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表彰式(全2記事)

2016.02.24

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人事にも創造性が問われる時代 一橋大学・守島教授が語る「従業員価値」の重要性

提供:株式会社リクルートキャリア

2016年2月9日、株式会社リクルートキャリアの転職情報サイト・リクナビNEXTが職場を盛り上げる企業の取り組みを発掘する「第2回 グッド・アクション表彰式」を開催しました。今回、表彰式の審査員を務める一橋大学大学院教授・守島基博氏は、従来の企業と働く人たちの関係性の変化を背景に、企業側に求められる「従業員価値の提供」と「人事の創造性」について解説。その上で、企業の新しい取り組みを世に広める 「グッド・アクション」プロジェクトの意義を語りました。

働き方の多様化に取り組む企業のグッド・アクション

細野真悟氏(以下、細野):リクナビNEXT編集長の細野真悟と申します。本日はお忙しいなか、第2回グッド・アクション表彰式にご来場いただきまして誠にありがとうございます。

私が編集長を務めるリクナビNEXTでは、「『この仕事に会えてよかった』を一人ひとりに」という思いの元、活き活きと働く個人と、そんな個人が活躍する企業が増えることを目指して事業を展開してきました。

2014年は生産年齢人口が32年ぶりに8,000万人を割るといった人口構造の非常に大きな変化があり、2015年の平均有効求人倍率は1.2倍と24年ぶりの高水準で、日本は非常に未曾有の人手不足に見舞われております。

そんななか、私たちの「働く」の周辺にも、次々と新しいテーマが提起されております。

例えば、高齢者や主婦、外国人だけでなく、リモートワークで働く方や複数の仕事を掛け持ちする方など、これまでとは異なる層・働き方をする人たちが活躍を始めているという年だったかなと思います。

一方で、年齢や性別に関わらず、「なぜ働くのか?」「どうしてその会社で働くのか?」といった考え方も非常に多様化しておりまして、なかなか一筋縄の人材マネジメントでは通用しないという各社様の声をいただいております。

弊社で行った調査では、「働き方のテーマを重要と感じつつも、どう取り組んだらいいか分からない」という声を企業の方々からいただいております。

社会や個人、企業の変化に合わせ、私たちもよりよい「出会い」を提供していくために、既存の事業の強化をして参る所存ではございますが、そのような「どのように働くのか?」という新たな課題に対しても寄り添っていくことが求められていると考えております。

その1つとして、悩んでいらっしゃる企業様のヒントになればといったところで、こちらのグッド・アクションを立ち上げさせていただきました。

本日はまず、守島先生の基調講演で、取り組みを始めて根付かせていくためのポイントに関してご講演いただきたいと思います。

また、白熱した最終審査の議論を元に、 グッド・アクションを受賞した取り組みについて、それぞれの審査の観点をお話しさせていただきますので、「これはウチの会社でも使えそう」であったりとか、そういったヒントを持ち帰っていただきたいと思います。

限られた時間ではありますが、みなさんの有意義な情報収集のお時間になりますように努めてまいります。以上をもちまして、挨拶に代えさせていただきます。ありがとうございました。

(会場拍手)

司会:それでは守島先生、よろしくお願いいたします。

働く人たちの企業選びに見る変化

守島基博氏(以下、守島):みなさん、こんにちは。さっき細野さんの話にもありましたけど、グッド・アクションは2回目なんですね。

リクナビNEXTの企画なんですが、2回目ぐらいになって、私もこの企画が、日本の人事というか、企業の人材マネジメントの中でどういう意味があるかというのがだんだんわかってきたんです。

まず1番目は、最近働く人と企業の関係が大きく変わってきたと。働く人たちが、働きがいや働きやすさを求めて企業を選ぶようになってきたという傾向があるように思います。まだ働いてはいないんですが、うちの学生を見ているとよくわかるんですね。

女子学生は働きやすさ、育休であるとかその他の支援であるとか、そういった理想をすごく丁寧に自分の中に作って就職活動をしているんです。そのぐらい卒論で頑張ってくれるといいなあと思いつつ、いつも見てるんですけれども(笑)。

2番目は、多様な人材が多様な要求をするようになってきたと。 例えば、いろんな人たちが、いろんな企業に対しての期待感を持っている。

うちはMBAもやってますが、この時期は勉強したいから会社を休みたいという希望を持っている人たちがたくさんいたり。この時期は残業をしないで勉強したいとか、そういういろんなニーズを持ってる人たちがいろんなかたちで出てきた。

昔はそういう価値観の多様化は、深層のダイバーシティと言って、あんまり企業として対応しないという話だったんですが、それがだんだん対応せざるを得ない状況が出てきたように思います。

3番目、これもよく言われますが、昔は働くことがメインで、人生のかなりの部分を占めていたんだけれども、そうではないんだと。

今でも時間的にはそういうところがあるのかもしれませんが、今の人たちは働くということを人生の一部として、トータルで幸せになりたいんです。

よくワーク・ライフ・バランスという言葉がありますけれども、あれは間違いだと思うんですね。ワークとライフがバランスしてるわけではなくて、ワークとノンワークがバランスして、ライフを充実させるというのが正しい姿だと思ってるんです。

そういう考え方を持つ人たちがだんだん出てきたと。つまり、働く人たちが企業に対して、ある意味ではクールな目を向けるようになってきた。「エンパワーされてきた」と私は呼んでいます。

企業側に求められる「従業員価値」の提供

いろんな意味で、働く人たちが企業を評価して、企業を選ぶ時代になってきたというのが、1つの大きな違いであるように思います。それに対して、企業はどういうふうになっていかないといけないのかというと……。

非常にシンプルに言ってしまうと、「employer of choice」にならないといけない。働く人たちから選ばれる企業になっていかないといけないんだというのが「employer of choice」です。

つまり、働く人たちはクールに企業を見てるわけですから、企業は働く人たちに選ばれるような価値を提供していかないといけない。その価値のことを私は「従業員価値」と呼んでいます。

これは私の造語なのですが、従業員価値とはどういうことかというと、働く人たちがその企業で働くことによって得られる価値です。

人材としての価値が上がっていくとか、自分が幸せになるとか、家庭生活がうまく安定的に進んでいくとか。いろんな価値があると思うんですけれども、そういう価値が得られるか得られないかということを働く人たちが重視するようになってくる。

そうすると、企業も結局そういうところを頑張って提示せざるを得なくなる。したがって、こういう価値を提供できるような「employer of choice」になっていくというのが企業としてはミッションですね。

その時に、人事部は何をやっていかないといけないかというと、その価値を提供するようなさまざまな人事策や取り組みをやっていかないといけない。つまり、人事の創造性が問われる時代になってきたと。

今までの評価制度を続けていきます、今までの研修を少しだけ改善していきますという話ではなくて、働く人たちが求める価値を提供するために何をやればいけないかを考えて、それを実行するための仕組みを作っていくことが求められる時代になってきたと思います。

例えば、「retention」という言葉が日本の企業でもだんだん流行ってますけれども、「retention」というのは、あの人をつかまえていたいという企業からの意思であります。

そうではなくて、その人が働き続けたいと思うような企業をつくっていくために、どういう創造性を働かせないといけないんだろうかと考える必要がある。

あともう1つ、最近人事の中で話題になっているダイバーシティという言葉があるじゃないですか。すごく重要な言葉なんですけれど、今の段階だとまだまだダイバーシティというのは解決しないといけない問題とか課題ですよね。

でも、ダイバーシティによって企業がすごく良くなる、どんどんアイデアが出てきてイノベーションが起こってくる。そういう世界になってくれば非常に素晴らしいと思うのですが、そのためには人事としてどういう創造性を働かせないといけないのか。

ワーク・ライフ・バランスについては、先ほど申し上げたように、私は言葉としてはおかしいと思っています。ワークとノンワークをバランスさせて、どうやって自分が充実した人生を送っていくかというのが働く人たちの目的だとすれば、それを達成させてあげるために人事として何をやっていかなきゃいけないか。

今までの人事のやり方からかなり離れたところかもしれませんが、創造性を働かせていくことが求められるようになってきたというのが私の認識です。

そうでないと、働く人たちは「この企業は従業員価値がないな」と思って辞めてしまったり、働いていたとしても、モチベーションを下げてしまうということがあります。ですから、人事としては非常に難しい時代になってきていると思います。

私は20年ぐらい前から「戦略人事」という言葉を使っています。これからは、経営のための戦略人事ではなくて、働く人のための戦略人事をやっていかないといけない時代になってきたんだろうなと思います。

創造的な人事になるためにはどうすべきか

それができるのは何かというと、私は創造性のある人事部門だと思います。 ただ、創造性って難しいんですよね。僕は教員と研究者をやってますが、そんなに簡単に創造性が出てくるわけではありません。したがって、創造的な人事になるのはなかなか難しいんです。

それからもう1つ、今までと違うことをやっていくことが創造性だとすれば、非常に評価されにくいんです。何か新しいアイデアが出たとしても、企業の中では光が当たりにくい、なかなか評価されにくいという傾向があると思います。

たぶんみなさん、そこを苦労されている方が多いと思うんですが、私はグッド・アクションの取り組みのポイントはそこなんだと思います。

つまり、みなさんのように創造的な取り組みをされてきて、働く人たちに従業員価値をきちんと提供した企業さんを、何らかのかたちで取り上げて、社会に広めていく取り組みをやっていきたいというのがこのグッド・アクションだと思います。

したがって、みなさんは素晴らしいこと、創造的なことをやったので喜んでいただいて構わないんです。

それで、みなさんの次のミッションはどういうことかというと、そういう取り組みを日本社会にどんどん広げてくださいということなんです。

それをやることで、日本の働く人たちが元気になって、働きやすさや働きがいを感じて企業の中で頑張るようになるし、回り回って企業が元気になる。企業が元気になると、日本も元気になる。それが非常に理想的な姿で、そういうふうになってくるんだと思います。

ですから、私がこの場を借りてみなさんにお願いしたいのは、これまで発揮されてきたような創造性を、さらにいろんなところで発揮していただいて、日本の働く人たちが従業員価値を感じて働ける社会と会社づくりを頑張っていただきたい。そして、その結果として企業が良くなるということをぜひ進めていただきたいというお願いです。

非常に簡単ですけれども、私が申し上げたいのはこのぐらいです。これで終わりにさせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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