2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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仲山進也氏(以下、仲山):最近、Webでソニーの創業に近い時期に、新しいものを次々と創りだした人たちが引退後にインタビューを受けた記事を読みまして……(日経ビジネスオンラインで掲載「オレの愛したソニー」)。
井手直行氏(以下、井手):ありますね、そのシリーズ。何人か見たことあります。
仲山:共通しているのがソニーの創業期は、今日のキーワードでいうと「フローなチーム」として仕事をみんなでやっていたけど、だんだん大きくなってきて、ヒエラルキー組織になっていき、つまらなくなってきちゃったよね、みたいな。
そのなかに土井(利忠)さんという方がいて、その人はフロー経営というのを唱えて広めている人なんですけれども。
チームとしてフローな状態に入ることを「燃える集団」と呼んでいて、その頃のソニーのことを書いているんです。どういうプロジェクトでどういう感じだったのかというのを読むと、まさに井手さんの会社みたいな感じなんですよね。
「これって無理でしょ」みたいなお題が当時の社長の井深(大)さんから降ってきて、誰もできるとは思えないんだけど、やっているうちにちょっとずつゴールが見えてきて最後は劇的な展開で達成する、というのを繰り返していると、「社長から来るお題は全部無理そうだけど、またたぶんできるよな」という感じで楽しみながらやれるようになっていく。
そういうプロセスを体験すると、普通のサラリーマンがみんなスーパーマンに変身するんだよねって書いてあって。そんな感覚ってありますか?
井手:ほんとにそんな感じですよ。最初は僕1人がいろんなチャレンジをやって、みんなを引っ張っていたんですけど、これだけ大きな所帯になって、影響力もそこそこ出てくると、僕は会社にいないので1人でやるのは無理で、チームに任せるようになっていくんですよね。
一番その話に近いものは、新製品の開発とかね。僕も入っているんですけど、ほかのメンバーが中心になって新製品を開発しているんですよね。
一番すごかったのは、2年前にローソンさんから頼まれて作った「僕ビール、君ビール。」というカエルの絵柄が入ったビールです。「僕ビール、君ビール。」がローソンで売られてることを知っている人はどれくらいいますか?
(会場挙手)
すごい、半分くらいいますね。知らない人のためにもうちょっと言っておくと、2年前にローソンさんから若者向けのビールを作ってくれと依頼があったんですよ。なぜかというと、大手さんに若者向けビールを作ってもらっても、若者に買ってもらえた試しがないと。
若者がお酒を飲まないことが続いていくと、日本のトップレベルのチェーン店のローソンさんにしてみると、「10年後、20年後アルコールを飲まない人が増えることに本当に危機感を感じる」と。「ヤッホーさんのビールは年齢的にも若い人たちが飲んでいるから、ヤッホーさんならできるかもしれない」ということでお題をいただいたんです。
そんなのやったことないし、全国チェーンのところから専用ビールを作ってくれなんて初の試みなんですよね。
「できるとは言わないけど、やってみましょう」と言って、プロジェクトメンバーを組んで、全部自分たちでやるわけですよ。若者がターゲットだとわかってはいるけど、じゃあ若者のどこのターゲットまで絞るか、そういう人たちはどういう思考なのかと。
それで、インタビューとか、リアルな市場調査を自分たちでやって、そこでコンセプトを決めて、ターゲットを決める。僕たちはキャラクターを立てることにしているので、キャラクター候補を決める。ネーミングの案も何千も出して絞り込んでいくつか候補を決めて、最後にまた消費者インタビューをやったんです。それででき上がった商品が大ヒットしたんですね。
どれくらい大ヒットしたかというと、発売当日にやったプロモーションがものすごく受けて。発売当日に大手の新商品が出たんですけど、それにぶつかったんですね。でもそれよりもうちの方が売れて、1ヵ月の売上が、ローソンさんって100アイテム以上ビールの登録銘柄があるんですけど、アサヒスーパードライに続いて2位だったんですよ。
これがすごくヒットしたんで、その翌年にあった、ローソンさんが業者さんを表彰する制度があるんですね。全取引先を呼んで、新浪(剛史)さんとかローソンのトップの方たちがいて、ローソンさんが「いつもありがとう」と言って、表彰するわけですよ。
ローソンさんに一番貢献したメーカーということで、その年のMVPに1社だけ、うちが選ばれたんですよ。過去、中小企業が選ばれた例って当然ないんですよね。僕たちが初めて選ばれたんです。
さらに、ローソンでビールが売れたというので、今年の3月に日経新聞が主催する「2015年日経優秀製品・サービス賞」を受賞しました。30社くらいが受賞して、うち以外はトヨタとかホンダとかJRとか全部大企業でした。それでうちだけが、日経MJ優秀賞というものをとったんです。
それで今は、ビールって100アイテム以上登録があるなかで、絶対に置きなさいというローソンさん指定銘柄が4つしかないんですよ。あとはフランチャイズなので置いてもいいし、置かなくてもいい。
その4つというのが、「アサヒスーパードライ」「キリン一番搾り」「サントリープレミアム・モルツ」「ヤッホーブルーイング僕ビール、君ビール。」なんですよ。これは異例中の異例で。すごい売れてるんですよ。
大手は半年で(新しい銘柄が)44銘柄ぐらいあるんですけど、コンビニに入らないわけですよ。入っても、1ヵ月か2ヵ月でカットされて、1年後に残ってるのはゼロに近いんですよね。
なのに、2年前に作ったものがいまだに置かれていて、4銘柄の指定銘柄になっている。これは全部自分たちで数人の力でやった、新製品が一番大ヒットした例なんですけど。これは1人の力ではなかなかできない。チーム力です。
だから最近、ビール屋じゃなくて、クリエイター集団なんですよね。そう呼ばれるようになりました。
仲山:どういう意味ですか。
井手:ネーミングがすごいとか、デザインがすごいとか、さっきのファンイベントを有名な人が取材に来て、「ハーレーダビッドソンとスノーピークとヤッホーブルーイング」というわけですよ。年間70回も講演をする時に、この3つを代表として出してくれているわけです。
普通、なかなか1個も取れないような賞をクリエイティブなところで評価していただいているっていうのは超異例で。
しかも新製品がすごいと言われると。大手の新製品が1年以内で消えているのに、ヤッホーブルーイングのものはことごとく残っているわけです。それはチーム力を結集した成果のなにものでもないというね。それこそ、1+1が2ではなく、5にも10にもなっている。
今(スライドに)出ていますけど、120点を軽く超えているみたいな。
普通、長野県の田舎の弱小ビールメーカーが、コンビニの棚に置かれるレギュラーの4銘柄に選ばれるとは誰も思っていないですよ。
「僕ビール、君ビール。」の例でいくと、1,000点くらいいっているんじゃないですかね。僕も「売れたらいいなあ、売れるかもなあ」と思っていて、完成の時には「これは売れるだろう」と確信にはなっていたんですけど、ただここまで売れるとは思っていませんでした。
しかも競争が激しいコンビニの棚に残るどころか指定銘柄になっているというのは、最大のアウトプットの成果以外のなにものでもない。その過程でチームはトランスフォーミングみたいな状態になったんですけどね。いい事例です。
仲山:これプロモーションも、カエルを発見したらSNSにアップしてもらうみたいなことをしていましたよね。「捕獲」でしたっけ。
井手:そうそう「捕獲」。発売日に……当然テレビCMとかできないし、プロモーションができないわけですよ。営業も数人くらいしかいないんで。ぜんぜんお金がなくてパンフレットなんかも作れないから、自分たちなりになにができるかというのを社員たちが考えるわけですよ。僕はプロモーションには一切かかわらなかったんです。
社員たちが、SNSで「WANTED、10月何日に、このビールがローソンに並びます。見つけた人たちは捕獲しましたとお知らせください」と。「本当にローソンに並ぶのかどうか僕らも不安なんですよ」とか言って。
そういうのをTwitterとかFacebookで何回か事前に告知して、発売当日はインターネットのUstreamかな、YouTubeみたいなのを使って回線で生中継しました。
「青森で見つかりました!」って投稿が来たら、この間の参議院選みたいな感じで、うちの幹事長が日本全国のマップに「青森県当選です!」ってバラの花をさして、インターネットの生中継で「やったー!」「カンパーイ!」なんて言って。うちのスタッフが4人くらい生中継をやっていたんです。
それとは別に東京にも営業所があるんですけど、東京営業所はお客さんだけに探させたら申し訳ないからと言って、23区は自分たちで手分けして探そうと言って。始発の山手線1日乗り放題切符を2人分買って、2人がかりで手分けして、バカなことをやるわけですよね。
「世田谷区、なかなか見つかりません!」みたいな(笑)。「わかりました! なになにリポーターありがとうございます!」とか「検討を祈ります!」とかそんなことをやって、おもしろおかしく実況中継をやったらそれもウケて。
3日間で投稿が4,000件くらいあったんですよ。その4,000人は全員買ってるんですよね。当然、店頭で写真撮ってる人もいるけど、ほぼ全員が買って、「捕獲しました!」とか言って写真を撮ってくれていて。
「全部買い占めると悪いから、◯◯店と△△店と××店と3店に分けて、2本ずつ買いました」とか。ケースで買ってくれて、「24本捕獲しました」とか。コンビニ行ってケースでくださいって言う人なんていないじゃないですか。
仲山:見たことないですね。
井手:そんなのがあったので、売上はあんまり狙ってなかったんですけど、売上になった。要は投稿してくれている人が全員買ってるんですよね。
ローソンの責任者の方が朝からTwitterやFacebook見ていて、投稿が3日で4,000件くらいあるわけだからぶわーっと、見きれないぐらい並んでいるわけです。で、どこのローソンのお店か、店名まで書いてくれているので、ローソンの責任者の方がそれを見て感動して泣いて、すぐうちの営業の責任者に連絡してきて、すごい状況じゃないかと。長く製品開発をしているけど、自分たちの製品でお客さんが盛り上がっているのは初めて見た、感動して朝から涙が止まらない、と。
そういうことがあって、ローソンさんとは今すごく仲よくなって。大手ビールメーカーの人たちは、ローソンから怒られてばかりって言うんですよね。厳しいことを言われる。でも僕らは怒られたことは1回もないんですよ。
1回もないし、けっこうタメ口みたいな感じで、僕はローソンの役員の方たちとお話をするんですよね。そういうお話をすると、ほかのビールメーカーの人たちが「すごいね。僕らには見せない笑顔を君らには見せるんだね」と。
社内も盛り上がりましたけれども、ローソンさんとも盛り上がりました。
仲山:おもしろい。今、社内や社外のチームができてくる話でしたけど、採用の話を聞きたいです。
前にうかがって印象的だったのが、だいたい応募50人くらいですよと言われた枠で、「知的な変わり者」というコピーを使ってみたら何倍もの応募があったという話がありますよね。最近のものも含めてあの辺の話を。
井手:最近、応募がもっと伸びるかなと思ったんですけど、最近、2、3年は応募人数は横ばいです。
でも7、8年前は広告出しても求人がゼロだったんです。多くのみなさん、採用は苦労していると思うんですけど、僕たちも7、8年前はぜんぜん来なくって。ゼロ、ゼロ、ゼロという感じだったんです。
今は来年の新卒の採用がもう終わっているので、直近の例でいくと、とても優秀な方が多く集まって8人から10人とれればいいと思っていたんですけど、あまりにも優秀だったんで、来年の新卒は12人採用したんですね。
北海道から鹿児島まで応募してきて、全国から来てくれて12人採用したんですけど、募集が1,000人近くくるわけですよ。70倍から80倍くらいの競争率できているから、とっても優秀で将来はリーダーになれるような人が今年はとくに集まってくれて。年々質がよくなっているというかレベルが高くなってきている。
年配の人とか中堅が冗談半分に、「俺、昔入っていてよかったな。今だったらヤッホーブルーイング入れねえや」ってみんな言うんですよね。
僕はニックネームで「てんちょ」と呼ばれているんですね。インターネットで店長をやっていたので、ひらがなで「てんちょ」と。すると、人事担当者から「てんちょは書類選考で落ちますね」とか言われたり。「それはそうだよね、昔どさくさのときに入ってよかったな」って言うんですけど。
広告も、求人専用のホームページでも、「知的な変わり者求む」みたいな感じで楽しそうなホームページになっています。
仲山:これですか?
井手:これこれこれ。
「求ム! 志高き 知的な変わり者!」となっていて、こんな感じで個性豊かなホームページにしています。採用の段階から、優秀なだけじゃなくて僕たちに共感してくれることが大前提です。
(サイトを)読むと、僕たちの経営理念も書いてあるんですよ。理念というのはいくつかあって、上位概念から言うと、ミッション、ビジョン、組織文化、価値観、ヤッホーバリュー。こういうふうな社風だよと。個性を伸ばしながら、こういう変なことも許容する、ちょっと個性的な集団で、日本のビール文化を変えて世界を幸せにしましょうということが書いてあるんですけど。
そこで共感しないことにはどんなに優秀でも弾いちゃうんですよね。そこはとても大事なところだと思うので。そこに強烈にフックしながら、上から優秀な学生さんを採っていく感じです。それで12人くらい採用したんですけど。
わずか6、7年くらいで、1,000人全国から集まってくるくらいになりましたね。
なかには1人すごいやつがいて、こいつが度肝を抜かれたのは、そいつを入社させていいのかという賛否両論あったんですけど、甲子園で「21世紀枠」って言って、特別枠から甲子園に出ることができる制度があるんですよ。だからうちにも21世紀枠作ろうって。それで採ったんですが、ものすごくフックしてくれているんですが、かなり個性的な奴で。
東大の院卒で2、3年くらい留年していて、ずっと海外を放浪していて、「今、内定はいくつ出てるの」と聞いたら、2つ出てるって言うんですよ。1個は先輩の紹介で行ったけどおもしろくないから行かないです、もう1個は楽天ですと言うんですよ。
よく楽天とったねと言うと、「実は2、3年くらい前に内定が出てるんですけどね」と言うんですよ。「え、その場合、内定が出てるって言うの? 生きてるのその内定」って聞くと、「多分、生きていると思いますよ」と。「でも楽天行かないですけどね」と言うんです。
「じゃあなにやるの?」って聞いたら、「ポーカーのプロになろうと思って」とか言い出して(笑)。「え、ポーカーに世界大会があるの?」って聞くと、「再来週ぐらいにラスベガスでポーカーの世界大会があってそこに行くんですよ」って言うんですよ。で、面接に金髪に和服で来たんですよ。
僕らのホームページ見てなにか勘違いして来ているのかなと思ったら、「僕はたまにしか学校行ってないんですけど、週1くらいでこの格好で行ってるんです。それで今日、ここにも正装で来ました」と。変わってるなあと思って。こいつを採用していいかどうかって……。
でもすごい大物なんですよね。「お前はそんなに遊んでばかりで大丈夫か」みたいな質問をすると、頭はすごくいいんですよね。やっぱり東大行ってるくらいなんで。「それじゃあ君はビジネスを勉強するとかそういう気はないのか」って聞いたら、「自分はインターネットでアフィリエイトとかで生活費を稼いでるから大丈夫っすよ」って。「おおーっ!」となって。
「お前、うちに入ってきたらやっていけるって自信あんのか」って聞いたら、「イケるんじゃないすか」とかね。それで21世紀枠で入れたんですけどね。そしたら、そいつがすごくて。
入社の内定を出したあと、内定者が出社する会社の見学会とか先輩とかとの座談会を組んだんですよ。そしたらそいつ1人だけ来なかったんですよ。
それで、途中で電話があって。なにかというと、僕らは長野県なんで東京発の上越新幹線に乗らないといけないんですよね。そいつはなにを勘違いしたのか品川に行っちゃったんですよね。「品川から新幹線が出ていると思ったら、品川からは出ていなくて」とか言ってて。「お前さあ、何時に集合となったら、普通インターネットで何時に東京発とか調べるだろう」って言ったら、「いやー、知らなかったっス」って(笑)。
「だいたいこれくらいに出たら間に合うと思ったんで」というハチャメチャな奴で。結局座談会に遅れて来て、けとばしながら「お前なにやってんだよ」「クビにするぞ」みたいな。
だけどもそいつは独特な奴で、あっという間にその場を盛り上げて、ビールを飲みながら座談会をやっていたんですけど、後半のほうでは、先輩の社員に向かって、「俺が社長になったらどうします?」みたいなことを言い出して、うちの社員はドン引き(笑)。
(会場笑)
それで「てんちょ、こいつを入れるんですか?」って言ってきて、「いや、これはね、俺も一か八かと思って入れるんだよ」みたいな(笑)。そんな奴を今年1人入れました。
仲山:内定出して。
井手:内定出したから来年4月に入ってくるんですけどね。12人内定出して、こんな中小企業なんで内定を出しても、去年も2人ぐらい内定辞退があるんですよね。たぶんどの会社も内定辞退ってあると思うんですけど。
今年も内定辞退とかあると思っていたんですが、なんと12人全員が内定辞退をしなくって。「多く採りすぎた! まあいいや」と思ったりして。そんな感じの採用状況でした。
仲山:すごいことになっていますね。中途の人は?
井手:今、中途はほとんど採っていないんですよ。以前は人を育てることができなくて、走りながらやる即戦力しか採れなかったので中途しか採用してなかったんですよ。
4年くらい前から新卒を採り出したら、新卒のほうがいいなって思って。僕たちがやっていることがけっこう独特なので、そこにスーッと入りやすくなって。中途も新卒も、入ってきて仕事を覚えて1人前になる期間はあまり変わらないんですよね。
だったらより若い人の方を育てあげるほうがいいなって思って。
さっきも言った、さあやという、入社して4年目のスタッフなんですけど、1,000人のお客さんを仕切って、70人の社員を隊長として仕切るくらいなんですけど、3年くらいでそうなるんですよね。
だから、新卒募集をやって、足りない部分を中途でやるという感じです。
去年は新卒が7人くらいしか採れなかったから、中途を6人くらい採ったかな。それで、今年は1人だけ採って。新卒で採れなかった分を中途で採るというのが今のスタイルです。
仲山:新卒の研修というのはかなりこなれてきている?
井手:こなれてきてます。新卒も中途も4月に向けて同時に研修させるんです。お題をポーンと出して、研修、プロジェクトをやらせるんですけど、いい感じになってきてますよね。話は戻りますが、中途も即戦力でいいんですけど、難しいのは学生の場合にはポテンシャルをとるんですよね。
僕なりの指標で、こいつは地頭もいいし、共感性もあるし、この分野で可能性も感じるという。ポテンシャル重視なんですけど、中途はリアル実績を重視して採るんですよね。過去の経歴、成果とか。将来のポテンシャルも見るんですけど。そうするとなにが起きたかというと、僕らが優秀だなと思う人はほとんど現職でも優秀なんですよ。
その結果、給与がまったく合わないんです。僕らは田舎の企業なんで、クラフトビール業界ではダントツで報酬が高いんですけど、それでもたぶん楽天さんに比べてぜんぜん高くないし、長野県の標準賃金よりはいいんですけど、やっぱり東京のIT企業とか、キリンさんアサヒさんに比べると報酬が低いんですよね。
それで、僕らがいいと思う人は幹部クラスなんですよね。だから年収が全然届かなくて、そこで折り合いが付かないというのをけっこうリアルで感じてきていて。だから中途でいい人がきたら、給料で合わないなと。
だけど新卒は優秀な人がいたら、当然、みんな同じ条件で入ってくるから、ということもあって新卒にシフトしました。
仲山:なるほど。これだけ価値観、カラーが強烈だと、やはり新卒がいいですよね。
井手:あとは、今はないですけど、カラーの打ち出し方が弱かったり、会社の面談の時も打ち出しを中途半端にしていたら、やっぱりよく理解していない人もいて、結局お互いに不幸になったということもたまにあったんですよ。
だからこれでもかというくらい、会社の理念とか社風とか考え方をホームページでも日頃の活動でもアウトプットしてるし、会社説明会でも、「その辺の山を登るんじゃないんだよ。僕らはエベレストを登ろうとしている、とんでもない会社で」みたいな。「日本のビール文化を変えようとしてるんだよ、世界を平和にするんだよ」みたいな宗教的な話をして、それにビビっとくる奴しか採らない。
じゃないとお互いがかわいそうというか。入ったら、この会社はビール作るだけでいいかと思ったら違う、とかね。この会社、和気あいあいと思ったら、和気あいあいだけどメッチャ厳しいとかね。
自分で考えることがあまりなかったのに、自分で考えたことをやるくらいだったら辞めようとかね。というミスマッチを防いで、常にお互いが不幸せにならないように、勘違いしないように、今では入社の段階からこれでもかというくらい会社のカラーを出しています。
さすがに最近、勘違いしてくる人はいなくなりましたね。
楽天株式会社
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