2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
第2部ライトニングトーク 小沼大地氏(全1記事)
提供:株式会社朝日新聞社
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小沼大地氏(以下、小沼):みなさん、こんにちは。AI、ロボットときて一気に毛色が変わったテーマになりますが、僕からは「グローバル社会における私たちの貢献」というテーマでお話をさせていただきたいと思います。
まず最初に、私自身の自己紹介ですけれども。少し変わっておりまして、私は大学を卒業してから最初に青年海外協力隊で中東のシリアという国に2年間ほど行きました。
その後、コンサルティング会社で3年間勤めて、今やっているNPO法人クロスフィールズを起業するというキャリアを歩んでいます。
今日は僕の経験から、今どういったことに問題意識を感じていて、それに対してどういうことに取り組んでいるのかという事例をお話して、みなさんのディスカッションの材料にしていただければなと思っております。
そう言って就職していく人間が僕の周りに多かったんですけれども、そういった人間に「お前は、どうしてメーカーに行くんだ」と言うと「ものづくりで日本を元気にしたいんだ」「世界を良くしていきたいんだ」と。
「なんで金融機関に行くんだ」と言うと「金融の力で、もっともっといろんな人を幸せにしていきたいんだ」と。そんなことをみんな熱く語っていると。それで僕は、みんな頼もしいなと思って「僕は協力隊に行って頑張ってくるよ」と言って別れた。
そして2年、3年経って、久々に仲間たちと会って、僕はシリアでいろんな経験をしてきて、「こんなこと、やりたいんだ」ってことをワーッと熱く飲み会で語ったんですね。
そのときに同期の連中が、みんなどん引きをするんです。「お前、まだそんな熱いこと言ってんのか」と。「早く会社に入れ」と。「会社でそんな青臭いこと言ったって通用しないから、早く大人になれ」「早く会社に入って働け」ということを言われたんです。
これが頭にきたというのが、僕自身が今、事業をやっているきっかけになっていることです。
本当は志や情熱こそがこれからの日本社会には必要で、企業がイノベーションを起こしていく上での源泉になってくると思うんですけれども、それを根こそぎ取ってしまっているのが日本の企業であったり、日本の社会のありようなんじゃないかと。そんなことを思っています。
1つ映像を見ていただきたいと思います。こちらは変な実験なんですが……ノミです。ノミって自分の体長2ミリぐらいで、30センチぐらい飛ぶんです。
ビンに入れると当然ビンの上まで飛ぶんですけど、ビンにフタを閉めると、だんだんフタに当たって、「痛い、痛い」っていう話になって、だんだん飛ぶのをやめていくんです。
驚くべきことに、このフタを取っても、フタよりも上に飛ばなくなるんです。さらに驚くべきことに、このビンを取り外してみると、ビンの形に飛んでしまうと。
これがノミの習性であって、僕はこれを起こしてるのが今の日本企業であったり、日本社会の常識なんじゃないかなと思ってます。
もっともっと飛べるのに、その枠の中でしか飛べなくなってしまう。そういうような状態が、今の日本の中にあるんじゃないかと。そんなことを思っています。
伊藤穣一さんがこんなことをおっしゃっていて、すごくステキだなと思うんですが、「出る杭は打たれる」という言葉が日本のことわざであって、まさにそれは今のことを象徴しているような気がするんですけれども。
ただ伊藤穣一さんは「出すぎた杭は打たれない」とおっしゃってます。出すぎると、「そんなの、もうほっとけ」という話になってしまうと。
実はさっきのノミの状況ですね。ビンの形に飛んでしまうようになってしまった状況を変える方法が1つだけあるんです。みなさん、何だかわかりますか?
すごく簡単なソリューションで、1匹だけもともと30センチ飛べるノミを入れるんです。そのノミが1匹ポーンと飛ぶと、「あっ! 俺たち飛べるんだ」って気づいて、また元のように飛び続けるらしいんですね。
僕はこういうことを起こしていくことが、日本の社会の中でも大事なんじゃないかなと思っています。
少し語弊があるかもしれませんが、そうした「変化を起こすノミ」をつくるためにやっている1つのプロジェクトが、僕たちが取り組んでいる「留職」というものです。
留職というのは僕らが造語でつくっているんですけれども、留学ならぬ留職と。留まって現地で職務にあたってくるというプロジェクトでして、青年海外協力隊の企業版のようなものです。
日本企業で働く社員の方々を、数ヵ月間にわたってアジアの発展途上国に派遣します。そこで日本企業の人たちが持っているスキルとか経験を使って、現地の社会に対して貢献をしていくと。そういうようなプログラムです。
現地で本当に、日本企業の中でなかなか味わえないような修羅場の中で、自分でゼロから1をつくっていくような経験をしていただくというプログラムになっています。
例えば、こちらはPanasonicでやっているものですけれども、Panasonicの社員がインドネシアの無電化の村に行って現地NGOに貢献し、電気メーカーが電気がないところで何ができるのかということを考えていただくというプログラムをやったりだとか。
あるいはBenesseの社員の方に、貧困層向けの英語教材をどういうふうに改善していけるのかを考えてもらったりと。
本業に近い領域で、自分の力を使って現地に対して貢献をするというプログラムをやっています。
このプログラムには、2つの目的があります。1つは、新興国のNPOに対して企業の力を使って貢献をしていくということです。そして同時に、それを通じて日本企業の中でくすぶってしまっている人たちのリーダーシップの育成をすることです。
また、日本企業にとっては、新興国の現地社会を肌感覚で理解する機会になるというメリットもあると思って、こんな取り組みをやっています。
さっきの1匹目のノミをつくりだして、それが会社を変えて、そして社会を変えていくと。僕たちはそんなふうになっていくんじゃないかなと信じて活動をしています。
最後に2つほど事例をお見せしたいんですけれども、1つはこちら医療機器メーカーの社員の方の事例です。
行かれたのは、29歳の研究者の男性でした。この方はずっと日本の病院で商品開発などをしている方だったんですけれども、インドネシアの小さな医療機関に行っていただきました。
派遣されたのは、6つぐらいの小さな診療所を運営しているNGOで、そこのCEOとともに課題に取り組むことになります。
CEOはなかなか医療廃棄物の問題に手がつけられていなくて、注射針だとか、あるいは薬物だとかを、このまま段ボールに入れて捨ててしまったりすると。
それによって二次的な感染も起きてしまっていたりするので、これでは危険だということで、何か改善策はないかと悩んでいたのでした。それに対して2ヵ月間の活動の中で、医療機器メーカーの研究者の方は、課題をどうやったら解決できるのかをひとすら考えました。
そして、ついに1つの非常に簡単かつ画期的なソリューションを考えついたのです。
本当に簡単なんですけれども、注射針をそのまま捨てると危ない、かつ現地では当然高いコストがかけられないので、どういうふうにすればいいかというので、綿に1回注射針を刺して、それから捨てると注射針の二次感染は防げるんじゃないかということを提案したんです。
その非常に安価なソリューションを、「なぜそれが必要なのか」を現地の職員の方々に説明して、そのオペレーションをしっかりつくって、現地で使えるようにしてから帰ってくるということを2ヵ月間でやってこられました。
そういう貢献をしていったんですけれども、同時に行かれた方はすごくたくさんのことを学ばれていて、こんなことをおっしゃっていました。
「一本の針が持つ価値というものを、考え直しました」という言葉だったんですけれども。やはり日本企業にいると、その針をどれだけ細くするかということで、一番数字的に世界最細の針をつくるというようなことが彼のミッションだったんですけれども、「それっていったい何のためなのか」ということを、実は今まで彼は考えていなかった。
ただ、実際にインドネシアの貧困層向けの医療機関に行ってみると、そこで注射針が太かったり、粗悪だったりすると、医療行為というものを危ないだとか、危険だということが現地で言われていて、結局病院に来る子どもの数が少ない。
そういった状況を見ていると、「自分たちが医療製品の品質を高めるということは、途上国の人たちに安全・安心な医療を届けるお手伝いをすることなんだ」と気づいたのです。
「そんな当たり前のことを、今までわからずに仕事をしていたのが、すごくもったいなかったです」と。そんなことをおっしゃっていたというのが、この方の経験談でした。
そういった文脈で語られることが多いんですが、私はむしろ、「どういうことを我々は学ぶことができるのか」ということを同時に考えていかなければ、我々日本人は、これから国際社会の中でやっていけないんじゃないかということを、留職のプロジェクトを実施していく中ですごく強く感じています。
そこで今日、みなさんとお話をしたいのは、海外で働く、あるいは海外で日本人がさらに輝いていくために、日本人はどういったことをやっていくべきなのか。
どういうスキルを身につける必要があるのか。どういうことが必要で、あるいは今必要だと思われているけれども、逆にこういったことは必要ないんじゃないかと。そんなことをみなさんと議論をしたいなと思っています。
すごく多様なバックグラウンドの方がいらっしゃるので、僕自身も、いち個人として、いろいろな意見を言いたいと思いますし、何かいい答えをこの場から導き出せたらいいなと思っております。私の話は以上です。どうも、ありがとございました。
(会場拍手)
株式会社朝日新聞社
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