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リクルートテクノロジーズカンファレンス2016 後日対談(全2記事)

2017.01.26

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“唯一無二の技術者”になるために 及川卓也×リクルートテクノロジーズの本能的キャリア論

提供:株式会社リクルートテクノロジーズ

リクルートテクノロジーズ主催の社内カンファレンスで「自身の『係』を考えてみること」をテーマにした対談が行われました。今回は、カンファンレンスのアンケート結果をもとに、登壇者であるIncrements・及川卓也氏、リクルートテクノロジーズ・古川陽介氏、石川信行氏が後日談を語ります。本パートでは、前半に引き続き、「興味の対象を峻別すること」「将来のキャリアの捉え方」について、3名が自身の成長環境の選び方や今後の展望について持論を展開しました。

興味の領域は峻別すべきか

──前回のカンファンレンスについて、参加者のアンケートの回答の中に「『好き嫌いせずに、何でも取り入れていたら当たり外れもありますよね?」「峻別する能力が求められていませんか?」という声がありました。それに対して何かありますか?

古川陽介氏(以下、古川):僕は何でも取りにいっていますけど、結局は自分の好きなことしかやらなくなります(笑)。時間の制限がある中で、「やっぱりこれが一番好きなのだ」ということで峻別できるのではないかなと思います。

石川:僕も同じ意見です。最初は与えられた環境でどう力を発揮するかという話だと思いますけど、経験を重ねていくにつれて、自分が好きな方向もわかってくると思います。

最初は分類の幅が広いと思いますけど、そこから「う~ん……ITなのかな?」となって、ソフトウェアエンジニアなのか、インフラなのか、データサイエンスなのかはわからないですけど、「○○が好きそうだな」となって、そこから細分化して入っていくというパターンは多いと思います。

そこの居心地が悪かったらまた違う環境に飛べば良いと思うので、あまり領域を絞る必要はないと思います。

Googleから日本のスタートアップに転職した理由

──及川さんはいかがですか?

及川卓也氏(以下、及川):僕はけっこう戦略的なんですよ(笑)。Googleを辞めて、次にどこに行こうかと考えたときに、いくつかの選択肢はあったんですね。まず、外資系IT企業のプロダクトディレクターやエンジニアディレクターというのを考えました。実際、幸運にも声を掛けていただいたところもあります。外資っていうのは独特の働くためのノウハウがあって、それはすでに身につけているというところもあり行きやすかったのですが、私はあえて日本の小さなスタートアップ、しかも創業社長が28歳の企業に行きました。

こんなことしたのは、日本全国で僕ぐらいじゃないですかね(笑)。

──世間の反応としては、「さすが及川さん」というか……その1歩はなかなか踏み出せないと思いますが、あえて逆張りできたマインドはどこにあったのでしょうか。

及川:僕は辞めるときに、自分のレーダーチャートを作ったんです。弱いところ・強いところを適当に8軸ぐらい作って、「自分はどのぐらいかな?」と考えました。

当時の同僚や自分と同じぐらいのキャリアを積んでいる他社の人のレーダーチャートを勝手に想像して作ってみて比較して、「外資に行ったら、必要とされるスキルのうち、この部分はこいつに負けるな」とか考えるわけです。

たとえば、当時、クラウド系のエバンジェリストみたいなポジションはどうかと声がかかるわけですけど、エバンジェリストといえば、私の古巣でもあるMicrosoftには澤円という髪の長いおじちゃんがいたり、西脇資哲という「日本で一番プレゼンがうまい」と言われている、すごい尖った人たちがいるわけです。 要は、下手するとその人たちに負ける可能性もあると。じゃあ、「そこの土俵で戦ってもおもしろくないな」と思うわけです。 なので、どこのスキルを伸ばしたいんだろうかと考え、その勉強ができる環境に入ったほうが良いと思ったんです。Googleはなんだかんだ言いながらも、自社に素晴らしいコンピューティングの基盤環境があるわけです。社内にいると、そういう技術を使っているのですが、実は、Google以外でいろんな人が組み合わせて使っているさまざまなSaaSの知識はあまりないんですね。

今のうちの会社は、全部オープン技術かSaaSを組み合わせて、あれだけの製品をちゃんと運営しているので、そのノウハウが学べます。今後、自分で何かサービスを立ち上げようと思ったら、そのようなSaaSの組み合わせの経験は活きてきます。

自分はどちらかというとマネジメントに振り切っていたから、自らが手を動かす機会は減っていました。もちろん、ゼロではありませんでしたが。例えば、今は自分でSQLをガンガン叩いて、一生懸命KPIを追ったりしています。少し詳しい分析が必要なときはRを使っています。こういうことがまさにIncrementsでやりたかったことなんです。

人と同じキャリアはおもしろくないので、ロールモデルはいませんが、逆に自分自身が誰かのロールモデルになれたら良いなと思っています。

ロールモデルのいない領域でどう戦うか

例えば、時代もあったのでしょうが、Microsoftを私と同時期かそれより前に辞めた人で起業した人というのはそんなに多くありません。辞めた後もMicrosoftと同じようなビジネスをしている企業や、Microsoftのパートナー企業、もしくはMicrosoft技術を活用している企業に転職というのが多いパターンでした。もちろん、それが悪いことではありません。ただ、全然違う分野で起業したり、新しい分野でまだ小さい企業に転職したりして活躍し、社員が後に続きたいというような人はそんなには多くなかったように思います。

一方、日本法人で開発をずっとやっていたとしても、日本ではやれることに限りがあり、ポジションも頭打ちになるので、営業やマーケティングなどの開発ではない部署に異動するか、米国本社に転籍するかしか、当時は方法がありませんでした。

僕は辞めて、外の会社でも技術・開発系でこれだけおもしろいことができるということを後輩たちに見せたかったのです。それで僕はGoogleに行きました。Googleは日本でちゃんと開発組織を持っているから、そこで開発ができたわけです。

別に「Googleに来い」ということではなくて、「そういう会社は世の中にたくさんあるから、もっと外に目を向けて見ませんか?」ということですね。私の転職っていう小さなことかもしれないことを通じて、Microsoftの同僚や後輩に気づいて欲しかったんです。

Googleを辞めたときも同じです。給料は良いかもしれないけど、みんながみんな外資でずっと働き続けるというのは、おもしろくないと思っています。

シリコンバレーに活力があるのは、Googleを辞めた連中が起業したり、まだ小さいスタートアップに行ったりして、スタートアップが「次のGoogleになる」というダイナミズムがあるからです。

日本のスタートアップを応援したいと思ったら、外から支援しているだけでなく、やっぱり大企業の人間がどんどん入っていかなければいけないでしょう。僕みたいな年齢の人たちでちょっと気が狂ったような人が飛び込んでいったら世の中は絶対に変わるわけです。

石川:及川さんは日本を超えたり、会社を超えたりという、ステップの幅が広い感じがしています。僕の場合はもっと狭くて、データサイエンスというなかで、「アルゴリズムを極める」とか「ライブラリーを知っています」とか「オープンソースを使えます」とか、これはもう誰でもできるから戦場ではないと。

ただ、データサイエンスという領域をもっと見ていくと、結局は施策接続のところがすごく弱いです。なので、ここでいくらアルゴリズムを作ろうが、何の役にも立たなくて、ただの宝の持ち腐れとなります。

そこをつなげる役・課題をうまく見つける役の人が、日本にはほぼいないと思っているので、今はそこを取りにいっています。

まずは領域で止めておくのか、もうそれをどんどん超えていくのか、というところで少し違ってくるのかなと思いました。

及川:それはどちらが偉いということではなくて、私は際を大きく超えることが好きだったというパーソナリティの話です。なので、その道でのパイオニアになってください(笑)。

石川:いやいや(笑)。

ベンチマークを持つことの重要性

古川:僕はよく「3年後のキャリアは何をしますか?」と聞かれることがおおいですが、毎回困るんですよね。

石川:「3年後なんか知りません!」と(笑)。

古川:ロールモデルの話で思いましたが、 新人の頃は「この人みたいになりたい」という目指すべき先輩の像があって、だいたいの目標値がわかるんですけど。

最近は独自の道を歩きすぎたせいか、自分の興味の範囲の中でさらに「この人になりたい」という人がいなくなってしまった気がします。

石川:僕はいないというか、考えたことがないかもしれないです(笑)。

及川:ロールモデルはあるに越したことはないけど、IT業界の技術の動きがこれだけ早いと見つけるのが難しくなってしまうというのはもう仕方ないでしょうね。

──先ほどの、レーダーチャートを作って、「この領域だったら、この人に勝てる・勝てない」というお話は、ロールモデルではなくてベンチマークですよね。自分の競争優位性を高めようとしたときに、そのようなベンチマークを持っているかどうかというのは大事だなと思いました。

及川:たまにベンチマークをやるのも良いですが、そこまで本質的ではないのかもしれません。本当にやりたいことというのは、同じフィールドにそれなりの人がいたとしてもやると思うので。ただ、俯瞰的に見るときの1つの手法としてはおもしろいと思います。

やっぱり自分の中で大事にしているものがあると思うので、そこを大切にしてほしいですね。例えば、スタートアップに行くといってもいろんな企業があって、自分はゲームがぜんぜんダメなので、ゲームはありえないと思っています。別にゲームを否定しているわけではないですが、誰しも同じように趣向があったら、こだわりがあると思うので、それを大事にして欲しいという話です。

あとは、「おもしろいし、応援したいけれども、自分がフルコミットするものではない」ということもありますしね。これも自分のこだわりの話だと思います。

僕自身はやっぱり技術でしたね。本当に技術中心のところに行きたいと思って、そこがブレない芯のところだと思っています。

──そうすると、「本能に忠実になりなさい」と。

及川:そうですね。戦略的にやる一方で、「違う軸をやりたい」というのは本能でもあるので。しばらく組み込みをやっていたら、エンタープライズのサーバーがやりたくなっていたり、そういう感じです。

技術者たちが考える、将来のキャリア

──最後に、前回のカンファンレンスと今回の対談をふくめて、言い足りなかったことでもいいですし、これからどうありたいでもいいですし、何か思うことはありますか?

及川:誰かに言われたことがあるのですが、僕の話というのは「なんかざらざらする」らしいんですね。良い意味で耳障りが悪いと。

「イラッとする感じのことを言われて嫌なんだけれども、すごく気になって刺激を受ける」と言われたことがあって(笑)、もっとジェントルな感じになりたいと思いつつも、キャラは変えられないので。

でも、「及川は嫌いだけど、言っていることは気になった」ということでも刺激を与えられれば良いなと思っています。いや、嫌われたくないので、努力はしますが。自分自身、3年後や5年後や10年後にどうなるかはあまりわからないですね。

古川:僕は3年後にはちょっとわからないんですけど、1年後ぐらいだったら想像できる感じもしています。国内でのプレゼンスはわりとできてしまったので、やっぱり海外かなと。

今は「東京Node学園祭」というイベントを持っているんですけど、その学園祭もだんだん国際色豊かになってきています。それは日本のJavaScriptコミュニティにとっても僕にとっても良いことだと思っています。

そうやって海外のプレゼンスも上げていきつつ、日本のJavaScriptのコミュニティも盛り上げるということを1年後、2年後までにはやっていたいと思っています。

自分はまだJavaScriptやWebアプリケーションの技術が好きなので、その後に何を取るかというのは自分としても興味があります。

石川:僕はITですらない可能性もあります。虫や魚が大好きなので。僕の中ではITはまだサブエンジンですね。

及川:振り幅が大きいですね(笑)。

──なるほど、ありがとうございました。

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