしまうくらいになってきている(影響力を過大評価しているのではないか、という指摘もその後出てきている)ので、細かいビジネスの話というよりは、「じゃあ、私たちはどんな社会がいいんですか?」と。

今日、このパネルを聞いているみなさんが家に帰った後にニュースを見て、そこで変な動画とか、変なニュースとか、嘘のニュースばかりでいいのか。仕事は抜きにですね。そういったことを考えると、やはりここは踏ん張りどころかなと思います。もちろんビジネスは大事なんですけど、ここで踏ん張っておかないと、日本のメディアが悲惨な状況になってしまうので、そこは踏ん張りたいなと思います。

それともう1つ、やはりどうしても日本だと、ネットというと、まあ、夜の世界、裏社会なんですよ。

「ハフィントンポスト」と言っても、おかげさまでみなさん、わかってくださるようになったんですけど、いまだに電話口で、「歯ブラシの『ハ』、フィンランドの『フィン』、トンボの『トン』のハフィントンです」と言っているんですね(笑)。それを「ハフィントン」と言った瞬間に、「あ、ハフィントンポストさんね」と言ってもらえるのが目標です。

山田(真):そこはもうけっこう認知されてるんじゃないかな、と(笑)。

竹下:例えば、最近あえて政治家取材などをやっているんですけど、政治家の事務所にかけると、「まず、ファックスを送ってください」となるじゃないですか。まずは理解してくれなくて。そういう、日本の中枢にいる、霞が関、永田町の人たちにもリーチして、注目してほしいなと。

ただ、政治家なども変わってきているのは、とくに2016年、「保育園落ちた、死ね」ブログが非常に話題になって、国会の論争にもなったので、「ネットとかブログというものをバカにできないな」という状態にはなってきていると思います。日本で地殻変動が少し起きていると思うので、そこを変えていって……、まあ、今日いらっしゃるような最先端の方は、ご存知だとは思うんですけど(笑)。

そういう日本の中枢にいる方というのは、実は、我々が思っている以上に、遅れてると言ったら悪いんですけど、わかっていないことがけっこうあるので、そこにもリーチしていきたいなと思います。

山田(真):ありがとうございます。3名様から、やはり共通して、質や信頼の話が出てきました。最後に私の締めで恐縮なんですけれども、メディアって、広告主の方々からしたらただの拡声器ではなくて、「ユーザーがその先にたくさんいるからペイパブを出しましょう」とか、そういうことではなくて。

ハフィントンさんのユニクロさんとの取り組みの事例が、今回、一番わかりやすい例だなと思うんですけど、ふだんの編集コンテンツが広告案件にもそのまま資産として活用できる、と。

これは、ふだんの取り組みそのものが、信頼を目指して運営されているハフィントンさん、あるいはほかの媒体さんもすべてそうなんですけど、そういったメディアさんの取り組みがそのままプリズム効果として、拡声器だけではなくて、「メディアさんを通すことによって、もっといいかたちで生活者に届く」というところもあるのかなと思います。

それで、今日この1時間前より、少しだけでも「もっとメディアの中の人の話も聞いてみよう」とか、単にバナー貼ったりするだけじゃなく「自分たちの事業がメディアの資産を活かしながら伝えることでもっと大きな価値になったらいいな」という認識を持っていただけたら、本当に今日のイベントをやった甲斐があるなと思います。

この後は、みなさんにアスク・ザ・スピーカーのコーナーに立っていただきますので、ぜひ足を運んでいただければと思っております。本日はありがとうございました。

(会場拍手)

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