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超観光立国(おもてなし立国)への道のり(全3記事)

2016.06.21

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今の日本は“観光バブル”か? 星野リゾート代表ら業界トップが語る、インバウンドの実態

提供:新経済連盟

4月7日、8日の二日間にわたり開催された「新経済サミット(NEST)2016」。今年も豪華なスピーカー陣がAI、フィンテックなど最先端のテーマで語るセッションが多数実施されました。8日、イベントのラストを飾ったセッションは「超観光立国(おもてなし立国)への道のり」。2020年の東京オリンピックに向け、ますますインバウンドを拡大させていくために必要なことは? そして、日本の観光ポテンシャルを最大限引き出すためには︖ 業界トップが知恵を出し合いました。

日本の観光ポテンシャルを最大限引き出すために

司会者:お待たせいたしました。これより、新経済サミット2016、Session10「超観光立国(おもてなし立国)への道のり-日本の観光ポテンシャルを最大限に引き出すには?-」を開始させていただきます。

モデレーターは株式会社ベンチャーリパブリック、代表取締役社長兼CEO、柴田啓さまにお務めいただきます。パネリストは星野リゾート代表、星野佳路さま。株式会社ネクスト、代表取締役社長、新経済連盟理事、井上高志さま。ウォール・ストリート・ジャーナル、東京支局長、ピーター・ランダースさま。楽天株式会社、執行役員トラベル事業長、山本考伸さまです。

それでは柴田さま、よろしくお願いいたします。

柴田啓氏(以下、柴田):これが最後の個別セッションだとうかがっております。最後が一番おもしろかった、としたいので、ざっくばらんに、このセッションを進めたいなと思っています。

改めまして、株式会社ベンチャーリパブリックの柴田と申します。旅行サイトの「トラベルjp」というサイトを運営しています。過去16年ぐらい、旅行関係の仕事をしているということもありまして、今日こういう場に呼んでいただいたということでございます。

日本は世界一の観光大国になれるか?

では、まずスライドをご覧ください。毎日のようにメディアで「インバウンド」とか、「訪日観光客がいっぱい」とか、いろんな報道がされているんですが、実際にどういう意味があるのかというのを整理したいと思います。

3月30日に、安倍総理大臣が新たな観光の目標を設定されたんですね。それが、ここにありますように、2020年の政府目標が4,000万人、2030年で6,000万人という目標。今、2,000万人弱です。

いろんなメディアからは、「すごく野心的な目標ですよね」と言われたんですけれど、実はそれを大きく超えるターゲットを、この新経済連盟では掲げていまして、それが2020年で約8,000万人。2030年で、なんと1億人。

この1億人というのはどういう意味かというと、今、世界一の観光客を集めている国がフランスなんですけれど、フランスは今、8,000万人ぐらいでほぼ横ばいなんです。もし新経済連盟が提唱している1億人を達成すると、日本は世界で一番の観光大国になる。こういう意味があるということなんです。

もう1つ、このインバウンド年間消費額というものがありまして、要は日本に来られた外国人観光客の人がどれぐらいのお金を落とすのかということが、この金額の意味ですが、新経済連盟では「30兆円を2030年に達成できるんじゃないか」と掲げています。

では、それがどういう意味なのか、と。30兆円というのは、こういうふうに考えていただきたいんです。外国人の方が消費するという意味でいくと、なにを消費するかというと、日本の資産に対して消費するわけですよね。日本に来てもらって、日本で買い物したり、温泉につかってもらったり。

ある意味、外国人を相手にしてるということは輸出産業と一緒じゃないか、とも捉えられるんですけれど、もし30兆円が実現すると、どの輸出産業よりも大きくなっちゃうんです。

例えば、自動車産業って日本のなかで一番大きな輸出産業だと思いますけども、それよりも大きくなってしまう。ある意味、とてつもない、目標とターゲットを設定したということなんです。

今日、集まっていただいた4人のみなさまと、なにを話したいかというと「これってほんとなの?」「あまりに大きすぎるんじゃないの?」とか。もし、これが実現できるとしたらすばらしいことなんですが、「じゃあ、どうやったら実現できるんだろう?」と。

そういうことを、ざっくばらんに4人のみなさまとお話したいというのが、このセッションの趣旨でございます。

星野リゾート代表の好きな観光地はやはり

前置きは以上なんですけれど、まずは4人のみなさまに簡単な自己紹介と、せっかく旅行や観光という夢のあるお話なので、自分のお好きな旅行先・観光地について一言だけ「ここだよ」というのを言ってもらおうかな、と思います。では、まず星野さんからお願いします。

星野佳路氏(以下、星野):はい。星野リゾートの星野です。よろしくお願いします。私に事前に「お気に入りの日本の観光地は?」なんて質問をするほうが間違っていると私は思っているんですけれど、沖縄の竹富島以外にないじゃないかと。

次、と言われると福島県。そういう、私が今、一生懸命やっている場所が一番気に入っているという、それしかないと思っています。すいません、以上です。

柴田:めちゃくちゃワーカーホリックなんですね。では、次は井上さん。

井上高志氏(以下、井上):はい、みなさん、こんにちは。ここは、ちょっと文字で書いていないんですけれど、岡山県の西粟倉村。村ですね。林業の村で、人口が1,500人と非常に少ないところで、役員合宿で行ってきました。

とてもすばらしいところだったんですけれど、地方創生、特に村おこし、町おこしというので、非常に成功しているモデルなんです。

左下の方は、この人、通称「野人」なんですけれど(笑)、鹿とか猪とかを獲ってきたり、オオスズメバチを捕ってきたりして、ジビエ料理を食べさせてくれるという。「こんなところにこんな体験ができる場所があったんだ」という場所なんです。

僕は、今日ここに登壇しているのがちょっと場違いなんですけれど、観光の素人です。ただキーワードとしては「HOME'S」という不動産のポータルサイトをやっていますので、空き家問題はほっておけないなというのがあります。

それをどうやって解消するかということと、あとは地方創生。そういう意味で、地方創生の1つのすばらしい例として、西粟倉村を取り上げさせていただきました。

新経済連盟では理事もおおせつかっていまして、今やっていることとしてはシェアリングエコノミー、民泊などのホームシェアリングと、あとはライドシェア、こちらの推進をするという立場です。そういうものを通じて、経済成長をしていければいいなと思っています。

今日は、ユーザー目線での観光という感じでお話ができればいいな、と思っています。

「訪日外国人は日本文化を求めている」

柴田:はい、ありがとうございます。では次に、ピーターさん。

ピーター・ランダース氏(以下、ランダース):はい。私は「ウォール・ストリート・ジャーナル」のランダースです。よろしくお願いします。

やはり私はアメリカ人なのでアメリカ人の立場として話しますと、この前、私の父親もアメリカ・ニューヨークから来ておりましたが、日本に来る観光客というのはやっぱり日本の文化を味わいたいと、日本の伝統的な家とか、美術とか、お寺とか、そういうものを味わいたいというのが多いように思います。

これは台東区にある朝倉彫塑館という美術館なんですね。伝統的な日本の建築を大事にしていた朝倉さんという、50年前ぐらいに亡くなった彫刻家の方の家なんですけども、都内で大変便利な場所にありながら、こういう伝統的な家があって、庭があって、いろんな美術が展示してあると。部屋のなかに入ると、触っちゃいけないけれど、美術品を近くで見ることもできます。

こういう経験を大事にする観光が必要ではないかと思います。

柴田:はい、ありがとうございます。では最後に、山本さん。

山本考伸氏(以下、山本):みなさん、こんにちは。楽天トラベルの山本と申します。よろしくお願いいたします。

私が一番好きな旅行先、普段よく行くんですけれども、伊豆半島の先っぽにあるヒリゾ浜というところです。

東京から、空いていればわずか3時間弱で車で行けるところで、別にダイビングとかしなくても海パン1丁で海に飛び込むとサンゴ礁があって、そこで熱帯魚と泳げるというところがあります。黒潮が通っているところで、すごく海がきれいです。

こういう南国に、東京から3時間で行けるというところが、やはり日本の魅力なんじゃないかなと思って、毎年行くようにしています。

柴田:ちなみに、楽天トラベルでは、ここに行くツアーは企画されてるんですか?

山本:ツアーとしてはやっていないんですけれど、この辺にある民宿等はしっかりと予約できるように整備させていただいております。あと、レンタカーもよく借りられます。

今の日本は観光バブルなのか?

柴田:はい、わかりました、ありがとうございます。では、本編に入ろうと思うんですけれど、まず、一番最初の話、30兆円と1億人の観光客。今、毎日、町に行くと、例えば中国人の“爆買い”じゃないけども、たくさんインバウンドの話があって、すごく盛り上がってるように感じるんですけど。こういうのって、僕的にはバブルじゃないのかなあと。

もしかしたら今、日本は観光バブルにいるんじゃないかなあとも思うんですけども、ざっくばらんに今の観光ブームがバブルなのかバブルじゃないのか、イエスかノーで、みなさん、お答えいただければ。まず、星野さん。

星野:今の現状がバブルかどうか。世界の旅行需要が伸びているのはバブルじゃないんですけども、その伸びている分のかなりいい数が日本に来てしまっているのは、ちょっと周辺環境が有利に働きすぎているというのはあるんですね。

円安だったり、アジアが伸びていたり。それから、昔は非常に人気の観光地だったギリシャ、チュニジア、トルコ、こういうところに世界の旅行者がちょっと行きにくい今の政治情勢があったり、治安の問題があったりとか。

そうすると「そういえば、昔エキゾチックな日本のことを聞いたことがある。今回は日本に行こうか」と。そこが底上げになってるんですよね。その底上げの部分だけ、私はある意味、バブルだと思っています。

井上:そうなんですね。今は外的にそういう環境だから、逆に言えば、チャンスと言えばチャンスですね。

星野:チャンスと言えばチャンスですけど、維持するには相当の努力が必要だと、僕は思います。

井上:なるほど。バブルかどうかで言えば、バブルってたぶん、価値を提供していないものに対して、なんちゃっての価格がついていることを言うと思うので、その定義からすると、ちゃんと観光に来て、おいしいものを食べて、いい体験ができて、満足して帰る。これはまったくバブルではなくて。

本質を問われるのは、どれぐらいリピートしてくるのかというのが、この次に大事な施策のポイントになるんじゃないかなと思います。

ランダース:私は、長期的に見ればバブルではない、と思います。近くの中国には13億人いるし、中産階級をだけ見ても何億人もいて。

たくさん日本に来るようにはなりましたけれど、これから毎年のようにたくさんの中国人が来れば、1億人になるかどうかはわかりませんけれど、フランスのように定期的に日本に来るような時代が想定できるので、2,000万人はバブルではないと思います。

中国から世界に出かける人は1億2000万人

柴田:ちなみに、今、中国人の方が中国の外に旅行されてらっしゃる。アウトバウンドですよね。その旅行者の数がいくらぐらいか、みなさん知ってらっしゃいます? いや、僕この前びっくりしたんですよ、1億2,000万人。

日本の人口全部が、もうすでに中国から海外旅行に出かけてるという事実を聞いて、僕は愕然としたんですけれど。おっしゃられるように、もしかしたら、そういう人たちのほとんどが来ちゃったら、すぐに1億人達成できちゃうかもしれないですよね。

山本:私もぜんぜんバブルではないと思っています。本来持っている価値がようやく伝わるようになってきたというのと、その価値を体験してもらうためのインフラがまだ未熟だけど整いつつある。なので、もともと持っている価値と魅力というのは、まだまだこんなもんじゃないな、と感じています。

柴田:ありがとうございます。では、仮に、1億人、30兆円の目標が達成できる、または、達成しようというのが前提だとすると、今を山とかに例えると、どのぐらいの時点に日本がいるのかなというイメージをくださいと事前にみなさんにお願いしていたたので、それをお見せしましょう。これは、まず井上さん。

井上:世界最高の超観光立国にしようというので、世界一のエベレストの写真なんですけども、その頂を目指して、晴れわたってるなか、「あそこを目指して行こうね」っていうので。ちょっと何合目というのは控えますけれど、新経連で言っているのは「1億人目指します。そうすると、フランスを超えてナンバー1です」。

そういったところに向かっていく、その途中にあるということなんですけれど、大事なのは「ここにみんなで行こうね」と意識を統一すること。これが、すごく大事かなと思います。

柴田:これはピーターさんからいただいたんですけど、これはどちらかというと、1億人を達成するとこうなる、っていうことですかね? それとも、今の時点でもこういうこと?

ランダース:両方ですね。これはパリのシャンゼリゼで、たくさんの店があって、たぶんこのなかに写っている人の8割か9割ぐらいは、フランス人じゃないと思います。

フランスに行けば、フランス全国どこに行っても観光地があって、観光客が行ってるという状況で。すでに銀座ではそれに近い風景が見られますけれども、日本はまだまだそうではないと思います。これから地方にますます外国人が簡単に行ける、行きやすくする必要があると思いますし、これからもし6,000万人、1億人を目指すのなら、日本人の感覚も変えないといけないかもしれませんね。

というのは、銀座だけではなくて、全国的に外国人がいっぱいでもかまわないというか、我慢できるという国民の意識の改革が必要になるかもしれません。

柴田:なるほど。じゃあ、タトゥーが入ってたら温泉お断りなんていうのは、ぜんぜんダメだと?

ランダース:そうですね(笑)。

カルチャーを好きになってもらうフェーズへ

柴田:(笑)。では、次、山本さん。

山本:はい。これは、Instagram上でどういう画像が、体験が流れているのかというのを観光ステージとしてシナリオを描いてみたんですけれど。

まず、ここ数年前というのは、東京の町中とか、食事とか、スノーモンキーとかが流行ったりしていて、そこから、スキーをしたりと、どんどん「DO」のほうに移ってきている。

アジアのなかで見ても、日本はそういうDOにすごく優れている。

ここから本当に1億人になるためには、スキーをするために来ていた人が、旅館に行ってのんびりするようになる。というのは、日本のカルチャー、日本を好きでないと日本のカルチャーっていうのはあんまり学びたいとは思わないと思いますので、好きになってもらうというところでいうと、今は真ん中ぐらい。

アクティビティというところ、スキーとかには行っていて、そこからどんどんカルチャーに転換していくステージじゃないのかな、と思っています。

柴田:なるほど。じゃあ、最初の「日本の魅力は」というのは、かなりの人はわかっちゃったと?

山本:そうですね。食事がおいしいとか、人が優しいってところとか。スキーとか、沖縄とかがすごい人気じゃないですか。あんなにきれいな海で、アクセスがよくて、すぐ泳げるところって、世界中というか、東アジアを探してもないので。

柴田:なるほど。でも例えば、僕が欧米系の友達とかに聞くと、沖縄をぜんぜん知らない人がいっぱいいるんですけれど、中国の方とか、台湾の方とかは、すごく沖縄をよく知ってらっしゃる。

やっぱりそういう意味では、まだ、僕的には、一番最初のフェーズのまだ途中なのかな、って気がしないでもないんですけど、どうですかね?

山本:台湾って実はあれだけ南国にありながら、きれいなビーチが少ないんですよね。台湾の方とかが沖縄にいらっしゃって、買い物してる段階ではあまり変わらないと思うんですけども、

沖縄のきれいなビーチでシュノーケリングをすると、ほんとにやみつきになって、毎年沖縄に行きたくなる。実際に台湾で若いスタッフとかと話していると、「また日本に行って、なにかしたい」っていうような話をよく聞きます。

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