2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
提供:プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン
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スタ二スラブ・べセラ氏:皆さん、こんにちは。 これからP&Gが考える「ダイバーシティ&インクルージョン」のお話をさせていただきます。定義や実際の事例、P&Gではこのように進めていますというお話をさせていただきたいと思います。
まず最初に申し上げたいのが、P&Gにおいて、「ダイバーシティ&インクルージョン」は福利厚生のプログラムではなく、あくまでも事業戦略の一環であるということです。「ダイバーシティ&インクルージョン」なしに事業の成功はありえないと考えております。
P&Gの人材とブランドを結びつけている「ダイバーシティ&インクルージョン」の中で、当社が導入している様々な社員支援制度は、もちろん福利厚生という観点でも重要な役割を果たしていますが、あくまでもP&Gの「ダイバーシティ&インクルージョン」は事業戦略であるということをまずご理解ください。
事業戦略である所以としては、「ダイバーシティ&インクルージョン」があるからこそより革新的なイノベーションがどんどん生まれてくるということが挙げられます。個々に違いを持っている人材がさまざまなインサイトを持ち寄ってくれることで、今までなかった新しいものが生まれてくるということです。
ちょっと今までのプレゼンテーションとは違うかたちで、ホワイトボードに書きながら、ダイバーシティとインクルージョンはどこが重なっていてどこが違うのかを説明させていただきたいと思います。
まず横軸は、組織に帰属しているか。これは物理的に組織の一部であるかどうかとお考えください。この図では左から右に行くほど、組織にしっかり帰属しているということになります。縦軸は、どれほど個人がユニークであるか。ほかと違うか。この図では下から上に行くほど、より独自性があるということになります。
組織を見てみると、組織の中心にいる人とちょっと違いを持って孤立している人たちがいると。この図では左側の円です。そもそも、組織に帰属している人と帰属していない人がいるという時点でインクルージョンではないですね。
例えば、この、「違いを持った人たち」のグループを組織全体のうち何パーセントぐらい取り入れる、という数値目標を持って、人材を組織のなかに帰属させたとしましょう。せっかく違いを持った人材ではあるのですが、同じ組織のなかに引き込むことになりますので、最終的にはその違いを最小限に抑えながら金太郎飴のようなかたちで、その組織の大勢に合わせていくことになります。この図でいうと、右下の円です。
その次の段階というのが、例えば、女性は洗濯をよくするから洗濯機の開発に向いているのではないか、料理をよくするから冷蔵庫を開発するのにに適しているのではないかということで、女性だけのグループ集団を作り上げていく。そのグループを組織の一部として持つという段階があります。
そして最終的には、例えばそのような女性のグループだけでなく、さまざまなグループが組織に帰属していて、その中枢の部分にまで影響を与えるような状態、右上の円が目指すべきところになります。
例えばトップマネージメントとして「役員会」というのがありますが、その中にもさまざまな違いを持った人たちが、それぞれのグループの代表として関わり、それぞれの違った観点が会社のビジネスの進め方に反映されてくることが求められます。
つまり、単に多様性が高いだけではなくて、一人ひとりの多様性を会社全体として活用できる組織になっていくことが重要だと思います。
多様な組織を作ったとして、その多様性を活用できるシステムができあがっているかどうか、そういうカルチャーがあるかどうか。やっぱりカルチャーとシステムがあって初めて、右上の円のところに押し上げてくれるんだなと思います。
時間もなくなってきているんですけれども、私がナイジェリアで経験したことをお話ししたいと思います。
私は4年半、ナイジェリアで仕事をしていましたが、そのときに私の下にいた人事担当のマネージャーは女性でした。私がいた4年半の間に2回妊娠をして出産をしたんですけれども、最終的に戻ってきた段階で次のポジションへと昇格をいたしました。
もちろん人事部長というのは非常に責任の重い立場ではあるんですけれども、必ずしも妊娠したから、出産をするからといって、より楽な仕事に移す必要はありません。相応の社員支援制度でしっかりとサポートをすることは必要になってきますが、そうしたカルチャーとシステムがあって、本人が望めば十分可能だと思いました。
2つ目の例は、日本に来る前に、南アフリカ共和国で社長をしていましたときの話です。南アフリカ全体を統括しているなかで、「せっかくアフリカにいるんだから、家族と6週間休みを取ってアフリカを知りたい」ということで上司に相談をして、最終的に6週間の間アフリカを家族で旅をするために休暇を取ることができました。
ただ、「ダイバーシティ&インクルージョン」をやれと言ってもやれるものではなくて、環境を整えて、カルチャーを醸成し、それを可能にするシステムを作って初めて実現するものだと思います。
さまざまなインサイトがしのぎ合うことによって、イノベーションが生まれてくる。それから、一人ひとりがより満足感・充実感を持って仕事をすることで、個人の業績もビジネスの業績も上がってきます。それが、P&Gにとって「ダイバーシティ&インクルージョン」が事業戦略であるということの意味です。
私からは、アフリカの話をさせていただきましたが、日本における事例のほうがより関心も高いかと思いますので、このあと、日本における当社の事例をご紹介させていただきます。
(会場拍手)
山本真一郎氏:みなさん、こんにちは。ヒューマンリソーシズの山本真一郎と申します。私からは人事として、「ダイバーシティ&インクルージョン」 を担当している人間としてお話をさせていただきます。本日はよろしくお願い申し上げます。
P&Gの「ダイバーシティ&インクルージョン」についてべセラより説明をさせていただきましたが、私からは、我々が実際にどうしているのかというお話を具体的にさせていただきたいと思います。
P&Gでは「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進する上で、カルチャー、システム、スキルという3つの柱を掲げております。
まずは、「カルチャー」。多様性をしっかり尊重して、違いを認め合って、組織のなかに取り込んでいく。そういった企業文化がカルチャーになります。
次に、「システム」。多様な人材が多様なニーズを持ちながら働いているなかで、柔軟性を持って働けるシステムが必要になります。
最後に、先ほどベセラが申しましたように、ダイバーシティ&インクルージョンを、福利厚生ではなくビジネス戦略として掲げている以上、やはり違い、多様性をしっかりとビジネスに活かしていく「スキル」が必要になってきます。
こうしたスキルを構築していくシステムやトレーニングをご紹介したいと思います。まずは多様性を尊重する「カルチャー」についてご説明させていただきます。
P&Gのなかでは、多様な人材をしっかりと認めて、違いをしっかり認識していこうというカルチャーがそもそも存在しております。
性別や年齢、国籍、宗教、価値観など、あらゆる違いを尊重して、お互い認め合ってやっていこうというのが企業風土としてあるのですが、「そのような風土がなぜ根付いているのか?」ということを考えたときに、理由が2つあるかなと思います。
1つは、新入社員として入社してきたときから、経営戦略としてのダイバーシティの啓蒙や教育を行っているという点です。
我々が単に福利厚生のためにダイバーシティをやっているのではなくて、我々の消費者が多様であるがゆえに、我々も多様な人材を集めて、多様な組織として、多様な消費者に向かっていって、そうした消費者のニーズを理解して、ビジネスに変えていくことが重要だと考えています。
そして、そういったことをもとにダイバーシティを推進しているという教育がしっかりできているのかなと思います。
もう1つは、我々自身の多様性にも気づかされる機会が多々あるという点です。「多様性を尊重していこう」という企業理念があるのもその1つです。
個人のことを考える際に、例えば、「私は1人の個人としてどういった強みがあるのか、どういった弱みがあるのか」ということを入社の最初から考えさせられる機会があり、自分のある種の個性にも改めて気づかされる機会が多々あります。
そういった強みを活かしていこうというのが1つの人材戦略でもありますので、自分の強みを活かす、他者の強みにも目を向ける。そういった環境が自然と準備できていると思います。
結果として、我々の会社のなかで、「男性」とか「女性」といった意識で物事を考える機会はあまり多くありません。男性であろうと女性であろうと何人であろうと、ある種の強みと弱みを持った1人の個人として認識して、その方々たちにどうアプローチしていくか。そういうことが基本的な考え方となっております。
例えば、在宅勤務制度は女性が使うものと思われがちですが、男性社員でももちろん使うことができます。そういったところに対して、ある種の違和感や疑問が起きないような環境になっております。
その辺りが我々が一番大事にしている多様性を尊重するカルチャーの説明になっています。
続きまして、カルチャーを支える「システム」を紹介させていただきます。
どこの社会でもそうだと思うんですけれども、多様な人材がいると、それぞれに多様なニーズがあります。ある人にとっては子育てかもしれませんし、ある人にとっては介護かもしれません。いろいろな人生のなかで、いろいろなニーズがあると思います。
そういったニーズを内包しながら柔軟に働き方を調整して、多様な社員が人生の段階における変化に影響を受けることなく、パフォーマンスをしっかり発揮できていけるようなシステムを準備しております。
ここに3つほど挙げておりますので、簡単にご説明させていただきます。
1つ目は、「フレックス・ワーク・アワー」。こちらは他社でもたくさん使われているところがあると思うんですけれども、P&Gの「フレックス・ワーク・アワー」というのは、月単位での勤務時間の管理を行なっております。
1日あたり労働時間の目安はもちろんあるんですけれども、何時に出社して何時に帰るというのはない。月単位で1日あたりの「労働時間×労働日」の合計を達成していれば、ある日は少なく働いてもいいし、ある日はたくさん働いてもいい。そのようなフレキシビリティを持たせております。
2つ目は、「ロケーション・フリー・デー」。弊社ではもともと在宅勤務を持っておりましたが、それをさらに進化させたものが「ロケーション・フリー・デー」となっております。
これまでは、週に1日ないし2日までは家で仕事をしてもいいよという在宅勤務だったんですけれども、この「ロケーション・フリー・デー」に関しましては、月に5日間は勤務場所を必ずしも家には限定せずに、柔軟に働く場所を変えていいですよという制度となっております。
とくに理由は必要としておりませんので、子育てをしていなくても、介護がなくても、どんな社員でも取ることが可能です。
なぜこのような進化をさせたかというと、例えば在宅勤務が可能なのが毎週1日となると、「今週は毎日会社に行きたいんだけれども、翌週は出張があるから前の2日間は家で働きたい」というようなニーズに応えることができません。
もしくは、例えば神戸にいる者が単身赴任で東京に行っていると、単身赴任先が東京のオフィスなので、普通は東京の家での在宅勤務になるんですけれども、金曜日は早く神戸に戻ってそっちの自宅から働きたいとか。若手の社員が年末帰省する際に、帰省先の家で仕事をしたいとか。
そういったニーズを認められるように「ロケーション・フリー・デー」というかたちで在宅勤務の範囲を広げているのがこちらの制度になります。
最後に、「コンバインド・ワーク」。こちらは会社と在宅を合わせたフルタイムの勤務です。こちらは理由を必要としますので、主に子育てや介護をしている社員が該当します。
「この日は在宅」というかたちではなくて、1日の中で何時まで会社で働いて、家に帰って、例えばお子さんを保育園に迎えに行って、家に連れて帰って、食事の準備をしたあとに仕事をするとか。会社で働いた時間と家で働いた時間を合計して1日の労働時間としてみなす制度が「コンバインド・ワーク」となります。
これまでは時短勤務というかたちで、そのような特別なニーズに対応していましたが、やはり自宅勤務というのは短期的な解決策にしかならない。ずっと自宅で続けることもできませんし、その分お給料に対してもインパクトがあります。
なので、やはり持続的に社員のニーズをサポートするためには、自宅勤務も進化していく必要があるのではないかというところで、この「コンバインド・ワーク」を導入しております。
以上、弊社のカルチャーを支えるシステムを紹介させていただきました。
最後に「スキル」の話をさせていただきます。先ほどお話ししたように、まずカルチャーがあって、個々の多様性をお互いが認めて合っている。また、それを支えるシステムがあると。
ただし、我々にとっての「ダイバーシティ&インクルージョン」はビジネス戦略でございますので、そういった多様な人材や制度をうまく使って、ビジネスの伸長に貢献させていくマネジメントスキルが必要になります。
そこで、我々はさまざまなトレーニングプログラムを社員に提供しております。トレーニングの特徴としては、社内で内製しているものも多くあって、経営陣をはじめとしたP&Gの社員がトレーニングを担当しております。
2つご紹介したいんですけれども、1つ目はやはり「ダイバーシティとはなんぞや?」というトレーニングを新入社員の頃からしっかりしていくということです。
その流れのなかで、「自分はどういう価値観を持った人間なのか」「自分はどういうバイアスを持って物事を見ている人間なのか」ということへの気づきを与えることによって、自分の個性や他社の多様性に対して敏感になるようなトレーニングをやっております。
もう1つの柱として行っているのは、管理職向けのトレーニングになります。これからはやはり、管理職が非常に重要になってきます。
管理職は個々の社員に対して、その人間の個性やダイバーシティをしっかり理解してあげて、それを活かすかたちでのマネジメントが必要になってくる。
具体的には、1年の最初に上司と部下の間で年間の目標を立てます。その年間の目標をどのように達成していくかということの合意をして、1年間をかけて達成していくわけです。
その際に非常に重要なのが、「最終的に達成したこと」によってその人間を評価するのであって、「どのように達成するのか」というところはまったく問題になりません。
そういう意味で言うと、上司がその個人の強みを活かして、どのように達成するかをしっかりと指導することが必要になってきます。
なので、管理職には、1年間を通してどのような1on1を持てばいいのか、どのような面談を持てばいいのか、どのようなコーチングをしていけばいいのかという、具体的なプランを作るためのトレーニングを与えます。
そのようなスキルのトレーニングを与えることによって、個人が自分のニーズとバランスしながら柔軟に働いていくなかで、最初に約束したゴール、ビジネス目標を達成していけるように導いていくと。そのようなトレーニングを提供しております。
以上3つの柱をご紹介させていただいたんですけれども、「ダイバーシティ&インクルージョン」 がP&Gにもたらすものとして、我々はこういったものを考えております。
まずP&Gは日用品という成熟市場の中で、堅調なビジネスの伸長をしております。まずそれが1つあります。
2つ目が多様な人材、組織の育成というところですけれども。例えばここ(のスライド)に出ている社員は、日本人女性で初めて工場長になった社員です。
これまでは、工場=男性の職場というステレオタイプがあったところに、男女の違いではなくて、個人の資質に注目して育てていくことで、このような人材を輩出することができております。
次に生産性に対する社内意識ですが、やはり多様なニーズがあり、またその多様なニーズを自覚するということは、あらゆる仕事において、さまざまな効率が求められます。
例えば、ある人は17時までしか働けないとか、チームのメンバーが保育園の送り迎えのあとに会社に来るとなると、チームとして持てる時間はそんなに多くないかもしれない。そのなかで行われる会議は、自然と効率的に回していこうというかたちになります。
そのようなかたちで、社員一人ひとりの生産性に対する意識が高まってきているということも1つ挙げられると思います。
最後に製品のイノベーションということでご紹介したいと思います。やはりビジネスのためにダイバーシティありというところで、これも1つの事例なんですけれども。
昔研究開発をしていたチームに外国人の方がいました。もちろん我々は、外国人だから違うインサイトを持ってきてほしいと思ってるわけではなくて、普通にそのまま仕事をしていたんですけれども。
ある日、消費者のところに行っていろいろと調査をしているときに、日本人というのは家の玄関で靴を脱いで家に上がると。我々にとってはそれは当たり前のことで、それゆえに玄関が少しジメッとしていたり、靴箱の辺りが若干臭ったりするということに気づかなかったんですね。
その外国人の社員は、靴を脱いだらそこに匂いがこもるから、そこを綺麗にしたい、臭いをなくしたいという消費者のニーズがあるんじゃないのかということを見つけて、それが商品の開発に反映されて、置き型のファブリーズが開発されました。
この例だけに限りませんが、多様な人材がチームにいることで、実際に製品のイノベーションにもつながっているということがあります。
直接的に関わってやるものもあれば、間接的なものもあるんですけれども、「ダイバーシティ&インクルージョン」がP&Gになければ、こういったものは達成できなかったのではないかなと思っております。
なので、人材を最も重要な資産として考える会社の人事としては、今後も「ダイバーシティ&インクルージョン」をP&Gでしっかりと進めていきたいと思っております。ありがとうございました。
(会場拍手)
プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン
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