2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
提供:株式会社リクルートホールディングス
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山口文洋氏:そして、3番目。それを実現するためには、人事と総務とIT戦略、同時の打ち手実行が非常に重要だというお話をさせていただきたいと思います。
今回、会社といたしましては、無駄な業務を捨てることに加え、営業メンバーがいちいちオフィスに戻らなくてはならない時間や、もっと集中できる場所で働きたいという社員の要望を叶えるために、「リモートワークの導入」に取り組んでいます。そのためには、やはり、人事、総務およびIT戦略の実行が求められると思っています。
まず肝になるのが、人事戦略でございます。我々にはどのようなことが前提としてあり、どういうことを変えたのかということをお話しします。
リモートワークの導入ができた前提には、我々の会社の人材要件として「圧倒的な当事者意識、セルフマネジメント、主体性」というものを常に求めてきたという背景があります。そして、それをきちんと評価してきた。
そして、それを入り口である採用の段階から重視しており、セルフマネジメントができる社員がそもそも多くいたという大前提があります。
そのなかで、人事制度も肝になっておりまして、もともと弊社の総合社員は、完全な時間給ではなく、裁量労働制に移っておりました。
そして、欧米企業のように、一人ひとりの従業員にはミッションがあり、半年ごとにちゃんとしたジョブディスクリプションと、そのなかで求める職務内容、ミッションを明確化しておりました。
ですから、労働時間ではなくアウトプットで評価するというところが、もともと土壌としてありました。
ただ今回は、これを全社員で実行していきたかったので、総合社員だけではなく、ほかのいくつかの職務体系もこのタイミングで裁量労働制に切り替えました。
さらに、リモートワーク制度は、一部の人ではなくて全社員に認めています。入社半年未満の方などは除いていますが。そして、働く場所は、2時間以内に所属拠点に出社できる場所ならどこでもよく、時間制限もありません。
このようなかたちで、基本的には全社員に、その所属部署やグループの裁量のなかで、リモートワーク制度を認めております。ただ、勝手に行うのではなく、部やグループなど各組織で取り決めたルールのなかでリモートワークを活用することで、建設的な利用になっていると思います。
そしてこれはつまり、会社の外で働くことになりますので、会社のなかでできたことをすべて会社の外でもできるというようなIT戦略を、同時に実行推進しました。セキュリティのルールをきちんと定めた上で、今ではほぼすべてのシステムに外部からアクセスすることができます。社外からでも、クラウド上でのファイル管理、もしくは電話会議ができる状態になっております。
そしてさらに、リモートワークが進みオフィスの人がまばらになってきたことをうまく活かして、オフィスのスペースを減らすだけではなく、より集中力、生産性、クリエイティビティを高めてほしいということでオフィス改革も同時に推進しました。
本社に関しては、全面フリーアドレス化をしながら、せっかくオフィスに来たならリアルなFace to Faceのコミュニケーションをよりクリエイティビティを高めてやってもらいたいということで、カフェスペースゾーンを設置しました。また、今、試験的ではありますが、本社に来なくとも自分の家に近いところで集中的に働ければいいという視点でのサテライトオフィスも、いくつか用意しております。
そして逆に、エンジニアや情報誌を作っている編集者などは、創造的な仕事かつチーム性が求められるので、リモートワークではなく、逆にオフィスで毎日生産性や創造性を高めて働けるように、クリエイティブオフィスをリノベーションで作り、彼らがストレスを感じないような環境を用意しております。
こうして社員が「よし、やるぞ」と腹落ちしても現実的に色々な不都合が出てくると、また気持ちが冷めてしまいます。その気持ちを冷まさないためには、目的の明確化と同時に会社のルール、インフラを整えることが非常に大切だと思っております。
そしてせっかくこんなに大きなチャレンジをするなら、それはディフェンスではなくよりオフェンスに使っていきたいということで、もともとクリエイティブな会社の風土をより創造的に、そしてさらにオープンにして、新しいカルチャーをつくり、進化していこうという施策も、同時並行で進めております。
リモートワークだったり、無駄な業務を捨てることによって創出した時間で、既存のお客さまにつながる新しい提案、商品、もしくは新しいドメインで破壊的なイノベーションを起こす新規事業を立ち上げることが、社員からボトムアップで生まれてくる企業風土づくりにも力を入れています。
先ほどの方程式にあった仕事につながる自己研鑚、もしくは多様なライフスタイルがかっこいいというメッセージを、広報戦略として社内外で積極的に発信しております。
また、新たな顧客提案、新商品開発が生まれるように、組織を超えて、事業を超えて、エリアを超えて、多種多様な職種の人間がFace to Faceでつながる機会、バーチャル化が進む一方でのリアルなコクリエイションが起きるような場を、今、強化しようとしてます。
そして、そこからの創発として、なにがなんでも自分でこの事業を立ち上げてみたいという人においては、新規事業コンテストをさらに盛り上げるようなかたちで、運営を始めております。
まずは、広報戦略ということで、社内メールやホームページ・SNSを通じて、ワークスタイル変革の重要性や、多様な社員が新しい価値を生んでるということをとにかく表出し、「あ、こういう人が21世紀おいてはかっこいいんだ」というところや、ダイバーシティ&インクルージョンを積極的に社内外に発信していきたいと考えています。
右側の「マネージャーが子育て家庭の生活体験」というのは、「育ボスブートキャンプ」という取り組みです。管理職たちに「育児しながら働く」ことを体験してもらうためにスリール株式会社と共同開発したプログラムになります。
弊社のお子さんのいるご家庭に実際に行って育児体験をしてもらうプログラムです。何ヶ月か子育ての体験を経て、本当の意味でのダイバーシティ&インクルージョンの意識を醸成する施策であり、このような取り組みも社内外に対して積極的に発信をしております。
そして、これも非常に私は重要だなと思っている取り組みなのですが、ワークスタイル変革のなかで積極的にリモートワークをするということはやはりどこかで、社員同士の関係性が希薄になる可能性があります。
それは、普段所属している組織内でも希薄になる可能性があるのですが、もっと起こる可能性があるのが、所属している組織や事業を飛び越えた関係性が希薄になることです。バーチャル化が加速すると、自分の所属している組織を飛び越えた隣の組織や、まったく異なる事業の人との関わりが、ほんどなくなっていくことがあります。
でも、本当のイノベーションが生まれるときには、さまざまな人と人とのコミュニケーションのなかからアイデアが生まれ、チームが組まれ、成り立つと思っています。
リモートワークを活用しながらとにかく日々の仕事の生産性を上げていく代わりに、年間数日間、全国のメンバーを東京に集めてキックオフイベントを開催したり、各エリアの拠点に事業をまたいで社員を集め、リアルな場でコクリエイションできる機会提供をしています。
新しいものが生まれるような、関係の質、思考の質、もしくは行動の質が上がるような人材交流というのを、会社をあげて取り組んでおります。それがこの「One RMP PJT」という取り組みです。
こういった場を作ることによって、日々の仕事のなかでも新しい顧客提案、新商品が生まれてきています。
例えば、リクナビ進学という高校生の進路選択サービスと、ゼクシィのメンバーとの間でもコラボレーションが生まれています。結婚を含めた女性のキャリアデザインをどう考えていくかということをゼクシィの社員が研修パッケージとして考え、それをリクナビ進学営業が担当している高校で講演するような新しい取り組みが出てきました。
もしくは、ゼクシィとカーセンサーの社員がコラボレーションして、新しいライフスタイルを想起させる車の展示会を結婚式場で行う。そういったコラボレーションが続々と生まれてきております。
その結果、新規事業コンテストへの応募件数が、一昨年20件の応募だったところから、昨年は約100件まで増えるという変化もありました。従業員の3人に1人ぐらいが年間参加するお祭り行事として、盛り上がっています。
なぜ会社として、新規事業コンテストを大事にしてるかというと、ゼクシィやカーセンサーといった今のリクルートマーケティングパートナーズの事業の多くは、30年前、20年前、10年前、5年前に当時の一社員が言い出しっぺになって、この新規事業コンテストでグランプリを取った事業であるからです。
リクルートという会社はもともとトップダウンの会社ではなく、私自身も6年前に一社員としてこの新規事業コンテストを通じてオンライン学習サービス「スタディサプリ」を立ち上げました。そのなかの成長で今こういった役職をやらせていただいているのですが、やはりその時々の世の中の課題とか不を見つけられるのは、経営層ではなく、日々現場に出ている社員でしかないと思っています。
忙しいなかでも、日々の仕事で埋没するのではなくて、隣にある不を発見できる気持ちの余裕。もしくはそこに視点を当ててみようという社員一人ひとりの意識の変化を、このワークスタイル変革のなかで求めている。
そのなかで、もう一度、持続的な会社の成長は、とにかく日々の仕事をスピーディに生産性を上げてこなしながら、こういった新しい種を発見して、それをかたちにし、自己実現していくこと。これが一番かっこいいよねという社員の意識改革が成功し始めているのかなと感じています。
こちらも最近メディアでよく取り上げていただくのですが、2年前には「kidsly」という、保育士さんと保護者の方のコミュニケーションをより円滑に行えるサービスが立ち上がりました。一社員の「どうしても作りたい」という想いから生まれ、全国の保育園へのご提供を進めています。
また、結婚市場におけるアジアからのインバウンド層に着目した結婚サービスも生まれています。アジアのカスタマーは、2回目の結婚式、オリジナルな結婚式、もしくは結婚式の前の前撮り、フォト婚というかたちで、日本に旅行に来ています。「ゼクシィ遊愛」というこのサービスも、一社員のなかから生まれています。
今年も、ホリエモンさん、ロンドンブーツの淳さん、有名なベンチャーキャピタリストの今野さんを審査員としてお呼びして、このコンテストを盛り上げています。日々の仕事の生産性を上げながら、同時に会社の持続的な成長を支える新たな種を、メンバーと一緒に作るということも、このワークスタイル変革のなかで同時に求めております。
立体的な施策をデザインして、まだまだ課題もあり進捗途上ではありますが、この1年半ワークスタイル変革に取り組んできたなかの今の兆しをご紹介させていただきます。
1年経ったところで、この3月に社員アンケートを全員に取りました。このワークスタイル変革のなかで、日々の生産性もしくは創造性を向上していこうという意識変革がされている社員が6割。
そのなかでも、日々の仕事で自分の生産性が上がってきたとか、創造的な活動をしていると、結果まで出始めている人が約4割。まだまだ道半ばではあるのですが、まずは過半数の社員が前向きになってきているという結果が出ております。
さらに、働き方変革を通してどんな変化が起こるかということを象徴的に示したかったので、パイロットチームをいくつか選んで、そこに、例えば小室淑恵さんのワークライフバランス社のコンサルタントの方が徹底伴走するようなこともしています。徹底して伴走するなかで、今までの常識を覆し、新しい生産性改善が生まれるという兆しや事例をいくつか創出しました。
それを社員にも発信することによって、「あっ、確かにそれって当たり前と思ってたけど、おかしいな」という気づきを与えたり、それこの成功事例を今、横展開する仕組みをつくったりしていたりします。
先ほどの新しい取り組みとしてのリモートワークは、営業メンバー中心に積極活用しているという回答が6割ありました。
活用していない層というのは、やはり先ほど申し上げましたクリエイティブなエンジニアや編集職のような、どちらかというと毎日オフィスに来て、チームで総括的なブレストも含めて連携してやっていくような社員です
また、生産性改善を平日の日々の仕事のなかでやっていこうと求めておりますので、当たり前のことですが、深夜残業、休日出勤も減少してきています。
みなさんのなかでもリクルートというと不夜城で「むちゃくちゃ働く」みたいな印象をお持ちかもしれませんが、今では、夜にはほとんどフロアでは閑古鳥が鳴いているようなかたちで、リクルートの過去と現在の印象は大きく変わっているな、と感じています。
これまでの話を含めまして、テレワーク推進賞という賞で、昨年度、会長賞をいただくことができました。
まだまだ道半ばのなかでの受賞なのですが、どこを評価いただいたのかというと、やはり経営戦略のど真ん中にワークスタイル変革を据えているところを評価いただきました。
もしくは、そのなかでの1つの打ち手であるリモートワークを、一部の人ではなくて一気に全社員に開放した。開放するために人事ルールをすべて裁量労働制に変えていった。ミッション制で成果主導に変えていった。そこでの社員の巻き込み方がおもしろさも含めて秀逸だった。以上の点を評価いただいたとうかがっております。
今回もこのような場にお呼びいただき、みなさまの前でお話させていただいておりますが、まだまだ本当に道半ばだと思っておりまして、社員とともに2歩進んで1歩下がる、といったことを日々行っております。
とくに感じるのは、半年おきに丁寧な社内調査を取っておりますが、その成果が部やグループごとにばらつきがあり、まだ意識や結果が出てない組織を見ますと、無駄な業務が捨てきれていない、決断がやはりできていないところが見受けられます。
そこにはやはり、部長や課長などの管理職の本当の意味での腹落ち度合いの差が出ていると感じております。
この2016年度においては、まずはその浸透を再度徹底していくことで、さらなる意識、行動変化に取り組みたいと思います。
今は、半年ごとの従業員の意識変化というサーベイの結果を、管理職のミッション・評価指標に組み込み、自分の組織での部分最適なワークスタイル変革のゴールと打ち手を推進していただき、単なるキャッチフレーズやメッセージだけで終わるのではなく、結果にコミットするかたちをとっております。
今日お話したことはこの4つでございました。少しでも参考になるところがあれば幸いです。
みなさんに最後にお伝えしたいことは、ぜひこのワークスタイル変革、経営戦略のど真ん中でやっていただきたいということです。改めてこれを推進するということは、経営者に本気の覚悟が必要であると強く実感しております。取り組むからには引き返せないと思っております。
また、いざやるなかで、社員とともに改めて人生のあり方、そのなかにおける働き方ということを前向きに対話してそれに挑戦していくのは、これからの会社の持続的成長をさらに加速する1つのいいきっかけにもなっているので、弊社のなかでもこれは完遂させて、根付かせていきたいと思っております。
では、長時間でしたが、ご清聴ありがとうございました。以上です。
(会場拍手)
株式会社リクルートホールディングス
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