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日本共産党・志位和夫委員長記者会見2015年6月23日(全2記事)

安倍政権がつくった英語に翻訳できない3つの造語とは? 共産党・志位委員長が安保法案の危険性を語る

日本共産党委員長・志位和夫氏が記者会見を行い、安倍政権が進める安全保障政策や集団的自衛権の行使をめぐる問題について自身の見解を語りました。志位氏は安倍首相が国会で「違法な武力行使をした国を日本が協力することはない」と説明したことを受け、アメリカが先制攻撃を仕掛けた過去の戦争においても日本政府がアメリカの武力攻撃に反対してこなかった点を指摘し、日本政府がアメリカの武力攻撃を違法と認定できるのか、と疑問を呈しました。

戦争法案はこの国のあり方を根底から覆す

志位和夫氏(以下、志位):今日はご招待いただきまして、誠にありがとうございます。日本共産党の志位和夫でございます。

今、安倍政権が、平和安全法制の名で11本の法案を国会に提議しております。私たちは、憲法9条を全面的に破壊する戦争法案がその正体だと、この間追求してまいりました。今日は、世界から見た戦争法案の異常と危険と題しまして、冒頭、若干の時間をいただいてスピーチをさせていただきます。

戦後、日本の自衛隊は半世紀にわたって1人の外国人も殺さず、1人の戦死者も出してきませんでした。ここには憲法9条の偉大な力が働いています。そしてその下で、政府が戦後一貫して海外の武力行使は許されないという憲法改正を取ってきたことも、重要な要因として働いています。

戦争法案は、この国のあり方を根底から覆すものです。それは海外で戦争する国づくり。殺し殺される国づくりを進めようというものに他なりません。

私は安倍首相との国会での論戦で、憲法に反する3つの大問題を追及してまいりました。

第1は、米国が世界のどこであれ、アフガニスタン戦争、イラク戦争のような戦争に乗り出した際に、自衛隊がこれまで戦闘地域とされてきた地域にまで行って、弾薬の補給、武器の輸送などの、いわゆる後方支援を行うことになるということです。戦闘地域での兵站は相手方から攻撃目標とされ、武力行使に道を開くことになります。

第2に、PKO法の改定が大変な曲者だと考えております。PKOとは関係のない活動への新たな仕掛けが盛り込まれています。形式上は停戦合意が続いているが、なお戦乱が続いているようなところに自衛隊を派兵し、治安維持活動をさせる枠組みが新たに持ち込まれようとしています。

安倍首相は私の質問に対してアフガンに展開し、3,500人もの戦死者を出しているISAF、国際治安支援部隊のような活動への参加を否定しませんでした。戦乱が続いている地域での治安活動も容易に武力行使に転嫁します。

第3は、日本がどこからも攻撃されていなくても集団的自衛権を発動し、米国の戦争に自衛隊が参戦し、海外での武力行使に乗り出すことになるということです。我々は、これはいち内国の戦乱で従来の憲法解釈を180度転換する立憲主義の破壊であり、憲法9条の破壊であると、厳しく批判してきました。

以上のことの点から、この法案の違憲性は明らかだと私たちは確信しております。その上で今日は、世界から見ると、今日本で起こっていることがどんなに異常で危険なのかという、その角度から少しさらに話をさせていただきたいと思います。

安倍政権がつくった英語に翻訳できない3つの造語

志位:世界から見ますとこの戦争法案とその推進勢力には3つの異常と危険があります。第1は非国際性です。すなわち地球の裏側まで自衛隊の派兵をもくろみながら、世界で通用しない理屈でそれを合理化しようとしています。

例えば戦闘地域での兵站についてであります。戦闘部隊に対する補給、輸送などの兵站が、武力の行使と一体不可分であり、戦争行為の不可欠な一部であることは世界の常識であり軍事の常識であります。しかしそれを正面から認めてしまいますと、その途端に憲法違反になってしまいます。そこで日本政府はそれをごまかすために、世界のどこにも通用しない概念、議論を使っています。

端的にお話をさせていただきます。日本政府が使っている言葉で、英語に翻訳できない、概念がない、3つの言葉があります。英語に翻訳できないと私が言って、通訳の方に訳してもらうのは、大変申し訳ないと思います。

1つは、「後方支援」という言葉です。これは日本政府だけの造語です。ご承知のように、英語ではLogistics、兵站となります。しかし決して兵站という言葉を使おうとしません。兵站には、前方、後方という概念は含んでおりません。日本の自衛隊は、あくまで後方支援で、うしろのほうでやっていて、前には行かないというごまかしです。

2つ目の言葉は「武器の使用」という概念です。武器の使用はするが、武力の行使に当たらない。こういうことを繰り返します。安倍首相は、戦闘地域で自衛隊が兵站を行う際に攻撃されたら武器の使用をする。use weapon。これは認めました。しかし、武力の行使ではないと高らかに言い続けるんです。

それで私は外務省に、「武器の使用という国際法上の概念があるんですか?」と尋ねました。外務省から帰ってきた答えは、「国際法上は、武器の使用という概念そのものがございません」というものでした。武器の使用はするが、武力の行使に当たらないというのは、世界のどこでも通用しない議論であります。

3つ目は「武力行使との一体化」という言葉です。政府は「武力行使と一体でない後方支援は、武力の後方支援に当たらない」と言っております。そこで私は、先日の党首討論で安倍首相に聞きました。国際法上、武力の行使との一体化という概念そのものはあるんですか、ということです。

首相は「一体化という概念そのものはございません」というふうに答弁しました。ちなみに昨年7月の、日本政府の集団的自衛権行使容認の閣議決定の日本政府による英訳。

これ仮訳でありますが、「武力行使との一体化」をどう訳しているのかを、政府の公式文書で見てみましたら、「ittaika with the use of force」というローマ字を充てていました。一体化という概念を訳すことは誰にもできないんです。

こういう世界で通用しないという点では、集団的自衛権の行使についての政府見解も同様でございます。

政府は、集団的自衛権の発動の要件として「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃によって、日本が存立危機事態に陥ること」を挙げています。そして政府は、こうした憲法解釈の変更をやった唯一最大の理由として、国際情勢の根本的変容が起こったからだと説明しています。

それで私たちは、国会で聞きました。国際情勢の根本的変容と言うが、そうした根本的変容の下で他国に対する武力攻撃によって、存立危機事態なるものに陥った国が世界に1つでもありますか。

外務大臣が答弁しまして、「実例を挙げるのは困難です」というのが答弁でした。1つも実例が挙げられない。すなわち、憲法解釈を変更した根拠が、底から崩れたというのが、この間の論戦です。

アメリカに従属した状態での集団的自衛権は危険

志位:憲法9条の下では、もともと自衛隊の海外派兵というのは不可能なんです。それを取り繕おうとするから、世界のどこにもない架空の概念を作り出すという矛盾に陥っています。自衛隊の、世界的規模での派兵を企てながら、世界のどこにも通用しない詭弁で合理化することは、許されるものではありません。

だいたい私は心配になります。地球の裏側で、米軍と自衛隊が共同行動している。そのときに自衛隊が、「こうした後方支援は、一体化するのでできない」と米軍に言ったとします。しかし米軍のほうは、一体化という英訳そのものがないんですから、理解ができません。

第2の世界から見た異常として私は、対米従属性ということを挙げたいと思います。すなわちこの法案を推進している勢力が、異常なアメリカ追随を特徴としているという問題です。

政府は集団的自衛権の発動の要件として「我が国と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生したこと」を挙げています。私はこの場合、その他国への武力攻撃がいかにして発生したか。ここから問題にしなきゃならないと考えております。

すなわちこれは、他国が先制攻撃を行ってそういう状態が生まれたのか。この場合は、その他国は侵略国となります。それとも、他国に対する武力攻撃から戦争が開始されたのか。この場合はその他国は犠牲国になります。

日本は戦後1度も米国の武力行使に反対したことがない

志位:私たちは、ここに追求すべき大問題があると考えて国会で質疑を行ってきました。私は首相に聞きました。「米国が先制攻撃の戦争を行った場合でも、集団的自衛権を発動するんですか?」。

首相は、「違法な武力行使をした国を、日本が自衛権を発動して支援することはない」と答弁しました。しかし問題は、日本政府が米国の違法な武力行使を、違法と批判できるのかどうかにあります。

戦後、米国はベトナム戦争、イラク戦争を始め数多くの先制攻撃の戦争を実行してきました。しかし日本政府は、戦後ただの1度も米国の武力行使に反対したことがないんです。このような国は、主要国の中で他に例を見ないと思います。

例えば1983年のグレナダ侵略。このグレナダの侵略に対しては、日本以外の米国の同盟国もほとんどが反対をしました。国連総会でも非難決議が挙がりました。しかし日本政府は理解の意思表示をしました。このような異常なアメリカ追随の国というのは、私は主要国の中で、他に例を見ないと思います。

このような政府が、そしてそういう行動に反省のない政府が違法な武力行使をした国の支援をすることはないと言って誰が信用できるでしょうか。異常なアメリカ従属の国が、集団的自衛権を行使する危険は、極めて深刻だと言わなければなりません。

安倍首相は日本の戦争を侵略戦争だと認めない

志位:最後に第3の問題です。歴史逆行性ということを挙げたいと思います。すなわち、過去の日本の戦争を間違った戦争と言えない安倍政権が、戦争法案を推進する危険ということです。今年は戦後70年です。この節目の年に、日本が過去の戦争にどういう基本姿勢を取るかは極めて重大な問題です。

5月20日の党首討論で私は安倍首相に対して、1945年8月に受諾したポツダム宣言を引用して「過去の日本の戦争は間違った戦争との認識はあるか」と正しました。

安倍首相は頑なに、間違った戦争と認めることを拒み続けました。加えて、この党首討論の中で安倍首相が、「ポツダム宣言をまだつまびらかに読んでいない」と答弁したことが、内外に衝撃を与えました。

安倍政権は、この問題については閣議決定答弁書を決定しました。党首討論のあとのことです。そこにはこう書かれていました。「首相は当然ポツダム宣言を読んでいる」と。読んでいると言うんだったら、あのときの答弁は何だったのかということになります。

戦後の国際秩序は、日本とドイツとイタリアで行った戦争は侵略戦争だったという判定の上に成り立っています。ところが安倍首相は、侵略戦争はおろか間違った戦争とも認めることをしません。過去の戦争への反省のない勢力が、憲法9条を壊して、海外で戦争する国への道を暴走するというのは、これほどアジアと世界にとって危険なことはないと言わなければなりません。

以上、3つの角度から、国際的な異常性と危険性について、お話させていただきました。

昨日、与党は国会の会議を95日間、史上最長の延長をすることを強行いたしました。しかし私は、どうなるかを握っているのは、国民の世論だと考えております。国民の文字通りの圧倒的多数が、これに反対の意思表示をした場合にはいかに与党が国会で多数を持っていたとしても、強行することはできません。

私たちは国会の論戦と、国民運動の両面で、そうした確固たる国民的な、圧倒的多数派を作るために力を尽くしたいと考えております。ありがとうございました。

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