2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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記者:槇局長に伺います。朝日新聞のハラダです。「スポンサーのみなさまへ大変ご迷惑をかけた」と武藤(敏郎)総長の言葉もありましたけども、実際、今すでにテレビCMのエンドカットでエンブレムが使われたり、屋外のポスターにも掲出されているケースがあると思いますけども、そのスポンサーへの補償というか、どのくらいのダメージを与えて、金額換算なんていうのは頭にございますでしょうか。
槇英俊氏(以下、槇):決定自体が本日でございまして、今まさにご連絡をしているところでございますので、まだそのような計算なりはやっておりません。
権利そのものが消滅したわけではございませんので、お話し合いをしながら、ご無理のない範囲で、スポンサーの方が使えるマークというのは従来のJOCとJPCのエンブレムになるので、差し替えていただくことをお願いしていこうと考えております。
記者:朝日新聞のアクツと申します。武藤さんにお伺いしたいのですが、エンブレムを選んだ組織委員会の責任、最初に問題が発覚してから、ここまで引きずってしまったということへの責任についてどうお感じになるかをお聞かせください。
武藤敏郎氏(以下、武藤):最初に申し上げたとおり、このエンブレムがリエージュのエンブレムに似ているといったことに関しては、我々はこれは明らかに違うという確信を持っておりました。28日に会見をしたのも、その確信をみなさまにご理解いただくためのものでありました。
従って、ここまで引きずったとおっしゃられましたけども、我々が新たな局面を迎えたのは、先週末の土曜日と日曜日であります。この問題に対しては、我々は非常に危機感といいますか、放置できない問題というふうに考え、直ちに行動を起こして、今日取り下げの決断をしたわけでございます。
もちろん我々は次の新しいエンブレムを、国民のみなさまに理解されるようなエンブレムを選ぶ責任がありますので、そういう新しいエンブレムの作成に邁進して参りたいと考えております。
誤解のないように申し上げますけれども、これを選んだのは審査委員会なんですね。審査委員会において、専門家が厳正な判定をいたしました。我々はそれを受け取ったということであります。
もちろん審査委員会に全部責任を押し付けるつもりはありません。組織委員会はそれを活用するというかたちで、責任はあるというふうに思っておりますけども。
ただ審査委員会も、ロゴの内容がどちらが優れているかということを判定されたんだと思います。そもそも応募要領には、どこかの剽窃ではないもの、独創的なもの、オリジナルなものを応募として欲しいということが明記してありますので、当然、応募者は独自なものを応募してくる責任があると思います。
佐野さんは、それはそれでオリジナルなものということでありますので、そういう意味では、手続き的には慎重に運んできたのではないかと思います。
ただ、ここまでですね、国民のみなさまからいろいろな意見が出てきて、もはやこのエンブレムが国民の支持を得ないという状況になったときにですね、佐野さんが取り下げるという判断をされたのは、そういうかたちで責任を自ら果たされたのではないかと、私は考えております。
記者:フジテレビ「とくダネ!」のキシモトと申します。お金の話で申し訳ないんですけども、佐野さんへのギャランティというのは支払われるんでしょうか。
そもそもの額、それともまったく支払われないのか。また再選考のときは公募を中心にとおっしゃいましたが、佐野さんも応募資格は、また次もあるのでしょうか。
武藤:まず前半のご質問に関しては、これはもともと100万円、1等には賞金を与えると。まあ、ひとつの名誉でありますので、そんな多額なものは必要ないと我々は判断いたしました。
現在その支払いの手続き中でありました。しかし、これは支払わないことにしたいと思います。
それから、佐野さんが応募する資格があるかということについてはですね、まだ私どもとして、そこまで新しい公募手続きを具体的に詰めておりませんので、具体的にお答えするまでに至っておりません。
まあ、佐野さんがそういうことをされるかどうか、私はむしろ、そちらのほうが、常識的にご自身で判断されるんじゃないかと思います。
記者:テレビ朝日のタケウチと申します。お願いいたします。2ヵ月以上かけて佐野さんに修正をさせて、今回の案ができあがったと先日おっしゃっていたと思うのですが、そもそも今回のコンペというのは、グッズ展開も含めて佐野さんありきではなかったのかという見方をする人もいらっしゃるようなんですが、それに関してはいかがでしょうか。
武藤:佐野さんありきのコンペであったということは、まったくないと思います。確かに1等に当選したエンブレムが、似たものが出てきたからどうするかというときには、ご指摘のとおり、2つの対応があろうかと思います。
1つは、その段階で、もはやそのエンブレムを外して、2位のエンブレムについて手続きを進めるというのが1つです。
もう1つは、応募要領に「修正あるべし」ということが書かれております。これはよくある話なんだそうですけれども、世界中にいろんなロゴがありますので、ちょっと似ているんじゃないかということは、しばしば起こるわけですね。
そのときには、もう抜本的に修正しても修正しきれないようなものであれば、2番目のほうにいくんでしょうけれども、微修正を加えることによってクリアできるという状況が1つ。
それから、実は1位と2位の差が、今回は非常に大きかったわけです。8人の委員の方が、半数の人が佐野さん。それからその他がいろいろ分かれたというわけですね。そういう圧倒的に支持を得たということもあり、修正でいこうということになったわけなんです。
その間は、28日にもご説明しましたとおり、制作者の名前は完全に伏せられておりますので、委員の人たちは誰が作ったものかはわからないわけなんですね。その段階で、今言った2つの段階でどういった選択を取ろうかということで、結果的には修正のほうを取った。
もちろん「そのときからやめたらよかったんじゃないか」という議論が、現在において起こりうるというのは、私もよく理解いたします。しかし当時の判断としては、最もみなさんが納得した対応だったと言えるのではないかと思います。
記者:日本テレビのミギマツと申します。よろしくお願いいたします。8月28日の会見では、このエンブレムの原案を示して、「これは完全にオリジナルであるということを確信している」という会見をされました。
依然として、その考えには揺るぎないというお考え、武藤さんもお話をされていましたが、そうするならばやはり、これまでの一連の騒動で、その最大の使用中止決定の決め手というのは、まさにこの国民の理解が得られなくなってしまったということに尽きる、というふうに受け止めてよろしいんでしょうか?
武藤:その点は大変重要なご指摘だと思います。おっしゃるとおり、佐野さんのご主張と永井さんのご判断を前提に考えれば、この取り下げの理由は先ほど申し上げたとおり、国民の理解を、いまや得られなくなった。そういうことで取り下げるということであります。
このご指摘はなぜ重要かと言いますと、実はリエージュから起こされた訴訟にも関係しているわけなんです。リエージュの訴訟があったから取り下げられたんじゃないかというふうに誤解しがちなんですね。
私どもはそういう説明はしてません。してませんけど、何も事情を知らない人は、リエージュの訴訟があったから取り下げるんじゃないかというふうに考えがちなので、この点は、むしろ私は今訴訟をやっている当事者はIOCであります。
リエージュの劇場はIOCを訴えているんですね。IOCの訴訟対応に本当にご迷惑をかけてしまうので、繰り返し強調したいわけですけど、リエージュの問題とは、まったくこの取り下げは関係はありません。
それから、その原案が似ているということが問題の発端ではあるんだけれども、それはいろいろ聞いてみるとですね、さきほど申し上げたようなことでありますので、結論としては、国民のみなさまの支援がない、そういうエンブレムを使い続けることが、「東京大会を成功に導く」という我々の考えにそぐわないというふうに考えた次第であります。
この方々は盗用だから取り下げるということではなくて、我々が申し上げたような理由で取り下げることに理解を示すということであります。
中の1名は、「それでも盗用でないんだから取り下げる必要はなし」というご主張もありましたけども、そういうことでございます。
それからどこかで損害が起こったらどういうふうにするのかということでありますけれども、これは私ども、どこにどういう問題があるかっていうことをまだ十分把握しておりませんけれども、
そういう可能性のある関係者には、状況をご説明申し上げて、できるだけ話し合いで解決していきたいと思っておりますけれども、今のところではそういうお答えにならざるを得ないということであります。
それから原案の類似性というお話がありましたが、その類似性の問題は、商標登録というものの先に行われたものがあれば、あとから登録できないということから検索にかけるわけなんですね。
これはオリンピックのこういう問題の常としてIOCはそういうやり方をとって、毎回いろいろそういう検索をし、またいろいろな問題も現実には起こっておるということであります。
登録されてないエンブレム、ロゴがどこかにあって、そこに著作権があるという問題は確かにご指摘のとおり、最大限我々も努力いたしましたが、日本ばかりか世界中とても数限りないこのような問題に、すべて答えることは、事前にチェックすることはもはや不可能、それぐらいこういうものがたくさんあるということであります。
このネットの発達した社会においては、昔であればそういうものに対しては直ちにわかるっていうことはめったになかったんでしょうけれども、今日ではそれがいろんな形でわかるということでありますので。
しかし、ここは我々にとっては100パーセント確実ということはもうあり得ない問題であります。できたら、適切にそれに対処していくというふうに考えるのが現実的な対応ではなかろうかと思います。
槇:「画像検索をかけたら簡単ではないか」という質問をよく受けるのですが、そもそもIOCのプロセスにそってやるんですけれども、商標を申請する前の未発表のマークを画像検索にかけるっていうことはちょっと危険なのでいたしません。
したがって、商標確認は特許庁との申請を事務所を使って1個1個調べていくということを繰り返すしかないわけですね。
発表されたあとは、皆さん画像検索等でいろんなことをご意見おっしゃるので、そこはプロセスが簡単なので、「何で画像検索かけないのか?」という質問受けるんですけれども、
ちょっと専門的なことは私、詳細までは詳しくないのですが、登録してないものをネットで検索するということは普通やらないと思います。そこがこの問題の難しさでございます。
武藤:今の説明はもうそのとおりなんですけども。結局このエンブレムというのは、商標登録する前に一般の目に触れますと、誰かがそれを商標登録先にかけるというリスクを持ってるわけですね。
ですから、そういう制約のもとでいろいろ調べるということで、話が非常に難しいということであります。
記者:共同通信のキクウラと申します。(エンブレムの)所有者はIOCになると思うんですが、IOCへの報告などは現時点でどのようになっておりますでしょうか?
武藤:IOCとはもちろん連絡をとっております。特に法務関係のところとは私どもの法務と密接に連絡を取っております。
それからIOCの事務方のトップ、さらには(トーマス・)バッハ会長でありますとか(ジョン・)コーツ委員長に対しましても、これは書面で理解を求めるように手続きを取りました。
現状においてはこの日本の状況を理解して、東京組織委員会の対応をサポートしてくれるということであります。
記者:日本テレビ、『スッキリ!!』のニシムラと申します。よろしくお願いいたします。
武藤さんにお伺いします。先ほどの説明で、永井審査委員長がデザイン業界としてはまったく違うものだと認識をしていると。「専門家の間ではわかりあえるが、一般はわかりづらいですね」というふうにおっしゃったということですが。
それを言うのであれば、ベルギーと似てますねという段階でも同じ状態だったと思うんですね。専門家が見ればもともとの造りもそうだし結果も違うものであると。
ただ一般の方からすると「とても似てるよね」っていう意見が多かった。今回のポスターもそうだと思います。経緯もそうだと思います。
という中で、今後また新しいロゴを作っていくときに、似たようなことが起きる可能性はあると思うんですね。
シンプルであればあるほど、文字をアレンジすればするほど同じようなことっていうのは起きると思うんですが、
2度目以降の審査に対して、今の時点で何か改善ですとかどういうところを気をつけていきたいみたいなことっていうのは、思っていらっしゃるところありますでしょうか?
武藤:リエージュのロゴと我々組織委員会のロゴが同じだとは、我々でさえも思っておりません。これは明らかに違う。色もまったく違います。
それから、確かに似てるところを探せば似てるということなんですけども、違うところを探せば似てるとこ以上に違うところがたくさんある。それは一般の人が見てもそうだろうと思います。
したがって我々は、裁判でございますので裁判の結果を予測するのは控えたいと思いますが、IOCと我々とでいろいろ意見交換する中で、これは十分我々のほうに理があるだろうという確信を持ってた。
だからこそいろいろご意見がありました、しかしそれはあらゆることにそういうことがありますので、我々がこれを使い続けることが適切であるというふうに判断をいたしました。
日曜日に出てきたあのものは、私はデザイナーの専門家から違うというお話を聞いて、そんなものかなというふうには思いましたが、一般国民がなかなかこれ納得しないのではないかという強い懸念を持ちました。ですから、そこはかなり違うことなんですね。
そういう意味では、この両者を同じように扱うのはちょっと我々はそのように考えておりません。今後どうするのかということについいては、これは非常に大きな問題だと思います。
特にシンプルなもので力強いものといったものは、大体道具立てが似てるので、これは永井さんもおっしゃるんですけども、それはもう似たものがたくさあるんですと。
だけれども、コンセプトがどうだろうかということが大事なんですと。そのコンセプトが先ほど言ったように単なるドットですね、あれは。
「J.T.」となってるんです。ヤン・チヒョルトさんは「J.T.」ですから2つあって離れてるわけですが、佐野さんのは9分割した中にある赤い情熱、ハートを強調したもので、これはコンセプトが違うんだということでした。
私もその辺りになると専門家の意見を尊重するということでございます。したがって今後のときにも、この考え方はやはりきちっと持ってないといかんと思います。
しかし、より広いいろんな意見を聞くことによって、少しでもそういうリスクを減らすといったような努力が必要なのではないかと。
私は先ほど今後新たにエンブレムを作るにあたり、オープンなやり方で手続きでやりたいということを申し上げましたけども、その趣旨は、できるだけ多くの人のご意見を聞くことによって今のような懸念を何とか払拭できないかということであります。
質問者9:テレビ朝日『モーニングバード』のナカタニと申します。
先ほどお話しいただいたことの関連なんですけれども。そもそもあとから出てきた28日の原案。この原案に修正が加えられているというのは何を比較した類似性でもって何が問題で、その原案は修正されていくことになったのでしょうか?
武藤:これは原案が決まった段階でIOCに相談して、IOCから世界中の商標登録のチェックを行ったと申し上げました。
その中に、複数このTが基本ですから、Tが基本ですので、こういうアルファベットをエンブレムの中に据えますと、ABCD、あらゆるところによく似たものが出てくるわけなんですね。
その中で、複数のエンブレムが似てるというふうに思われるので、安全のためにこれは修正をしたほうがいいだろうというのがIOCのアドバイスでありました。そういうことでございます。
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