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組織を率いるサイエンティスト(全1記事)

2016.04.21

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リクルートのデータで世界へ挑む 組織を率いるサイエンティストの仕事観

提供:株式会社リクルートホールディングス

2016年3月19日、リクルートホールディングスが主催するキャリア観形成イベント「REAL」が開催されました。社会人から学生まで、挑戦する全ての人を応援する本イベントは昨年からシリーズ開催されており、今回2回目を迎えています。今回は、「データサイエンティストとエンジニアにとことん相談、キャリアの話。」をテーマに、現場の最前線で働くデータ解析社員やエンジニアが参加者の質問や相談にとことん向き合います。個別ブースのパネルディスカッション「組織を率いるサイエンティスト」に登壇した西郷彰さんと石山洸さんは、リクルートにおける自身のキャリアや「技術者として学生にうちに身につけておくべきこと」を語りました。

組織を率いるサイエンティスト

西郷彰氏(以下、西郷):リクルートテクノロジーズの西郷と申します。よろしくお願いします。

僕はリクルートに中途で入社して働いてまして、その前はメーカーで、社内のデータ解析のツールを作っていた経緯で、「データ解析おもしろいな」と思って辞めて、データ解析のスタートアップに参加しました。

それで飽き足りないところもあったので、自分で会社を作ってからリクルートに参加したという経歴です。

リクルートに入ってからは、自分自身がデータサイエンティストとして働きながら、組織をちょっとずつ作っていって、今はビッグデータの組織とリクルートを横断するプロジェクトのマネジメントをやっています。

石山洸氏(以下、石山):石山です。よろしくお願いします。元GoogleのAlon Halevyを採用したのが私でして、Alonがくる前にAI研究所(Recruit Institute of Technology)を立ち上げて、室長をしてました。

大学の修士のときに、2年間で論文を18本書きまして、実は博士を飛ばしてある大学から助教のポジションをもらってたんですけども。

リクルートの人事のお姉さんが美人で、間違ってリクルートに入ってしまった……っていうのは冗談です(笑)。(会場笑)石山:データの量と研究資金が魅力的だなと感じて、リクルートを選んで働いて今10年ぐらいという感じです。よろしくお願いします。

数々のデータ解析プロジェクトを経て、組織のマネジメントへ

司会者:では、簡単に今までのキャリアについて教えていただければと思います。お願いいたします。

西郷:僕自身がデータを解析したり、いろんなマーケティングの手口の施策を作ったりしながら、キャリアをステップアップしていって、今はマネジメントをしています。

現在もデータ解析のプロジェクトを進めていて、最近で言うとネット広告の改善をするために、リクルートのデータをたくさん使っています。

20代の頃は自分でデータを触って、データを解析したり活用する企画というのをやり出して、そのあと実際に10人とか、ちょっと大きい人数のプロジェクトをマネジメントするようなキャリアを経て、組織をマネジメントするようになりました。

また、僕が所属している組織では、解析した結果をレコメンデーションにつなげたりするので、そのための開発をしています。

まあ、エンジニアリングをしなくちゃいけないんですけど、そういった知識やキャリアというのも必要で、マネジメントやプロジェクトの推進とか、自分たちが手を動かして作るみたいなことを、日々やっているような感じです。

飛び込み営業からデータ解析まですべてを経験

 司会者:続いて、石山さん。

石山:まず入社したときは、当時ちゃんとしたエンジニアやデータサイエンティストを採用する職種がなかったので、いわゆる総合職的な採用でした。

でも、4月1日に入社式があって行ったら、「4月2日からホットペッパーの飛び込み営業をしてください」と言われて、飛び込み営業をしてました(笑)。ただ、ホットペッパーの営業だけではなくて、夕方になると飲食店の仕込みが始まるので、本来の配属先のインターネットマーケティング局という部署の仕事も並行してしていました。

上司が元マッキンゼーの人で、その人に同行して、5分以内に議事録を送らないと怒られるという、コンサルティングファームの1年目の子がやるような仕事を同時にしていました。

さらに夜19時ぐらいになるとミーティングがほぼなくなっちゃうので、「じゃあ、本業のデータ分析やってよ」というので、Googleスポンサードサーチのビッディングの最適化をやったりしていました。

1年目は本当にひどかったので、営業とコンサルティングファームの1年目がやるようなこと、それからデータ解析を同時に全部やるみたいな経験でした。

その後、リクルートのいろんな部署に行って、雑誌ビジネスでリクルートがやってる部分をデジタルメディアに変えていくところの仕事をして、そうこうしているうちに、ほぼすべてのバーティカルな領域でリクルートが1位になって、だんだんやることがなくなりました。

そのあと会社にお願いをしたら、スタートアップを立ち上げさせてくれて、リクルートと、とあるエンジェルインベスターが出資してくれて、ビッグデータの解析会社を作りました。その会社を3年で成長させてバイアウトしました。

その経験があったので、ビジネスとテクノロジー両方の経験を身につけられて、一昨年、Media Technology Labという、リクルートのなかの事業開発担当をしているラボの所長になりました。

そのときに、「事業開発のラボだけあるのもいいんだけれども、テクノロジーにもっとフォーカスしたラボがもう1個あってもいいよね」というので、AIの研究所を立ち上げて、Alonを採用して、一緒に働いているという感じです。

司会者:ありがとうございます。

リクルートでの仕事と論文の接点

司会者:続いて、「会社に入ってから論文を書く機会がありましたか?」という質問をさせていただければと思います。

西郷:僕は、会社に入ってからはほぼないですね。 業務で最新の論文から自分たちのアルゴリズムを作ったり、それをシステム的に実装するみたいなことをけっこう日々やっています。

最近で言うと、Word2VecというGoogleが出したアルゴリズムをドキュメントではなくて商品に当てはめて、Product2Vecとものを実際に社会で運用していったり、ディープラーニングを使って画像解析したりみたいなことを、けっこうやり始めています。

ジャーナルに投稿することが仕事ではないので、論文は書かないんですけども、それを有効活用したり、最新のものを取り入れて、いかに早くリクルートの競合に対して差をつけるか、みたいなことを気をつけてやっています。

司会者:続いて、石山さんはどうですか?

石山:僕はもう勝手に論文を書いてまして(笑)。2つパターンがあるんですけど、1個はビジネスの現場に行ったとき。例えば、ベイジアンネットワークでレコメンデーションのモデルを作ったら、それを論文にして人工知能学会に出したり。

あるいは、おもしろかったのが、ホットペッパーがGoogleスポンサードサーチにすごい広告を出稿してたんですけれども、そのときにホットペッパーに掲載いただいている飲食店さんの数がもう数万とかあるわけですね。

その1個1個のレストランに対する広告を、人間が全部作るとすごく大変だったので、ホットペッパーの広告原稿を、Googleスポンサードサーチにかける広告データにそのままジェネレートするということを、それらに対してやっていました。その取り組み内容を論文に書いたりしていました。

今は研究所なので、当たり前なんですけど論文を書きまくれる環境になってまして、自分自身でも書いています。

理論習得に自己犠牲? 学生時代に身につけたいこと

司会者:次に「学生のうちに身につけておくと良い技術・知識を挙げるとしたら、どんなものがあるか?」という質問をおうかがいできればと思います。

西郷:わかりました。あの……非常にストレートで申し訳ないんですけど、学生のときは学業を優先してやってもらうのがいいんじゃないかなと思っています。

自分は専門がわりと統計寄りなので、できれば学生のうちに統計の基礎とか確率論とか、まあ測度論もそうかもしれませんけど。あるいはベイズ統計みたいなのを勉強しておくと。

会社に入ってからはベーシックな理論の習得とか、本当の理解みたいなことってなかなか時間が取れないと思うんですよね。なので、実務に入ってからすごく応用がきくような基礎的な学問を大学のうちに身につけていただきたいと思っています。

司会者:続いて、石山さん。

石山:僕は学生のとき、若いときにすごく考えたのが、自己犠牲の精神。

司会者:自己犠牲ですか。ちょっとわかりやすく言ってもらってもいいですか(笑)。

石山:わかりやすく。そうですよね(笑)。

やっぱり仕事をしてたりすると、いろんなトレードオフが発生するんですよね。自分はこれをやりたいけれども、会社はこれをやりたいとか。自分はこれをやりたいけれども、お金を出してくれている投資家の人はこれをやってほしいとか。

そのときに、「損して得取れ」じゃないんですけど、短期的には自己を犠牲にしながら、長期的な観点で自分がやりたいことを実現していく粘り強さみたいな、そういうスタンスを若いうちに身につけておいたほうがいいなというのが1つあります。

もう1つが、みなさんもいろんなサイエンスをされてると思うんですが、やっぱり科学哲学ですね。科学とは何か。

例えば、人工知能の倫理の問題とかも含めて、考えなければいけないポイントが出てくるので。「科学とは何か、どうあるべきか」みたいなことを突き詰めていくスタンスは若い頃から持ってたほうがいいと思います。それによって、自分の科学観の裾野が広がっていく。

今日も、情報推薦の人もいれば、センサーの人もいれば、脳科学をやっている人もいるわけですよね。そういうところを総合的にとらえたときに、「社会に対して何ができるのか?」みたいなことを突き詰めていくことがすごく重要かなと。

最後にノブレス・オブリージュなんですけども、みなさんすごいレベルの高い研究をされていると思っていて、そういったものをどうやって社会に役立てていけるのか、みたいに考えていく部分は、特に日本はグローバルでは少し弱めというのがあります。

なので、常にそういうスタンスを持ちながら、社会にどうやって自分の持っている科学的な知識・技術を還元していけるのかを考え続けることはすごい大切なんじゃないかと思います。

データサイエンティストとしての今後の挑戦

司会者:最後になりますが、今後さらに挑戦したいこと、キャリアプランとして考えていることがあれば、教えていただきたいと思います。

西郷:今やっている仕事そのままになっちゃうんですけど。僕はIDだったり、ポイントだったり、リクルートを横断するデータの解析や活用を担当しています。

リクルートって、そういう人生を横断するようなデータを持っているように見えると思うんですね。これは世の中の人から見てもすごく魅力的だろうし、リクルートの競合からすると、すごく嫌だなって思うと思うんですよね。

例えば、結婚したあとに車を買うかもしれない、家を買うかもしれないということがわかるかもしれない……みたいな(笑)。

カスタマーからすると、そういうデータを使って利便性の高いサービスを提供してくれるのはうれしいだろうし、リクルートの競合からすると、「そういうことをやられると手がつけられないな」みたいなところがあると思うんです。

そういうことをリクルートのなかでどんどん推進・活用したり、それでどういう新しい活用や経済効果が生まれるのかとか。あるいは新しい解析技術かもしれないし、位置情報のデータかもしれない。

こういったものが加わって、どんどんグロースしていくということをこの5年ぐらいでやりたいなと思っています。

司会者:ありがとうございます。続いて、石山さん。

2020年、人材ビジネスで世界NO.1へ

石山:いろんな会社が人工知能の研究をしていると思うんですけども、リクルートぐらい社会的接点の高い会社で人工知能の研究をしている会社って、正直ないと思うんですよね。

例えば、働くということは世界中のすべての人にとってユニバーサルにやらなければいけないことなんですけども、我々の1つの目指す形というのは、2020年に人材ビジネスで世界NO.1になること。

世界NO.1の人材会社が人工知能の研究をしっかりすることによって、人間と人工知能の共存がしっかりと実現される。

先ほども話があったように、人材ビジネス以外でもいろんなビジネスがあったんですね。我々はたまに、「おみくじビジネス」って言うんですけど。神社に行っておみくじを引くと、そこに書いてある結婚や進学などの言葉・カテゴリーをリクルートは全部持っているわけですよね。

なので、人間にとってすごく重要な、1個1個の意思決定を人工知能が支援していくみたいなことを、私たち自身がイニシアティブを持って実現していくということは、すごく大切だと思っていて。そういった研究をやっていきたいと考えています。

司会者:ありがとうございました。

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