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思考ライブ(全2記事)

2016.03.09

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「Wii」元企画者・玉樹真一郎流、発想の鉄則「冷めた心でアイデアは出さない」

提供:株式会社ビジネス・ブレークスルー

優れたアイデアメーカーの思考過程をのぞき見ることによって、考え方のエッセンスを学ぶビジネス・ブレークスルー(BBT)の「思考ライブ」。今回の回答者は、元任天堂社員でWiiの企画開発担当者・玉樹真一郎氏です。当日、偶然引き当てた「子供がゲームをしたい欲求を勉強する欲求に変換するようなうまい仕掛けを考えてください」という難題に、カメラの前でリアルに悩む姿をさらけ出しながら取り組みました。前半の思いついたアイデアをどんどん出すフェーズを経て、後半は「お風呂」に注目。子供が1人になれて、かつゲームができない場面を有効活用するというところにフォーカスし、アイデアをアウトプットしていきます。1人っきりの思考ライブを終えた後には、振り返りを。BBT 高松氏が質問を投げかけながら、玉樹氏の考えを紐解いていきます。

ゲームしたいと勉強したいを両立させるには

「ゲームしたい欲求を、勉強したい欲求に変えるような上手い仕掛けを考えてください」。たぶん、僕はゲーム業界の出身なので、ゲームしたい欲求があったとして、それを奪いたくないんでしょうね。なので、問題文に対して、一生懸命に抵抗をしているんだと思います(笑)。

ゲームしたい欲求を奪わずとも、勉強すればよいだろうってところに落とし込もうとしているんだろうと思います。そういう意味で、「それ、ズルくないですか?」って出題者の方に怒られちゃうかもしれないですけど、なんとなくそんな気がしてきました。

子供が体を動かせるって意味では、お風呂って最適です。お風呂に行けっていう時に、湯船でじっとしていなくてもすむ。湯船のなかで勉強して欲しい。しかもその時に、じっとなにかを見るんじゃなくて、動きながらやって欲しい。

かと言っても、お風呂ってたくさん入っていたら、のぼせてしまいますもんね。そうか、子供の頃は、30秒入ってなきゃいけないってことしか意識してなかったなあ。何分くらい入っていると、のぼせるんですかね? 5分? 長い時間入ってもいけないんですね。

時間の制約をゲーム感覚に

これ、裏を返すと子供はタイムリミットとしてとらえる。何秒以内にこれをしたらクリア、みたいなゲーム感覚にできるんじゃないかなという気もします。

湯船で制限時間内になにかをする。しかも、体動かしながらやってほしいですよね。肩まで浸かって、下手に集中してやってものぼせてしまってよくないですからね。子供って半身浴しちゃいけないんですかね? ああ、なんかおもしろいな。ちょっと、いろいろと引っかかりが出てきました。

半身浴って、勝手なイメージですけど、うら若き女性の方が一生懸命汗流して「スリムになりたい」っていう時にやる印象があるんです。

下のほうに低くお湯を溜めて長く入って、あれ何分入るんですか? けっこう長い時間入ってますよね? 半身浴だったら長く入れるから、5分よりもうちょっと長く入れると思います。

いずれにせよ、あれって下半身だけ入っていればよいので、小学生がお風呂で立ったらこのへんまでは入ってるんじゃないかな? 足の下くらいまではお湯が入ってるんじゃないですかね、小学生は。となると、お風呂で勉強すれば。親が一緒に入ればなおさらですけどもね。

パイの取り合いではなく、枠を広げることを考えていた

あと「勉強しろ」には手順が含まれていないプラス、勉強した後のご褒美が未定義なんですね。未定義って、いかにも理系出身者の言葉ですけれど。こんな感じで勉強したら、「チョコレートがあるよ」とか。最近の小学生はチョコレートになびくんですかね? そこにゲームが入ってるといいんでしょうね。「ゲームしていいんだよ」と。

さっき夜の自由時間が2時間くらいありました。2時間って時間のなかで、子供にはできる限りゲームの時間を広げようって欲求がある。一方で親には、勉強の時間を広げようって欲求がある。これをやりとりするのがコミュニケーション。親子のコミュニケーションの基本的なルールなのかもしれません。

ゲームを勉強に押し込みなさいっていうのが問題文でした。この矢印が今の問題文なんです。平たく言うと。だって、これ(ゲーム)を奪いなさいって問題ですからね。ゲームの欲求を勉強に持ってきなさいってことは、最終的にゲームと勉強の比重をこっち(勉強多数に)に持ってきなさいって問題文だったわけです。

それに対して僕は、ゲームしたい欲求はそれであるんだから、ゲームを減らすんじゃなくて、このパイを広げなさいって話を一生懸命してたんだと思います。ここが、お風呂だって話ですね。

特に、このお風呂の時間はゲームができないって縛りがあると。だったら、ここでどっちかの活動をすると、すなわち勉強をすることになる。お風呂はもともとの時間の外だから、ゲームする時間が削られないって話ですね。

お風呂のなかで勉強をする。親が教えてもいいし、1人でなにかやってもいいです。お風呂のなかっていうのは制限時間がありますから、ちょっとした短い勉強しかできません。なんですけども、糸井さんの言葉。これは脳科学でも最近言われていますね。掃除ってやる前は面倒くさいじゃないですか。

でも、やり始めるとちょっと楽しくなってきて、一気にやってしまうかなんて自分にいいわけをしながら本当は興が乗っただけで、今日やる予定のなかった棚の裏とかエアコンの上のところまで掃除しちゃう。1回やり始めれば、続くんですよね。

そういう意味でいうと、家に帰って勉強しだす瞬間に子供には一番ストレスがかかるわけですね。この勉強し始める瞬間を、いかに敷居を低くしてあげるか。なので、敷居を低くして一度勉強を始めてくれたら続くかもしれない。子供は興が乗るかもしれない。興が乗ったら自然と子供は勉強の時間をゲームの時間に押し込むかもしれませんね。

お風呂の白い壁をホワイトボードに

風呂で勉強ってなると、なにが必要か。これは正直、僕の口でも説明が上手くつかないんですけど、完全に思い浮かんでいるのは、ホワイトボード。これです。

お風呂をイメージすると、「壁が白い」ってイメージが真っ先に思い浮かぶんですね。僕の今の家もそうですし、昔の実家は壁が白くなかったですけど、最近はだいたい白っぽいですね。

あれってカビが付いてはいけないとかがあるので、なにかを付けるにも制限がある。ただ、のっぺらとした板、あれなんとかならないのかと思ってました。この話をしながらいろいろと思い出すんですけれど、あそこホワイトボードになりませんかね? 

浴槽があって、この脇のところですね。ここがホワイトボードにならないかな? もしくは普通に画面にタッチでもいいんですけど。ここに「制限時間内に解け」みたいな数分間のドリルみたいなものが表示されて、それをお風呂に入りながら解く。そうすると自然に何分か、お風呂に入っていることにもなるし。

ああ、でもホワイトボードにすると書いた後に消した時に消しカスが落ちるイメージが。困りましたね。そこはちょっと物作りで解決しなきゃいけない。やっぱり画面のほうがいいのかな? でも、画面だと高くつくな。でも、子供はお風呂ってそんなに楽しくないので、お風呂のなかで宿題のはしりができたらラッキーだよな、とか。

防水タブレット+制限時間

あと、冒頭で触れましたがタブレットで勉強する通信教育とかも出てきましたので、そのコンテンツがここに出てきたらいいですよね。子供が自分の部屋に行って、DSとそのタブレットが2個並んでいるわけです。子供は当然、ゲームを選びたいわけです。その瞬間、勉強のためにタブレットを持ち上げること自体にものすごいストレスを感じるわけですよね。

だったら面倒臭い風呂のなかで、面倒臭い勉強も一気にできれば子供にとっても一応ベネフィットはあるなあ。お風呂で1回やり始めちゃったら、一気にやってしまおうとなりやすいから、その後もさらにやってくれるかもしれない。

とってもシンプルに言うと、さっきのタブレットを防水にすればいいって話になってしまいますね。これ、けっこうありかもしれません。制限時間決めてやるコンテンツ、プラス防水機能ですね。制限時間プラス防水。

お風呂のなかでタブレットを使う人というのは、今は半身浴したいとかっていう、自分の身体に対して意識の高い女性。もしくは、とにかくデジタルなガジェットに触れていたいというリテラシーの高い若い男性などに限定されていました。

なんですけれども、この後、デジタルネイティブでどんどん子供たちがやるようになっていくと、お風呂のなかでデジタルモノを扱うっていうことが子供にも広がっていくかもしれない。そういうことを考えると、子供がお風呂のなかでこういうことに取り組むというのはありかもしれませんね。

それが、勉強のとっかかりに、敷居を低くしてゲームの欲求を、間接的にですけども、ちょっとズルいかな? すみません、間接的にかもしれないですけども、子供がゲームをしたい欲求を忘れて、勉強のほうをやり始めてしまったからもう一気にやってしまおうという欲求に変えることができるかもしれない。というわけで、ここがもうまとめになっちゃいますね。

勉強時間をルーティンに組み込む

でも、これだとちょっとわかりにくいので、一回全部消しちゃいましょう。かなりあちこちにいったので、1回まとめましょう。

子供は勉強をし始める時に、最もストレスが強くかかる。ここで親子ゲンカをするわけですよね。「勉強しろ」って。「勉強しろ」っていうのは、「勉強し始めろ」って意味ですよね。それで、「始めろ」「始めたくない」ってケンカをするわけです。

勉強「する」「しない」じゃなくて、「し始めるか」「し始めないか」でケンカしていると言える。で、ここでストレスがかかる。その敷居を低くするためにはどうすればよいか、という時に、お風呂という日常で絶対にやることを活用しようじゃないかと。お風呂っていうのは1人になれる場所、かつゲームができない場所です。

このまとめのタイミングで枝葉にいっちゃって申し訳ないんですけれど、僕が一番仕事ができるのが新幹線なんですよ。ほかにやることがなくなっちゃうんで、仕事するしかなくなっちゃうわけです。なので、仕事が大変だと「新幹線乗りたいな」って最近思うようになりました。変な性格になってきた。それくらい新幹線のなかで仕事が捗る。お風呂も似たような感じですね。ゲームできないわけですから、そもそも。で、ここで特にじっとしている。

お風呂で学ぶ、2つのアイデア

子供がお風呂のなかで一番つまらない湯船に浸かる時が、チャンスだろうということで、案としては大きくわけると2つですね。技術的な解決策は見えないんですけれど、1つ目が湯船の壁面、ホワイトボードですね。ここで勉強し始めてくださいってパターンと。もう1つは、制限時間付きコンテンツ、プラス防水タブレット。とりあえず、アイデアとしてはこの2つです。

ただ正直なところ、優秀なのがどっちかというと、右のほうですね。アイデアは一生懸命出すけども、自分でも、ろくでもないアイデアっていうものも出るもんです。ホワイトボードには、ちょっと技術的な課題がある。防水タブレットのほうは技術的な課題があんまりなさそう。もう1つ、ホワイトボードは、お風呂のなかでやり始めた勉強を外に持って行くことが難しいってことなんです。

要は勉強し始めることの敷居は低くしているんですけれど、し続ける敷居がちょっと高い。こっちは、し始めてそのまま外に出て行けばよいというわけで。そっち側の敷居も低い。続ける敷居が低いわけですね。これはかなり優秀じゃないかなという気がします。

これは、勉強をし始めるストレスをお風呂の湯船という一番し始めるストレスの低いタイミングにフォーカスしてあげる。その結果として、さっきのこれですね。

「ゲームか、勉強か」という時に、ゲームしたい欲求をそのまま削って勉強に持ってくるんじゃなくて、勉強を始めさせることによって勉強を続けたいという欲求を増やして、結果的にゲームしたい欲求を勉強したい欲求に変換するというアプローチをとってみたらいかがかなというのが、今の私の精一杯でございます。

今回はこれぐらいで、いかがでしたでしょうか? 以上で終わります。ありがとうございました。

思考ライブを玉樹氏と振り返る

高松康平氏(以下、高松):ここからは、思考ライブの振り返りを玉樹さんと一緒にさせていただければと思います。お疲れさまでした。

玉樹:ありがとうございました。ゲームってずっと考えているテーマなので、ものすごく難しかったですね。

高松:観察させていただいていた前半約30分間くらいの思考の流れも、悩まれているなというところとか、取っ掛かりをどう探すのかってところが非常に参考になりました、ぜひその辺りを、紐解いていただきたいと思います。

玉樹:率直に言うと、恥ずかしいところをお見せしましたと。ほんとに今思い返してもメチャクチャですね。一生懸命、なにかを探しています。自分自身も自覚も無いですし、書いてるものが散らばっていたという印象をすごく感じられたんじゃないかと思うんですけど。まあ、仕方ないのかな。

高松:最初に、「ゲームは子供の口封じという言葉ってありますよね」ということから始められたのは、パッとその言葉が思い浮かんだんですか?

玉樹:あれは完全に思い浮かんだことです。ゲーム関連で自分がすごく好きだったり、すごく嫌いだったりっていう、心を掘る、心が動き出すようなエピソードを一生懸命思い出して、まずはテーブルの上、ホワイトボードの上にどんどん乗せていく作業ですね。それで、まずは考え出さないといけないと。自分で自分の心を一生懸命揺り動かすステージですね、あそこは。

高松:解決策とか企画ということは、まだあまり意識せず、素材として自分の心にあるものをまずテーブルに載せていくというイメージですか? 

玉樹:まったくその通りです。そのタイミングで答えを考え出して、もし答えが出たとしても、ろくな答えじゃないということですね。出ても自分でやりたいと思えない企画が出ちゃうんです。そういう企画って人に伝えることもできないし、実行することは当然できないので。まずは、答えを考えないっていうところは常に意識しているかもしれません。

高松:なるほど。最初からいい答えを出したいなと思うとなかなか、と。逆に悩んでいる時間をたっぷりとってもいいということなんですか。答えには結びつかなくてもいいから、いったんいろいろ思うことを、吐き出してみると……。

心が冷えた状態でアイデアは出さない

玉樹:そうですね。議論の前半でアイデアを出して、心がシーンとしている状態で答えが出てきても、その答えがよいものだって信じられないんです。心が冷めているので。そうするとネガティブなフィードバックが掛かるんですよ、アイデア出したけどダメだったっていう。

それを前半から続けていくと、何回かネガティブなフィードバックがあって、余計に心が凍っていって、すごくつまんない議論、会議になっちゃう。なので、前半は絶対アイデアを出してはいけない、けっこう鉄則に近いものかなと思ってますね。

高松:なるほど。そのなかで「勉強しろ」って親に言われても子供ってしないよねっていうことがきっかけとなって、深堀りしていきましたが、その辺りはやはり言葉尻を受け止めずに、じっくり疑ってかかることも大事なんですか。

玉樹:そうですね。企画という仕事柄、企画の良し悪しについては当然考えるんですけど、どんなタイミングで人は企画を信じるとか、企画を実行するっていう行動に移すのかということもよく考えるところもあって。なので、勉強の話が出ると、「勉強しろって言ってもしないよな」と。行動を移すきっかけのところを、職業柄なのかもしれないですけど、たまたまよく考えていて。だからこそ、それがポンと出てきたんだと思います。

ただ、話をしていて、勉強し始めるときにストレスが最も強く掛かるって、これはなかなかいいことを言っている気もするなって、僕個人としては思うんです。

高松:そこは、最初にストレスが掛かるよねっていうことはポッと出てきた、イメージを私は持ったんですけれど。それは玉樹さんご自身の経験を思い出してなのか。どうしてそう思われたんですか?

玉樹:前半のころ、僕けっこう黙ってた時間帯ありませんでした? え~、とかって(笑)。

高松:途中でギアが上がったなというのは、わかったんですけれど。そうですね、前半はちょっと(笑)。

体を動かすことで思い出せる記憶

玉樹:その時には一生懸命、昔のことを思い出していました。特に、勉強することを思い出すのが難しかったのは、やはりじっとしているからで、逆にお風呂のことは思い出しやすいんですね。できる限り抽象度が低く、具体的に思い出せるもののほうが当然、アイデアが出しやすいわけです。途中、こうやって一生懸命頭洗ったりしてたでしょ。

高松:そうですね。実際にシャンプーをしている情景を、体を動かしながらやられているのが印象的でした。

玉樹:あれは、頭を洗う順番を思い出したいのではないんですね。体もそうで、その順番を思い出したいのではなく、その時の感情とか経験って行動に紐づいているパターンが多いというか、記憶って複数の記憶の要素が繋ぎあってる状態のことを記憶というらしいんですね。

なので、その時の感情を思い出したかったら、その周辺のいつとか、どう体を動かしてとか、そういうことを思い出すと連鎖的に感情が思い出されるという仕掛けらしいんです、認知科学的には。なので、こう体を動かしながら思い出してるんですね、どんな気持ちだったかなっていうのを。そっちが狙いなんです。

高松:なるほど。実際にやってみることによって、そういう効果を狙ってると。

玉樹:そうですね、なので、意外と洗っている時にはそんなにつまらなくないなとか。逆に、お風呂に浸かってじっとしてる時が一番つまらないなとかっていうのを思い出すために一生懸命やっていたと。

「無意識には最初から気づいていた」

高松:なるほど、そうなんですね。そんななか、終盤に、心の抵抗という話が出てきて、ゲームの欲求を勉強に変えるという、お題自体に玉樹さん自身が抵抗があって、勉強する時間のパイ自体を、お風呂の時間で広げるということをしたいんだと。あの時に気づいたのか、最初からそのラストがあったのか。どうなんですか?

玉樹:あの時です。

高松:その時に、構造として自分がやろうとされている企画の概念的な理解ができているということなんですか?

玉樹:その時にやっと気づいているんですね。ただし、思い返すと最初から気づいているんです。おそらくですけど。そうでなければ、最初に「ゲームは子供の口封じ」なんて言わないはずなんです。あれが嫌だって僕が表現してるということは、ゲームは楽しいもので、ゲームで遊んでほしいんだってことを言っているわけです。でも、その時は気づかないんですね(笑)。

無意識では気づいているんだけども、意識が気づいてない状態で、それを時間をかけながらつまびらかにしていく過程で、やっと30分40分経ったときにそれが意識できるように、言語化できるようになった感じです。なので、その時にやっと気づいています。

高松:なるほど。今回、最終的にホワイトボードを置くとか、お風呂のなかで学べるようにするというのは、それまでにお風呂の情景を思い浮かべたり、お父さんとの会話内容だったりとか、いろんなものを思い浮かべて。最終的に一気通貫したこういうのがよいんじゃないかっていう最終的なアイデアは、玉樹さんのなかでどういうフローで生み出されてきたんですか。

玉樹:順番としてはさっき挙げたような、上にあるような条件をいくつか先に、これをクリアしたい、これをクリアしたいって小さめの問題をいくつか作っておくわけです。それを頭の中に入れながら、最後は一生懸命お風呂のイメージをひたすら頭の中にできる限り詳しいお風呂の3Dモデル、カメラを一生懸命動かしながらお風呂の時間を一生懸命観察するわけですね。

そのうち日常的にお風呂に対して持っている不満とか、お風呂のここが好き、ここが嫌いみたいなところまで思い出せると、お風呂の壁って使い道ないことに日常的にすごくイライラしてる、みたいなことがポンと出てきて。それで、壁を使おうって話になると、もう後は、最後はジャンプかもしれないですけれど、ホワイトボードを持ってきて掛ければいいんだってなってくるわけです。

情景を思い浮かべて

ちなみに、先ほどはタブレットのほうを最後に推して終わったんですけれど、こっちもけっこういいなと思うのが、お風呂で勉強してホワイトボード書くじゃないですか。それを子供が書いた後、上がるときに消すのかどうかというオペレーションをまずイメージするわけです。

高松:それを情景として思い浮かべる……。

玉樹:そうですね。絵として思い浮かべるのと、あと、手順として思い浮かべる。時系列で何をして、何をして、何をしてと、いちいち全部を1個ずつ思い浮かべると、消さないかもなとか。子供は消したいか消したくないかって話が進んでいくと、たぶん子供は消したくないはずですよね。だってこれは勉強した証拠なんですから。

なので、子供が先にお風呂に入って、お風呂でちょっとでも勉強した証拠を残していたら、親が後から、褒めてくれるかもしれないと。逆に親は、子供がお風呂に入った後、「勉強したかな?」ってお風呂をのぞきに行くっていうことができるようになって、必然的にコミュニケーションが密になるな、と。

ホワイトボードの下が浴槽なので、どうやってお風呂を汚さないかという技術的な問題はあるんですけど。これもけっこうありかも。

高松:あったらいいなって、本当に思いますね。

玉樹:けっこう大人でも使えそうですよね。ビジネスマンがお風呂のなかで企画を考えるときに、一生懸命、頭ん中で思い浮かべるだけで負荷がかかっちゃうじゃないですか。それをすぐパラパラっと書いておく。その、アルキメデスじゃないですけど。あっ、アルキメデスって名前で売ったらいいんじゃないですか?(笑)。

高松:著作権取ったほうが。

玉樹:危ないですね。エウレカってみんなで叫ぼうって、なんかそういう話です。すいません、なんか勝手なこと言っちゃって。

高松:でも、シャワー浴びるときだったらノート持って行くわけにはいかないですし、ビジネスパーソンにとってもありかもしれないですね。パッと、アイデアが思い浮かぶ時にそんな物があるというと。なるほど。

玉樹:ありですね

高松:新しい商品が今ここで生まれたのかもしれないですね(笑)。将来どうなるか楽しみです。今回は、玉樹さんの出身であるゲーム業界のかなり難しいお題でしたが、最後にアイデアを作っていただき、また思考の解説までしていただきましてありがとうございました。

玉樹:ありがとうございました。

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