2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:株式会社リクルートホールディングス
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伊藤綾氏(以下、伊藤):リクルートでダイバーシティを担当しております、伊藤です。どうぞよろしくお願いいたします。
私どもも、大久保(第一部の登壇者、大久保幸夫氏)のお話にありました罠に多数はまってまいりまして、今でもまだまだはまっている部分もあります。
今日はそんななかで、本当に本当のところ。悩んだところや、そこからなんとかなったところ、まだ悩み中のところも含めてお話を共有させていただければと思っています。
まずはじめに自己紹介です。私は、どちらかというと先ほどの(大久保氏の)お話のなかの「スペシャリスト」としての経歴が長く、2006年より『ゼクシィ』というブライダルのメディアの編集長を務めていました。
当時は、校了前になると連日遅くまで働いていました。そのなかで、「ここで将来、もし出産した場合、仕事と育児を両立できるのかな?」と、数少ないロールモデルを見ながら感じた20代でした。
そのあと出産をし、時間的な制約がうまれ、今までよりも3~4時間ほど短い時間で同じ編集長という業務をやらなければいけない状況になりました。いったいどうやったらがんばれるかということを、非常に悩み、もがいてきました。
そのなかで一筋の光が見える時がありまして。それは、同じリクルートグループでも事業会社にいた私にとってはどこか遠くにあったダイバーシティ推進室の存在でした。担当者たちが手掛けてくれる、色々な施策や社内報の発行、研修といったことに、その内容だけではなく誰かが動いてくれているということ自体に何だか勇気をもらい、現場で日々業務に当たっていました。
今は逆にダイバーシティ推進の担当をしていますが、一人の従業員としてどんなことを感じて、また私たちダイバーシティ推進側としてなにをしてきたかを、両方の面からお話したいと思っています。
リクルートは、グループ従業員数がワールドワイドで38,000名程度。関連会社もありますが、今日お話させていただくのは、とくに国内における施策です。
リクルートホールディングスという持ち株会社に私がおりまして、各事業会社のダイバーシティ推進部と連携して各種施策を行っているという体制になっています。
先ほど二葉(iction!事務局長の二葉美智子氏)のほうから、10年前からダイバーシティ、とくに女性活躍の施策に取り組んできたというお話がございましたが、2006年に長時間労働を改善するところから始まりました。
その当時は、ワーキングマザーの数も非常に少なかったものですから、「もし出産しても戻ってこられる」「出産しても辞めなくていい」といった風土や仕組みができていったのが、その次の時代です。
そのあと、出産して復職するだけでなく、女性自身が管理職としても活躍していく……例えば、課長、部長になれる。経営ボードに入る……そんなところまで進んできました。
2015年からこの1~2年では、やはり一人一人が活躍するためには、女性だけががんばっていても限界がある。働き方を含めて男女問わずダイバーシティ&インクルージョンをみんなで実行しようということで、「働き方変革」を1つのテーマにおいて展開しています。
リクルートは、よく「女性が多い会社だ」と言われます。確かに、入社時の女性比率は45パーセントほどあります。しかし、管理職に任用されるに連れて女性の割合が減っていくというのは、やはり一般的な傾向と変わらない点かと思います。
ただ、この10年間の取り組みによっていろいろな変化はありました。まず1つ目は、ワーキングマザー率の変化です。
私が『ゼクシィ』にいた頃に、「私はこの会社では育児との両立に自信が持てないんです」と当時の人事部に相談したことがありました。ちょうど2004年ぐらいのことです。
しかしその後2008年に、象徴的な変化がありました。東京のオフィスに事業所内保育所ができたのです。これはとてもインパクトが大きかったですね。
というのも、定員は20名で、ほとんどの社員はここに預けることはないわけで、あくまでも地元の保育園に入れなかったときのためのセーフティネットとしての位置づけではあるのです。
ただ、「もし保育園に入れなかったとしてもここに預けて戻ってくることができる」といった安心感だけではなく、「私たちの会社は本気で『出産しても戻ってきてね』と思っているんだ。たぶんそうだろう。そうじゃなきゃこんなことしないだろう」と、当時、私のメンバーや同僚たちも感じたことを思い出します。
このあたりから、ベビーシッターのサービスなど各種両立支援を拡充し、今、女性従業員の5人に1人がワーキングマザーとなっています。
2つ目が、女性管理職比率の上昇ですね。10年前には、課長職は10パーセントほどいましたが、部長・役員層においては非常に少なく、一般的な平均レベル、もしくはそれよりも低い状態でした。
そこから、課長職だけではなく部長や役員層の比率も伸びている最中ということになります。ご覧いただくと、この4年間ぐらいで上昇比率の角度がぐっと上がっていることがお分かりになるかと思います。
その過程では、女性の役員比率と課長比率について、時期を少し変えながら社内で議論し、目標を決めました。そして社外にも公表し、きちんと目標達成のための施策に取り組もうという体制を組みました。
しかし、これを推進するにあたり、やはり社内で意識醸成をしていかないと、なかなか難しい局面もありました。
ときどき、社内においても「なぜ女性が活躍しなくてはいけないの?」「なぜ女性の管理職を増やさなくてはいけないの?」と問われることがあります。
そのときに、ダイバーシティ推進としての独自の言葉、特別な言葉をなるべく持たないようにしています。というのも、リクルートの経営理念のなかに「個の尊重」という言葉があるからです。ダイバーシティは企業フィロソフィーそのものであり、この「個の尊重」を実現するためにまずは性差という観点から着手してきたのだ、でも決してそれだけではない、というコミュニケーションをしています。
そして一方的な発信とならないよう、「ダイバーシティについて話そう、考えよう」というメッセージを日常的に発信しています。
(スライドを指して)例えば、これは社内報のサンプルです。従業員メールと紙媒体の両方ありますが、「なんのためのダイバーシティなんだろう?」「本当にダイバーシティって必要なのか?」といった議論の場を展開しています。
こちらはダイバーシティ推進担当や各社の経営ボード向けの社内メディアです。「ダイバーシティの最新のトレンド」や「各社のこのナレッジはすばらしかった」といった情報の共有や目線合わせの場として使っています。
これをもとに、各社のダイバーシティ推進担当が集まり、3ヵ月に一度、横断戦略会議を開いています。
また月に一度、全従業員にメールマガジンを配信しています。これは女性活躍だけではなく、例えば介護、LGBT、男性の育児・育休……多様なテーマを取り上げてメッセージングし、さらに、毎月イベントを開催しています。
例えば先日は、VRを使って認知症の方が見えている世界を体験するというワークショップを行いました。介護というのはどういうことで、仕事との両立はどうしたらいいのか、を体験して考えるイベントだったのですが、非常に活況でした。こうしたイベントは人気が高く、抽選になることが多いです。
さらに、ダイバーシティというのは、思想だけでなくファクトでどれだけ「見える化」できるかということもとても大事だと思っています。
例えば女性管理職の任用比率だけをゴールに置いてしまうと、それが本当にいいことなのか、それともただ任用度を上げただけなのかわからず、立ち止まってしまうことが多いと思います。なので、国内の従業員を対象に、年に1回「ダイバーシティアンケート」という、40項目ぐらいの調査をしています。
例えば女性活躍のこともそうですし、管理職向けには「自分がマネジメントするときの課題は何か?」、メンバー向けには「実際ダイバーシティがちゃんと尊重されているか?」というような、いろいろな角度から質問項目を設計しています。
このアンケートのポイントは、任意回答にしては回答率が高いことです。回答率が85パーセント、約1万人もの従業員が答えてくれます。ダイバーシティに対して意識の高い一部の人からの回答でもってよしとするのではなく、とにかく数を取ることで、多様な声をきちんと捉えるということを大事にしています。
私はダイバーシティの部署に異動する前、このアンケートに回答するのをずっと待っていました。1年間待っていたというと少し大袈裟ですが、本当に待っていました(笑)。
なので、そのメールがくると「きた!」と思って、「さあ書くぞ。今年はこれを書こう」と。
例えば、育児との両立はどうしたらもっと可能になるか、とか、「朝早い会議は、介護や育児をしている人には参加が難しいことも多い、なにかルールを設定できないか」などですね。
いろいろな本音、従業員が評価するダイバーシティというものが、ここで見えるんですよね。女性管理職比率の裏にあるものも見えてくる。そういったことがとても大事だと思ってます。
そして「女性の意識」、「マネジメント」、そして「働き方」、最後にそれを推進していく「体制」。この4つのテーマに分けて、どこがきちっとできているか、どこが課題か、どこの打ち手が足りないかといったところを見るようにしています。
今日はとくにダイバーシティ推進テーマのうち、1つ目と2つ目について具体的な事例をお話ししたいと思います。
では、まず「女性の意識改革についてです。まず1つ目が、やはり「プライベートとの両立」に向けての不安ですよね。特に育児との両立の課題感は、まだまだ圧倒的に女性のほうが強く感じています。
中でも課長任用の前の段階の28歳前後の女性従業員を切り出して調査すると、「今後両立が不安である」と答える比率が84パーセントと非常に高い。
そのことについて上司と相談できているかというと、過半数が「相談できていない」と答えていて、1人でもやもやしていると。
彼女たちがその先のキャリアも目指していくというときに、変化する30代に向けた不安を誰かが解消していかなければいけないということで、「Career Cafe 28」というグループ横断研修を行っています。
これはどんな研修かというと、28歳前後になると会社から招待状が届きます。必死に仕事をしていて、「もうすぐ30だな」と思っても「自分の人生のことはまだ深く考えなくていいかな……」と、少し気持ちが揺れているときに招待状が届くので、とても心に刺さりやすい。
その人たちのなかから、義務ではなく、手上げ制で本当に「聞きたい」という希望者が集まり、このようなかたちの研修を行います。
メッセージは、ライフイベントなど、起こり得る変化を見据えて「どんなプランでもいいから、自分の人生とキャリアのことを今から考え始めませんか」ということです。ライフイベントは予測できないけれど、これからの変化に対応するために、今から自分の強みを認識し、磨いていく。モヤモヤしたまま、不安な気持ちのままキャリアにブレーキを引かない、と伝えます。
そのような講演やワークショップの後、数ヵ月経ったタイミングで、女性の少し上の先輩従業員たちとの面談があります。まったく知らない人との面談です。いわゆるメンター的な役割かもしれませんが、面談で相談相手になってもらい、自分のキャリアプランやライフプランを考えていくという内容です。
私は『ゼクシィ』にいた当時にこのメンターをしていましたが、当時面談した人たちからいまも「子どもが生まれました」「異動して元気です」といった連絡をもらいます。
結果としては、やはり仕事とライフプランの狭間で揺れ始める28歳前後という年齢で区切ることで、メッセージが非常に明快になるんですよね。そのため、実施後アンケートでは「他者にも勧めたい」という項目のポイントが非常に高く出ます。
一方で、残念な結果もあります。
(スライドを指して)実はこの右側は、「じゃあ上司と相談できますね」「事業部に戻り上司と相談してくださいね」と言っていますが、「相談したい」という人は4割しかいなかったのです。つまり、どれだけこういう取り組みを行い、本人にメッセージが刺さったとしても、なかなか上司には相談しにくいという現実があります。
「私の上司はわかってくれないと思う」「プライベートも含めてキャリアの相談をするのは難しい」「たぶん驚かれると思うから嫌だ」と、いろいろな理由で言いたがらない。これではよろしくないということで、管理職側にも訴求をしないといけない、ということになりました。こちらについては、後ほどお話します。
「女性の意識」改革の2つ目が、「役職志向の低さ」です。両立の不安とともに、「管理職を目指したい」という役職志向がやはりまだまだ男性に比べ低い。これはみなさまの企業でも同じかもしれません。
そこで、部長・執行役員になり、同時にそれを楽しめている・生き生きしている女性たちに共通しているものはなにか、実際にインタビューを行いました。すると、彼女たちには共通点が2つありました。
1つ目は、自分自身がなぜ仕事をするのか、なぜこのリクルートにいて、社会に対してなにを成したいのかという、自分自身の人生のビジョンが明確になっている人は、役職というものを使い、リクルートを通じて社会を変革しようと思えていて、がんばれていると。
逆にそれがないと、「いや、偉くなりたいわけではないので……」ということで立ち止まってしまっている傾向が強い。これが1つ目です。
2つ目が、仲間がいたということ。部長・役員という同じレイヤーに、話ができるような、とくに女性を中心とした仲間がいた、孤独ではなかったということでした。
こうした点をふまえ、リーダー、とくに部長以上のポジションのリーダーにつく女性が増えてほしいというメッセージを込めて、課長もしくはその手前の選抜メンバーを集め、全社横断で「女性リーダー研修」というプログラムを実施しています。
ユニークな点は、キャリアプランの研修ではなく、またスキル装着研修でもなく、「自分自身がなにを成したいのか」ということを半年かけて見つけていき、最後にそれを役員の前でプレゼンテーションするという内容です。
なので、現在の担当業務と関係がないことを発表するメンバーもたくさんいます。
こういった「Career Cafe 28」のような若手向け研修と、具体的なバイネームによる選抜研修を組み合わせて彼女たちの意識改革に取り組んでいます。
株式会社リクルートホールディングス
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