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【山口組分裂について】溝口敦氏&久保利英明弁護士 記者会見(全2記事)

「ヤクザの仕事は弁護士に取られた」山口組分裂について専門家が質疑応答

指定暴力団・山口組の分裂が報じられています。それに関して、『暴力団』や『食肉の帝王』などの著作があり暴力団問題に詳しいジャーナリストの溝口敦氏と、総会屋問題などに取り組んできた弁護士の久保利英明氏が記者会見を開催しました。このパートでは記者からの質問に答え、今後の抗争激化の可能性や、司組長の脱税問題、アメリカや中国、韓国などのマフィアとの繋がりについて語られました。

分裂した2組の抗争は今後激しくなっていくのか?

溝口敦氏(以下、溝口):何かご質問があればお答えします。

記者:タイムズ紙のものです。数週間前に分裂が行なわれた際には、一部の憶測では、これは抗争になるのではないか、撃ち合いとか殺し合いがこれから発声するのではないかという憶測が出たわけですけれども、1件だけ射殺事件がありましたが、これからはどうなんでしょうか。こういった抗争があるかもしれないという憶測は誇張されたものだったのでしょうか。それともこれからはそいういう抗争がありうるか。それとも両者は共存しうるものなのか。それが第1点目の質問です。

2つ目の質問は溝口先生が話した非常に興味深い点として、場合によっては税金問題で司忍が狙われるというということでしたけれども、溝口先生、あるいは久保利先生の方から、その点についてもう少し詳しくコメントをいただけますか? また当局はそのような調査を行なっているのかどうか、今後の動向はどのように見ておられるか、おっしゃっていただけたら幸いです。

溝口:抗争しますとですね、現在その組織の上部のもの、トップが組長の使用者責任ということで、民法あるいは暴力団対策法で損害賠償を求められ、お金を払わなくてはならないということになります。

それて同時に組織犯罪処罰法で組織的殺人などの罪名で上部の刑事責任を問われかねないということで、そういうふうに法的体制が整備されておりますので、上の者はなかなか抗争をしたがらないという側面は確かにあります。

しかしながら暴力団は他を侵略することによって、はじめて彼らの商売が成り立つという性質をもっていますので、経済的な紛争をきっかけに全国各地で小競り合いが起こり、それが拡大して抗争に至るということは、これからの問題として徐々に起きてくると私は思っています。

久保利英明氏(以下、久保利):2番目の質問に私からお答えします。タックスの問題ですけども、これは世界中の暴力団に対して非常に有効な手法であります。たとえばアメリカでもアル・カポネは脱税で捕まったわけですね。そういう意味では、この方策は非常に有効だと思います。

それから、今溝口先生がおっしゃった、福岡県警が最初にその手法を考えたということですけれども、福岡は暴排条例の条例としては先頭を切った県でもあります。そしてこの県警の本部長さんは法曹資格を持っているというふうにいわれています。

という点で、司法と連携を取って、税法なり、さまざまな方法で暴力団を締め上げていく。この手法はこれからさらに多くの都道府県で採用されるだろうと思いますし、当然検察庁もこれを支援していると思いますので、司法の強化が暴力団を抑えこむという流れだろうと私は理解しておりますので、ぜひこの税法の問題がしっかり実効性をもって実現されればいいなと私は思っています。

日本の暴力団が抗争を避ける理由

記者:オーストラリアのものですけれども、ヨーロッパやアメリカのマフィアなどを見ていると、どうやら戦略的に見ると今おっしゃった状況とは異なっており、どちらかというと若い人間がそういう犯罪組織に属しているような場合には、もっと合法的なビジネスにいこうとする、殺人などは避けようとするのに対して、より年取った世代の人間が違った考え方を持っていると見られる傾向があります。それは今現在の山口組の名古屋と神戸の対立においては、それとは全く異なった戦略が取られようとしているのでしょうか?

溝口:日本においても、大雑把にいいまして、若い世代は暴力団に入らない。「半グレ集団」などという言葉を使いますが、そういうほうに入って暴力団に籍を置かない人が増えています。

そしてこういう人たちの多くは経済専一で抗争などは滅多なことではしないし、ましてや拳銃を使った抗争などはしません。せいぜいのところ、金属バットやビール瓶で相手を打ちのめすという戦法を取っております。

暴力団全体が抗争を避けるというのは、年齢的な面というよりは、日本の場合は、自分たちが抗争すれば上部の人間に迷惑をかける。そのために組織的に抗争が許されないという側面が多いと思います。

暴力団と繋がりがある企業や政治家の情報は

記者:フランスの◯◯と申しますけれども、今現在の企業の社長とか政治家などでヤクザ組織とリンクがあるのではないかと言われ、調査の対象となっている方はいるでしょうか?

久保利:私、久保利からご説明しますが、少なくとも私の知る限り、上場会社の社長で、そういう関係性を疑われているという人はまずいないと思います。政治家については、これはわかりませんけれども、ただ、暴力団との癒着をしているという関係で言うと、しばしば公共事業について暴力団は関与しますので、そういう人物はいないわけではないのかもしれません。

ただ具体的にそれが証明されればただちに大変な問題になりますので、すくなくとも今の段階ではオープンになっていないというのが私の考えでございまして、この点についてはむしろ、どうでしょうか。溝口さんのほうがお詳しいと思いますので、その点はお譲りしたいと思います。

溝口:私も久保利先生とほぼ同意見です。土地が動き、地上げなどが成立しておった段階では暴力団がその経済行為に関与し、ということがありましたが、現在はそれさえも非常に珍しいケースになってしまった。

そういう点で、暴力団と交際すると、交際する罪というのが、法的にではなくて、社会道義的に成立するような時代背景になっていますので、日本ではほぼ暴力団との繋がりはないと見るほうが正確だと思います。

山口組が所有する不動産、そして排外主義について

記者:インドネシアの新聞記者なんですけど、溝口先生の2つ質問をお伺いします。1つなんですけど、これは可能性があるかどうか、ちょっとわからなかったので。

山口組の中で分裂する前に投資会社とか不動産会社とか作ったみたいなんですね。幹部の人たちが株主になりましたので。これは1つの理由かもしれないので、ちょっとわからないかもしれませんけど。

弘道会のほうに連れて行かれて、ものすごい怒っちゃって、これは1つの理由だと思うのでコメントほしいですね。

こういう噂が本当か嘘かが、1つ。もう1つはこれはちっちゃな理由かもしれませんが、山口組の中で名古屋の弘道会の中を含めて、司忍さんの組織がものすごい反日の考え方が深いと思いますので、そういう意味で神戸山口組は嫌いみたいな感じですね。

で、みんな100パーセント日本人の考え方ですから、こういうことが分裂の理由になったというのは本当でしょうか。

溝口:山口組の直系組長を株主にする東洋信用実業、あるいは山輝という2つの不動産管理会社があることはこれは事実です。

しかし、今、この直系組長達の株主に対して、「自分はこの株を放棄しているから、あなたも放棄してくれませんか」という執行部からの誘いかけ、呼びかけがあるということも聞いています。

そしてこれは、株主が結果的にその土地を区分所有するという形から離れて、名義を一本化して、売却しやすい方向に持っていく。

その上で実は名古屋にはブルーグループの佐藤という人間が用意した広大な屋敷を建設する計画が、まだ進んでいるということで。

そちらに山口組本部を移すのではないか。という推測が行われています。しかしながら、実現するのかしないのか、ほぼ半々の確立だと思います。

排外主義といいますか、それが強いというご質問でしょうか?

記者:少し、韓国人の考え方みたいですね。

溝口:弘道会が名古屋の繁華街である錦三とか栄町で外国人排除の警備活動を長らく続けており、名古屋地区では外国人のそういう薬とか、売春とか、そういう人間が減っておるということは聞いております。

しかし、取りわけ弘道会が外国人排除ということで、精力的に取り組んでいると、そういう認識はたぶん日本人の認識はないんじゃないかなと思います。

暴力団の社会的需要はなくなった

記者:USA TODAYの人間ですけど本日はお二方は山口組は弱体化するだろうとおっしゃったわけですけど、これはヤクザ一般、っていうのはどうでしょうか。

これでもってヤクザ一般、暴力団一般っていうのは弱体化するということになるのでしょうか。それとも、ヤクザという存在というのは常に日本で続くものでしょうか。

溝口:私は山口組に限らず、暴力団全体が今後ますます数を減らしていく、勢いをなくしていくというふうに見ています。

警察庁の統計的に見ても、暴力団は暴対法施行以来、どんどん数を減らしていますし、最近はとりわけ下げのカーブがきつくなっています。そういうような意味で、暴力団全体に社会的需要がなくなったと。そういうふうに私は見ております。

久保利:久保利からひと言ですけども、要するに、非常に溝口さんがいいことをおっしゃって、「社会的需要がなくなった」ということなんですが、その需要がというのは実は、今までは興行、エンターテイメントの興行をヤクザがやるとか、不動産の地上げをやるとか、あるいは債権回収をやるとか、みんなヤクザがやっていたのが、今、日本の弁護士の数が増えました。そのせいでヤクザの仕事がどんどん弁護士に取られちゃってるんですね。

(会場笑)

久保利:私もその尖兵で随分取ったんですけども、そういう意味で、ヤクザに対する需要が司法に対する需要というふうにシフトしてきている。

だから一番強かった山口組がこういう状態になれば、それは他の団体も同じような宿命になるだろうと私は思います。

司組長の脱税についての捜査の可能性

記者:AFP通信社オザワと言います。こんにちは。先ほど溝口さんのほうから、「山口組の執行部を経験した人間が現在神戸山口組に移っている」と。それで「司会長にいくら渡ったのかのデータを持っている」というふうにおっしゃいましたが、これは司組長に対する決め手というか、切り札になるほどのものを持っているんでしょうか?

溝口:6代目山口組側の言い分は、司組長に対する帳簿の類は山口組には存在しないと。よって、司組長の脱税を証明するということは不可能であるというのが6代目山口組の言い分です。

しかしながら、工藤会の脱税の摘発ということでは、あそこの会計係が逐一野村悟総裁の使いみち、たとえばどこの彼女にいくらいくら届けたとか、そういうメモを残しておった。そのメモが警察に押収されて、それが検察、そして国税局に渡って、脱税が証明されたという経緯があります。

そのために、帳簿などは必要としない。「何月何日に司組長になんぼなんぼの金を渡した」というメモさえ残っていれば、脱税は証明されるんだという説が行われています。

そして私は、まだわかりませんが、この脱税ということに関しては、たぶん兵庫県警あるいは大阪府警が実際に取り組むんではなかろうかというふうに見ています。

山口組は海外でどのように活動しているか

記者:テレビ朝日のカワムラですけれども、6代目の司山口組組長は海外のギャンググループと強力な協力関係といいますか、コネクションを持っているのか。たとえばアメリカ、中国、アジア、ヨーロッパ含めて、Foreign Gang Groupsとのコネクションはどのような実態になっていますか?

溝口:アメリカが司組長の在米資産について凍結したという報道がありました。ですから、アメリカはある程度司組長のアメリカにおける経済活動を把握していると考えがちですが、私はそれは、多分日本の警察庁の資料がアメリカに渡り、アメリカが大した根拠もなしに決めたことだというふうに理解しています。

というのは、私は寡聞にして司組長がアメリカに渡ったということは知りません。そして、多分アメリカに入国できないのではないかと思うのですね。入国もできない国に自分の資産を置く、あるいはそこで経済活動をするということは、本来あり得ない。

まあ、暴力団は、私はすぐれて「言葉の商売」だというふうに思っています。言葉が理解でき、言葉を操れなければ、恐喝もできないという、特殊な商売なのです。

ですから、たとえば香港マフィアが日本に来て、シノギをする場合も、言葉を使わないで済む商売、すなわち自動車泥棒とか、自動車の部品の販売であるとか、クレジットカードのスキミングとか。あるいは金庫破りであるとか、そういう言葉を使わない仕事で日本に進出すると。

同じことが日本の暴力団にも言えるわけで。では中国や韓国に対してはどうかということは、これは欧米諸国に比べて、まだしもあり得ると思いますが、しかしながらよく聞いてみると、ほとんど向こうの人間とのお友達付き合いということで、直接シノギに結びつくというのは、覚醒剤とか危険ドラッグなどを除いては、まずないのではないかと私はみています。

司会:時間になったため、以上で質問を終わります。

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